EVENT REPORT

2020.02.13 Thu

大切にしたいことを、大切にするために:実験報告会〜未来を変える若者のビジョン〜

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Garage Program※採択メンバーが集まって、100BANCHでどんな活動をしているのかを話す「実験報告会」。毎月、集まったメンバーに共通するテーマでクロストークを行っています。

2020年1月末に開催した実験報告会のテーマは「未来を変える若者のビジョン」。

ビジョンを持ち活動する4人に集まってもらい、100BANCHのオーガナイザー 則武里恵がモデレータとなりお話を伺っていきました。

 

<登壇プロジェクト>

・「最新技術を用いて「着物」を未来につなげるための環境作りを」

KISABURO KIMONO Project
キサブロー
創業90年の仕立て屋「岩本和裁」4代目。日常的に着ることの少なくなった着物の未来を創るため、新素材を用いた着物、ワークショップからつくる着物などを提案。

 

・「福祉施設に所属するアーティストを”講師”として招く人生美術館」

HERALBONY(MUKU)
松田崇弥
福祉施設でアート活動をしている人たちの作品をアーカイブ、社会実装していく取り組み。世界初、知的障害のある人のアートを扱うクリエイティブエージェンシー。

 

・「世界初のコオロギラーメン専門店を開業し、先入観を打破したい!「食は、冒険だ」」

Cricket ramen
篠原祐太
昆虫食への固定概念を払拭しその魅力を伝えるために、コオロギラーメンなど昆虫をおいしく食べる料を開発。2020年春、店舗オープンの準備中。

 

・「「数式」をアートし、数式だけの美術館を作る!」

Physics As Art
加藤雅貴
数式をメディアアートとして捉え、かっこよさを伝えていくプロジェクト。数式や基礎研究を身近に感じられるような活動を展開。

 

※これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム

 

(文:中嶋 希実、写真:鈴木 渉)

ー左から、100BANCHのオーガナイザー則武 / Physics As Artの加藤 / KISABURO KIMONO Projectのキサブロー / Cricket ramenの篠原 / HERALBONY(MUKU)の松田

 

クロストークの冒頭、則武から4人に投げかけられた質問は「プロジェクトは好きから始まった?それとも課題意識から?」というもの。楽しそうに活動する4人からは、意外な答えが返ってきました。

 

加藤:もちろん数式は好きです。だけどプロジェクトのはじまりは、どちらかというと義憤だと思います。今って大学院の博士課程に進む人が少ないんです。社会的なポジションが低いというか、自分が気持ちよく研究の道を進んでいくためにも、社会の固定概念を打ち壊していきたいと思っています。

 

キサブロー:私は着物好きに見えるかもしれないけど、実は大嫌いから入っていて。身体が女なので小さいころは花柄のものばかり着せられて、それがすごく嫌だったんです。だけど大学を卒業する時、おじいちゃんが着ていた羽織袴を着たらすごく気持ちが良かった。そこで逆に好きになりました。

 

 

則武:そういう経緯があったんですね。篠原さんはどうでしょう。

 

篠原:僕は虫が好きなんですけど、活動の原動力は憤りですね。前に、食品にゴキブリが混入した事件があったんです。僕からしたらあれ、オマケがついててラッキーって感じだったんですけど。異物が混入していたことが問題だとは思うんですが、途中から論点が「ゴキブリきもい」っていうことになっていて。ゴキブリには罪がない、不健全だと思って。自分が好きな虫だからこそ、違うなと思うことがいっぱいあって。そこに対して、自分なりにできることをやっていきたいと思っているんです。

 

松田:僕は兄が自閉症だったこともあって、母親が自閉症協会に出入りしていました。そこにいる人たちにかわいがってもらって育ったので、いつか関わるんだろうなと思っていて。

 

 

則武:前は別の仕事をしていましたよね。

 

松田:5年間、広告代理店で働きました。本当にやりたいことを考えたとき、今の活動をやるのが自然の流れで。先入観や常識がないからこそ再現できるアートがある。知的障害がある人のイメージを変えたいんです。

 

則武:みんなに共通しているのが好きっていう気持ちと、好きなものを知ってほしいという点ですね。イメージを変えていきたいっていうところがエネルギー源になっていることを感じました。

則武:イメージを変えたいとか、その気持ちを波及させていこうとすると、人の共感を呼ぶことも必要になってくると思うんです。好きなものを伝えて共感してもらうために工夫していることはありますか?

 

篠原:僕の場合は昆虫を材料に料理をしているので、共感を呼ぶというよりは、食べて「うまい」と思ってもらえたらそれがすべてで。言葉で言うよりも、五感に訴えられるのはパワーがあると思っています。

 

 

則武:確かに、味にストイックに取り組んでいますよね。100BANCHでも試作をしている姿を見かけました。

 

篠原:ここはどんなプロジェクトでも、自然と受け入れてくれるのがすごい。みんな「どんな味なの?」って興味を持ってくれて。僕が出す1杯が、食べる人にとっての昆虫食のイメージをつくってしまう怖さがあるんです。この程度かって思われてしまったら、虫に合わせる顔がない。おいしいものをつくらないとって思いますね。

 

加藤:僕は数式のかっこよさを伝えたいと思ってはいるものの、まだまだ手探りです。数式で豚の角煮を表してみるとか、幸せを数式で表してみるとか。身近なものを扱うことで、共感を呼ぶことができないかなと考えているところです。

 

 

 

松田:僕、アツシっていう友だちがいて。アツシは障害者をバカにするやつだったんですよ。だからアートとか福祉をどーんと立たせると、アツシは興味を持たないだろうと思うんです。ブランドものが好きなアツシにも手にとってもらうために、まずはクオリティを高めていいものをつくる。それを大切にしています。

 

 

則武:なるほど。クオリティにこだわったり、身近なものを対象に扱っているんですね。キサブローさんはどうですか?

