• イベントレポート

遊びと科学の実験室!わくわくが生まれる瞬間「遊び×サイエンス=実験室!」──ナナナナ祭2025を終えて

人と生物の共生を目指すプロジェクト「BioCraft」は、子どもたちがわくわくするようなバイオクラフト(バイオ技術を用いた製品)をつくり、世の中に発信することに取り組んでいます。

今回のナナナナ祭2025では、活動の根源である「科学が自分ごととなったときの、感動や探究心」に焦点をあてた体験ブース「遊び×サイエンス=実験室!」を実施しました。このブースでは、発酵細菌のランプ作りや科学の不思議の種を見つけるScience Cafeでの体験を通して、子どもから大人まで多くの人の好奇心を刺激することを試みました。その模様をBioCraftの西村がレポートします。

2025年7月11日から13日にかけて開催された「ナナナナ祭2025」のDEMO DAY(ブース展示)に、私たちBioCraftも「遊び×サイエンス=実験室!」をテーマにしたブースを出展しました。足を運んでくださった皆さん、そして私たちの「実験」に目を輝かせながら参加してくれた皆さん、本当にありがとうございました!この場を借りて、心から感謝申し上げます。今回は、熱い3日間の様子を、私たちがそれぞれの企画に込めた想いと共に、少しだけ深く振り返ってみたいと思います。

 

BioCraftって何者? 私たちが届けたい「わくわく」の正体

私たちBioCraftは、「生命科学を軸に、地球や自然をフィールドに『わくわくする遊び』を追求するチーム」です。「科学」や「実験」と聞くと、なんだか難しくて、教科書の中の遠い世界の話のように感じませんか?でも本当は、私たちのすぐそばに、たくさんの「不思議」と「感動」が隠れている、最高の遊び場だと私たちは考えています。

今回のナナナナ祭で私たちが届けたかったのは、そんな科学の面白さを、五感をフルに使って誰もが気軽に体験できる「実験室」です。子どもから大人まで、誰もが五感をフルに使って「楽しい!」と感じられる体験を通じて、皆さんの心に眠っている「好奇心」という名の種に、そっと水を注ぐこと!誰かが決めた「正解」を探すのではなく、自分だけの「なぜ?」を見つけ、探求していくプロセスの面白さを、ぜひ体感して欲しいと思い、今回のブース企画を開催しました。

100BANCHバイオチームが普段使用している実験アイテムを展示

 


顕微鏡と粘菌

 

暗闇に浮かぶ生命の光「発光細菌BioLamp作り」


BioLamp製作実験の様子、提供:100BANCH

 

今回の目玉企画の一つが、本物の「発光細菌」を使ったBioLamp(バイオランプ)作りのワークショップです。この企画の最大のねらいは、電気に頼らない「生物が造り出す生きた光」を見た際に、そのバックグラウンドで起きていることや、わくわくする体験を心で感じてもらうことでした。剣先イカから採取した小さな生き物(発光細菌)たちが、自らの力で放つ青白く幻想的な光の美しさは、(発光細菌が光ってる)展示を見ることにより感じられますが、単に着飾られたものや作られたものを見るだけではなく、それが生まれる科学的な背景を、難しい説明ではなく「体験」として届けたいと考えました。

実はこのBioLamp、安定して光を放つようになるまでには、約半年にわたる試行錯誤の道のりがありました。昨年の「ナナナナ祭2024」や「DESIGNART TOKYO 2024」では、展示期間中安定して光を放ち展示させることに成功しました。何度も失敗を繰り返したからこそ、昨年、参加者の皆さんが見せてくれた笑顔は、私たちにとって何よりの喜びでした。

今回のナナナナ祭2025における、発光細菌のBioLamp作り企画の原点となったのが、ある小学校で行ったワークショップでの体験でした。 最初は「本当に光るの?」と半信半疑だった子が、暗幕の中で光を見た瞬間に「わっ、光ってる!」と歓声をあげてくれました。後日、その子が「お家でお父さんお母さんと一緒にランプを観察したんだよ!」と目を輝かせながら話してくれた時、私たちは半年間の苦労が報われ、そんな苦労はこの笑顔が見れるならばまたやってみたい、こんなにもワクワクして話してくれる人をもっと見てみたいと思いました。あの時の、純粋な驚きと感動を、今回のナナナナ祭でも再現したい。そんな想いから、今回は「本物の研究者」さながらの体験ができるように、実際に研究室で使われている実験機器も用意しました。参加された方々が目を輝かせながら実験に取り組む姿は、まさに私たちが届けたかった光景そのもので、とても嬉しかったです!

