未来は不動産ならぬ“可動産”にあり。 「動く家」バスハウスで、新たな未来を創造
- イベントレポート
さまざまな試行錯誤が生み出す未来のかたちとは? 〜GARAGE Program実験報告会〜
2018年10月11日、100BANCH GARAGE Program応募者見学説明会と併せて、プロジェクトの実験報告会が開催されました。
あらためて、GARAGE Programとは———
これからの100年先の未来をより豊かでおもしろい方向へと動かすために、常識にとらわれない35歳未満の野心的な若者リーダーのプロジェクトを支援するプログラム。審査基準は、各界のトップランナーである総勢23名のメンター陣が、“これからの100年をおもしろくするプロジェクトとして支援したいと思うか否か”。現在までに81ものプロジェクトが採択されています。
多くの参加者とともに開催された、6プロジェクトの発表内容をレポートします。
美味しいものを作り届けたい人を応援する
■To enrich the world with Shared-Kitchens リーダー:木村優子
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/10272/
現在は名古屋でマンションの一室を改装してシェアキッチンを運営しているプロジェクト。「お菓子やパン、ごはんなどを作って売りたいけどその拠点がない」という人が集まる場所を創出しています。
To enrich the world with Shared-Kitchensは、「次の100年は、人はやりたいことをやって幸せに生きる時代だ」と考え、やりたいことをやって生きる人は、時につらいかもしれないけど総じて幸せであり、そのなかには美味しいものを作って届けることに幸せを見いだす人がいるはずだと仮説を立てました。
そこで100BANCHで4つの実験を計画しました。
①厨房の提供
②食材生産者との協働
③お菓子を作って売りたい人のためのウェブマガジンを制作
④「生産者」「作って売りたい人」「消費屋」のコミュニティを確立
名古屋を拠点に運営して3か月の活動期間を終えたTo enrich the world with Shared-Kitchen。さらに3か月の延長をすることになりました。
これからの3か月は名古屋を拠点に置きながら、遠隔でトライできる100BANCHならではの取り組みを考え、100BANCHにいる人たちに、シェアキッチンの未来についてインタビューした記事をまとめようと計画しています。
この先、どのようなシェアキッチンのかたちが生まれるのか。これからの活動にも注目してくたさい!
インクルーシブなデザインを渋谷から世界にアピールする
■Braille Neue リーダー:高橋鴻介
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/braille-neue
目が見える人も見えない人も読めるフォント「Braille Neue(以下、『ブレイル・ノイエ』)」を開発したBraille Neue。「バリアになっている文字そのものをアップデートし、視覚障害者と晴眼者が同じツールを使えるようにすることによって、その間にある壁を打ち壊したい」という考えを持ちプロジェクトを進めています。
100BANCHの活動において、最初の3か月はこのフォントをどう展開していけばよいか分からず焦る日々が続きました。しかし、メンターの市川文子さんが「今100BANCHでできることに絞ってみては」との提案により、プロジェクトの向かうべき方向が明確化。
100BANCHの1周年を記念した夏の文化祭「ナナナナ祭」でフォントの展示や、100BANCHの建物内への実装を行いました。
また、「ナナナナ祭」のトークイベントに登壇された、渋谷区長で100BANCHのメンターでもある長谷部健さんに「今あちこちで建て替えが行われる渋谷の街に新しい点字・ブレイル・ノイエを導入してほしい」とプレゼン。長谷部さんから「このフォントを渋谷区から世界に広げよう」と言葉をいただき、現在改装中の渋谷区新庁舎と渋谷公会堂への実装が決定しました。加えて、11月7日(水)から渋谷・ヒカリエで開催される「超福祉展」の期間中に、建物内のエレベーターに実装する予定です。
最後に高橋は今後のプロジェクトについてこう話します。
「2020年の東京パラリンピックに向けて、インクルーシブなデザインであるブレイル・ノイエをいろいろな場所で導入し、渋谷から世界にアピールしていきたいと思います」
100BANCHでは階段の手すりやトイレのドアノブなど多くの場所にブレイル・ノイエが導入されています。ぜひ実際に見て触れてみてください。きっと、新しい発見があるはずです。
ヒッチハイクで楽しい出会いや人間味あふれる出会いを生み出す
■Hitchcon 田中孝資・田嶋勁士
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/10136/
ヒッチハイクに対する不安や疑問についての情報をオープンソース化することで、その問題を解消し、 ヒッチハイク文化のアップデートを目指すHitchcon。
Hitchconは人と人との接点がSNSなどインターネット上にシフトしている今だからこそ、アナログな出会いやコミュニケーションの価値に再注目しています。ヒッチハイクの経験によってこの出会いを創出したいと考えました。
田嶋はヒッチハイクの新しい提案についてこう話します。
「ヒッチハイクに触れることで車の移動中にコミュニケーションを作り出し、世界に楽しい出会いや人間味あふれる出会いを提供したい。車の移動中だからこそできるエンタテインメントを生みだし、ヒッチハイク文化のアップデートをしたいと考えています」
100BANCHではサービスの明確化を進めつつ、9月に渋谷川で行われた川開きで「疑似ヒッチハイク体験」を提供。また、ヒッチハイクの体験談やヒッチハイクで役立つサポート、ヒッチハイク仲間を作るグループ機能などを兼ね備えたウェブサービスのプロトタイプも制作しました。
今後は、夏フェスとコラボした企画などを進めるほか、ウェブサービスの本リリースも行う予定です。
