• イベントレポート

100BANCHから、オランダへ。 デザイナーの海外挑戦のリアルを語る報告会を開催

「Braille Neue」や「MIRAI GENGO」など、100BANCHで数々のインクルーシブなプロジェクトを手がけてきた発明家/プロダクトデザイナー・高橋鴻介(GARAGE Program10期)が、1年間のオランダ滞在を終えて帰国。2025年6月26日(木)、帰国報告イベントを100BANCHにて開催しました。

慶應義塾大学でプロダクトデザインを学んだ高橋は、2016年から発明家として活動。2018年には点字と文字を組み合わせたフォント『Braille Neue』で100BANCHに採択され、翌年には「見ない・聞かない・話さない」状態でコミュニケーションを探るワークショップ『MIRAI GENGO』を共同企画。『接点の発明』をテーマに、異なる文化や人の新しいつながり方を探求しています。

今回のイベントでは、「デザイナーの海外挑戦のリアル」と題して、海外での挑戦を通して得た気づきや失敗談、ちょっと言いにくいエピソードまで、ざっくばらんにシェア。「ずっと遠い存在に思っていた海外も、飛び込んでみたら意外と近かった」と語る高橋。その1年間に、何が起きていたのでしょうか?
イベントの模様を、高橋がレポートします。

イベントの冒頭では、オランダ産のチョコレート『Chocolate Makers』とビール『Heineken』で乾杯。特に『Chocolate Makers』は、カカオ豆をコンゴ共和国から帆船で燃料を使わずに輸送し、太陽光で稼働する工場で製造するという、環境意識の高さが話題のブランドです。

 

もともと海外でデザインを学んだり、デザイナーとして働くことに興味はあったのですが、なかなか踏ん切りがつかずにいました。でもそんな中、2022年に勤めていた会社を辞め、自由な身に。「もしかしたら、今がチャンスかも!」と思って、好きなデザイナーが多いオランダに渡ることにしました。

実は海外に長期滞在するのは、これが初めて。英語だってほとんど喋れない。にも関わらず、滞在中のプランは正直まったくなし。住む家すら決まってない状況。そんな縁もゆかりもなく、友人もいないオランダで、1年間の滞在がスタートしました。

 

プロジェクトが、パスポートになった。

実際オランダに訪れてみると、

  • 1年間で15ヵ国を巡り、世界中に友達ができた
  • オランダの財団「V2_ Unstable Media」から助成金をもらって、作品制作をした
  • ヨーロッパ最大級のデザインウィーク「Dutch Design Week」で展示をした
  • 招聘アーティストとして、オーストリアでアーティスト・イン・レジデンスに参加した
  • いくつかの海外の展示会で、自分がデザインに携わったプロダクトを販売した
  • 海外のキュレーターに声をかけてもらって、作品を展示する機会をもらった

などなど、想像もしなかった展開が次々と訪れました。共通して言えるのは、自ら始めたプロジェクトがあらゆるチャンスの“入口”になっていたということです。

特に印象深いのは、オランダで助成金をもらって、アーティスト・イン・レジデンスに参加したこと。何もやることがなかった自分が「なにか始めないと、このままのんびり過ごして終わってしまいそう」と感じて、滞在していたロッテルダムのメディアアート系の財団に作品を持ち込むところから始まりました。

英語では満足に説明できないので、まずは作品を体験してもらうことを意識していました。すると、財団の担当者もとても楽しんでくれて、それが助成金の採択につながりました。

財団担当者からいただいた「移民・難民問題をはじめとして、異なる背景を持つ人々が共に暮らし、共に在る場をつくることは、ロッテルダム市はもちろん、EU、全世界においても喫緊の課題だと認識しています。そんな中、直感的で楽しい体験で社会的な障壁を乗り越えていくアプローチはあなたの大きな強みであり、魅力だと思っています」という言葉は、自分がこれから制作を行っていくにあたってとても大きな力になりました。

アーティスト・イン・レジデンスで開発した、顔で競い合うスポーツ『Facial Sports』。
車椅子ユーザーとともに共同開発。

 

言葉も通じないなか、自分のプロジェクトがきっかけとなって、国を越えて人とつながる。まさにプロジェクトがパスポートになった感覚は、これまでにない経験でした。そこから始まって、プロジェクトを人に見せることで、様々な国でチャンスを手に入れていくようになります。

ヨーロッパ最大級のデザインウィーク「Dutch Design Week」で展示をした触覚を使ったテーマパーク『Touch Planet』。

 

ヨーロッパの面白いデザイン事例や、経験などをシェア

イベントの後半では、用意したトピックをもとに、質疑応答を行いました。いくつか抜粋したものを掲載します。

Q: オランダに渡る前にやっておいてよかったことは?

高橋:圧倒的に英語です。特に単語。単語がわかれば、ある程度話がわかるので。特にポートフォリオを英訳したのがとても役に立ちました。自分の単語帳を作るイメージですね。渡蘭したあとも、日常でわからなかったことをオンライン英会話で確認するという流れで勉強をしていて、それがかなり力になりました。

Q: オランダでのデザイナー/アーティストの生き残り方は?

高橋:ロッテルダムでCream on Chromeというアーティストと知り合ったのですが、彼らは助成金で生活を成り立たせながら、制作をしているということでした。オランダではデザイナー/アーティストへの助成が手厚く、そういった選択肢を取れるのは強みだなと思いました。

Q: ヨーロッパで面白かったスポットは?

高橋:たくさんありましたが、ヘルシンキにある図書館の『Oodi』や、オランダで公共空間の公園化を行っている『RAUM Utrecht』、デンマークにある多文化共生のための公園『Superkilen』などは場作りの事例として面白かったですね。特に『Superkilen』は、世界中の遊具を集めることで、様々な国籍の人に居場所感を提供するという仕掛けがかなり面白かったです。

 

遠いと思っていた海外は、意外と近いかも。

この1年間を経て、強く感じたのは「遠く見えていた海外も、思いきって飛び込んでみたら、案外近かった」ということ。いきなり留学や就職はハードルが高くても、「まずは1年、ワーホリで滞在して、自分のプロジェクトを持って会いに行く」という選択肢もアリかもしれません。自分の作品を通して人とつながり、海外で仕事をする自信もつきました。

あなたも日本を飛び出してみたら、あなたのプロジェクトを必要としている国が、地球のどこかにあるかもしれません。

他にも、世界中の交流や包摂を生み出す事例についてリサーチしています。もしこのレポートを読んで、講演・お仕事の依頼等がありましたら、ぜひ高橋までご連絡ください。お待ちしております。

 

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