- リーダーインタビュー
当事者だからこその強み。バイタルデータの美しさを世界へ 「Langerhans」細目圭佑
最近、よく「クラウドファンディング」という言葉を耳にしませんか?
ここ数年で国内クラウドファンディングの市場規模はめざましいほど拡大しており、2017年の新規プロジェクト支援額は、前年度比127.5パーセント増の1,700億円を記録しています。
(株式会社矢野経済研究所・2018年版 国内クラウドファンディングの市場動向より)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2036
2014年と2018年の新規プロジェクト支援額を比較すると、たった4年足らずでその規模が約10倍にも成長していることが見て取れます。
急成長するクラウドファンディングを、100BANCHで日々活動するGARAGE Programのプロジェクトも多く活用しています。そのプロジェクトの特色によって、どのプラットフォームでクラウドファンディングを実施するかはさまざまですが、そのほとんどが資金調達を成功させています。
また、100BANCHでは、国内大手のクラウドファンディング、過去には「Makuake」の坊垣佳奈さん、現在は「Readyfor」の米良はるかさんが、GARAGE Programのメンターとしてこうしたメンバーの活動を支援してくださっています。
SHIMA Doctor Project 東京銭湯 – TOKYO SENTO -」
SAVE THE UDON Personalized tea experience with teplo
KAMING SINGURARITY ストップ風疹ワゴンプロジェクト
BEERful Seek new game ; Hidden in the future
FHP〜Fundoshi Hack Project〜 polca Cafeteria
SPECIAL INTERVIEW
READYFOR CEO米良はるか × 100BANCH オーガナイザー則武里恵
なぜ、クラウドファンディングを活用した100BANCHのGARAGE Programのプロジェクトのほとんどが資金調達に成功したのか?
その理由を探るために、100BANCHで数々のプロジェクトのメンターを務め、日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の創設者であるREADYFOR株式会社 代表取締役CEOの米良はるかさんと、100BANCHのオーガナイザーで運営に携わるパナソニック株式会社 コーポレート戦略本部の則武里恵に対談をお願いしました。
クラウドファンディングが求められる背景から、100BANCHでみられるクラウドファンディングの高成功率の理由、これからの資金調達のあり方まで。そこには、これからクラウドファンディングに挑戦する人に向けてのヒントや大切な要素が散りばめられていました。
米良はるかさん(右)則武里恵(左)
則武:今、若者を中心にやりたいことを実現するためにクラウドファンディングが有効だと言われていますよね。その背景には何があると思いますか。
米良:クラウドファンディングが今の働き方や生き方にマッチする金融システムだからではないでしょうか。以前の資金調達は多くの場合、「銀行など金融機関からの融資」(以下、「融資」)を受けることが必要でしたが、そのプロジェクトの実現性や事業性、実績や個人の担保などが必要で非常にハードルが高く、何かやりたいと思い立っても簡単に資金調達できる環境ではありませんでした。
しかし、近年は「やりたいことをやれる社会」をより求める意識が若者を中心に高まり、それを実現したい側も応援したい側も増加しています。その流れからクラウドファンディングがちょうどいい資金調達の仕組みとして、この時代にフィットしているのではないでしょうか。
則武:そのフィット感や期待感は年々高まっているように感じます。
米良:そうですよね。クラウドファンディングは応援してくれる人たちの期待——それは「配当のように自分のお金を増やしたい」という期待ではなく、「その人がやりたいことを徹底的にかなえてほしい」という期待であり、それが多くの若者に共感され、どんどん新しい価値を生みだす土壌に変化していったのだと思います。
