• イベントレポート

購買は「意思ある選択」に:実験報告会~未来のSHOPPING 消費から共感へ~

GARAGE Program ※の採択メンバーが集まり、100BANCHでどんな活動をしているのかを話す「実験報告会」。毎月、集まったメンバーに共通するテーマでクロストークを行っています。

2019年12月25日のテーマは「未来のSHOPPING ~消費から共感へ~」。
100BANCHの松井 創(100BANCH発起人/運営責任者)がモデレーターとなり、未来のショッピングのあり方について、プロダクトを扱う3人に話を聞かせてもらいました。

※これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム

登壇プロジェクト

・「『伝統』『文化』の形はひとつじゃない日本茶を、もっと自由に楽しむために。」NODOKA- ORGANIC JAPANESE TEA 洪 秀日

・「『忘れられない女の子』になるための香水/メディアを通してあたたかい世界をつくる」Whom – Be unforgettable girl  桑原 沙也加

・「やさいの色彩や都市型農業の生産プロセスを通して、贈与経済文化の醸成・発信を目指す」YASAI no CANVAS 瀬戸山 匠

「ものを売る」と「共感を得る」のバランス

未来のSHOPPINGをテーマにした今回のクロストーク。モデレーターである松井からの質問は「『人にものを売る』ということについてどう感じてる?」というものでした。

Whom – Be unforgettable girl 桑原 沙也加

桑原:私はもともと、親にすら何かを買ってと言うのが苦手な子どもだったので、人に商品を買ってくださいと言うことに抵抗がありました。でも今は買ってもらわないと成り立ちません。

私の場合、実体験を元に「こんな香水があったらいいよね」と何気なくSNSに投稿をしたことがきっかけで、プロジェクトの立ち上げとなりました。その点では、なぜ香水を作っているのか、というのを説明できる分、売りやすいと感じます。

NODOKA- ORGANIC JAPANESE TEA 洪 秀日(中央)

洪:自分は、特にプロジェクト立ち上げ段階は「ものを売る」というより「共感を得る」というプロセスでした。プロジェクトの背景や、日本茶の生産者の局面を説明し、共感をしてもらう。そうすると自然に資金は集まってきました。

しかし、より一般の方々へ広げていく際には、「売れるかどうか」ということを考える必要も出てきます。たとえばバイヤーの方や小売店の方々と関わる局面で、立場によって重きをおく部分が違ってきます。「売る」ことの難しさを感じますね。

YASAI no CANVAS 瀬戸山 匠(右)

瀬戸山:僕も、100BANCH入居前から商品は販売をしていました。パン屋さんやカフェにどんどん商品を卸して、置いていただけるようになるにつれ、「売れるためにどうしたらいいか」ということを重視して考えてしまう自分が怖くなったんです。もともとは思いがあって作っていたはずなのに、「このままでいいのか」と思ったのがGarege Programに応募した背景でした。

100BANCH運営 松井 創

松井:コミュニケーションコストをかけ、ストーリーをきちんと伝えた上で買ってもらう方法と、多くの人に届けることのできる卸販売などの方法。どちらに重きを置くか、難しいところですね。

洪:売上でいうと卸販売、そのうち直販ではなく店舗に置いてもらって販売する方が売上金額が大きいです。しかし、リピート率だと圧倒的にクラウドファンディングの頃からSNSで応援してくれているような方々の方が多い。

桑原:SNSでフォローしてもらうことと、商品を買ってもらうことは別だと思っていて。そのあたりが難しいところなのですが、SNSの文章を見たことがきっかけで、買いに来てくださる方が全体の1割程度いらっしゃいます。「共感」を得ることで、根強いファンがいてくださるのは大きいですね。

瀬戸山:今まさにその葛藤の渦中にいます。ものが売れないと成り立たないけれど、本質を持っていないとプロダクトアウトになってしまう。100BANCHの他プロジェクトのメンバーにも色々相談に乗ってもらって、「食」を「消費」から「楽しみ」にできるのではないかと考え、「体験・コミュニケーション」を重視する方向へ、切り替えようとしているところです。

「NODOKA- ORGANIC JAPANESE TEA」のプロジェクトページはこちら

「Whom - Be unforgettable girl」のプロジェクトページはこちら

「YASAI no CANVAS」のプロジェクトページはこちら

商品そのものも、妥協しない

松井:たしかに、ストーリーや思い、背景を伝えることは大切ですね。しかし、まず商品の品質、特に食品を扱う2つのプロジェクトは「美味しい」というポイントもかなり重要になると思います。

洪:「美味しい」ということには凄くこだわっています。美味しくないと、そもそもリピートしてくれませんし、自分としても「良いものを届けたい」という意識があります。それに、入り口はポップでいいと思っていて。「あ、パッケージかわいいな」と手にとってもらって、それが美味しく、実は背景にストーリーもある。そういう仕掛けをもっと作っていきたいと思っています。


NODOKA- ORGANIC JAPANESE TEAの洪 秀日が販売する「NODOKA- ORGANIC JAPANESE TEA

瀬戸山:僕も美味しさには非常にこだわっています。ただ、やってるうちに自分で食べていても「何が美味しいのか?」というのが分からなくなることがあります。
100BANCHのメンバーと一緒に試食していても、ある人はAが美味しい、別の人はBが美味しい、となってしまうこともあります。味覚は人によってそれぞれ違うじゃないですか。

ただ、ストーリーと比べて「美味しさ」にはある程度の普遍性があるとは思っています。そこにどう落とし込めるか、まだメカニズムが分からなくて苦労をしているところです。

YASAI no CANVASの瀬戸山 匠が販売する「Share Re Greenのやさいクリーム

松井:香水は特に嗜好性の高いものですが、どのような工夫をしていますか?

