EVENT REPORT

2020.08.24 Mon

妄想と現実の狭間を楽しむ!「テクノロジー大喜利〜好奇心王国」開催レポート

  • #ナナナナ祭2020

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  • #ENTERTAINMENT

お題に対して参加者がめいめいに回答する大喜利は、日本テレビの『笑点』やフジテレビの『IPPONグランプリ』などで、お茶の間にも浸透しているお笑いコンテンツのフォーマットのひとつです。

そのフォーマットを、企画会議や交流を目的に活用したら——。

「Omoracy」プロジェクトはナナナナ祭2020で、先進技術に関するお題が提示され、アイデアのユニークさで交流するイベント「テクノロジー大喜利〜好奇心王国」を開催しました。

今回のイベントでは、通常のユーモア性(ボケの面白さ)の優劣による競技的な側面が強いものではなく、実用的なアイデアやくだらないアイデアをも含めることによって、アイデアを発想すること自体をアクティビティと位置づけ、参加者同士の交流へとつなげました。

Zoomを用いて計5回を開催。計33人が参加し153個ものアイデアが生まれたこのイベントを、「Omoracy」のリーダー・野々村 哲弥がレポートします。

 

「テクノロジー大喜利〜好奇心王国」はバンジージャンプ等の体験型アトラクションにより好奇心を育むプロジェクト「Omoracy」が企画。その背景にあったのは、ニューノーマルに移行する私たちの生活に生じた「能動的にワクワクしに行く体験機会の減少」と「人と人との新たな出会い機会の減少」への課題意識でした。

 

今、オンラインでのコミュニケーションは目的志向になりがちです。例えば囲碁、将棋、チェス、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)等のオンラインゲームの場合、コミュニケーションはゲーム上の目的で交わされるものに留まるため、関係性がそれ以上に発展することはあまりありません。

また、人と人とを直接繋げるマッチングプラットフォームの場合でも、互いの損得や利害関係が前提となり、関係性は相互の想像の範囲内に制限されます。それらはあくまで目的志向の人間関係であるため、役割と役割での合理的な人間関係に留まってしまい、個性と個性が混じり合うことで可能性が無限に広がるような、いわば物語的な人間関係が育まれづらくなっているという実感がありました。

 

そうした課題をひとまとめに解決する方法を考えていたところ、能動的なアクティビティでありながらも、参加者同士のパーソナリティが相互に伝わり合える内容として「くだらなさで交流する大喜利」というキーワードが浮上しました。更に、参加者の興味が近しく絞られるようなテーマ設定が必要だと考え、現実を舞台にしたワクワクの想像機会を提供したいという思いからお題を“テクノロジー縛り”としつつ、イベント参加者の交流の場もセットとなるような全体像を設計し、ナナナナ祭でのオンライン企画をキックオフイベントと位置づけました。


アイデアを発表するという行為は、場合によって恐怖や不安を伴う一方で、自己表現の楽しさをもたらします。そして何より、予期しない爆発的なアイデアが生まれた時には、中毒的な爽快感すら芽生える。

 

大喜利のフォーマットでは発言がいわばターン制となり、フリースタイルの会話と比べると通信の遅延ストレスを低減するメリットがあります。それを見据えながら、この取り組みがこれからのニューノーマル時代におけるオンラインイベントやオンラインコミュニティの在り方の一つであるという思いから、本企画を開催しました。

参加者には事前にフリップボードと、イベントで使用するお題の書かれた”しおり”を届けました。フリップボードはグッズ的要素を付与することによって参加者同士の一体感を生み出すべく「好奇心王国」のロゴを彫刻。しおりは見知らぬ人間関係の中でアイデアを発表する不安やストレスを少しでも軽減できるよう、事前に大喜利のお題を伝える形式をとりました。(事前に伝えたお題はイベントで使用する3問中の2問)。

 

参加者に送られたキット

 

また、イベント当日は、参加者が他者へのリアクションをエモーショナルに伝達できるWEBアプリケーションも制作。キーボードのタイピングによりハートマークや爆笑マークなどのアニメーションを表示させることができ、参加者はパソコン等でZoomとWEBページの2画面を表示させながら大喜利に挑みました。

 

クリックやタップだけでなく「キーボードの打鍵」でも操作できる点がポイント(制作協力:柳川優稀、taka83)

「扇風機」ならぬ「おならプゥ機」。

 

これは、「進化の方向性、間違ってない? ネットで話題になった新型スマート扇風機、どんなの?」というお題に対する30代女性の回答で、「おならプゥ機」の近くでおならをすると、嫌な匂いを分解して爽やかな風に変えてくれるというもの。「おならプゥ機」は、この女性が恋人と過ごした時のある経験から着想を得たものだと伺い、アイデアから発想した人のバックボーンを感じさせてくれます。

この童心をくすぐられるようなアイデアに参加者一同は爆笑の渦に。そして、我も我もとフリップが上がり、参加者はアイデアの発散を楽しみます。

 

 

この他にもイベントで生まれたアイデアは一つ一つがどれもきらめいていました。その一部をご紹介いたします。

 

この視点需要ある?でもちょっと気になる新作VRとは?

