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2018.08.15 Wed

『のりのりの 海苔を真ん中に、豊かな1日を考えるお祭り』を終えて

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その土地の”美味しい”とその裏側にいる生産者さんに出会って、好きな場所・人が増えて 世界が少し広がる。

そんなことを目指して、私たち旅するおむすび屋は各地でおむすびを結んできました。

すぐに手が届く”小さな幸せ”を共有し、日常の余白をつくり、人と人、人と地域を結んでいく中で、たくさんの生産者さんたちに出会いました。

 

自然や生き物と向き合い、生きている生産者の皆さんからは、柔軟で軽やかな姿勢とどっしりとした強さを感じます。

さまざまな生産者さんとの出会いの中で、素敵な”輪”を感じる人たちがいます。

それは、全国の『海苔漁師』の皆さんの輪です。

 

海苔漁師さんたちの中には、同じ『海苔』を作る者同士、優劣をつけ合うのではなく、認め合い切磋琢磨する輪ができているのです。

「ここの海苔が一番美味しい!」という語るのではなく、産地や向き合う漁師によって味や食感に違いがあり、食べる人の趣味趣向に合わせて選んでほしいと語る漁師さんたち。

業界全体で学び合い盛り上げていこうという姿勢に温かい刺激を受けます。

 

そんな海苔漁師さんたちを私たちの周りにいる皆さんにも紹介したい、という思いが沸々と湧き、

旅するおむすび屋一周年企画として、

7月21日(土)『のりのりの 海苔を真ん中に、豊かな1日を考えるお祭り』を100BANCHで開催しました!

全国の熱い海苔漁師さん、食分野を中心に活躍しているゲストの方々、そして人気シェフをお呼びして、

海苔を学び、海苔を食べ、海苔について語り合うという、海苔に始まり海苔に終わるノリノリなお祭り。

ただ楽しくお腹いっぱいになるというだけではなく、海苔を通して食やそれを取り巻く環境についても考える時間となりました。

 

『のりのりの』は、海苔のワークシップとトークセッション、海苔のフルコースパーティーの二部構成。

 

この日が来るのをきっと誰よりも楽しみにしていた旅するおむすび屋の私たちの浮足立った開会の挨拶の後に、

さっそくこの日の主役の海苔漁師さんたちにご登壇いただき、自己紹介も兼ねた海苔の食べ比べワークショップを。

宮城、熊本、千葉、兵庫からお集まりいただいた、海苔漁師のみなさん。

それぞれの地域の海苔の栽培方法やそこでできる海苔の特徴について、真っ直ぐ丁寧にご紹介いただきました。

宮城から来て下さった相澤太さん。

東松島で海苔づくりをしてらっしゃいます。愛情を込めて接していると「海苔の声が聞こえる」「海苔の顔がわかる」のだとか!

試食で準備してくださった海苔は、おむすびに巻いてしっとりした状態で食べても海苔の風味がしっかり残っているけれど、お米の味とも共存する絶妙なバランスの海苔でした。

(写真1番左:相澤さん)

 

熊本から来て下さった牛嶋昭成さん。

有明海の特徴である干満の差を最大限活用して海苔の養殖をしてらっしゃいます。

旨味だけではなく、パリパリっとした歯切れの良さが魅力。噛むほどに楽しい食感です。塩海苔や味付けのりなど、食べ方に合わせた商品もつくってらっしゃいます。

(写真左から2番目:牛嶋さん)

熊本から来て下さった浦山幹哉さん。

有明海に面した沖新町で海苔づくりをしてらっしゃいます。

口いっぱいに広がる磯の風味が特徴的な乾のり(焼く前の板海苔)はクセになる味です。しっとりしても美味しいので、お弁当にもぴったり。

         (写真右:浦山さん)

千葉から来て下さった鈴木和正さん。

東京湾で海苔漁師をしてらっしゃいます。東京湾で海苔づくりが行われていることを知らない人も多いのでは。

鈴木さんの海苔は、他の産地と比べてほんのりとした味や香りで、食べているうちに口に馴染んでいく感覚がありました。飽きのこない味です。

兵庫から来て下さった若林良さん。

神戸の快速が停まる駅の近くで海苔をつくってらっしゃるそうです。そんな街中で!と驚きました。

関西ではお馴染みの味付け海苔を試食に持ってきてくださいました。しっかりとした硬さの海苔で、ご飯が進みそうです。

兵庫から来て下さった大浜佳右さん。

加古川で海苔づくりをしてらっしゃる大浜さんはピンクのつなぎがトレードマーク。

加古川の自然の香りをたっぷん含んでいるのが特徴の大浜さんの海苔の名前は「海苔香(のりか)」まずは、香りを楽しむ。五感を刺激される味でした。

普段、何気なく手に取り食べている海苔。

食べ比べてそれぞれの違いを感じ、どんな工夫と熱量を持ってつくられているのか知ることで、今まで感じていた美味しさに一段深みが加わった気がします。

(参加者に海苔を振る舞う大浜さん)

