
「テクノロジーの力を活用し、建築を民主化する」100BANCH実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2026年1月22日に開催した実験報告会では、テクノロジーの力を活用し、建築と都市デザインを軸に、より良い空間づくりに取り組んでいるGARAGE Program60期「Usta」、75期「Rendery」の加藤利基(株式会社SAMURAI ARCHITECTS)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した7プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではその発表内容をお伝えします。
図面を超えた「ドローイング」の新たな可能性を拓き、建築の領域を拡張する!
登壇者:金子柚
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/pantomime-drawing

「Pantomime Drawing」は、図面に代わるドローイング手法の発見と普及を目指すプロジェクトです。
金子:典型的な建築設計プロセスは、イメージする・図面に起こす・施工するという三段階に分かれています。しかし、実際の体験や経験は図面で表すことができません。建築設計のプロセスでイメージを図面に抽象化してしまうことで、建築家の意思など大事なものがそがれてしまっているのではないか、という疑問からこのプロジェクトをはじめました。
アプローチとしては、ドローイングのフェーズを拡張してそのまま施工に用いることができないだろうか、というもので、展覧会などを通して活動してきました。「深夜の美術展」という展覧会では、何気ない日常を描いた風景をパースラインに沿って切り取ることで、空間を描くことには、絵であるからこそ、フィジカルな限界があるということを表現しました。「しもまちシェアハウス」という新潟の古い長屋での展示会では、背景を白抜きにして人だけを描いた絵を、改装途中の建物に飾るという挑戦を行いました。さらに、描いたドローイングから何かモノがつくれないだろうかという試みとして、ワークショップも開催しましたが、あまり上手くいきませんでした。11月には、私が住んでいるシェアハウスを舞台に住民を描かせてもらい、空間にあるものを、ドローイングを媒介にして表現することはできないか実験を行ったり、「Tokyo Innovation Base」 での展示を行ったりしました。
その後は、枝に限定していた材料を粘土と綿に変えて実験してみました。できあがったものを私の住むシェアハウスに置いて、絵を描いて、そこからモックアップをつくって、さらにそのモックアップをまた置いて、描いて、モックアップにして、というサイクルの設計・空間の在り方のプロセスを考えて、建築コンペに出展しました。この実験を通じてわかったことは、つくるものは、ものすごく環境に影響される、ということです。身の回りの環境だけでなく、材料やドローイングと人の関係性、他にも色々な要因があってモノがつくられていくんだなと実感しました。もう少し環境を考えてフィールドを設定していく必要があると思ったので、今後はそれにフォーカスしていこうと思います。

「現在、建築領域のインキュベーションを行っているASIBAにインターンとして入って、次期プログラムのコンテンツ制作を行っています。今後は、新潟市にある解体ビルで実験会を行う予定です。」と金子は話しました。
ひとりごとの力で、「勉強したのに英語が話せない」人をゼロにする!
登壇者:川上知宏
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/echo

「Echo」は、日常の言語学習に「ひとりごと」を活用し、「読む・聞く・書く・話す」の4技能全ての言語運用能力を相乗的に高める新しい言語学習法を提案するプロジェクトです。
川上 :一般的な英語学習は、まずテキストで単語や文法を勉強し、話してみたい人は英会話講座やオンライン英会話をしていくようなイメージがあると思います。しかし私たちは、もっと気軽にアウトプットした方が、インプットにもアウトプットにも良いのではないかと考え、単語や文法を学んだら、「ひとりごと」で話して練習してみようという学習方法を提案しています。
3ヶ月前に100BANCHに入居した時点では、「ひとりごと」を音声入力し、フィードバックをもらえることに加えて、学習記録を確認することができるところまでアプリが完成していました。ただこれから英語を勉強したいという人に、いきなり「ひとりごと」を言ってもらうのはハードルが高い、何を言ったらいいかわからない気持ちが先に出てきてしまうという問題点がありました。そこで、この3ヶ月で取り組んだのが、発話のハードルをとにかく下げることです。そのために、日本語で言いたいことをすぐに英語にできる「お手軽翻訳機能」をつくりました。また、例文を出してくれる瞬間英作文の「瞬発発話機能」、「音声読み上げ機能」、「学習時間リマインド機能」、「ウィジェット機能」、UI/UXの改善などに取り組んできました。
3ヶ月の振り返りとしては、発話のハードルを大きく下げられたと感じています。また、継続的に使ってくださる方や、有料のサブスクリプションを登録してくださる方も確認でき、サービスに価値を感じていただけていることが大きなモチベーションになりました。