「アイドルにポカポカされるVR」

「プリンの上に乗れるVR」

「家の排水溝探検VR」

 

「進化の方向性、間違ってない?」ネットで話題になった新型スマート扇風機、どんなの?

「風力発電式の扇風機」

「『ワレワレは…』って語りかけるとNASAにつながる」

「蚊取りぷうき」

 

え?最近のペッパー君、こんなことするの?なんだかちょっと怖い…。一体、何をしていた?

「ハローワークに通っていた」

「電車の運転手」

「Siriに天気を聞いていた」

 

世界一位になったスーパーコンピューター富岳、そんな計算させる?どんな計算?

「愛用のペンのインクが無くなるまでの時間計算」

「リモートワークOKになった社員に支払うべき交通費の計算」

「適切なタイミングの『終わり方』」

 

「あっ、その手続きならマイナンバーカードをピッとして頂くだけで十分ですよ!」さて、どんな手続き?

「ピッとするとネット上の黒歴史を白歴史にしてくれる」

「ピッとすると『本当に俺の子か?』を確認できる」

「ピッとすると自叙伝を書いてくれる」

 第4回目開催分の記念撮影写真/フリップは参加者が印象に残った回答

 

参加者のアンケートによると、イベントの参加動機(複数回答可)は「アイデアを考えることが好きだから」が80パーセントと最も多く、次いで多かったのが「参加者同士の交流を楽しめそうだと思ったから」の38パーセント。参加後の満足度は「非常に満足」が38.1パーセント、「どちらかというと満足」が52.4パーセントでした。

 

お題の内容については、現実的にも空想的にもアイデアを発想できる問い掛けが功を奏したのか、95.2パーセントが「楽しめる内容だった」と評価。しおりで事前にお題の2問が出題される点については66.7パーセントが「適切だった」と回答しました。

 

また、イベント当日には、参加者同士で連絡先を交換したいとの要望もあがり、アイデアを発想するアクティビティから、参加者同士の交流に繋げるという狙いは一定の成果を挙げたと言えそうです。

結果的には一定の評価をもらえたイベントになりましたが、順調なことばかりではありませんでした。もともと私たちはオンラインイベントの運営ノウハウの蓄積がなく、交流会でもありワークショップでもありショーイベントでもあるような「参加型アクティビティ」を手探りで形にしていき、回を重ねるごとに運営方法の改善を重ねていきました。

 

例えば、見知らぬ人間関係の中でアイデアを発表するという、いわば「緊張感を伴うアクティビティ」に参加者は向き合うため、いかにしてリラックスムードをつくるかは大きな課題でした。実際にイベントをやってみると、笑いの生まれたりやアイデアが膨らんだりするような起点となる回答が出ることによって、リラックスムードが仕上がり、場の空気が盛り上がってくることが分かりました。

しかし、そのような回答は最初から期待できるものではないため、スタート段階では、参加者一人ひとりの回答に対するハードルを下げることが最も重要になります。そのために主催者とMCは参加者に「回答は何でもOK」と案内することはもちろん、回答を全肯定するスタイルで進行、そして何よりポイントとなるのは参加者に回答してもらうことでした。

つまり、一人ひとりに対して気楽に回答をするように促す「テンポ感」をいかにつくるか、がスタート段階でのリラックスムードづくりで最も肝要となる。ここは主催者とMCの役割分担と進行の取り回しでしか解決することができないため、その難しさを肌身で感じながら、間の繋ぎ方や回答への対応の仕方など改善案を試行錯誤し続けました。

 

また、参加者同士の交流を生み出す目的から、イベント終了後は希望者を募りバーチャルビデオチャットツール「Spatial Chat」を使った二次会を開催。個別の交流を生み出しやすくする狙いから、画面上の距離の近い人とのみ会話することができるこのツールを選びました。

しかし、イベントの3回目までは「Spatial Chat」に移行したものの、1つの話題を全員で共有するスタイルになってしまい、活発な交流が生まれませんでした。そこで、4回目以降は、参加者同士が1対1で複数人と話せるスタイルになるよう工夫し、この方法に対して参加者から肯定的な評価を得ることができました。

 

テスト時の「Spatial Chat」の画面/フルーツバスケットのように一人ひとりが惑星に散らばり、3分間のトークを繰り返した

イベントの初回は &Co 代表取締役でTokyo Work Design Weekオーガナイザーの横石 崇(よこいし たかし)さんと、朝日新聞社マーケティング部次長の鵜飼 誠(うかい まこと)さんをゲストを招き、「好奇心王国」のFacebookページからLIVE配信も実施しました。

