食やテクノロジー、コミュニティなどの観点から探る新たな可能性
未来のコンビニプロジェクト
食やテクノロジー、コミュニティなどの観点から探る新たな可能性
次の時代に求められるコンビニを一緒に描き、つくっていこうとする「未来のコンビニプロジェクト」。5月まで5ヶ月間、計5回(5がとても多い!)のシリーズワークショップの第1回目を1月27日に開催しました。
この模様を、プロジェクトの企画メンバーである大山貴子がレポートします。
プロジェクトでは、コンビニの役割を再定義しながら、2040年という近未来を舞台に、ヘルスケア、コミュニティ、IT、食などの様々な切り口からコンビニの未来の可能性を思考し、その可能性を最大化していきたいと思います。
11月にプレイベントとして開催した「コンビニ未来会議」では、47名の方にご参加いただき、良い反響がありました。その成果もあり、今回のプロジェクト参加人数は総勢50名という大所帯となりましたが、その分、料理人や、UX/UIデザイナー、地方創生プロデューサー、鍼灸師、農家など多種多彩なバックグラウンドを持った人たちが集まりました。そして、さすが一人ひとりが手を挙げて参加してくださったメンバーだけあって、会場からは人数以上の熱気を感じました。
参加メンバーの応募動機には、「コミュニティとしてハブとしてのコンビニをあり方について考えたい」「フードロスや大量消費などを駆使した環境に優しいコンビニをつくりたい」「テクノロジーからコンビニの利便性を考えたい」どいった意見が多く、今後のワークショップを経て、どのようにこの意気込みが具体化していくのか、運営としても楽しみに思っています。
100BANCHはとても自由な、実現不可能にもみえる発想を応援し、後押ししてくれる場所。このワークショップの企画メンバーであり、100BANCH GARAGE PROGRAMの採択メンバーでもある菅本香菜&大山貴子は、それを実感しているからこそ、今回のプロジェクトでも常識にとらわれない新しいアイデアで、未来のコンビニのあるべき姿がつくられるといいなと願っています。
第1回目のテーマは「コンビニのこれまでと今について学ぼう」。5回を通じて核となるコンビニについて、取り巻く環境から大手コンビニについての特徴など、基礎となる情報について学んでいきました。
最初のセッションでは、パナソニックの中で、小売業に対するソリューションビジネスを推進するパナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社ストアビジネス推進室室長の宮下さんにご登壇いただき、コンビニの今を「作る・運ぶ・売る」の切り口から掘り下げてお話いただきました。
コンビニ含む小売業は、少子高齢化や働き手不足、最低賃金引き上げによる人件費の高騰などを理由に、いままでにない変革期にきているとのこと。また、AmazonなどECの利用者数が増えているのに反比例してコンビニの来客数は現在減少の一途を辿っていて、コンビニの店舗数の伸び率も減ってきているそうです。
客単価が下がっているにもかかわらず、人件費は高くなっているので、フランチャイズオーナーの収入は減少。店舗を出せば出すほど儲かるというこれまでのコンビニのビジネスモデルが変化し、地元の名産品や生鮮食品を置くなど、店舗ごとにいかに色をつけていくかが重要になっていっているといいます。
それでは今後、コンビニ業界はどう戦うべきなのでしょうか?宮下さんによると、店舗運営ローコスト化、データ活用経営、そして新しいビジネスモデル構築が重要になってくるということです。IoTによる顔認証を使った無人レジサービスや、各顧客の行動を観察・分析することで、次の購買に結びつくような店舗設計を行うなどの新たなソリューションが提案されているそうです。またAmazonGOなど、異分野のプレーヤーが強豪として台頭してきたことも視野に入れた戦略が必要であると話をされていました。
後半には、コンビニ記者として有名な吉岡秀子さんにご登壇いただき、大手三社のプレスリリースを読み解きながら各社の特徴を考えるワークを行いました。長年コンビニを追いかけ、コンビニの全てを知り尽くしている吉岡さんは、今回のワークショップに先立ち、「コンビニについてあまり堅苦しく考える必要がない。行きたいと思うコンビニを消費者の目線で考えてみて!」と笑いながらコメントされていました。