 

キサブロー:着物って、かっちり着ないといけないとか、季節を意識しなきゃいけないとか、難しく考える人が多いと思うんです。だからあえてラフに着てみたりしていて。自分が先頭に立って変えていく、自分から「こうしてもいいんだ」っていうのを先に見せていくようにしています。100BANCHに入居してから、つくりたい着物の実験をしたりメンターの大島さんといろいろな工場に行かせてもらって。そうしているうちに、大きな仕事も引き受けられるようになってきたのが嬉しかったですね。

 

則武:行動で示したり、体感してもらえる状況をつくる。みんな言葉で伝えるわけじゃないというのが意外でした。

則武:では最後に。みなさんがやりたいことを見つけて、ビジョンを持って活動していると思いますが、どうしたらやりたいことに出会えるのでしょうか。

 

キサブロー:私、けっこう人生紆余曲折していて。仕事でボロボロになって、夜中、散歩していた時期があったんですよ。歩きながらいろんなことを考えて、妄想して。そんな時にふっとキサブローが降りてきたんです。

 

ーイベントの後半では実際に制作しているプロダクトに触れる機会もありました。

 

則武:なにがしたいか見つからなくて、悶々としていた時期があったんですね。篠原さんは小さいころから虫が好きだったと聞きました。

 

篠原:はい。好きなものを見つけてはいたんですけど、虫が好きっていうのを人に言えたのは19歳のころなんです。

 

則武:それまでは秘密だったんですね。

 

篠原:子どものころは、少しでもバレたらいじめられるだろうって思ってて。大学で世界が広がったことや国連が昆虫食についてのレポートを出すようになったこと。あとはずっと親が僕の好きなことを否定せずに、ずっと虫取りに連れて行ってくれていたことなどが話せるようになった要因だと思います。

 

ー昆虫を使った食品を試す来場者のみなさん

 

加藤:僕は高校一年生のとき、ニュートンの運動方程式の美しさに惹かれて。数式を解釈するために、ああでもない、こうでもないって試行錯誤するのは非常に辛い作業なんですけど、新しい見方を見つけた瞬間のために研究を続けています。

 

ー数式を使った「幸せの方程式」について説明する様子

 

則武:松田さんが今の活動を見つけたきっかけはなんだったのでしょう。

 

松田:僕の場合は家族っていうのが大きなキーワードで。兄がいて、母から知的障害を持った人たちのアート作品を見せてもらって。この活動をやろうって思ったとき、最初に電話で話したのが双子の弟でした。初期衝動が起きたら、家族に話すところから始まっていくこともあるんじゃないかと思います。

 

ー最後の懇親会では直接メンバーと直接コミュニケーションを取ることもできます。

 

則武:たしかに、人に話すことで動き出すこともありますよね。今日はみなさん、大切な話を聞かせてくれてありがとうございました。

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4人の動機、活動、掲げるビジョンはそれぞれですが、自分が大切にしたいこと、芯のようなものがはっきりしていることが共通しているように感じます。それぞれが100BANCHで取り組んできた活動は、仕事をつくるというよりも、大切なものをこれからも大切にし続けるための試行錯誤なのかもしれません。

自分が大切にしたいことに挑戦し続けたい。そんな活動が100BANCHにこれからも増えていくことが楽しみです。

<次回実験報告会>

実験報告会 サスティナブル・フューチャー 〜これからの共存共栄〜

日時:2020年2月26日 19:30〜21:30(開場19:00)
参加費:500円・ワンドリンク付き(35歳未満の方は無料)
場所:100BANCH 3F
URL:https://100banch.com/events/24256/

 

大量生産・大量消費の時代は終わり、これまでの問題や社会課題を解決して行くチェンジメーカーの動きも現れています。100BANCHで活動するプロジェクトのリーダーはSDGsネイティブ。これからの未来を持続させる事を前提に活動しています。

イベント前半はそんなメンバーがどうこれからの社会を捉え、プロジェクトを実行してきたかを、100BANCHでの実験的活動を交えながら紹介します。そして、今後の野望についても語っていきます。後半は、それぞれプロジェクトごとに分かれメンバーと座談会形式で参加者のみなさんとのディスカッションを行います。また、GARAGE Programのエントリーを考えている方の個別相談も行ないます。100BANCHに興味があるから見てみたいという方はもちろん、座談会でメンバーと話してみたいという方も大歓迎です!

 

【ゲスト】

・大山貴子 Food Waste Chopping Party
・高倉 葉太 inoca
・Hannah Ogahara London Charity Shop 2119 – Love Charity ♡ Tokyo
・佐藤 飛鳥 ORDERING SYSTEM for aged person

WRITER

中嶋 希実

編集・チャイ屋

東京と茨城を行ったり来たり。話を聞いたり、書いたり、動かしたりしながらいくつかのプロジェクトに関わっています。ときどきチャイ屋「きみちゃい」をひらきます。

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