マンガ×紙活字。活版印刷の次の100 年の可能性を発信していく。
Papertype × Manga
マンガ×紙活字。活版印刷の次の100 年の可能性を発信していく。
2019年7月30日、U35のリーダーと100年先の未来をつくるプログラム「GARAGE Program」の説明会とその報告会が行われました。
「まだ誰も見たこともない景色を作っていくのは、若者たちだ」
100BANCHではその思いに基づき、U35(35歳以下)の若者リーダーと100年先の未来を共創していくプログラム「GARAGE Program」を行っています。随時プロジェクトの公募を行い、審査を通過したチームはプロジェクトスペースやイベントスペースを無償で利用可能。「思う存分、活動に没頭できる場」として、100BANCHを活用することができます。
今回の実験報告会では、9のプロジェクトが自らの成果を報告しました。
登壇プロジェクト
この中から、自由な発想を持ち、活動の場を広げてきた3つのプロジェクトを、ライターの中田アツヤがピックアップ、それぞれの活動を紹介します。
Papertype × Manga 守田篤史
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/14813/
Papertype × Mangaは紙製の活版印刷である紙活字とマンガを融合することによって生まれる表現の可能性の拡張を目指すプロジェクトです。
近年の紙媒体はプリンターの普及等により大量生産が可能になる一方で、印刷や紙は「消耗品」となってしまったという現状があります。しかし、その流れは制作物の作り手としては寂しいものであり、人や社会、そして環境への配慮を倫理的に心がける「エシカル」な文脈で言っても好ましいとは言えません。
守田:活版印刷は、そもそもは大量生産のために開発された技術です。しかし時代が変わるにつれ、今では「1枚出しの超小ロット印刷に向く側面があるのではないか」と考えるようになりました。僕たちは昔の活版印刷から時代を経て、今の時代にふさわしい新しい活版印刷のアップデート」を提案する活動を続けています。
「紙活字を用いることで、他では表現できない独特の「表情」を文字そのものに加えることができる」と守田は続けます。
守田:僕達が開発した紙活字キットは、さまざまなテクスチャー(表面の質感・手触り感など)をつけることで文字そのものに新しい表現を加えることができます。このテクスチャーを異なる形に変えていくうちに「文字そのものでマンガを表現することができるのではないか」という考えに至りました。
会場のスライドには、実際に「異なる活字による印象の差」が映し出されていました。全く同じ言葉、同じ内容でも、印刷されている「活字」が違うだけで、その印象が恋愛モノになったりホラーモノになったりと、面白く変化をします。
なぜ「マンガ」で文字の心情を表現しようと思ったのでしょうか。
守田:まず「マンガを『心情を表現する記号』と仮定した場合に、心情表現した『文字』も、またマンガに成り得るのではないか」と考えました。例えばマンガを読んだとき、読み手は絵柄やセリフを見て、映像・シーンを頭の中で再現し、心情を持ちつつイメージを思い浮かべます。それは、文字を読んだときも同様のはずであり、文脈や内容によって、読み手はその状況を頭の中でイメージしながら、心情を思い描ける。紙活字とマンガの融合を図ることによって、受け手に想い起こさせる心情を変化させることができると考えました。
守田は、実際に同じ内容でありながらも異なるテクスチャの活字によって刷られた2種類の印字も紹介します。例えば、同じ「走り出した」という活字表現でも、前のめりに駆け出したのか、それとも恐怖をもって逃げるように走ったのかを想像することができました。活字のテクスチャが違うだけで、これほど異なる状況をイメージすることに驚きました。
さらに「メンターの存在も大きかった」と守田は語ります。
守田:メンターの山内康裕さんは僕たちと年齢が近く、そのおかげで遠慮のない関係が築けました。「プロジェクトとメンター」という垣根を越え、思う存分にメンターの力をお借りすることができたことも、このプロジェクトにとって大きな要素となりました。
Papertype × Mangaは、8月にその心情の面白さを体験できる「マンガ活字展」を行いました。
マンガ活字展
http://manganight.net/paper-type-x-manga-マンガ活字展/
紙活字とマンガによって広がる、表現の可能性。これからの彼らの活躍が楽しみです。
Chabu Dive 落合 元世
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/17075/
キャスターの付いた背の高い「ちゃぶ台」を自作して街へ繰り出し、ちゃぶ台という「場」を提供することで人々が多様性と触れ合う機会をつくり出す。Chabu Diveは、そんな新しいコミュニケーションの場を提供するプロジェクトです。
落合:みなさんは、今日街で会った人の顔を覚えてますか? 街には色々な人がいますが、そもそも接点がなく、そういった人たちと交わる機会がありません。でも、それって、もったいないですよね。そう感じたことが、このChabu Diveを立ち上げるきっかけでした。
Chabu Diveは100BANCHでの活動期間に、いくつかのイベントへちゃぶ台と共にダイブ——さまざまな属性の人が集まるイベントに、ちゃぶ台を持参し参加。ちゃぶ台を囲みながら参加者たちと語り合い、独自のコミュニケーションを生み出しました。