それはなぜかというと、コンビニは時代の流れや人の暮らしに柔軟に対応してきた”変化対応業”だからだそう。コンビニのおにぎりは、1978年にセブンイレブンが外でご飯を食べたいという消費者のニーズに合わせて誕生したそうです。その後も屋台で人気のおでんをうちで食べられたら便利だと「コンビニおでん」が生まれ、忙しくて銀行にいく時間がないという理由でATMが設置されたように、次々と人の便利に寄り添い発展してきたのが今のコンビニ。吉岡さん曰く、コンビニは今、原点である「ヒューマンタッチ」の部分が見直されているそうです。シニア層の利用も増えている中、ECサイトにはない、こうしたぬくもりがより大事になっていくのかもしれませんね。
そして今、話題になっているフードロスの問題についても、吉岡さんは「消費者には伝わって言っていないけれど、企業として真剣に取り組み、努力している部分がたくさんある」と教えてくださいました。例えば最近チルドコーナーに置いてあるパウチパックのお惣菜は利便性だけではなく賞味期限が伸びたことからフードロス対策にもなっているとのこと。コンビニはその場での消費を目的とした購入をする場所としてだけではなく、シニア層が1週間分の食事をまとめて購入するなどライフコンビニエンスな店になってきているそう。
そういえば、確かにここ数年でパウチのお惣菜や冷凍食品が増えてきましたよね? さらに、賞味期限が過ぎたものは肥料や飼料として循環されています。たとえば、ローソンではローソンファームという農業生産法人をスタート、全国23箇所で展開していて、コンビニででたフードロスは肥料として使われているそうです。
コンビニ各社にキャラクターがあり、力を入れている取り組みにも特色があるのが興味深かったです。
今回の振り返りとして、参加者からは、「コンビニについて深く知ることができた」などといったゲストトークについての感想や、「参加者が幅広く、これからのワークショップが楽しみだ」といった期待の声が聞かれました。大所帯のワークショップがまとまるかどうか、運営として懸念はありましたが、非常に有意義な交流が行われたようで、最後の懇親会までとても盛り上がっていました。
次回は「未来の暮らしについて」をテーマにリパブリック代表市川文子さんにお越しいただき、社会課題の解決に向けてのアイデアを実行に移すまでのプロセスをお話いただき、各参加者ごと自分の思い描くコンビニについて深く考察するワークショップを開催します。
本シリーズワークショップの運営メンバーは以下の通りです。皆さんの熱量に一同、身の引き締まる思いです。これから5カ月間、全速力で参加者の皆さんに伴走していきます!
鈴木恭平
パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社
PR会社で外資系のIT企業の広報活動、特にソーシャルメディアマーケティングを担当。その後、外資系PR会社やIT企業の広報担当を経て2018年9月から現職。ソーシャルメディアを中心にコンテンツマーケティングを担当。
大宮 透
共創ファシリテーター
2013年より長野県小布施町に移住。法政大学・小布施町地域創造研究所の主任研究員として地域づくりの仕事をはじめる。現在、長野県(小布施)と 渋谷の2拠点生活中。 行政や企業の政策・事業づくりに伴奏するファシリテーションや、人材開発事業を行う。
菅本 香菜
MUSUNDE HIRAITE|https://100banch.com/projects/musunde-hiraite/
不動産会社での営業を経て、食べものつき情報誌『くまもと食べる通信』の副編集長として活動。現在は株式会社CAMPFIREにて、地方の挑戦をサポートする傍ら、旅するおむすび屋さん『むすんでひらいて』プロジェクトを立ち上げ活動中。
大山 貴子
Food Waste Chopping Party|https://100banch.com/projects/food-waste-chopping-party/
ニューヨークにて新聞社、広告代理店コピーライターを経て、実験トライアングルコミュニティ&自然派カフェ「みせるま」に参加。平和活動を食を通じて行っている。2017年EarthommUnityを立上げ、サステイナブルな暮らしの提案を行う。