このBioLampは、完成品ではありません。受け取ってくれた皆さんと共に「進化」していく、「in progress(未完成)」のランプです。ぜひ、BioLampの使い方や楽しみ方を、Instagramで「@biocraftbanch」をつけて教えてください。皆さんのBioLampがどんな表情を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。


BioLamp製作実験中、提供:100BANCH

 

「私の手」が醸す、世界に一つの味噌作り


本企画について解説しているスタッフ、提供:100BANCH

 


手前味噌プロジェクトブース、提供:100BANCH

 

もう一つの目玉企画が、なんとも風変わりな「手前味噌プロジェクト」。テーマは、「利き手と非利き手、自分の手についた菌で味噌を作ったら、味は変わるのか?」。この少し変わった実験のねらいは、目には見えない「微生物」というミクロな世界が、いかに私たちの食文化に深く、豊かに関わっているかを感じてもらうことでした。きっかけは、2008年のある科学論文。「人の手のひらには驚くほど多様な細菌がいて、利き手と非利き手ではその種類が違う」というのです。この科学的な事実を、知識としてではなく、実際に「味」として体験してもらえたら、どれほど面白いだろう。そんな好奇心から、この実験はスタートしました。

参加者の皆さんには、同じ材料で2つの味噌を準備し、それぞれ利き手と非利き手で混ぜてもらいました。自分の肌に住む「常在菌」が味噌の風味を作ること、最初は驚きの声も上がりましたが、実験の意図を話すと、皆さん興味津々の表情で取り組んでくれました。利き手と非利き手の肌環境の違いが、そこにすむ乳酸菌に影響し、最終的に味噌の味にどう現れるのか…。私自身、想像するだけでワクワクが止まりません!このお味噌たちは、これからじっくり熟成の時を過ごします。今年の11月頃に予定している観察会で、果たしてどんな味・色・香の違いが生まれるのか…!私たちも今から楽しみです。ちなみに3日間で、200人以上の方に本企画を体験して頂きました!


非利き手で作った手前味噌玉

 


今回の企画で作った手前味噌たち

 


手前味噌の味噌玉作り体験の様子

 


手前味噌の味噌玉作り体験の様子

 


手前味噌の味噌玉作り体験の様子

 

「不思議の種」を見つける対話の場、Science Cafe

今回は、“問い”を起点にプロジェクトを生み出す「TOIMOCHI」さんとのコラボレーションで、小さなサイエンスカフェも開きました。このカフェのねらいは、科学的な「問いの立て方」そのものの楽しさや、すぐに答えが出なくても考え続ける「探求の過程」の面白さを伝えることでした。

「なぜ歳をとるとカルビがきつくなるんだろう?」
「100年の継ぎ足しスープはなんで腐らないの?」
「このモヤモヤした気持ちって、科学で説明できる?」

日常の中でふと感じる、言葉にならない「不思議の種」。そんな柔らかな問いを、私たちは探していました。気兼ねないおしゃべりを通して、その小さな種を一緒に見つけ、大切に芽吹かせる。そんな優しい時間に、カフェは満たされていました。誰かの「不思議」に耳を傾けることで、自分の世界が少しだけ広がる。そんな対話の中から、未来を面白くする新しい創造の芽が生まれると、私たちは信じています!


集まった問いの種

 

レポートの裏側:私たちの「問い」と「発見」

これら一つひとつの体験は、私たちにとって大切なコミュニケーションであると同時に、ある問いを検証するための『実験』でもありました。ここでは、各企画の裏側にあった私たちの狙いを、少しだけ種明かしさせてください。

まず、私たちが考える「楽しい!」という状態。それは、ただ面白い現象を眺めることではありません。自らの手で現象に触れ、心を動かされ、「これって、どうして?」という自分だけの問いが生まれる瞬間の、知的な興奮そのものです。この考えの根底には、「科学は、能動的な体験を通じて“自分ごと”になった時、最も深い感動と探究心を生む」という、私たちの仮説があります。今回のナナナナ祭は、この仮説を確かめるための、実験の場でもありました。

