- イベントレポート
自然写真と食を通じて、人と自然の距離感を探求する〜存在する写真 × 旅するstudio&cafe─ナナナナ祭2023を終えて
「SHINON」は、自然や原風景写真と、その土地で生まれた木やガラスなどの素材を融合した「存在する写真」を通じて、人と自然の向き合い方を探究しているプロジェクトです。
ナナナナ祭2023では、遠方に行って自然に触れた感覚を渋谷で味わえる「存在する写真×旅するstudio&cafe」を開きました。企画背景や、当日の様子をSHINONの高野がお伝えします。
人と自然のいい距離感:自然作品と食を通じて〜
2023年のナナナナ祭では、この渋谷という大都会で自然と向き合うキッカケになれたらと、木と写真を融合した“存在する写真”の作品展示と“旅するstudio&cafe”を出店しました。
生き物、自然に向き合う写真家として活動しながら、生き物・自然に寄り添うクリエイティブスタジオ 株式会社SHINMEを昨年立ち上げ、
“写真家としてどんな写真家になるのか” “写真家として何ができるのか”
といったことを活動しながら自問し、
その一つの在り方として、写真活動と事業活動を融合させることで、自然や生き物、地域に向き合い、いち写真家としてできることを超えて、より深い繋がりとなり、写真作品としての奥行きや伝えられることが増すのではないかということでした。
そして、さまざまな挑戦を今も続けながら、その一つとして、今年2月から自由が丘 九品仏駅前にスタジオカフェをオープン。撮影のソリューションとしてはもちろん、食を通じて、自然・地域に向き合うことができると考え、ジビエや食材に向き合う店として、日々営業しています。
今回出店した“旅するstudio&cafe”は、そのお店を持つ発想に繋がった最初の挑戦でした。“旅するstudio&cafe”は、自然の中でより一層クリエイティブを楽しめるようにと、中を木造りの内装に、電源を常に供給できるよう走行発電できる車にし、キャンピングカーでもあり、スタジオでもある車を目指したものでした。
この車がさらに進化を遂げるきっかけとなったのは、100BANCHのメンターである東京大学 農学生命科学研究科の岩田先生から紹介いただき、東京大学 富士癒しの森研究所を訪れたことによってでした。所長の齋藤先生に森を案内いただいている際に、食の宝庫であることも改めて気付かされ、この車を通して、食という側面からも自然に向き合うことができないかと模索。その結果、途中から飲食店営業許可証を取得できるキッチンカーの仕様も取り入れ、三位一体の車となり、撮影の現場にも、ファーマーズマーケットや山でのイベントにもこの車で出店するようになりました。この考えが更に進化し、今年オープンしたスタジオカフェに繋がりました。
作品として展示した“存在する写真”は、写真一枚一枚がスクロールで流れていくこの時代に、木に直接写真を印刷することで、ゆっくり写真を見てもらい、より何かを伝えられるものになるのではと、素材と写真を融合させる100BANCHでの実験からでした。木のテクスチャに自然写真が合わさることで、一つ一つの素材ごとに味わいが加わり、一点しかない存在に姿を変えました。今回、素材として活用しづらい皮に近い辺材部分を額縁とすることに挑戦し、その立体感がまた木の個性を引き立たせました。このマテリアルと写真を融合させる活動を積み重ねていくことで、素材自体との距離も近づき、また事業の種にも繋がり、写真の奥行きを模索する形にもなってきていることを実感しつつあります。
こうして1年間さまざまな視点で挑戦した活動の集大成としての2023年の100BANCH出店。
“存在する写真”の作品展示と合わせて、“旅するstudio&cafe”では、自家製ジンジャーエール、ジビエドックなどを提供し、食をきっかけに作品を見てもらう。作品をきっかけに食を楽しんでもらう。その双方からのアプローチから、自然写真を視覚だけではなく、五感と合わせてコミュニケーションをとる手法に挑戦しました。発見だったことは、渋谷という大都会でありながら、訪れる方々それぞれ、お話すると皆、それぞれの大切な自然・地域を持っていることでした。もちろん全員が全員ではないものの、都会に住む人々と自然は距離があるという仮説を持っていましたが、意外にもお話しながら作品を見ながら出てくる声は、自分の故郷や、好きな地域にぜひ撮影に来てほしい。という声でした。都会に住みながら皆それぞれに大切な地域、自然を持っていることを改めて感じました。
結果的にこの作品を通じて、自身の大切な自然に想いを馳せるきっかけになったことはとても嬉しい発見でした。
五感で伝える写真作品×事業
「自然作品と自然を感じながらの食の体験は楽しい。」とのお客さまからのお声もいただき、今後より空間と合わせて五感を通じて作品の世界や、自然や生き物との距離感を近付くことができる世界観を表現、実現させていきたい。と改めて思える出店になりました。
作品を通じた視覚情報だけではなく、食を通じて自然を感じてもらえることで、より体験価値を向上させることを目指していき、自然写真の作品と事業を連動させ、自分達らしく人と生き物、自然の距離を近づける事業の展開をしていきながら、自然や生き物に向き合い寄り添う写真の世界を模索していきたいと思います。
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