「食べる」ことは、私たちが生きていく上で欠かせない本能的な営みですが、何を感じようとしながら食べるかで同じ「食べる」でも終わった後の感覚に違いがあると思います。

私は今回の海苔の食べ比べワークショップを通して、口にしている物の背景にある人のことやその周りの日々の暮らしについて感じながら「食べる」時間を大切にしたいなと改めて思いました。

食欲を満たすだけの「食べる」が必要な時もありますが、その奥にある(いる)生み出してくれた人や自然のことを思い浮かべる感覚が錆びないように暮らしていきたいです。

 

海苔を通して、食の背景について思いを馳せたところで、トークセッションへ。

海食について様々な取り組みをされているゲストの皆さんによる二つのテーマでのトークセッションです。

 

まず一つ目のテーマは

「生産者の想いを、食べる人の”楽しい食卓”に繋いでいくために大切なこと」

 

今回の主役である海苔漁師さんたちのような素敵な生産者さんの想いを、私たちの日常に繋いでいくためにどんな工夫が必要なのでしょうか。

 

ゲストとして、

“コミュニティの創造”をテーマにカフェの運営を初め、地域活性化事業、商業施設のプロデュース等多様な事業を手掛けてらっしゃる

カフェ・カンパニー株式会社代表取締役社長の楠本修二郎さん

日本の在来植物・薬草を暮らしに取り入れる伝統茶の開発を通して、ご自身も生産者や地域と食べる人を繋ぐ活動をしてらっしゃる

TABEL株式会社代表取締役の新田理恵さん

新潟を拠点に地域の食材を活かした飲食店を経営し、食文化プロデューサーとして地域の食の魅力を伝える商品づくりなどを行ってらっしゃる

SUZU GROUPオーナーシェフの鈴木将さん

のお三方にご登壇いただきました。

 

モデレーターのあやかさん(カフェ・カンパニー株式会社)の進行のもと、

「なぜ食べる人と生産者がつながる必要があるのか」という問いを皮切りに、それぞれの事業や活動を通して感じていることを自由にお話しいただきました。

『生産者と消費者』ではなく、『生産者と生活者』という関係性がこれからより重要になってくると仰る楠本さん。

「生産者が生産したものを私たちがただ消費する消費者ではなく、生活者として関わっていきたい。

これからは、生産者と生活者の関係を楽しんでいく事が大切であるし、きっとそうなっていくと思う。生産者や生活者が想いや好みをオープンにしていく時代になるのでは」

心地良くつながり関わる為に、社内外で人間対人間のコミュニケーションの濃度が高くなるように気をつけていると語る新田さん。

「『健康』をテーマにはなるべくしたくない。『美味しいから食べる』になるといいなと思っています。

そうすると、生産者と繋がるのは、ごく自然なことです。今回のような、生産者さんと直接出会えるライブ感のある場が定期的にあると良いですね」

ご自身が提唱している、地域食材をふんだんに使った新しいファストフード『LOCAL FAST FOOD』を中心に話をしてくださった鈴木さん。

「飲食店やシェフは地域や生産者と食べる人を繋ぐ役割にあると思う。地域のものに(価格として)高い付加価値をつけるだけではなく、

地域のものをもっと手軽に食べられる環境をつくることも大切。毎日の食卓でも楽しめるように、LOCAL FAST FOODのレシピ本もつくって公開しています」

『食べる人と食べる物』という関係の先には生産者の想いや『食べる人とそれを育んだ風土や人』という関係があるのだなと感じました。

食べ物を育んだ風土や人の見える食卓が、私たちにとっての”楽しい食卓”の一つの風景を生むのだなと改めて感じました。

続いて二つ目のトークテーマは

「サスティナブルな世界を目指す仕組みのつくり方・育て方」

 

「来世も海苔をつくりたいから、日本の美しさをきちんと次の世代に残していきたい」という言葉を海苔漁師さんたちから聞きました。

海苔漁師さんたちの目指すサスティナブル(持続可能)な世界を目指すために、私たちは何を考え、何を感じ、動いていく必要があるのでしょうか。

 

きちんと次世代のことを考えた事業を立ち上げ、かつ、成長させている方々にお話を伺います。

 

トークゲストとして、

世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」やオンラインマルシェ「ポケットマルシェ」で生産者と消費者が直接つながる仕組みをつくり展開してらっしゃる

東北食べる通信編集長・ポケットマルシェCEO高橋博之さん

約60人の漁業者をまとめ、船団を「家業」から「企業」にすべく6次産業化を進めてらっしゃる

株式会社GHIBLI(萩大島船団丸)代表取締役坪内知佳さん

にお越しいただきました。

 

