• イベントレポート

ナナナナ祭で発展させた、プログラミング教室の未来ープログラミングで落語を作ろう

GARAGE Program採択プロジェクト「Teenet」のメンバーは2020年春より、個別指導のプログラミング教室「ClipperLabo」を始めました。そこではプログラミングを通じて様々な子どもの可能性を発見する教室をオンラインで実施しています。

一方、最年少落語家の桂枝之進氏は、今まで娯楽の主流であったテレビと比べ、これから発達するインターネットメディアは落語と親和性が高いであろうという着目から、次世代カルチャーとしての落語を作る活動をしています。

ー桂枝之進氏が推進する「Z落語」と Teenetの新たな取り組み「ClipperLabo」ロゴ

そこで、ClipperLaboと桂枝之進氏との共同プロジェクトとして、未来のプログラミングと落語の学び方・楽しみ方を探求する実験『プログラミングで落語を作ろう』というオンラインワークショップを、ナナナナ祭2020の7月24日と7月26日に実施しました。当日の様子と今回得られた気づきをTeenetプロジェクトリーダー・柳川 優稀がレポートします。

 

オンラインで実施して気づいた準備不足と発見

今回は、マサチューセッツ工科大学が教育向けに開発したScratchというソフトを使用しました。Scratchで表現する落語の作品は、小咄という中でも『起承転結』がわかりやすいものを使いました。

7月24日公演では『ネズミ』『モンキードライバー』『片目』という小咄を桂枝之進氏に実演して頂き、聞いた情報を元に一つひとつの場面をプログラミングにする内容で実施しました。

実験キットとして参加者の皆さまに事前配送させて頂いた扇子の組み立てキットで、Scratchで制作したアニメーションのひとコマを扇面に貼り付けてもらい完成させてもらいます。

しかし、1時間という限られた時間の中でプログラミングを組み立てていく事は難しく、初めて耳にした作品をその場で情景化させるためのお手伝いを、大人数で進めるためのノウハウと準備が不足していました。初日は実際に作品を作るところまでいたることができなかったのです。

そこから、基本的なプログラミングの知識を説明すること、参加者のフォローができるようなチーム作り、そしてわからないことを気軽に聞ける雰囲気、が必要だということに気づき、プログラムの大きな見直しを図りました。

この場を借りて、7月24日公演で万全のワークショップをご提供することができず、お越し頂いた皆さまにご迷惑をおかけしたことを心からお詫び致します。

 

万全のアップデートを加えて臨んだ2日目

ClipperLaboチームは7月26日公演に向けて、プログラミングと落語の魅力を2時間という限られた時間で楽しんで頂くために、大きく内容の修正をしました。

まず、プログラミングで作って頂く部分を「小咄全体」から、「小咄のオチだけ」に変更しました。オチとは小咄の最後に当たる部分で、『起 承 転 結』の『結』となる、笑いの要素を生み出す部分のひとつです。

つまり、小咄の情報を元にどういう情景が最後に待ち受けているのかを想像し、それを作り上げることに注力しました。

そして、Scratchのブロックにも大きな変化を加えました。

今までは、Scratchに標準で用意しているブロックを中心に作品を構成していましたが、一つひとつの動きをまとめたブロック、つまり関数ブロックを使うことで動きを簡略化させました。これによって、当日の説明量を減らして、作品作りに取り掛かって頂くことができるのではないかと考えています。

そして迎えた2日目当日。

桂枝之進氏の自己紹介と落語の説明、皆さんにあえてマイクをONにして頂くことで、笑い声を共有し合いながら皆さんとの緊張感を和らげることができました。

また、落語のオチの面白さや深みについて説明して頂きました。


ーScratchを使った基本的なプログラミングのハウツー解説時の様子

その後に、Clipperの佐藤からプログラミングで映像作品を作る事例としてCGという技術があり、コンピューターがイラストの動きを計算して作るという事例があること、Scratchを使った基本的なプログラミングのハウツーについて解説しました。

ここから講師1名と参加者のみなさま2名づつに分かれて実施しました。

ここから各自作業で、参加者の方が各々思い描いたオチを考えていただきます。

制作終了後作って頂いたオチ作品はScratchのコミュニティサイトにアップロードして頂き、誰でも見て頂けるような形で公開して頂きました。

このイベントで公開された作品は下記のURLより実際に見て頂くことができます。

https://scratch.mit.edu/projects/413462272/remixes/

 

ナナナナ祭で発見できたwithコロナの学びとその設計

この2回の公演を通して、私たちが痛感したことはプログラミングという概念の共有の難しさです。私たちはもちろん、教室の生徒さんも何度か参加し続けているうちにScratchなどの操作について理解することが出来ます。

ところが今回のように初めてScratchに初めて触れて、かつ2時間以内にモノを作らないといけないという場面において、いつもの教室のようなスピード感で物事を進めること、コミュニケーションを取ることがいかに難しいことであるかを実感することができました。

さらに、今回は当初の目標であったお子さまよりも多くの大人の方にも参加して頂くことができました。これによって『落語×プログラミング教育』というコンテンツが子供の教育コンテンツだけでなく、新しいエンタメとしての魅力があるということを発見することもできました

親も子も、落語が好きな大人も一緒に体験できる “学び×エンターテイメント”として、おうち時間を家族で楽しめる教育コンテンツとしての可能性を秘めているのではないかと考えることが出来ました。私はこのことからも、プログラミングやプログラミングツールが、何かをする上での目的ではなく、何かを知る、楽しむ、勉強するための手段の一部として使われる100年後の未来を思い描いて引き続きプロジェクトを進めたいと考えています。

■関連リンク
・リーダーインタビュー:Teenet 柳川優稀:高校生が考える次世代の教育、中高生の学ぶモチベーションを高める「学びと実践」の一本化

 

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