SAVE THE UDON
うどんの手打ち文化を100年後に残す
7月8日(月)の渋谷、涼しく過ごしやすい曇り空の日となりました。ナナナナ祭3日目のこの日、開催されたイベントは2つ。「【音楽と食の奇祭】うどんセレモニー」、そして「未来のコンビニトーク」の様子をお伝えします。
食事の「霊性」をデザインするEat Party Lab(SAVE THE UDON / KaMiNG SINGULARITY / The Herbal Hub)による「【音楽と食の奇祭】うどんセレモニー」。打ち立ての讃岐うどんを食べるという行為を、五感を通じて楽しむエンターテイメントに昇華させていました。
祭りを執り行うのは、うどんをモチーフに白い衣裳に身を包んだメンバーたち。あるひとは、司祭を連想させるような西洋風の姿で、あるいはアジア風の、ベリーダンサー風の衣装を身にまとい、既存の地域や宗教の儀式・祭りとは異なる雰囲気を醸し出しています。
渋谷川沿いの遊歩道で行われたこの奇祭、参加者は受信機(ヘッドホン)を通して音楽やささやき声に耳を傾けながら、進行していきます。その間、巫女らしき女性が音叉を振り、参加者や舞台の周囲を清めていました。
セレモニーの最初、まずは粛々とカカオドリンクを頂き、自然や食べ物、さまざまなものに感謝し、愛する人や苦手な人、そしてこの渋谷にいる人々の幸せや健康を願う、祈りの儀式からスタート。
カカオドリンクでリラックスし、こころを整えたら、次に白泥で身を清めます。
心身が清らかになったところで、うどんセレモニーがスタート。
うどんをこねる動作を繰り返し「うどんうどんうどん」と繰り返し唱える姿は、さながら修行のようにも見えます。
その後、参加者が順番に「う・どん、う・どん」と唱えながら、うどんを踏み終わると、そのうどんが祭壇のような麺板に運ばれ、小野ウどんさんによる、パフォーマンスがスタート。受信機からは軽快な音楽が流れ、小野さんが麺棒で音楽に合わせてうどんを伸ばし、切って行きます。
そして、うどんは窯の中へ。茹で上がったうどんが、参加者に振る舞われました。
はたから見ると、ヘッドホンをした集団が、なにか不思議なことをしているように見えるため、遊歩道の通行人や、100BANCHへの来場者が足を止めて様子をうかがっていたり、「何をしているんですか?」とスタッフに声をかけていました。
「うどんセレモニー」によって、あらためて食べ物に感謝する気持ちを持ったり、これまでにないうどんパフォーマンスを見て、普段の食事をもっと楽しむ余地があることを再認識する機会となりました。
平日、しかも月曜日の夜にもかかわらずほぼ満席となった「未来のコンビニトーク」。来場者の2割ほどがコンビニ関係者、8割がコンビニユーザーでした。
100BANCH採択メンバーである大山貴子(Food Waste Chopping Party)・菅本香菜(MUSUNDE HIRAITE)が牽引する未来のコンビニプロジェクトでは、2019年1月27日から、コンビニの未来について関心を持つ参加者を募って実施した、全5回のワークショップの集大成の場。このワークショップの最終目標は、2040年の未来にあるべき理想のコンビニの姿を考え、コンビニ業界関係者に提言を行うというもの。
近年、コンビニのマイナス面が話題になっています。本イベントの主催者のひとり鈴木恭平さん(パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社)は、人材不足やフードロスといった社会問題に対して、コンビニの関与する割合は決して低くないこと。コンビニ関係者でなくとも、コンビニを身近に感じ、社会問題を解決したいと考える方が多い。プロジェクト期間中、ずっと参加者の熱量の高さを見てきたことを話しました。
そして、鈴木さんからプロジェクトのこれまでの流れの解説がありました。
未来コンビニプロジェクト最初の1月27日(日)と2月16日(土)の2回は、それぞれコンビニジャーナリスト吉岡秀子さんから各コンビニの特徴について学びました。
<参考記事>
・第1回 ~いよいよキックオフ!コンビニのこれまでと今について学ぼう
https://100banch.com/magazine/15212/
・第2回 ~未来の暮らしを創造しよう!アイデアの広げ方や思考プロセスを学ぶ。
https://100banch.com/magazine/16070/
・第3回 ~多様なフィールドワーク先から見えてきた未来とは?いよいよ2040年のコンビニをカタチに!