ゲストファシリテーターの島田由香さん(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社)の進行の元、

海苔漁師の相澤太さんにも加わっていただき、お話を伺いました。

それぞれのお立場から、自然と関わりながら、食べ物やその周りの人たちとの持続的な関わりをつくっているお三方。

人間の支配的感覚が自然に影響を与えていることを、三者三様に肌で感じてらっしゃいました。

生産者と消費者を繋ぐ事業を通して、最終的には生産者と”自然”を繋ぎたいと仰る高橋さん。

「子どもたちが自然に触れるのが難しくなっています。人と自然が繋がっていないと、海や山にゴミを捨てる人が現れる。

食がただの栄養補給であれば、誰も自然のことは気にしないですよね。生産者と繋がって食に思い入れが増えることで、自然にも繋がっていけるといい」

萩大島で獲れる魚の種類や量にも不自然な変化を感じるけれど、社会に対してはポジティブな変化もあるのではないかと仰る坪内さん。

「1×2×3で6次産業。もし、1次産業が0になってしまったら成り立ちません。本物の魚のおいしさを知ることで、自然と向き合っている漁業(1次産業)を大切にすることもできるはずだという思いで私たちは魚を届けています。

そんな萩大島船団丸のことが学校教育でも取り上げていただけるようになってきました。少しずつ社会も変化しているのかもしれません」

 

地震や津波は私たちにとっては災害ですが、地球にとってはまばたきのような自分を整えるための”なんでもないこと”だと仰る相澤さん。

「東日本大震災を経験したからこそ思うのですが、自然災害は地球にとってはまばたきのようなものです。津波が来た後の海は、とても豊かな状態でした。

自然を自分たちの都合の良いように扱い、枯らすような行為をするのではなく、きちんと向き合っていくことが大事だと思います」

サスティナブルな世界を目指すには、私たち人間がその場しのぎの仕組みや繋がりではなく、本当の意味で自然と向き合うことができるかが鍵だと感じました。

これまで、多くの恵みをもたらしてくれた自然に対して、私たちは何を返しどんな循環を生んでいけるのでしょうか。

 

生産者の想いを食べる人たちに繋げること、そして何かを生産するために欠かせない自然との関わりを考えること。

時代の変化とともに答えも変容していくであろう問いをいくつも得られたトークセッションでした。

海苔の食べ比べワークショップで真っ直ぐに楽しんだ海苔の味を、次は一工夫加えた味で楽しみます。

トークセッションでもご登壇いただいたSUZUグループのオーナーシェフ鈴木将さんに、海苔のフルコースをご用意いただきました。

 

・海苔バーニャカウダ

・海苔だし巻き

・漬物マッシュポテトと海苔のロールサラダ

・青入り海苔の卵とじスープ

・いろいろのり天

・黒毛牛ともち米のトマト煮込みを 「かぎろい」で

・極上魚沼コシヒカリとのりのりと

・のりのりプリン

今回お越しいただいた漁師さんたちの海苔をふんだんにつかってつくられた海苔のフルコース。

味はもちろんですが、見た目も美しく、香りも食感も豊か。こんな活かし方があるのね、と驚く料理ばかりで、口に運ぶのがわくわくする時間でした。

漁師さんとも直接お話しできて、これぞ”楽しい食卓”

 

「美味しいね」と笑顔になって、なんだかホッとする。

私たちがつくりたいと思っている景色を見ることのできた時間でもありました。

 

尊敬する海苔漁師さんたちを紹介したい!という想いで始まった『のりのりの』

海苔漁師さんたちの熱量と朗らかさに触れ、「現地に会いに行きたい!」「もっと知りたい!」という声も多くいただきました。

『のりのりの』をきっかけに、海苔の面白さを感じた方たちが、漁師さんたちと繋がり、自然や人の循環にも繋がっていけると嬉しいです。

 

お祭りが終われば、やってくるのはいつも通りの日常。

参加者の皆さんが日々の暮らしの中で、この日出会ったモノやコトや人がポッと思い浮かぶ瞬間があれば、良い時間だったのかなと思います。

参加してくださった皆さん、海苔漁師さんを初め、ゲストの皆さん、スタッフの皆さんの日々の中に、ノリノリな余韻が残っていますように!

ありがとうございました!

WRITER

吉野 さくら

1992年生まれ。宮崎県西都市出身。面白そうな人と豊かな食に出会い、大学卒業後に新潟市の内野町に移り住む。内野町の馴染みの米屋「飯塚商店」を拠点に、「つながる米屋コメタク」を始める。『暮らしの中に「好き」と「隙」を増やす』をテーマに、食や暮らしに関するワークショップを企画運営中。丸いおむすびを結ぶのが得意。

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