2022.01.26 Wed

イギリスにて。大学ムラに住み始める。2022。

  • #2022年 今年の抱負

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あけましておめでとうございます。

University of Universe ー大宇宙大学ーとして学生がオンライン授業の自由性を活用し学校の敷地外で生活を行うことで、学生以外の異なるバックグラウンドの出会いを生み出すことのできる場所を開拓するプロジェクトを行っています、ゆずです。

年の瀬にふと昨年の出来事を振り返ると…

  • 休学をすることなくゲストハウス日本一周し、ゲストハウスの全オーナーを紹介する書籍出版
  • オンライン授業を生かし東京の大学の授業を履修しつつ地域に移住してみる
  • 同じく地域に足を運び始める人が増えたらいいのにと100BANCHにPJ参加

細かなことをあげてしまえば本当にキリはありませんが、怒涛の一年でした。というか昨年のお正月に那智勝浦にいたと思うと、とんでもねえなと思います。

元々自分はいろんな学校以外の“おもろい場所”に出没してはそこにしばらく住んでみて、大学生活を行いつつ新たな事を日々やってみるという実験を繰り返し、発信を中心として活動していました。

“おもろい場所”の定義が曖昧なのは勿論人によって価値基準が異なるから言い切れないというのが主な理由でしたが、自分にとっての“おもろい場所”は、個人の欲が色濃く出ていて、さらにできれば自分と言う存在がパーツの一つとして混ざることのできる場、例えば常連さんばっかりでなんだか怪しげだけど、ひどくネパールが好きなマスターのビリヤニ専門店…「もしこのラッシーいちご味つくってよ!」って言えたらええやんっていつの間にか公式メニューになってる、みたいな。イメージですけどね。わかりづらいよな。

イギリスでもそういう“おもろい場所”を日々開拓する…予定が。

イギリスに来て半年、大学近郊からあまり出ず、発信も全く行わず、課題を行い、大学生らしく遊んでます。お前何しとんねんと思われると思いますよね。私もそう思う。

ただこちらに来て、生活の拠点と行動の選択の関連性を強く実感しましたので、まとめてみようと思いました。

 

オンライン授業が当たり前に浸透する大学

私の通うUniversity of Hertfordshireは、新型コロナウイルスが蔓延する前からオンラインレクチャーも取り入れているハイブリッド体制の学校です。この制度がイギリス通常運転なのかはちょっとわかりませんが、アメリカでは2018年ごろから約35%の学生がオンライン授業を受けたことがあるみたいです(なんでケンブリッジ大学なのにアメリカのデータなのかは謎)。日本ではコロナ後に出てきた一種の流行りのような“オンラインOO”の利便性は既に海外では当たり前だったっていうこともわかります。

引用元・https://hub.birmingham.ac.uk/resources/article/online-degree-programmes-growth-impact-on-education/

とまあ真面目なことを書いてみましたが、うちの大学の時間割はこんな感じです。週に8コマあるうち単位は4単位。1コマのオンライン授業のworkshopと1コマのオフラインlectureで構成されています。

オンライン授業で座学的な学びをインプットし、予習を進め、オフラインでディスカッションを行うという構成が通常。通常全て教室で行うところを半々で行っています。

日本の大学は1単位は約90分1コマで自由にコマ数を増やしたり少なくしたりという感じですが、こちらは単位数が少なく、選考によって自動的に時間割を組まれ、その分自習をたっぷりとる形なので、上記のような整理された時間割が組めます。

場合にもよりますが基本的に全ての講義は録画されていて、後からでも取り戻すことができるスタイル。また評価区分に関しては完全課題制で出欠が関係ないので、めちゃくちゃ飛んでる人とか期末試験会場で初めてみたみたいな人もいます。