https://100banch.com/magazine/16938/
イベントでは、7チームの代表者が提言内容を発表、未来コンビニプロジェクトの事務局メンバー(大山貴子、菅本香菜、鈴木恭平さん)と共にトークセッションを行いました。100BANCHに集まるのは月に1度というペースだったものの、チーム分けをしてからは、参加者のみなさんが自主的に自分たちの時間を使って調べ、考えた提言はどれも内容が濃く、熱量の高い発表となりました。Twitterのハッシュタグ「#未来コンビニ #ナナナナ祭」が作られていますので、そちらもぜひご覧ください。
— 「コンビニライフスタイルラボ」チーム 村木さん
村木さんのチーム、コンビニスタイルラボは2040年の未来は機械化・自動化が進んだ結果、人間のやるべきことが減り、余裕ができると考えました。そして多様化し、さまざまな暮らし方が可能になるため、コンビニもそういった暮らしに対応するようになると予想。コンビニは、人々が多様なライフスタイルを選び、移行するためのスイッチになるのです。便利=時短というコンビニエンスではなく、暮らしをつくり、生活拠点となるコンビニ。例えば、宅配荷物をコンビニで受け取ることができるように、家での行為をコンビニにインストールしていくという考え方です。コンビニを、長い時間滞在したい場所にしたいと語りました。
— 「未来のコンビニ店舗」チーム 坪沼さん
未来のコンビニ店舗チームは、4つの可能性を挙げました。ひとつは「Mental Changer」。コンビニはどこにでもあり、店舗が多いことに着目。駅の近くにも必ずと行っていいほどあるため、予定と予定の隙間時間を活かす、気持ちの切り替えのできる場所にしたいと考えます。現在もある、集中力を高めるデバイスをコンビニに設置して、気持ちを切り替える場としてのコンビニを提案しました。ふたつ目は「Haptic Marketing」の場。フィールドワーク中、商品に手で触れて選ぶ購買行動に注目。イギリスのスーパーマーケットではトイレットペーパーの手触りを確認できるよう、むき出しにして展示したところ、売上が伸びたという事例があるため、触覚にアプローチする販売方法のアイデアを挙げました。3つ目は「Local Symbol」。コンビニをその土地のシンボルとなるような観光地化することで、地域とコンビニを好きになってもらうというアイデアです。4つ目は「Slow Open」。コンビニは約1ヶ月で開業しますが、開業までの時間を3ヶ月ほどに伸ばし、地域の方とコミュニケーションをとり、棚作りなどをしてもらえば、自分の店という意識を持ってもらえると考えたそう。
— 「インフラ再定義」チーム ダンさん
未来年表(未来年表 | 生活総研 https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/)で2040年を調べたところ、あまり良い世界ではないということがわかったそう。大企業がまとめてサービスを提供できる社会ではなくなり、企業同士が協力しながらサービスを提供する社会になります。コンビニもまた、単体でのサービス提供が難しくなるため、コンビニの持つ流通網や工場といったインフラに注目。それらを活用することで社会に価値を与えていく存在にしたいと考えます。人口が激減し、より密接に関係しあい、助け合ってサービスを提供する社会構造のなかで、コンビニのもつインフラをバックエンドで供給することで、BtoBであらゆる分野がシームレスにつながることを提案しました。
— 「HuvLab.」チーム 佐藤さん