「今後、オンボーディングや継続利用してもらえるようアプリの改善を進め、これまで取り組んでいなかった発信面にも力を入れたいです。松江で行われるコンテストの最終選考に残ったので2月末に発表してきます。また、言語学習Vlogで発信したり、自分自身でもどんどんアプリの改善点を見つけていきたいと思います。」と川上は話しました。
イチから作る食体験で、自然と暮らしの距離を近づける。
登壇者:阿部峻也
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/mud-about

「MUD ABOUT」は、食をイチからつくる体験を通じて、自然と暮らしとの距離を近づけることを目指すプロジェクトです。
阿部:今回企画しているのは、「イチからカレーを作る」(通称:イチから)というプロジェクトです。米、野菜、スパイス、鶏など、すべて自分たちで育てて、最後にはカレーをつくって食べるというプログラムになっています。GARAGE Programの3ヶ月ですが、最初の1ヶ月は100BANCHで色々な方とお話させていただき、2、3ヶ月目にはヒアリングをして得た気付きをプログラムに反映することをやってきました。
プロジェクトの最初には「心に里山をつくる」というコンセプトを発表しました。都会で雨が降ると嫌な気持ちになることも多いと思うのですが、以前僕が畑を借りていたとき「やっと雨が降った!」と嬉しくなったんです。同じようにこのプロジェクトに参加した皆さんの心にも里山ができたらいいな、と思ってつくったコンセプトでした。しかし、このコンセプトがなかなか伝わりづらいことがわかったので、これは練り直したいと思います。また、ヒアリングで得られた気付きを元に、スケジュールや頻度などを見直して、プログラムを設計し直しました。具体的なプログラムは、逗子・葉山エリアで、人数は15人ほど、チームに分かれて畑に月1回以上訪問し、農家さんの協力を得ながら野菜を育てたり、季節の手仕事を行ったりしながら、みんなが集まる機会を意図的につくっていきたいです。
「GARAGE Programの期間を延長し、残りの期間で一緒にイチからカレーを作るメンバーを集めて、今年の5月からスタートしたいと思っています。無駄なことに見えるかもしれませんが、食べるものがどうやって自分たちの手に届いているか、体験を通して学んでいく機会づくりをしていきたいです。」と阿部は話しました。
「偶然の出会いを生み出す」AIが、新しい挑戦にあふれた社会を実現する
登壇者:髙松周平
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/next-serendipity

「Next Serendipity」は「セレンディピティ」と呼ばれる「偶然の出会い」に着目し、それをきっかけとした新たな挑戦を後押しするAIやサービスの開発に取り組むことを通じて、新しい挑戦があふれる社会を目指すプロジェクトです。
髙松:最近、生成AIを使っている方も多いと思います。「Aについて教えて」と聞いたらすぐに答えてくれて便利なのですが、一方で「〇〇の絵を描いて」と聞いたときには、出力されたものがイメージと違うと感じることは少なくないと思います。生成AIはすごく便利なのですが、僕たちは、まだ実務で使用できるレベルにまでは降りてきていないと感じています。その理由の1つとして、指示を出す際の言語化の限界があるのではないかという仮説にたどり着きました。この言語化の限界を超える、便利な生成AIのアプリケーションをつくるのが僕たちのプロジェクトです。
言語化の限界とはどういうことかというと、「〇〇をつくって」とAIに指示をするときに「〇〇でXXで・・・」と細かい指示を送るのですが、そのとき、指示の中で言語化しきれていない部分も生まれ、イメージの全てをAIに伝えきれていないのではないかということです。その伝えきれていない部分がずれていくせいで、思っていたものとは違うものが出力されてしまうと考えています。現在のAIツールはユーザーがやってほしいことを推察し、それっぽいものを出力していると思います。僕たちは、ユーザーが考えているけれども言語化できていない部分のディテールを言語以外の方法でAIに伝えることで、より実務的なものが出力できるのではないかと考えています。
そこで、今回、AIに実務的につくらせるものの対象として、スライドを選びました。より実務に特化したスライドツールということで、ユーザーがデザインや構成などを言語以外でAIに伝えられる、総合的にスライドづくりを便利にするAIアプリケーション「Pro Assist」を開発しています。パワーポイントに埋め込んだアプリケーションで、直感的なデザインをAIに指示できたり、各パーツごとに細かい修正も受け付けてくれます。例えば「GDPをプロットしてくれ」と指示すると、調べてきてグラフにして、プロットしてくれて、理由などを箇条書きで出してくれたり、より実務的なパワポアプリになっています。現在、ベータ版をリリース済みで、色々フィードバックをいただいて改善をしている最中です。