落合:まず、千葉県安孫子市のアートイベント「我孫子アートな散歩市」から招待を受け、当日は地元のパンや味噌などの特産品が販売されるなか、それらを楽しみながらちゃぶ台を囲み参加者たちと交流を図りました。
他にも6月に開催した「渋谷おとなりサンデー」に参加、7月には「渋谷の皆さんの願い事を集めています」と呼びかけながら、ちゃぶ台を引いて渋谷の街をまわる企画を実施。ちゃぶ台を囲んでくれた人たちと「令和の意気込み」「七夕にかける願い」などを語りながら、街中でのコミュニケーションを行いました。
Chabu Diveにはチーム内で「優劣や社会的地位、上下関係を意識しないようなコミュニケーションを実現したい」という共通意識があります。
落合:学生時代の僕は人と広く浅く、誰とでも仲良くするような関わり方をしていました。みんなと関わりたいと思いながらも、深くは関わることができれなかった。その体験から、「違いを越えてさまざまな人と関わりたい」「違いがあるからこそ理解しあえる関係を作りたい」と思うようになりました。その思いの延長で生まれたプロジェクトがChabu Diveです。
メンバー内では共通して「フラットなコミュニケーションを実現したい」との思いがあり、「それなら、街中で何かやってみよう」と考えがまとまりました。結果、上下関係や立場をなくした関わり方をするために「丸いものがいいんじゃないか」と考えたメンバーの一人が「ちゃぶ台」のコミュニケーションを発案してくれました。
今後について「僕たちはあくまで、フラットな関係性を実現するコミュニケーションに注力していきたいと」と落合。
落合:相手を知ることで「すごいなこの人!」とか「ありがたいな」など、一見では分からない姿を感じる事ができます。そんな「関係性」を担うプロジェクトを目指していきたいと思っています。
最後に100BANCHの活動をこう振り返ります。
落合:まず自分たちの拠点が持てたことで、メンバーそれぞれが自然と100BANCHに集まることができました。100BANCHのいろいろなプロジェクトやイベントから多くの刺激を受け、思う存分に活動できるエネルギーをこの場所から受け取れた思います。
フラットなコミュニケーションを実現させるため、これからもダイブを続けていくChabu Diveに期待です。
BEERful 渡部 有未菜
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/16978/
「人格を持つクラフトビール」の企画・販売を目指すBEERful。この3カ月でオリジナルクラフトビールの試作・醸造、それに加えプロモーション動画の撮影やECサイトの立ち上げ準備(8月末にプレリリース予定)を行いました。
渡部:私たちが考えるクラフトビールの「人格」は、心が揺らぐときに形成されるもの。つまり、持って生まれたものではなくて、生きている過程でさまざまな壁にぶち当たり、心が揺れるという感情です。その瞬間に寄り添うクラフトビールを作りたかったんです。
このビールの出発点は、渡部が「好きな人に思いを伝えるビールを作りたい」と思ったこと。その反面、飲み手に気持ちが伝わるのかどうか、つまり「伝える」という部分が難しかったと振り返ります。そのためBEERfulは、クラフトビールに与える人格と、その場のシーンや瞬間を合致させるために、空間まで提供することを思いつきます。
渡部:表参道のブライダル会場を使い「愛」をテーマとしたイベントを開催しました。イチゴのクラフトビールを飲みながら、忙しい日常の中普段はなかなか話すことのない「愛」について、そしてクラフトビールについて語る機会を生み出しました。
酒類業界では、すでにいくつかの販売プラットフォームが存在するなか、BEERfulは「自社ブランドの商品を直接届けたい」と独自のECサイトの制作を進めています。
渡部:お酒を扱うスタートアップは男性が立ち上げることが多く、デザインよりは味やストーリーに重点を置かれがちです。でも、女性の多くは見た目がすごく可愛いかったり、オシャレだとテンションが上がるので、デザインも非常に大切だと思っています。自社サイトでは、そういった見た目やデザインから伝わる世界観を壊すことなく、同時に女性に特化し、「贈る」という意味でのギフト専門のサイトを作りたいと考えています。また、女性の心に響くものであれば、自社プロデュース以外のクラフトビールでも取り扱っていきたいです。
100BANCHでの活動を振り返り、渡部は「好きなときに、人の意見が聞けることがよかった」と語ります。
渡部:作り手視点では、どうしてもプロダクトの側面に没頭しがちだけど、そんなときに他プロジェクトのメンバーたちと会話することによって、「そういう方向性や考え方もあるのか」と視野を広げることができました。おかげで思いもよらない考えを多く得られたと思っています。
BEERfulは、現在クラウドファンディング 「Readyfor」で「 愛しい人に『好き。』が伝わるクラフトビールつくりました。」というプロジェクトを立ち上げています。
(公開時には無事に成功しました!!)
クラウドファンディング詳細
https://readyfor.jp/projects/beerful
あなたも、想いを寄せるあの人にクラフトビールを贈ってみませんか?
自然と他プロジェクトやメンターとの交流が生まれてくるのは、100BANCHが「思う存分に活躍できる環境」であるからこそではないでしょうか。
イノベーションは、自由な発想から生まれてくるもの。あらためて、そう感じさせてくれる実験報告会となりました。
100BANCHではこのようなプロジェクトを思う存分に推進したいプロジェクトを常時募集中です。詳細はGARAGE Program詳細ページからご覧ください。
また、毎月末に開催される実験報告会にも合わせてご参加ください。