 

横石 崇さん

 

鵜飼 誠さん

 

おふたりには参加者から飛び交う個性的なアイデアについて、面白さや実現性などを講評するコメンテーターとしてご出演いただきました。

 

イベントを振り返り鵜飼さんは「出てくるアイデアの背景に、その人のバックボーンが反映されている点が面白い」と話し、「今後はあまり内輪の価値観で突き進み過ぎないよう、外部と接続しながらコミュニティ運営して掘り進めて行くと可能性が見えてくるかもしれない」とコメントしました。

 

一方、横石さんは「『好奇心王国』はムツゴロウ王国を目指すと良いのでは?」と提案。「動物を愛でるムツゴロウさんのように、『好奇心王国』の国王が参加者や奇妙なアイデアを愛でる姿を外部に発信していくことで、ムツゴロウ王国に勝ってください(笑)」とエールをいただきました。

 

運営方法に慣れずトラブルにも見舞われる中ではありましたが、ゲストの後押しでこのイベントをスタートさせることができ、LIVE配信は約300回ほど視聴されました。

 

今後の「好奇心王国」に必要なことは様々な試行錯誤で改善を繰り返しながら社会への広がりやインパクトに繋げていくことであり、それを成し遂げられるかどうかについては、今後の運営の舵取りに成否が委ねられると実感しています

 

今回、全5回のプログラムに33人が参加してくれました。この人数は決して多くはないかもしれませんが、この取り組みに興味のある人へは確かに届き、参加者に満足感を生み出せたことは非常に大きな成果だと捉えています。

 

参加者からもこのような声が集まりました。

 

「自由に好奇心を伝え合うスペースって素敵だなぁと思います」

「予想よりも面白かったです!!!!」

「改善しながら継続されていくことを期待します!」

 

こういった外部評価は、正にやってみなければ得られないもの。私たち自身、形にすることで初めて主観的な視点で構想と成果物を比較し、自己評価をすることができました。今回はあくまで実験段階であり、イベント運営の精度も決して高くはありません。しかし、ハッとするアイデアが出てくる瞬間や腹のよじれるほど笑える瞬間は確かに生まれ、交流へと繋がったことに、私たちは手応えを感じています。そして、オンライン上でアクティビティを共有することにより構築されるコミュニティは、これからの時代に大いなる役割を担うかもしれません。

 

「テクノロジー大喜利」はあくまで手段となるアクティビティであり、私たちがこれから育てていくべきは「好奇心王国」というコミュニティのだと考えています。「好奇心王国」の目的はイベントで興行収入を挙げることではなく、アクティビティを通じて交流を生み出し、社会を面白くして一人ひとりの人生を豊かにすること。そのように広く捉え、ユニークなアイデアを面白がる一人ひとりが、より面白い人生を過ごせるような未来にしたい。この考えのもと、私たちは「テクノロジー大喜利」で出たアイデアを実装して世の中に発信するというアクティビティをスタートすることも決めました。今回のイベントの参加者から有志が集まり、これから関係人口も増やしていきます。

 

社会は常に変化を重ねながら部分的に膠着化していきますが、「こうなったら楽しい」という一人ひとりの面白がりな好奇心が今よりもっと輝く——。そんな「好奇心資本主義」とも呼ぶべき未来への一歩がこのナナナナ祭で踏み出されたのかもしれません。

 

「テクノロジー大喜利〜好奇心王国」は、今年のナナナナ祭を皮切りにオンライン大喜利イベントとしてスタートし、今後は実験的に月1回のイベントとして続けていく予定です。また、テクノロジー大喜利で出たアイデアを実際に形にして世の中に発信するオンラインサークルも実験的に立ち上げます(8月スタート予定)。私たちの取り組みに興味のある方は、ぜひこちらのサイトをご覧ください。

 

「テクノロジー大喜利〜好奇心王国」Facebookページ

https://www.facebook.com/tech.oogiri/

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■サイケデリックエクソシズム

生物とコンピュータ、はたまたコンピュータを介した生物と人間の関係性を考える世界観「Biopunk(バイオパンク)」を届けたい。

 

レポート公開中:ゴキブリのお香と映像を駆使し、メディアアートの新しい体験・鑑賞・形態の可能性を探る

 

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WRITER

野々村 哲弥

リーダー

1984年、兵庫県川西市出身。 同志社大学卒業後、(株)ジャパンエフエムネットワークに入社しラジオ営業や番組制作や新規事業(中国向け広告)等幅広い業務に携わる。 2018年、独立しomoracyを始動。人間心理の研究をベースとした「面白い」「新しい」体験型アトラクションの開発に着手している。

#ナナナナ祭2020