「GARAGE Programを3ヶ月延長させていただくことにしたので、引き続きブラッシュアップしながらサービスをつくっていきたいと考えています。」と髙松は話しました。
理想の服を探す人と作る人をつなぎ、「最高の一着」で自信をまとえる世界を。
登壇者:黒川明日香
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/tailoryou

「TailorYou」は、服のリメイクマッチングプラットフォームを開発し、理想の服を妥協せずに手に入れられる社会を目指すプロジェクトです。
黒川:「この服、Vネックだったらいいのに。」「この素材であの形だったら。」皆さんもこんな経験はありませんか。服を探しているときに、「袖はこの形がいい」「腰はこの形がいい」と思える服は見つかるのに、全てが理想通りのものはなかなか見つかりません。私は、欲しい服が頭の中にはあるのに実際にはなかなか見つからない、という状況にモヤモヤを抱いていました。これを解決するためのプロジェクトが「TailorYou」です。欲しい服がある人と、服をつくれる人をつないで、既存の服を理想に近づけるリメイクすることを「TailorYouする」と呼び、これが気軽にできる世界をつくろうとしています。
これまでやってきたこととしては、公式LINEを用いたマッチングです。公式LINEで画像と文字でリメイクの依頼を出し、服をリメイクできる人が手を上げてマッチングし、服がリメイクされるかたちになっています。将来的にはアプリ化も考えています。現在は、「欲しい服がある人」と「服をつくれる人」という1:1の間でのやり取りしかないのですが、他の人がこれをつくりたい、と思ったときに他の人が「私もほしい」とボタンを押すと、最初にアイデアを出した人にもインセンティブが入るようなかたちを考えています。
この3ヶ月間で取り組んだことは、マッチングの数を増やすこと、それから、リメイク素材としてのアパレル企業の廃棄服の可能性を探りました。マッチングに関しては、公式LINEをより使いやすくしました。最初は返信で待たせてしまい、離脱されることもあったのですが、返信用のテンプレを作成してすぐに返信できるよう設計しました。今後はAIの導入も考えています。また、今まで取り組んでいなかった媒体、ThreadsやTikTokにも手を出しはじめています。廃棄服については、元々は廃棄服を活用する、というアイデアだったのですが、ちょっと惜しいと思って買わなかった服が廃棄予定になっていたときに、それを自分好みにリメイクできたらうれしいと思い、そこを目指していきたいです。
「2月7日に、1,000着の『ここだけこうだったら』展を開催予定で、そこに向けて全力で走っていく予定です。理想の服を着たい気持ちを、世の中を変えるきっかけにしていきたいと思っています。」と黒川は話しました。
自分の肌に自信を持てる人を増やし、ルッキズムに揺るがない社会をつくる!
登壇者:星晴登
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/skinu

「skinU」は、スキンケア診断サイトの開発を通じ、誰もが肌で悩まない社会や、肌で前向きになれる社会を創造するプロジェクトです。
星:私たちは、男子高校生をターゲットに、肌診断や商品・スキンケアの基礎知識を紹介するウェブサイト「SkinU」の開発と運営を行っています。具体的なビジネスモデルとしては、ユーザーが肌診断を行い、提案された商品をECサイトから購入すると仲介手数料が私たちに入ってくるというものです。
100BANCHに入居してからの成果ですが、夏休み期間に皮膚科医200名にテレアポを行い、10名の医師へのインタビューから幅広くフィードバックをいただき、診断ロジックに反映させてきました。また、たくさんの大会・コンテストに参加してフィードバックを得たことで、ここまで事業を展開することができたと思っています。「Tongaliアイデアピッチコンテスト」を筆頭に、様々なコンテストで壁打ちさせていただきました。利用ユーザーに関しては、1,250人を達成したところです。これらの成果を出せた一番の要因は、SNS運用とビジネスコンテンツなどで広げたネットワークや自分たちの友だちに紹介して使ってもらったことなどが挙げられます。
しかし、私たちには、半年間の収益が200円程度という大きな問題があります。チーム内で話して、収益より実績を優先して活動したこと、単価の低い商品のアフィリエイトでは利益が取りづらいこと、SNSの運用やマーケティングがユーザーではなく企業向けになっていたことなどの課題が見えてきました。私たちは、この課題に向き合うとともに、自分たちの強みを活かして新しいビジネスアイデアを提案することにしました。それは、スキンケア売り場の行動最適化ツール「ユア肌」です。これは「SkinU」の商品提案ロジックを活かして、実店舗・薬局での商品提案から購買行動までをつなげるサービスです。これまでWebサイトで行っていた工程を、薬局・ドラッグストアに導入しようという非常にシンプルなモデルになっています。この後、実際にドラッグストアさんにヒアリングをして壁打ちを行っていき、近いうちに導入できたらいいなと思っています。
「6ヶ月という短い時間ですが、私たち5人の男子高校生グループがここまで事業を進めてこれたのは、この場所を提供してくださった100BANCHの協力のおかげだと思っています。ご清聴ありがとうございました!」と星は話しました。
日用品の「当たり前」に問いを立て、モノが人に寄り添う未来へ。
登壇者:守安巧
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ergonomi