未来のコミュニケーションとして、ヒッチハイクに注目したHitchcon。楽しい移動手段としてヒッチハイクが注目される日は近いかもしれません。
アクアリストと研究者を結びつけることで、水生生物の秘密を解き明かす
■INNOQUA リーダー:高倉葉太
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/10193/
「人と水生生物の関係を近くにしたい」とテーマを掲げるINNOQUAは、観賞魚飼育者とサイエンスの知見やテクノロジー技術をつなげ、サンゴや魚などのより良い飼育法を確立を目指しています。また、観賞魚業界のノウハウをサイエンスの世界に提供し、魚の研究を加速させ地球の環境保全に貢献しようと考えています。
水生生物の研究では、膨大な種類が生息しているにも関わらず「担い手が少ない」「1人が扱えるデータ数が少ない」「飼育が難しい」「スペースに限界がある」などの課題があります。その課題をINNOQUAは、水生生物を飼うアクアリウム(水槽)で解決したいと考えています。
アクアリウムを活用する理由を、高倉は以下のように話します。
「世界中で多くの水生生物がアクアリウムで飼育されているため、データが豊富です。加えてそれらを飼う人(アクアリスト)たちは研究者に負けないくらい水生生物を愛しています。そんなアクアリストと研究者を結びつけることで、水生生物の秘密を解き明かすようなプラットフォームを作り、それをさまざまな分野に役立てたいと思っています」
100BANCHではアクアリストが作る水槽情報共有サイト『Alica』を開発。
3か月の活動延長を行い、今後はメンターの岩田洋佳さんと一緒にDNAを使って水槽の健康診断ができる水槽水のマイクロバイオーム解析を行う予定です。
INNOQUAは「魚は飼ってみたいけど、家では飼えない」という人たちに向けて、100BANCHに「シェアリングアクアリウム」を設置しています。興味のある方はぜひ見学にお越しください。
パートナー間で起こる家事労働のストレスを軽減する
■Smuzoo リーダー:吉田 寛
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/10219/
Smuzooは子育て世代を中心とする共働き夫婦間で、家事情報の共有ができるプラットフォームや簡単に自動で家事ログがとれるIoTケーブルリールを開発・普及させることで、家事労働のストレスを低減するプロジェクト。
子育て世代や共働き夫婦を中心に家事労働に大きなストレスが生じる原因は、パートナー間で共有できる家事情報に限度があることだと仮説。それを解決するために家事情報の共有と家事のやり方を最適化できるアプリ「Smuzoo」を開発しました。このアプリでは、家事フローの一覧表示や、進行中の家事共有、toDo共有やこれまでの家事履歴などを確認することができます。
100BANCHでは25歳〜35歳の15名を対象に「Smuzoo」が実際にニーズがあるかどうかのヒアリングを行いました。
そこから得られた成果を、吉田はこう話します。
「このサービスのターゲットは、時間がない中で家事をやっていることが認められず、『家事をやれるのならやりたい』という潜在的な承認欲求がある人だと分かりました」
この結果をもとに、次の3か月では「Smuzoo」の正式リリースを行うほか、家事代行業との連携機能を拡充させていく予定です。
育児や仕事が忙しく、家事が原因でパートナーとギクシャクしてしまう前に、ぜひ「Smuzoo」を活用してみてはいかがでしょうか。
編み物の持つデジタル性を活用して立体物をつくりだす
■Solidknit リーダー:廣瀬悠一
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/10126/
Solidknitは、中身が詰まった立体物を編む「ソリッド編み」によって、デジタルなものづくりを実現するプロジェクト。
ソリッド編みは中身が詰まっているので、糸でも固いものを作り出り出すことが可能です。これまで編み物で作れるものほとんどは布地でしたが、Solidknitはソリッド編みを使って机や椅子などの代替物を作りたいと考えています。
ソリッド編みを用いて制作されたものは、もともと1本の長い糸でできているので簡単にほどいて元に戻すことができます。そのため、それらは非常にリサイクル性に優れている製造方法だと言えます。
100BANCHでSolidkniは、自動でソリッド編みを行うことができる「ソリッド編み機」を制作することを目標に活動してきました。
ソリッド編み機を作る理由について、廣瀬は以下のように話します。
「編み物は全体の形状を1目1目に分解して扱うという、極めてデジタル的な工作法だと言えます。『ソリッド編み機』を制作することよって、編み物の持つデジタル性を他の物にも応用したいと考えています。最終的な目標はソフトウェアをアップデートするように、インターネットを通じて物理的なものをアップデートすることです」
10月30日(火)から11月3日(土)まで東京国際フォーラムで開催される「パナソニック CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」で「ソリッド編み機」を紹介できるよう、現在制作を進めています。
近い将来、ソリッド編みで制作されたテーブルや椅子が、あなたの生活にかかせないものになるかもしれません。これからの活動にも目が離せません。
撮影:秋月良樹z
次回の実験報告会
さまざまな分野から飛び出す実験報告に、参加者は大きな感心を寄せていました。プロジェクトの実験報告が終わると、参加者は2FのGARAGEを見学したり、事務局メンバーにGARAGE Program応募の質問をしたり、それぞれが思い思いに100BANCHの取り組みを知る時間となりました。
次回は【GARAGE Program応募者向け見学説明会&プロジェクト成果報告会】を11月27日(火)に開催!
各プロジェクトの活動の様子を知りたい方や、GARAGE Programへの応募を考えている方は是非遊びに来てください。
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