HvLab.では、世界初のコンビニモデルを発案しました。なんと、コンビニにドッキングするモビリティをつくるというもの。そこは、誰でも使える場所でもあり、病院や学校といった場所、ワークショップ会場や、マイクロホテル、パブリックビューイングなどの使い方を想定しています。それぞれ、サービスの提携先企業まで考えたそう。その背景には、未来に予想される「幸福度の低さ」「地域社会の断絶」「つながりの希薄化」という、デジタル技術の革新や、身体的健康寿命が伸びるなかで、ひとびとが不幸になっていくという問題意識がありました。そのなかで、「心の健康=つながり」に着目。コンビニの駐車場や隣接する空きスペースに移動もできるドッキングステーションをつくるというものです。さらに、地域のプラットフォームとして、BtoBだけでなく行政との連携も大切だと語りました。
— 「コミュニティとTech」チーム 井上さん
コンビニのもともとのコンセプトは、「いつでも開いていて、どこでも同じものが買えて、いつでもどこでも同じサービスを受けられる」というもの。しかし、こうした便利さを追求した結果、さまざまな社会問題が出現してきました。井上さんのチームでは、コンビニを社会を写す鏡と考え、テクノロジーを用いてコンビニを活用することで、社会問題を解消するアイデアをつくりました。例えば、一人暮らしで家庭菜園が趣味の女性がアプリを活用して「自分がつくった野菜をコンビニで食べる会」を主催したりする、プラットフォームをつくるというものです。プラットフォームを通じて、コンビニをサブスクリプションサービスや、コミュニティの場にすることで、「無関心・人材不足・豊かさの限界」といった社会問題を解消する目的です。これを、まずリヤカー1台から実験する予定を立てているそう。なぜリヤカーなのかといえば、追いつけるスピード感で移動するものだからだそう。
— 「働きやすいコンビニ」チーム 倉持さん
倉持さんのチームは、コンビニに関わるすべてのひとが働きたいと思えるコンビニを実現するというヴィジョンを元に、「接客小売業としてのコンビニ価値を尊重した改革」を行うことをミッションに掲げています。コンビニには、「過労死・業務過多・人手不足・アルバイトの軽視」といったマイナスの課題があります。これを、どのようなコンビニであれば働きたいか? という軸でかんがえたとき、「褒められたい・楽しい・儲かる」というキーワードにたどり着きました。褒める余裕がないなら、いっそITを活用して名札に褒めてもらう仕組みをつくったり、自由に働ける環境を整えたり、Uberのようなゲーム性をもたせた働き方に変えるといったアイデアが出されました。さらには、接客業で働きたいけれど、移動ができない人などがVRやホログラムなどで接客を行うといった提案もありました。また、現状コンビニのオーナーと本部は、売上を半々の割合で折半しているため、このウエイトを変えることも必要だと語りました。
— 「ニューリテールな社会でのコンビニ」チーム 小林さん
コンビニ本部で働いていたという小林さんは、それまですべての人にとって、コンビニは身近にあると思っていたそう。しかし、自身にお子さんが生まれたことで、近くにコンビニがあるのにもかかわらず、「買いたいのに買えない」という状態を経験。疎外感を感じたと言います。いわゆる買い物弱者と呼ばれる高齢者や、店舗が近くない、移動手段がないといった人たちだけでなく、実はそれ以外にもインフルエンザに罹患していたり、新生児のお母さん、そもそも部屋の外に出ることもままならない程忙しい人、ひきこもりの人など、コンビニエンスから取り残されている層がいることを指摘しました。その解決策として考えたのが、VRコンビニ店舗。いわゆるECは検索したり、膨大な店舗・商品の中から比較購入することになりますが、VRであれば目で見てものを選ぶことができる店舗空間で、実店舗に近い感覚で買い物をすることができます。
以上7チームによる提案が発表された後は、参加者が入り混じっての懇親会を実施。各コンビニのお菓子や飲み物が用意され、参加者同士や登壇者を交えたコミュニケーションが行われていました。