物と人との関係を問い直し、「片付けなくていい家」をつくりたい!
 
              Sloppy Saves the World
物と人との関係を問い直し、「片付けなくていい家」をつくりたい!
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                                                      Sloppy Saves the World リーダー / ずぼらお片付けセンター 代表 山口莉絵 

図面を超えた「ドローイング」の新たな可能性を拓き、建築の領域を拡張する!

私たちは図面に代わるドローイング手法の発見と普及を目指すプロジェクトです。
図面に代わるドローイングの可能性を探求しています。設計者と受容者の二項対立ではなく、そこに根付いたコンテクストとして振る舞いを逆照射し、既存の空間にドローイングというレイヤーを挟むことで、空間の持つ自由なディテールを喚起させます。ドローイングを通じて観者のイマージュの中に空間の実在性を立ち上げ、建築・空間の領域を拡張することを目指します。
中学生の頃、漫画背景という表現手法と同時に「パースペクティブ」という概念に出会い、ユークリッド的な空間の捉え方と自分自身の空間の捉え方を差別化するようになった。人物の心理・挙動と連続性を持った空間が成立し、人物はあたかもパントマイムのように背景をなぞるような、そんな物語の世界において、空間は単なる舞台ではなく人物や主体の行動や心理によって無意識のうちに規定されることに気づき、描くことに夢中になった。ここに「設計」することよりも根源的な「描く」ことで空間そのものが語りかけるような瞬間がある、と確信した。
建築学生としてさまざまな学校課題に取り組んだりインプットをしたりする中で「建築パース」という概念が固定化されすぎていると感じる場面が多くあった。「美しいレンダリング」は「その建築が完了したこと」を裏付けており、「匿名性が高く抽象的な添景」は「空間と人が分離していること」を示しているように思えた。建築においてドローイングはあくまで付属物に過ぎず、完成品を補完したり分かりやすくすることに特化し過ぎているのではないか。ここにデザインすることの限界を感じ、イマージュの中に広がる創造性により、空間を新たな領域に拡張できる可能性を発見した。
これまでは、建築空間を白抜きにして人の振る舞いのディテールだけ抽出したドローイングを描き、これに対して模型を当てはめる実験まで行った。
今後の最も大きな目標は、空間の実物大モックアップを制作し、手法から実践までの道筋を確立することである。
大まかに3つのフェーズに分割し、これらを実験していく。
1.これまでに制作してきたドローイングとワークショップでサンプリングした模型の分析を行う。匿名性の高い人物表現に対して、さらに人の動作やポージングまでの詳細を描いたドローイングに対してどのような空間が見出せるのか実験を行う。
2.渋谷を舞台に、数日かけて人の動きを観察しそのディテールまでドローイングとして描き出す。人が集まる場所としての特性を最大限に活かせるような実験方法を今後工夫していきたい。
3.モックアップの作成具体的な場所を設定し、ドローイングから道筋立てて一つの空間を制作する。ドローイングを描いた場所と同様の場所に改めて空間を重ねて制作する。
1~3のプロセスを往還し、いくつかの手法として見出す。
とにかくアウトプットの回数を増やして、貯めて、循環させる。従来の設計とは違う方法で簡単にドローイングを空間に結びつけられるよう実践する。
「描く」という行為がもっと空間を「つくる」という行為と近いものに変化していて欲しい。

Pantomime Drawing リーダー / 制作者金子柚
漫画家になりたかったが、背景画の方が面白いことに気づき興味を持ったことをきっかけに建築の道を志す。CGで全てが完結する建築デザインの在り方にショックを受け、描くことの価値やアイデンティティを追求している。