桑原:香り自体もすごくこだわっているのですが、パッケージやデザイン面もこだわって作っています。良い意味で、「香水っぽくない香水」にしようと。

香水売り場に行けば、欲しい香りや好きな香りはその中から十分選べます。私が作る意義は、私自身が以前香水を使わなかったからこそ、もっと日常に馴染むような商品を意識して作るようにしています。

Whom – Be unforgettable girlの桑原 沙也加が販売する「「忘れられない女の子」のための香水 12/30

 

「購買とは選択」買い手としての意思が宿る

松井:世の中に対して、期待する買い方や、買い手へ「こうなってくれたらいいな」と期待することはありますか。

瀬戸山:売り手からの一方的なわがままなんですけど、「どうしてこんなに、思いが伝わらないのだろう」とモヤモヤした経験がありました。

ただ思い直すと、買ってくださる方に変化してほしいというよりは、自分の思いを受け取ってくれる人へ届けられていないだけだと気づいて。発信力をつけて、世の中の求める人へ届けられるようになりたいと思っています。

洪:お金を払ってものを購入することには、すごく力があります。意識をする・しないに関わらず、購入することが企業やブランドに対しての応援になっています。

「選択」に対して「意思」が宿る。そのことを意識し、一度見つめ直してみることをおすすめしたいです。そうするとお金の使い方やものの買い方が変わってくるかもしれませんね。

桑原:私の香水を、人生で初めての香水として使うという方も結構いらっしゃいます。香水を身にまとうことで違う誰かになれる気がする、というのはきっとある。「買う」ということがただの「消費」ではなく、「自分を変える」という意識を持って、この香水を手に取ってもらえたら嬉しく思います。

 

未来のSHOPPINGのカタチとは? 価値基準とお金以外の選択肢

松井:未来のショッピングがこうだったらいいな、こんな形になるのではないか、というイメージはありますか?

瀬戸山:未来のショッピングでは、「選べる」ということが重要になってくると思っています。何を選べるのかというと、支払いの手段です。いまは「お金」しかありませんが、自分が提供できる何かや、協力など、いくつかのパターンの中から支払い手段を選べるようになっていくと思います。

お金って、結局支払ってしまったら終わりな関係。何かに参加する、何かを提供するというお金以外の選択肢があったほうが、ぐるぐる循環するような気がします。

洪:NODOKAのケースでも、対価を「体験」で受け取っていただいたことがあります。海外の方が茶園にいらしたときに、作業を手伝ってもらえるんです。その際に時給としてお金を支払うのではなく、「日本文化の体験」を対価として受け取っていただくのです。こちらは手が足りない、海外の人は日本文化を体験したい、というwin-winの関係ですね。

そして、金銭による売買の文脈でも「自分の軸」が大切になってくる気がします。何を良いと感じ、何を買うのか。30人いたら30通りの違いがあると思うので、良いと思う自分の基準をしっかりと持つことが大切なのではないでしょうか。

桑原:私も、基準が大事だと思います。自分の中に、これが欲しい、これは良い・良くないという基準を持つこと。以前に比べて、私の周りを見回しても「流行り」という現象が薄れてきている印象をもっています。みんなと同じ服を着る、同じものを持つということが少なくなってきているのではないでしょうか。

そんな時代になってきたときに、こういうものが欲しい、こういうものなら買おうという基準が1つあれば。それを軸にものを選ぶことができる。自分の基準があれば、売り手も買い手も心地よく買い物をすることができるのではと思っています。

—–

共感をしてもらうことで、応援の形で商品を買ってもらう。何気なく手に取ったものを買うことに意思が宿る。支払う手段もお金以外にも多様化していきそうです。

100年後の未来は、どのような景色が広がっているのだろう。興味をもったら、GARAGE Programに挑戦している人たちの姿を、一度見に来てはいかがでしょうか。

 

(写真:鈴木 渉)

<次回実験報告会>

実験報告会〜未来を変える若者のビジョン〜

日時:2020年1月30日 19:30〜21:30(開場19:00)

参加費:500円(35歳未満の方は無料)

場所:100BANCH 3F

URL:https://100banch.com/events/24256/

 

「一年の計は元旦にあり」という言葉をご存知ですか?一年の計画は年の初めである元旦に立てるべきであり、物事を始めるにあたっては、最初にきちんとした計画を立てるのが大切だということわざです。 その類語に「一生の計は少壮の時にあり」という言葉があり、少壮の時とは若くて意気盛んな時期のことで、青年期に生涯で為すべきことを考えておくべきであるという意味合いがあります。

100BANCHで活動するプロジェクトのリーダーは若くしてそれぞれ個性的なビジョンを掲げ、地図なき時代に共感する仲間を集めながら社会実装を進めています。イベント前半はそんなメンバーがどうビジョンを描き実行してきたかを、100BANCHでの実験的活動を交えながら紹介します。そして、今後の野望についても語っていきます。

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