とは言っても対面授業は対面授業なので、大体の学生は対面授業に行ってます。

大学はロンドンから約2時間という日本でいえば茨城くらいの距離にあるので、結構な人が寮住まい。大学の中の広大な寮のエリアに現地生、留学生含む3000人以上が住んでいます。とはいってもハリーポッターみたいな建物どん! みんなで食卓を囲む! というわけでもなく、キッチンとリビングをシェアするタイプのマンションがたくさんある団地みたいな感じです。徒歩圏内に過半数の学生が集中している環境はある意味特殊。学生しか住んでいないようなムラに放り込まれたような感じです。

学園都市で学生のみでのムラ生活。今まで学生でない人と暮らして出会えるということをテーマにオンライン授業を活かして地方を飛び回っていた私とは真逆の生活をして半年。

学校外に出て新しい人と出会う

というモチベーションが明らかに下がっていることを自分でも実感しました。何が原因なのだろうか、前提として課題で忙しくてそんな暇がないということが挙げられますが、突き詰めると更なる理由があると実感しました。

 

「大学ムラだけ」で生きる大学生たち

これは私の主観ですが、海外の、特に西洋の大学生はめちゃめちゃ外交的で新しい人と出会うために日々外に出ているという印象があります。毎日都会のパブで新しい人と出会う! みたいな。

しかしながら私だけでなく大体の大学生、特に留学生は、大学内の更に固定された人間関係のみで完結しています。

先日から留学生を対象にとあるインタビュー調査を始めていたのですが、「学内外で日々新しい友人を作ろうと努力しましたか?」という質問に対して「はい」と答えたのは15人中1人のみで、その1人はアジア人の女の子でした。大体のヨーロッパからの留学生は最初に仲良くなった友人グループのみで十分、との回答でした。

私だけ「新しい人・もの・場所」へのモチベーションが薄れたのかなと思っていたのですがそんなこともなく、海外留学に来ているものの、ムラ社会のような大学という施設の交友関係のみで生きている様子はどこか異様感すら感じられたので、その理由を考察してみることにしました。

わかりやすくするため我が大学のことは「大学ムラ」、生徒は「住民」と呼んでみます。

 

第一の理由:新しい土地で人間関係の基礎基盤が作れていない

まず第一に新しい土地に移動して間もないことから基礎基盤が作れていないことが挙げられます。

私を含む特に留学生は、特にこの国に全く知り合いのいない状態。そこから基礎基盤である大学ムラに住み、まずはここにいていいんだという安心感を作らなければなりません。面白いのは、寮に住んでいる学生はクラスメイトやサークルの同期ではなく、同寮生と仲良くなることが多いということ。反対に実家から通うロンドンっ子はクラスメイトとつるむか、あまり大学では友達を作っていない様子が伺えます。

単純に出会う回数が多いと親密度が上がるという理論上、生活の拠点が大学か大学でないかで交友関係の築き方が異なるという点が第一に挙げられますが(第二の理由で後述)、同時に現地学生にとって大学はコミュニティの一つの選択肢なのに対し、インターナショナル生にとってはこの国唯一の土台であり、そこを確固たるものにするまでは他の行動に移りづらいことが理由と捉えられます。

私を含めて留学生は大体3カ月くらい土台作りに時間をかけてます。いかに出会う頻度を上げ、かつある程度持続できるかによって関係性が続くかどうかが決まってくるように考察できます。個人の感覚では週3で特定の個人と会う(遊びに行くだけでなく、夕飯を作ったり大学でしゃべったりも含め)という事を多少の増減はあったにせよ2カ月は継続すると、その後も親密度が保たれると考えられます。

結局は誰も初めの数カ月は確固たる相方的な相手がいない為、頻度と継続性はかなり重要になってきます。一緒に行動できると思った子がしばらく学校に来なくなったから他の子に乗り換えるというような出来事も割と頻繁に起こるのですが、個人の不安定な心理を考えれば納得できます。

なんだか高校のクラスグループみたいな感じですね。結局国と年齢が変わっても、限られた人数のみで構成された社会の独特な感じは変わらないものです。 


大学初月のグループが固まる前にケンブリッジに行った時の様子。人数がおかしい。

大体一緒に行動する子とペースが確立した4カ月目くらいから、ここでやっと学外の活動に目を向け始めるのが鉄板になってきています。一年生の大多数がアルバイトを後期から開始するのも納得ができます。

