• イベントレポート

私たちは「寄り道」を提案する旅行会社です。人生を変える旅先を提案「未来旅行舎」─ナナナナ祭2023を終えて

旅行に行くとき、あなたはどんなことを考えますか?
こんなご飯を食べたい、こんな景色を観たい、こんなアクティビティをして、写真に納めたい…。何かしら「目的」を作って計画を立てると思います。

「宇宙はどこも、私のキャンパスだ。」を掲げ、「教室」以外でもおもしろい学びが得られることを社会に発信するプロジェクト「大宇宙大学」(University of Universe)は、ふつうの旅行とはちょっと違う、いきあたりばったりな「寄り道」を提案する「未来旅行舎」をナナナナ祭2023の2日間限定でつくりました。
「寄り道」の文化価値向上のために何をしたか、今後何ができるのか。振り返ってみたいと思います。

寄り道の価値向上。という方針の確定

こんにちは。大宇宙大学を主催する今村柚巴と申します。

私たち大宇宙大学は「寄り道」の価値向上のために活動する団体です。

全ての行動に「目的」や「ゴールからの逆算」が求められ、「無目的」の価値は低いまま。私たちはそんな現状に問いを立て、更にその中の「移動」に注目しています。

例えばパリのエッフェル塔を観にフランスに行く。Instagramで可愛くて有名なカフェを調べて、Googleマップで検索をして、その場に辿り着く。と言うようにいかに最短距離で、確実にいい体験が得られる場所に辿り着けるか。を念頭に置いた移動が通常な中、

ふらっと本屋さんに行く、なんとなく大回りしてみる。と言うようにあえて目的がないような移動をすることで自分にとって想定外な変化が生まれていく。

そんな「寄り道」の価値を上げ、カルチャーとしていくためにさまざまな活動を行っています。

と、書きましたが。実は私たちの活動の中心が「寄り道」に辿り着いたのはこのナナナナ祭から。今までは「宇宙のどこでも学びが得られる学校である」という伝えたいテーマはあったものの、では具体的に何を伝えたい団体なのか?がフワフワしていまして。

「学校」ということでいろんな人を呼んで授業的なイベントを行ったり、地方でワークショップを行ったり。色々やってはいるものの、いまいち伝えたいことがぼんやりとしていて、一向に前に進まない状態が長く続きました。

しかし今回、ナナナナ祭に出展する準備を重ねていく中、私たちの伝えたい「『目的なんて持たずに、本能的に新しい場に飛び込むこと』=寄り道」と、かなりシンプルにまとめることができました。

活動に一本串が刺さると、自分たちは何を伝えたくて、その為には何をしたらいいのだろうか。が明確になります。

「寄り道」という拠り所になる言葉を定め、この感覚を身を持って体験できたことが私にとってはナナナナ祭の一つの進歩だったのではと感じています。

反対に、言葉がわかりやすくなった分、何でもかんでも「寄り道」という言葉に頼ってしまう危険性もあると思います。その為常に「寄り道って何なのか」を問い直して言語化し続けないとなとも思っています。

ある意味、私たち自身も大きく寄り道をしながらここまで辿り着きましたが笑

 

寄り道を提案する旅行会社

さて、そんな私たちの活動の中心にあるものが、「人生のターニングポイントマップ」です。ちょうど昨年のナナナナ祭の時に開設した、自分の人生の転機を世界地図に短文エッセイ的なコメントと共にマッピングすることのできるWebサイトです。

前回のナナナナ祭ではWebサイトリリース期だったので、まずは使ってもらう為にいろんな方のターニングポイントをインタビューしてストーリーに変換し、投稿します!というブースを作りました。(その時のレポート記事

Webサイトはある。では今年は何をしたらいいか?あーでもないこーでもないと議論を重ね、(最初は思い出のお弁当作るとか言ってた気もする)「やりたいことができる旅先じゃなくて、在りたい状態に近づける寄り道先を提案する旅行会社は?」という案が生まれました。

「人生のターニングポイントマップ」をつくって一年。「寄り道」というコアメッセージも定まらない中でもたくさんの人にお声かけして、約250投稿集めることができました。

この度、改めて寄せて貰った投稿を見ると、「何をしたから・何があったから楽しかった!」と言うよりは、「この体験をした結果、この考えに至った。こんな想いになった。」という感情を中心にした投稿が多く、いい意味で抽象的なエピソードが中心だったのです。

(左)とある投稿     (右)投稿のハッシュタグ(#)キーワード一覧。「生き方」「安心感」というように抽象的なキーワードが多い

 

改めて、これこそ「寄り道」で大切にして欲しいこととして伝えたいことだな。と。

私たちが提案したい移動体験は、どこに行くか・何をするかは最優先事項ではなく、なんとなく行きあたったものにまず飛び込んで・そこから何を感じるのか。そんな超絶後付けな移動の姿勢を、今のこのWebサイトなら伝えられるかも。

普通の、やりたいことができる旅行を提案するのではなくて(画像左)、自分の今の心の状態とか、悩みとかに近い想いを持った人をベースにした寄り道を提案する(画像右)

