- イベントレポート
熱量が街に伝播し、100BANCHは風景に———ナナナナ祭「クロージングイベント こんにちは未来」
7月5日には、NIHONGOの永野将司、MUKUの松田崇弥、IGENGO Lab.の菊永ふみ、Braille Neueの高橋鴻介、という言語に関わる4つのプロジェクトの代表が、各々の視点から次世代のコミュニケーションを考える体験ワークショップ「未来の言語」を開催。
本記事では、当イベントの様子を速報でお届けします。
18時半、参加者の方々が会場に集まってきました。
幅広い年齢層の男女70名が参加しました。イベントが始まるまで、テーブルが同じ初対面の方と歓談をしたり、会場にある展示を見たりと、にぎやかな雰囲気に会場は包まれます。
展示を見ている様子
19時にイベントがスタート。
今回のイベントのタイトルである「未来の言語」とは、“みんながみんな同じ言語を使うこと”を目標に定義された、新しいコミュニケーション方法を指します。音声や文字などといった、既存の言語を超えて100年後の未来言語を発明しようという主旨で企画されました。
関連リンク:未来の言語 | 100BANCH https://100banch.com/events/8730/
まず、NIHONGOの代表、永野将司。永野は、日本にいながらも日本語が使えないためにコミュニケーションがとれない外国人「言語難民」の問題を解決するため日本語教育に取り組んでいます。
次に、MUKUの代表、松田 崇弥。松田は、知的障がい者が作ったアート作品を社会に展開する事業を行っています。
2階の展示会場には実際に、自閉症の方々が作ったデザインのネクタイや蝶ネクタイが販売されています。
IGENGO Lab.の代表、菊永 ふみは、手話と謎解きを組み合わせた「異言語脱出ゲーム」を考案したり、異なる言語同士のコミュニケーションのツール開発やワークショップの開催したりと、新しいコミュニケーションを模索している研究所を運営しています。
最後に、Braille NeueのFounder / Designerである高橋 鴻介。高橋は、新しい点字フォント「Braille Neue」を開発。従来の点字を線で結び、既存の文字としても表現できるようになったことで、点字がわからない目が見える人も、その点字が何を表しているのか一目瞭然でわかるようになりました。
未来言語ワークショップとは、参加者の方々が「みえない」「きこえない」「はなせない」をそれぞれ体験することで、そこで生まれる気づきやエピソードから未来言語を作ることにチャレンジするというもの。役割分担は未来言語カードによってランダムに決まります。
「みえない」の人はアイマスクを、「きこえない」の人はイヤホンを、「はなせない」の人はマスクをそれぞれ装着。その上で、お互いにコミュニケーションをとるのがワークショップのゴールとなります。
まず最初にファシリテーターがお手本を見せます。お題は「出身地をみんなで共有する」。高橋が「出身地は東京です」と言っても、「聞こえない」役の菊永には伝わりません。そこで、永野が地面を指さし、「ここ!」とジェスチャー。菊永はそれを見ながら「あ、東京!」とわかりました。
やり方がわかったら、いよいよ本番です。ファシリテーターもそれぞれ担当のテーブルに入ります。
まず最初のお題は「ニックネームを共有しよう」。
ない人の手のひらにペンで文字を書くなど工夫する人も
目がみえない人の手の平に指で文字を書いたり、耳がきこえない人に文字を書いて見せたりなど、それぞれ試行錯誤しながらお互いのニックネームを共有します。
慣れないコミュニケーションの中で戸惑いながらも、「出身地」や「自分の仕事または活動」など様々な情報をお互いに共有していきます。
一通り自己紹介が済んだら、ここで振り返りです。チームごとに、気付きや改善点を話し合います。「きこえなくなったことで、すごく書き文字に依存していることがわかった」や「みえないとなると、すごく人に頼りたくなる」など、普段の生活からは得られない気付きも。「はなせない人とみえない人同士のコミュニケーションは、はなせる人を介さないとかなり難しい」といった課題もわかりました。
ここで再びカードをシャッフルし、役割を変更。なんとこんどは「筆談禁止(※絵はOK)」という条件つき。一気に難易度が上がり、会場からは「えー!」という声が上がります。
何とか絵で「ルビー」を伝えようとしています
文字が書けないので、代わりに絵を描く人が多くいましたが、何を描いているのかわからないためジェスチャーを重ねてお互いに確かめ合います。ジャスチャーをする人たちにファシリテーターからは「もっと恥ずかしさを捨てないと伝わらないよ」なんて指摘も。最初は照れていた参加者もお題を重ねるにつれてどんどん開放的に伝えられるようになっているようでした。
コミュニケーションを試行錯誤しながら、気付きを共有し、新しいルールを作って再チャレンジ。様々なお題を乗り越えながら、チームの仲も深まってきたのか会場もすごい熱気です。
ここでさらに難易度が高くなります。「みえない」「きこえない」「はなせない」の3種類すべてを組み合わせた「ジョーカー」が登場。
ジョーカーの人は、みることも、きくことも、はなすこともできません
ジョーカーをひいた一人に、ほかの人たちがお題を伝えます。最初のお題は「花」。
手をつなぎながら「花」を伝えようとしますがなかなか伝わりません
皆さん、筆談も声も届かないジョーカーの人のからだに触れながら、お題を伝えようとします。手でつぼみを作って、ゆっくりと開かせるなど、とてもスマートに伝えられる人もいれば、手で花を作ったつもりが「太陽」だと勘違いしてしまう人も。
一旦お互いにフィードバックをしながら、どうやったら改善できるか議論をします。新たにルールを作りながら、未来言語の可能性を探っていきました。
最後は、なんとジョーカーからジョーカーへお題を伝えるという最難関のチャレンジが。
ジョーカーの人以外は何もしてはいけません。ジョーカーの一人は先に体験グッズを装着し、テーマを聞きます。お題は「辛いカレーを食べる」。
お互いにみることができないので、最初から手をつないでスタート
距離感もつかめないうえに、お互い、みることも、きくことも、はなすこともできません。相手の体に触れながら、どうにかして「辛い」「カレー」「食べる」を伝えようとします。
正解者はなんと2名いました。二人羽織りのような状態で、カレーライスを食べたり汗を拭いたりするジェスチャーで伝わったのだそう。
伝わった時のジェスチャーをみんなにシェアします
2時間半以上の長丁場でしたが、最初から最後まで大賑わいの熱気あふれるイベントとなりました。
最後は、ファシリテーター4名が壇上に戻り、イベントを振り返り。ワークショップを通じて、一度勘違いをしてしまうとなかなか誤解がとけないことから「人は自分の信じたいものを信じてしまう」という気付きもあり、そういった思い込みを脱却することが「未来言語」の可能性ともつながるのではないか、という課題も見つかりました。菊永は「未来言語は、できない自分を否定するのではなく、自分を肯定できるような、自分に誇りをもてるような言語にしたい」と語り、会場からは大きな拍手が。
なんと、第二弾もすでに決定しているのだそう。8月18日、同会場にて、時間は未定。今回はワークショップを通じて課題の発見や気付きを得ましたが、次はさらに具体的に未来言語に落とし込むような取り組みも考えているとのこと。