自身及び多拠点生活をしている学生及び大人を振り返ると、元々の居場所に満足して、新たなる接点を増やしたいから動き始めた、地元が固定されていて狭いから新しいきっかけが欲しくて外に出始めた、という理由が多いと感じます。勿論「居心地がいいコミュニティが見つからなかったから」も大きな理由の一つだとは思いますが、心理的安全性のある居場所があった上で、新しいきっかけも欲しくなったという例は結構な典型例かと思われます。

何もない、という状態で帰る場所となる大学ムラに確固たる存在意義を手に入れるまでは外に出ていく余裕は生まれづらく、強靭な土台を作ることが先行しているのではないでしょうか。

 

第二の理由:都会からほどよい距離と大学内で完結できる設備

二点目はこの大学の“都会から近くも遠くもない”という地理環境と大学構内で完結出来る設備が挙げられます。ロンドンから1時間半の学内に住まいを構えている、更には最寄駅まで徒歩だと40分、バスの頻度も低いという陸の孤島状態の我が大学。当然、校外に頻繁に行く人も少なく、車もない。まあ外部と関わりを持つハードルは上がります。交通費も往復1000円となると馬鹿になりません。

また大学構内にカフェやジム、バーやナイトクラブ、広大な図書館や簡単なスーパーマーケットが設備されていて、値段とクオリティもそこそこ。徒歩10分でイオン的なショッピングセンターと安いスーパーがあります。それ以外は何もないんですけど。

結局のところ学生が求めているものはみんな同じで、大学生の友人と遊ぶこと。家と学校の中に遊び場所が集中しているのにわざわざ毎回ロンドンに行く必要もありませんし、学校そのものの敷地がそこそこ広いことから狭さを感じることもありません。別に都会に出ようと思えば友達と予定を合わせてたまに行くことはできるし、1人でわざわざ行くほど「憧れ」があるわけでもないから、友人と行ったとてロンドンの人と関わることはありません。

これが「地元から出ない郊外の学生の状態」なんだなあと、ふと感じました。現状に強い不満を抱かないんですよ。ちょうどいいんです。ジャスコに遊びに行ければ。

話は変わりますが理由の一つ目であげた「安定した友人」を作る方法が、通常の通学制の大学と大学ムラでは異なっていると考えられます。

大学ムラでは生活を共にしている点から偶然的必然性が重要になってくる点です。みんなアルバイトや地元の友達などの時間を潰せるものがないので、授業以外の時間は完全に空白になります。勿論、部屋で1人で過ごすなどの生活方法もありますが、日用品の買い物や図書館に行ったりするとたいてい顔見知りに偶然出会って立ち話をしたりします。この偶然がかなり大事。

通常、大学と家が離れていると個人の生活範囲がかなり広いことからなかなか日常的な生活まで共有することは珍しく、仲良くなるきっかけとして偶然性より必然性、どこかに遊びに行ったり飲みに行ったり、毎週決まった時間にサークルがあったり。中〜長時間を複数回過ごすことが鍵と言えます。

しかし、全てが狭い敷地に集中していると先にあげた買い物のような、短時間の偶発的な出会いをいかに積み重ねるかが肝になると言えるでしょう。深く集中するか、浅く回数をこなすか、交友関係の定着方法が逆だと考えられます。

60人を超える同じ寮のグループチャットでは毎日誰かしらが「近所のスーパー(徒歩10分)に一緒に行こう」と声をかけて一緒に行ったりするし、私は図書館で勉強するときは一階の入り口の近くという誰が見ても見つけやすい所に席を取るようにしていました。「偶然」をいかに生み出し、空白の時間を共有するかを意図的にやってましたね。

話はそれましたが、結局のところある程度都市部から隔離された場に生活の拠点と学校がまとまっていると、外部との接触もなく全ての交友関係を学内で形成しています。

 