そんな、『あなたの人生を変える、寄り道を提案する旅行会社』という企画を行うことにいたしました。

 

意外な方からの「ありがとう」

今年のナナナナ祭の総括テーマは「一緒に遊ぼう」。とにかくお客さんの体験をつくり込んでリッチにする!ことが参加者全員共通の課題だった為、「未来旅行舎」というコンセプトに向けたブースもとにかく凝りました。

それこそ私がイギリスに留学中、旅行ついでに寄り道したドイツに留学していた建築系の友人、清水くんにブースを制作してもらい、とにかく大量の海外のお土産で飾り付け、いい感じにカオスで未来的な旅行会社が出来上がり。

二日間で合計60人強の人に足を運んでいただき、大学生から社会人、100BANCHで研修を終えたPanasonicの方まで。相棒の井上とともにカウンターに座りながらいろんな人の感情に向き合い、寄り道を提案していました。そんな中でもとあるエンジニアの方に「インスピレーションを受けた」と仰って頂けたことがとても嬉しかったです。

私たちの活動は、基本的に旅や移動が好き、という方がターゲットになってくることが多く、そのような嗜好を持っていない方に頂ける反応はかなり未知な点で、正直不安でも在りました。

しかし、一貫して「私たちは遠くへ行く旅を勧めたいのではなく、興味を惹かれた場所にふらっと立ち寄る、『寄り道』という行為を勧めたいのだ」ということを言い聞かし続けていたからこそ、このような嬉しい反応を頂けたのかと思います。

 

寄り道までのロジックが、マジックだった。

一点拘った点を挙げると、寄り道先の提案方法です。

私たちは

①お客さんの悩みや大切にしていることなど、パーソナルなことを聞く

②その方にぴったりなエピソードを「人生のターニングポイントマップ」から探す

③寄り道先を提案する

という流れでお客さんと向き合っていたのですが、この③の部分をできるだけ抽象的に、思いもよらないしよう。と決めていました。

例えば【①カレー屋さん巡りが趣味】な人に【②ニュージーランドのベトナム料理屋でホームステイした人】のエピソードを紹介し【③異国料理屋】を提案。

というように、お客さんの嗜好の中心にあって、本人さえも気づいていないポイントを見つけ出して、そこに近しいエピソードを選定。

「OOカレー屋」のように固有名詞で提案すると結局口コミサイトと同じになってしまい、寄り道が目的化してしまう為、「本屋、川、教会、有名な建築」というような抽象的な場所を提案しました。

目的地を定めるのではなく、いつか提案したスポットを見つけた時に「寄ってみる」と選択をするように。

最後に提案する寄り道先は、ナナナナ祭全体で配布しているキャプションカードに書き込むことで失くさず持ち帰ってもらえるようにした

 

この提案を完全に人力で行っていた為、属人的で偏った提案しかできなかったらどうしよう、と正直かなり不安でした。

しかし蓋を開けてみると「相談からエピソード、寄り道先の提案までのロジックが、マジックみたいで面白い」と仰って頂けました。今回案内人を行ったのは私と相方の井上ですが、当然全く別の人生を歩んできた別の人間です。「人生のターニングポイントマップ」に投稿されたエピソードは同じでも、それを見る私たちが別の発想を持っていて、さらにそれをお客さんに伝えて。

一つの地、一つのエピソードが二次的、三次的に伝わっていくことで少しずつ解釈が分裂していく。感情優位の「寄り道」だからこそ生まれる感情の変化だと思うと、かなり興味深いし何か新しいことのきっかけになるような発見ができました。

 

#大宇宙大学の今後

このナナナナ祭を通してとても興味深い実験ができました。

それと並行して寄り道文化醸成のために、私たちは次にどう進むのか?を現在進行形で考えています。

ただ、一つだけ決まっていることは

「商業として稼げる方法を作って多くの人に響かせる。という方法ではない」

だろうという点です。

どう足掻いても私たちが薦めるのはニッチな考え方です。それを一般的に広げられる方法や仕組みをつくることよりまず、このドニッチな部分を突き詰め、貫いていく方が私たちの求める結果に繋がるのではと考えております。

ただ、内輪だけで楽しみたい、というつもりは毛頭なく。

ではどのように面白がって貰えるか?社会的に理解される形にするのか?

の手段を現在試行錯誤しています。

その実験の第一号として、『ナナナナ祭で得られた寄り道の考察をガチで行う』という実証実験・メディア化を8〜9月に行う予定です。今後しっかりと内容を固め、告知をしていく予定ですので、巻末のアカウントをフォローしていただけると幸いです。

総じて!毎年ながらナナナナ祭は大宇宙大学の変態を起こす一大イベントです。

いやー疲れた!しんどいしんどい!でも気持ちいい!

今後とも、大宇宙大学をどうぞよろしくお願いいたします!

 

筆者Twitter→(@yuzu_milk_ice)

大宇宙大学Twitter→(@daiuchudaigaku)

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