「ERGONOMI」は、日用品に潜む「当たり前の不便さ」を手がかりに、人間工学の視点からデザインを問い直すプロジェクトです。
守安:このプロジェクトのコンセプトは、日頃使っているプロダクトに対して、なぜこのデザインなの?という問いを立てて、そこから今までにないデザインをつくっていこうというものです。きっかけは傘です。傘をどうさすと一番雨に濡れにくいんだろうと考えたときに、相対速度などを計算して、前に傾けた方が濡れにくいとわかりました。そのとき、人体構造上最も持ちやすい持ち方と、理論上、雨に最も濡れにくい持ち方に乖離があるのではないか、傘の軸を2つにすれば、この乖離を埋めることができるのではないかと思い、傘をつくろうと100BANCHに入居しました。しかし、傘をつくりはじめたものの、すごく難しくて、アートに逃げたり、傘以外のプロダクトをつくったり、またアートをしながらやっぱり傘だなと思ったりして、今は傘に戻ってきました。「ERGONOMI」で僕は何をやりたかったのか考えてみると、問いをカタチにしたいということでした。人が何を考えているのか、具体的にどういうことを思いながらモノを使っているのかという抽象的で触れないものを、プロダクトやアートといった有形なものにしていくことが、僕のやりたいことでした。
活動の中では、デザインと機能の関係や大量生産とデザインの関係についても学びました。その1つは、機能が必ずしもデザインを決定しないということです。食べるという機能1つをとっても、東洋と西洋で異なり、全く違う食器ができたり、フォークというものがあったとしても、使い方は色々で機能は必ずしも決定されません。機能とデザインにはあまり因果関係がなく、文化や環境形成のようなものでデザインが立ち上がっていくことがわかりました。また、大量生産されていくと、プロダクトがどんどん均一化されていき、本来、使いやすかった部分が失われていってしまうのではないか、ということから伝統工芸品にいきあたりました。そこで、プロダクト制作やアート化、伝統工芸品の体験設計や、柄をつくったり、などと活動を広げてみました。色々実験した結果、僕の問いを傘ほどうまく説明できるものはないということがわかり、やっぱり傘をつくろうとなったのが100BANCH入居から半年後の現在です。

「GARAGE Programは今月で終了しますが、年齢層や職種問わずいろんな方々とお話しする機会をいただいたり、皆さんの挑戦にすごく刺激をもらいました。それらを今後の活動に活かしていきたいと思います。」と守安は話しました。
実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。
Pantomime Drawing https://youtu.be/UnGA9qFTN3c?si=Jw4ClT2vuuvQkI5Y
Echo https://youtu.be/O0rfkeabwps?si=3WBihvTQVBTWzUc-
MUD ABOUT https://youtu.be/46JoMPSXN20?si=JrYRuwWy10EHlTGf
Next Serendipity https://youtu.be/jJVNS-bcChM?si=29ES-qCMKv7RgboG
TailorYou https://youtu.be/Do7DQ7ssouI?si=H7RDT3kWFIYn56dr
次回の実験報告会は2月18日(水)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・健康/ヘルスケアに興味がある
・トレーニング/身体づくりに興味がある
【概要】
日程:2月18日(水)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:無料(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/76509/