 

第三の理由:3000人という住民の規模感と多様性

三点目は3000人という少なくも多くもない住民の規模感と多様性です。

上述した最低限の安定性を手に入れ、新しいことや人に出会いたいとします。バックグラウンドや国籍、年齢が違う人と話してみたいとします。通常、この場合には外に出て行かなければ難しいと感じますが、3000人もいるとわざわざそんなことしなくても新しい友達くらい作れるやん…となります。

同じ大学とはいえど総合大学な上、国籍もわりとまちまちなので、そう努力して都会に出て行かなくても、バックグラウンドの違う友達は作ることができます。イギリスにいるのにイギリス人じゃない子ばかりと友達になっていく不思議な現象。そんなことすら起きてます。現地生の子はイギリス人だけど。

母体は同じ大学ムラなので共通の知り合いが多くいたりで話題も増え、距離を縮めるのがそう難しくはないと言う点から“わざわざ外に出て新しい関係を構築する意味”が低下しているのだと考えられます。

また日本の大学とは異なる点の、ハウスパーティーとクラブ文化。

たいてい日本の大学生が「飲みにいく」というときは、仲間内で居酒屋にいくか誰かの家で宅飲みするかの二点が主です。しかし海外大学生の通常スタイルはパブかクラブに行って飲むか、誰かの家でオープンパーティーしながら飲むのが定番。それぞれ友人を適当に連れて行ったりクラブでは誰彼構わず踊って絡んだりするので、毎週必ずと言っていいほど新しい人と出会います…日本の合コンが海外で発展しないのは、そんなことをしなくても日々新しい異性に出会えるからと言っていいでしょう。

何とか友人関係は構築して、新しい人と会ってみたい、と思ったとて、わざわざ自分から行動しなくともバックグラウンドの異なる誰かしらには勝手に出会ってしまうことから、満足に感じて外に出ることをわざわざしないという判断に出ると考えられます。

今まで「学校の外」に形成する多様性のあるコミュニティに視点を置いていたのですが、ここにきて反対に「学校の中」に限定された多様性のあるコミュニティから、住まいを伴う生活環境と学生の心情変化の関連性を改めて気付かされています。むしろ限界のあるコミュニティだからこそ考えられる成長や出会いもまた学生の成長に大きく影響を与えるものになるでしょう。

学生という限りある期間の選択肢は、家と学校の往復という暮らしの形を変化させる事でより意義深いものになるのではないでしょうか。2021年は学校の外の施設に意識を向けましたが、2022年は学校の中の施設から見るコミュニティ形成のある住まいの作り方を研究しつつ、後半には学校外の施設の研究も行っていきたいと思います。特に後期終了後にはco-living(コワーキングスペースに住居施設がついた施設)に拠点を移し、コミュニティ形成の違いを研究します。

インプットばかりですね!今年は!

留学開始からめっきり遅くなってしまった発信も少しずつ行なっていけるようにしてます。SNSが中心ですが、ご確認頂けると幸いです!

最近は国際留学生に対し、各国のオンライン授業に対する対応と意見をインタビューで公開配信しています。全編英語ですがかなり興味深い内容になっておりますのでInstagramのリンクからご覧ください!

この記事は100BANCHのメンバーやスタッフが2022年の抱負を語るリレーエッセイ企画です。他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。

100BANCH 2022年 今年の抱負!
https://100banch.com/magazine/resolution/2022/

Twitterではプレゼント企画も実施中!
https://twitter.com/100BANCH

WRITER

university of universe

今村柚巴

2000年生まれ。生きる実験台。オンライン授業を生かし大学に通わず、ましてや東京にすらいないノマドを極める大学四年生。 世界青年の船32期として船で太平洋を横断。その後コロナ禍のゲストハウスを巡り、ひとを伝える本を執筆する日本一周をクラウドファンディングで支援を集め休学せずに実行。どこでも大学にするマン。

#2022年 今年の抱負