また、クラウドファンディングは「命を懸けてやります」とか「10年後まで絶対にこのプロジェクトを辞めません」などと宣言しなくてもいいから、大きな責任が生まれる融資よりストレスなく面白いことを大胆に挑戦できる。そういったメリットもクラウドファンディングが今の若者を中心に支持される要素のひとつだと感じます。
則武:これまでの資金調達は、多くの部分で判断や調整に時間を費やす部分も必要だったから、なかなかアイデアが前に進まないことが多かったんだろうと。
米良:私は融資ってビジネスコンテストに似ている要素があると思っていて。若者がビジネスコンテストに挑戦する場合、彼らは浅い経験ながらも審査員に向けて精一杯のアイデアをプレゼンするじゃないですか。でも、審査員たちは自分の価値基準だけで「違う」とか「甘い」とか言って、若者たちのアイデアを「NO」と評価してしまう。
そんな偏った評価なのに、まだまだ世間を知らない若者たちはそれが全てだと思い込み、世の中全体で「NO」と突きつけられたように感じてしまう。そうやって簡単に若者の未来を潰していることを、審査員である大人はわかってない部分も多いから。
則武:そういう場合は、もっともらしい批評をされますからね。
米良:そうなんです。でも、なぜそこで「面白いね」とか「もっとこうしよう」とアドバイスができないのかと不思議に思います。だって、若者たちのアイデアや事業をやめさせることなく支援するだけで、物事が非常に面白くなる可能性が広がるじゃないですか。挑戦者にとって否定されないことがどれだけ重要なものなのか。
そういった挑戦者を肯定する背景が若者を中心に生まれたことによって、大人のロジカルな部分と若者のエモーショナルの部分のギャップが大きくなり、クラウドファンディングの利用価値が加速度的に広がったと思います。
則武:100BANCHのGARAGE Programでは、クラウドファンディングを活用するプロジェクトが多く、そのほとんどは資金調達を成功させています。その要因について、米良さんはどのように捉えていますか。
米良:100BANCHのプロジェクトはいい意味で、ちょっと変わっていて気になるというか(笑)。そんな人の心を刺激して、いろいろな感情を生みだすプロジェクトが多いことが、クラウドファンディングの成功と関係していると思っています。
則武:それ、わかる気がします。エモさみたいな(笑)。
米良:そうそう、エモさがある感じ(笑)。ただ感動するとか共感するとかだけじゃなくて、よくわからないからこそ受け手はワクワクする感情が生まれ、記憶に残っていく。とはいえ、プロジェクトには「3カ月の活動期間で何か生みだしてよ」みたいなプレッシャーもあるから、よいバランスで人を刺激するコンテンツが生まれているのだと思います。
そんな刺激的なプロジェクトが集まっているからこそ、自然と異能が交わり、さらに新しい価値が生まれているのだろうと。最初は「なんでこんなに100BANCHには面白いものが集まっているんだろう」と不思議だったけど、今は「ここに集まっているからこそ面白いものが生まれている」と感じるようになりました。
則武:その言葉はすごくうれしいです。私たち運営側は「メンバーが欲望に従い素直に生きられる場所にしたい」と常々考えています。その環境のもとこそ、思いもよらない感情の揺さぶりのような価値が生まれると思っているので。
米良:感情の揺さぶり、まさにそうですよね。融資とは違い、クラウドファンディングは支援した人たちにお金が返ってくるものではないので、この人しかできない面白さやユニークさという要素が支援する側にはすごく重要になります。100BANCHのプロジェクトは「えっ、なにこれ?」という常識を越えた要素、つまり感情の揺さぶりがあるから、多くの人たちが興味を示して応援したくなるんです。
則武:それが可能にしているのは、100BANCHが「たった一人でも応援したら」という考えを大事にしているからだと思います。GARAGE Programのプロジェクト採択において、メンターが1人でもそのプロジェクトをいいねと思えば、それ以外のメンターや私たち運営側がたとえ全て猛反対したとしても採択できるんです。
米良:それがめちゃくちゃ、いいですよね。
則武:だからこそ、常識を越えたプロジェクトが生まれ続けています。その要素がふんだんにあるからこそ、クラウドファンディングでも異彩を放ち、目を引くことで、資金調達の成功につながっているのかもしれません。
