- イベントレポート
CES2019に出展―100年先の未来を豊かにするのはエモテック!会場でも異彩を放った100BANCHブースをレポート
中実な立体物を編む「ソリッド編み」によって、デジタルなものづくりを実現する
糸を、編み目という構造によって1目という単位に分割して扱う編み物は、まさしくデジタルなものづくりだと言えます。この編み構造で中実な立体物をつくることで、「かたいもの」に編み物のデジタル性を付与します。
ペンやテープといった日用品は、だれが最初に発明したのか気にしたこともないほどあたりまえのものであり、だからこそ日常生活において欠かせないものだと言える。もう少し最近の例で言えば、PCやインターネットといったものも、20年ほど前は目新しかったがすでにあたりまえのものになっている。このような、未来のあたりまえとなる発明を残したいという思いが人生の目標としてあり、ソリッド編みが自分の「持ちネタ」のなかでそれに該当する可能性がもっとも高いと考え、このPJを始めた。
編み物は、デジタルな工作法だと言える。編み物は編みという構造によって、アナログな材料である糸を1目ずつに分割し、デジタル性を獲得している。たとえば編み物では、決まった目数の分だけ正確に戻すこと(undo)や、編み図によって同じ形状を再現すること(copy)が可能である。 現在編み物が対象としているのは衣類など面で構成される「やわらかいもの」のみであるが、この対象を中実な立体物にまで拡大することができれば、この編み物のデジタル性を「かたいもの」にも付与することができるだろう。
ソリッド編みで単純な直方体を出力できる試作機を完成させる。
切削加工や鋳造といった製造方法のカテゴリに、その一種として3Dプリンティングが加わりつつあるように、そのなかにソリッド編みが加わっている未来をめざす。
廣瀬 悠一
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。 会社員時代は静岡県浜松市にて機械系エンジニアとして3次元切削機の開発を行う傍ら、週末はファブラボ浜松で趣味のものづくりに勤む。 現在は大学院在籍時に自ら考案した、3次元データから中実な立体物を編む「ソリッド編み」を自動化すべく奮闘中。
パナソニック株式会社 IP部門ESL研究所所長、京都大学 特命教授、(公財)京都高度技術研究所 フェロー大嶋 光昭
パナソニックの家電・デバイス・B2B事業分野における基本特許の発明を行い、この技術の開発と事業化を数多く成功させている多分野型発明家。シリアルイノベーターと称されている。有効な登録特許の件数は海外を含めると1,300件。発明した技術を事業化した事業の累積営業利益は3,000億円。現在も研究開発・事業化活動を続けるとともに、社内で大嶋塾と呼ばれる発明塾を主催し、若手研究者を育成するとともに、大学でも後進の指導にあたる。本人が発明し事業化した技術:ジャイロセンサ、手振れ補正、デジタルTV放送方式(日米欧規格)、BCA(ダビング10に採用)、海賊盤防止技術(任天堂Wiiに採用)、光IDなど10件。
受章・受賞:2004年紫綬褒章受章、2003年恩賜発明賞、2007年大河内記念生産賞、2008年経済産業大臣発明賞、2012年市村産業賞貢献賞など。
著書:大嶋光昭「「ひらめき力」の育て方」(亜紀書房, 2010)
プロジェクトの歩み