私たちにとって最も身近な他者である微生物をケアし、
現代的アニミズムを実践したい
Kin-Kin
私たちにとって最も身近な他者である微生物をケアし、
現代的アニミズムを実践したい
Kin Kin 酒井功雄
こんにちは、Kin Kinプロジェクトの酒井功雄です。
Kin Kinは、「微生物を中心に日常をリデザインし、現代的アニミズムの可能性を模索する」ことを掲げてスタートしたプロジェクトです。
菌とKin(英語で類縁を意味する)を掛け合わせた言葉遊びとして、微生物を通じて私たちの繋がりを再構築していくことを目指して、Kin Kinという名前をつけました。
100BANCHに入居していたのは2年前。「腸内微生物とどのように話せるのだろうか」という疑問を解消するために、微生物ケアを中心に日常をリデザインしてみるという実験を行っていました。具体的には、腸内微生物に良い発酵食品や食物繊維の多い食べ物を食べて、出てくるウンコの様子を観察し、自分の認識がどう変わるかを観察するという実験を、10人ほどと一緒に行いました。
実際に、参加した人のほとんどが腸内微生物をペットのような親密な体内他者として認識するようになり、実験は大成功!
しかしそこでやや燃え尽きてしまい、しばらくは微生物熱が冷めてしまったような時間を過ごしていました。微生物が活発に発酵するためにも、材料を与えて寝かせておくことが必要なように、仕込み直しをしている感覚です。
その仕込み期間には、北インドに留学してダライ・ラマに謁見したり、デザインファームで働いたり、脱植民地化についてのZINEを作ったり、野糞をしに行ったりと、てんでばらばらなことをいっぱいしました。
仕込み期間の一つの成果は、自分の大好きな微生物と、大学で学んできた脱植民地化理論を繋げた卒業論文という形で出来上がりました。
自分がKin Kinプロジェクトを通じて広めていたような、微生物を通じて身体や健康を理解し直すことや、環境と身体を一つの延長線上に捉えることは、今や日本でも自分が大学で学んでいたアメリカでも、腸活ブームの中で一般化しています。
しかし、そのブームをよくよく見ていると、腸活や腸内微生物のケアを語るインフルエンサーたちが、政治的なメッセージを発していることに気づきました。特にアメリカでは、腸活インフルエンサーたちが共和党・民主党どちら側にもおり、微生物のことを語りながらトランプ支持を語るいびつな光景が起こっていました。
そのような状況の中で卒論では、微生物にまつわる言説が実際には人々を規律化し、国家や資本主義的な社会システムの中でコントロールの手段として働いているということについて分析をしました。「微生物とのケア」を語ることは、自分の気付かないうちに政治化されて支配的な言説に取り込まれる落とし穴があると気付かされました。
卒論はそのうち翻訳してZINEとして出版しようかと思っています。
代わりにここでは大学の一番最後の課題で書いた、「野糞は世界構築のプロジェクトである」というテーマのエッセイを貼っておきます。この2年間、100BANCHで実践した実験から得た経験を、いかにアメリカで学んでいる理論を使って解釈して、言葉にしていくかということに取り組んできたので、その一つの結果としてよければ読んでいただければ嬉しいです。
そうだそうだ、今年の抱負を書かなきゃいけないんだった。
この2年間で仕込んで、発酵していた自分の中の材料を卒論を書くので使い果たしてしまった感覚があるので、今はまた仕込み直し期間に入っています。
微生物の実験を沢山していたものの、自分で糀や酵母を作った経験がないことに最近気づきました。(メタファーとしての発酵はいっぱい使っているのに)
なので今年は自分自身で微生物たちと一緒に食べ物を作ってみたり、もっと沢山日本各地の発酵の現場に行ってインスピレーション、そしてより多くの微生物に触れる時間を過ごしたいと思っています。
もう一つ全く関係ないように聞こえるけど、やりたいと思っているのは地図を作れるようになることです。今まで、フィールドワークをしたり、環境問題のデモをしたり、という形で環境や土地と関わってきましたが、自分自身の中に新しい環境との関わり方がほしい!と感じるようになってきました。その時に「地図を作る」という行為が、様々なレイヤーに見える世界を分解し、そこに介入していく新しいフィルターを自分に与えてくれるんじゃないかと思っています。
今年の抱負を書くはずが、ほぼ100BANCHの方々への近況報告になってしまった!まあそれも良いか。
今年もKin Kinは、良いバイブスの微生物たちがいるところへ、飛び回っていきます!
バイバイKin🦠
メンバーたちの抱負をリレーエッセイでつないでいく新春特別企画「2025年 今年の抱負!:巳(実)のなる1年に」をお届けしています。他のメンバーによる記事は以下のリンクからご覧いただけます。若者たちの熱や未来への兆しをお楽しみください。