米良:その常識に縛られないアイデアだけではなく、それを納得させるだけの背景があることも100BANCHの強みですよね。たとえばコオロギラーメンを開発するプロジェクト「Cricket ramen」ってあるじゃないですか。これを知った時は「なんかヘンなことやっているな」って思っていたけど、実際にコオロギラーメンを食べたらめちゃくちゃ美味しかったんです(笑)。しかも、その味に感動している横で、コオロギが持つ効用や未来への思いも伝えてくれて。
則武:そうなんです。コオロギラーメンは先入観を崩すくらいの世界観もあるから、食べた後に「だからコオロギなんだ」って腹落ちするというか。
米良:そうそう。インターフェースは不気味だったり、ヘンだったりするプロジェクトでも、その背景にあるストーリーを聞くと、すごくビジョナリーなんです。100BANCHは「なにこれ?」みたいな面白さと、ストーリー性からくる社会的インパクトのバランスがとれているプロジェクトが多いからこそ、世の中に幅広く受け入れられ、それがクラウドファンディングを成功に導いていると思います。
則武:その部分で言えば、100BANCHのプロジェクトメンバーが活動期間中に、プロジェクトのストーリーを伝えるスキルがどんどん伸びていくことも、成功の要因のひとつだと思います。彼らの拠点である100BANCHの2階「GARAGE」には、私たち運営側や他プロジェクトのメンバーはもちろん、メンターや見学者もよく訪れるから、彼らは下手すると毎日「どんなプロジェクトで何を目指しているの?」と質問されています。それを答える度に、どんどん彼らのストーリーが研ぎ澄まされていると実感するんです。
米良:たくさんの人に囲まれることは非常に重要ですよね。シリコンバレーで多く起業家が生まれる理由は、そのまわりのスタンフォード大学など、若者が集まる場所にさまざまな人がビジネスチャンスを探しにやってくるからだと思っています。その機会があるからこそ、若者たちはどんどんプレゼンがうまくなり、後々大きなチャンスをつかむようになる。そういう場所って日本には少ないから、それが実践できる100BANCHの存在はとても貴重な存在だと感じています。
則武:クラウドファンディングも含め、これからの資金調達のあり方はどう変化していくと予想されていますか。
米良:今後はさらにクラウドファンディングが資金調達の役割を担っていくと思います。これからさらにテクノロジーは進化して人間がやらなくてもいい領域が増える。つまり、人はどんどん暇な時間を手にしていきます。
その時間的な隙間が増えるに従い、「自分が何をするべきだろう」という意識が今以上に高まっていくから、特に若い世代は「何の仕事に就くか」より「どう生きていくか」が重要になっていくのではないでしょうか。そのため、資金調達が必要な人たちの種類が変わってくると考えています。
則武:もっと自己実現を理由に資金調達を目指す人たちがますます増えるでしょうね。
米良:その流れはさらに加速すると思います。その一方で、自らやりたいことはないけど、何かに貢献することによってアイデンティティを持ちたい人も増えてくるとも思います。
これまでは学校や会社のコミュニティが人生にとって大きな存在でしたよね。でも、いまはそれ以外のコミュニティに属する人たちが増えてきているので、そこでいろいろなチャレンジが増えている最中だと感じます。そのチャレンジは、ますます拡大すると思うので、クラウドファンディングで資金調達をしたい人とそれに貢献したいという人たちによる、新しいコミュニティもどんどん生まれてくるのではないでしょうか。
私たちReadyforはこれからも「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンのもと、数多くの挑戦をサポートしていきたいと思っています。
則武:今後、100BANCHはさまざまなクラウドファンディングとのコラボレーションをする予定です。ぜひReadyforと100BANCHでも常識を覆すような新しい価値を生み出していきたいですね。
(現在、100BANCH x Readyforのクラウドファンディング・プログラムを実施中)
米良:ありがとうございます! ぜひ、一緒に挑戦していきましょう。