  • 『発光細菌BioLamp作り』に込めた、私たちの問い。 それは、「LEDの光とは違う、実用的ではないほど弱々しい『生命の光』が、人の心に特別な『わくわく』を呼び起こすのではないか」という、私たちの根源的なテーマです。昨年のナナナナ祭では、実際に光と対峙してもらうことでこの感動を共有しました。そこで今回は、「光を生み出す『過程』そのものを体験することでも、同様の感動や愛着が生まれるのではないか」という、新たな問いを立ててみました。 その答えを探るため、参加者の皆さんには研究者のように実験器具を使い、自らの手で菌を扱う体験に集中してもらいました。私たちが注目したのは、光が見えなくとも、「この中で生き物が光るんだ」と想像を膨らませる言葉や、完成したランプを愛おしそうに持ち帰る姿。その反応から、光を「見る」だけでなく、光を「育む」体験にも、私たちが共有したかった『わくわく』が確かに存在すること、そしてそのプロセス自体にこそユニークな楽しみがあることを、確信することができました。
  • 『手前味噌プロジェクト』で、私たちが知りたかったこと。 それは、「目に見えない常在菌という存在を、手前味噌作りという体験を通じて実感すれば、ミクロな世界の豊かさや、自分と自然との繋がりを感じられるのではないか」ということです。そのために、2008年の科学論文をヒントに、参加者自身を「実験サンプル」として、利き手と非利き手で味噌を作る、という少し変わった体験を設計しました。「私の手で味が変わるの!?」という驚きの声は、まさにミクロの世界が他人事から「私の物語」に変わった瞬間。これもまた、嬉しい発見の一つでした。
  • 『Science Cafe』に込めた、私たちの想い。 「科学の入り口は、壮大な発見だけではない。日常の小さな『なぜ?』に気づき、それを言葉にする場があれば、誰もが科学的な探求の第一歩を踏み出せるはずだ」。そんな想いから、答えを出すことよりも「問いを立てる」こと自体を楽しむ対話の場を作りました。カフェから生まれた「どうして空は青いの?」、「このモヤモヤした気持ちって、科学で説明できる?」といった大小様々な「問いの種」が集まりました。すぐに答えが出なくても、自分の疑問が誰かに受け止められ、面白がってもらえる。その体験が、参加者の心の中にある科学への壁を、少しだけ溶かしてくれたのではないかと考えています。集まったたくさんの問いの数々が、私たちの想いを裏付けてくれました。

このように、一つひとつの企画は、私たちの問いを探求するための実験として設計されていました。そうして得られた、皆さんの輝く瞳、驚きの声、そして無数の「なぜ?」。それこそが、私たちの問いへの答えであり、次の探求へと導いてくれる、何物にも代えがたい宝物だと思っています。

 

最後に 〜好奇心が導く、無限の可能性へ〜

あっという間の3日間。たくさんの「わくわく」が交差し、新しい「問い」が生まれる瞬間に立ち会うことができました。参加してくださった皆さんの笑顔と、キラキラした瞳が、私たちBioCraftの活動の原動力です。たったひとつの「楽しい!」という気持ちが、誰かの「科学って面白い!」という気づきになる。その感動の連鎖こそが、未来の新しい豊かさのかたちになると、私たちは本気で信じています。科学は決して遠い存在ではありません。これからもBioCraftは、皆さんが「わくわくする!」と感じられるような、斬新で創造的な「遊び」を科学の視点から追求し、お届けしていきます。

「BioCraftと一緒に遊びたい(実験したい)!」

そう思ってくれた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。また次のイベントでお会いできるのを楽しみにしています!


2025ナナナナ祭限定キャプションカード

 


顕微鏡で粘菌を観察中

 


実験手順を教えている風景

 


Kin-Kin」さんのそいりゅーから土を採取し、菌を培養しました。

 

今回のナナナナ祭のBioCraftの特設サイトとBioCraftのインスタです!ぜひご覧ください!またフォローもよろしくお願いします!メッセージもお気軽にください!
HP:2025ナナナナ祭BioCraft特設サイト
Instagram:@biocraftbanch

 

  1. TOP
  2. MAGAZINE
  3. 遊びと科学の実験室!わくわくが生まれる瞬間「遊び×サイエンス=実験室!」──ナナナナ祭2025を終えて

100BANCH
で挑戦したい人へ

次の100年をつくる、百のプロジェクトを募集します。

これからの100年をつくるU35の若きリーダーのプロジェクトとその社会実験を推進するアクセラレーションプログラムが、GARAGE Programです。月に一度の審査会で採択されたチームは、プロジェクトスペースやイベントスペースを無償で利用可能。各分野のトップランナーたちと共に新たな価値の創造に挑戦してみませんか?

GARAGE Program
GARAGE Program エントリー受付中

10月入居の募集期間

7/29 Tue - 8/25 Mon

100BANCHを応援したい人へ

100BANCHでは同時多発的に様々なプロジェクトがうごめき、未来を模索し、実験を行っています。そんな野心的な若者たちとつながり、応援することで、100年先の未来を一緒につくっていきましょう。

応援方法・関わり方