- イベントレポート
100年先を見つめる7プロジェクトが登壇 2021年11月 GARAGE Program実験報告会
対話により「価値観の違い」を受け止めながら、 人と人とで共創できる社会を作りたい
「対話しながら共創する絵本 creaB」というプロダクトを開発し、老若男女が対話によって様々な考え方に触れ、絵本を共創する体験をしてもらう。
これにより、多くの人の視野を広げ、お互いの「価値観の違い」を受け止められる社会を実現したい。
「普通そんなこと思わないよ笑 変な人だね」 物の見方には正解がある。人と違う意見を発するとどこか変人扱いされてしまった悲しさから、小学生の頃の私は、無意識のうちに万人が思う正解を探そうとするようになっていた。 今になって思えば、自分と「違う」と捉えられて、排除されることに対して恐怖心を覚えていたのだと思う。 「この絵をみて、思ったことを自由に話してください。」高校の授業での先生からの問いだった。 正解を探すために、必死で絵とにらめっこしていると、周りの生徒達は何に縛られることもなく意見を語り出した。 先生は、「相手がどうしてそう思ったのかを聞いてみてください。その時すぐに否定せずに、相手の意見をよく聞いてください。」という。「どうしてそう感じたの?」と繰り返すと、不思議なことに、相手の物の見え方だけでなく、その見え方が生まれた背景にある経験や価値観までが明らかになっていく。 私は、正解を見つけることをやめ、恐る恐る自分の考えを発した。 「そんな考え方もあったんだ… 自分にはない視点だった」 人と違う考えを発しても変人扱いされることはなく、それを新しい視点だとして受け止められたのだ。 こうしてお互いが新しい物の見方に触れ、「価値観の違い」を受け止めあった時、相互理解が生まれ、新しい作品を共創することができたのだ。 しかし昨今では、「価値観の違い」が共通の要因として考えられるような、誹謗中傷やいじめ、差別、人間関係の不和などのトラブルが多く起こっている。このような問題の深層には、相手の思考プロセスを知ることなく否定しあう「正解の押し付け合い」が見られる。その結果、様々な場面で精神的なストレスを抱える人が増えている事実がある。 このような問題に対し、対話を多くの人に広め、お互いの「価値観の違い」を寛容に受け止められる社会を実現したいと考えるようになった。
対話を多くの人に広め、習得してもらうことで、お互いの「価値観の違い」を寛容に受け止められる社会を実現できるのではないだろうか。
これを実現するためには、多くの人に対話を成功体験として感じてもらうことで、抵抗感を減らすことが必要だと考えた。
そのためには、誰もが簡単に対話を体験できる仕掛け(creaB)を作り、対話を楽しんでもらうことが必要だ。
また、対話の体験を意味のあるものにするためには、参加者を信頼できる環境作りと、自己開示してもよいという心境作りをすることによって、心理的安全の発言の場を確保する必要があると考える。
これらの条件を満たした「対話しながら共創する絵本 creaB」を開発し、普及していくことで、対話することを当たり前なことにしていきたい。
1.どのようなデザインをすれば
・参加者を信頼できる環境作り
・自己開示してもよいという心境作り
の2つの条件を満たした、心理的安全の上で対話できるような仕組みが作れるかを模索する。
2.100banchに集まった人/オンラインで集まった人同士(3~4人)で、対話をしながら挿絵を選び、物語を考えながら1冊の絵本を共創してもらう。 できれば3回以上同じワークショップを行い、対話の様子や結果にどのような変化が生まれるかを観察する。
3.プロトタイプを、定期的に他プロジェクトのメンバーに行ってもらい、プロジェクト間で対話をしながら、新しい価値観を知ったり、関係性を構築したりするきっかけを作る。
1.ワークショップなどで使用してくれた人に、対話の楽しさや重要性に気づいてもらう。終了後も対話を日常的なものとして行ってもらえるような発信をしていきたい。
2.使用者が、心理的安全を確保した上で体験できるようなデザイン(ルール等の設計、挿絵の選定、パッケージデザインなど)を完成させる。
3.対話に興味がない人にも手に取ってもらえるようなキャッチーさを追求し、Twitter等のSNSで発信していく
4.普及方法を考え、発信に協力してくれそうな人を見つける
「価値観の違い」を受け止め合うことが当たり前であり、誹謗中傷等なく自分の思いを表現したり、それを素直に受け止めることができたり、共創したりすることが当たり前にできる未来を実現する。これにより、誰もが大衆の正解を気にすることなく、自由に自分の世界観を表現し作ることができるようになる。
代表伊藤詩奈
02line。幼い頃からディズニーが大好きで、自分が作ったもので人のことを楽しませたいという夢がある。
高校時代での体験から「対話」に興味を持ち、対話による創造についての探究活動を続ける。 高校卒業後はかえつ有明高等学校にて、対話を誘発する場のあり方や、制作活動(プロジェクト学習)と内省的な対話の関係性についてを研究中。「価値観の違い」が当たり前に受け止められる社会を作りたい!
CANVAS代表、慶應義塾大学教授、B Lab所長
石戸奈々子
東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授。総務省情報通信審議会委員など省庁の委員やNHK中央放送番組審議会委員を歴任。デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任。政策・メディア博士。著書には「子どもの創造力スイッチ!」、「賢い子はスマホで何をしているのか」、「日本のオンライン教育最前線──アフターコロナの学びを考える」、「プログラミング教育ってなに?親が知りたい45のギモン」、「デジタル教育宣言」をはじめ、監修としても「マンガでなるほど! 親子で学ぶ プログラミング教育」など多数。これまでに開催したワークショップは 3000回、約50万人の子どもたちが参加。実行委員長をつとめる子ども創作活動の博覧会「ワークショップコレクション」は、2日間で10万人を動員する。
デジタルえほん作家&一児の母としても奮闘中。