ICHIGIKU
社会に一つ、新たな軸を。
ICHIGIKU 松広航
2025年も未来に向けた実験を大胆に繰り広げる100BANCH。メンバーたちの抱負をリレーエッセイでつないでいく新春特別企画「2025年 今年の抱負!:巳(実)のなる1年に」。
今日の執筆者は、ファッションのジャンルに新しく「宇宙(Universe)」を追加することを目指す、ICHIGIKUの松広です。
明けましておめでとうございます!
まだ2025年を来年と言ってしまう、2024年に取り残されているICHIGIKUの松広です。
昨年は、ICHIGIKUでの活動を通じて、多くの人々と出会い、宇宙服という切り口に挑戦でき充実した一年でした。まずは昨年を振り返るところから、この新年の抱負リレーエッセイを始めたいと思います。
昨年、ICHIGIKUでは宇宙時代の日常着をテーマに取り組みを進めてきました。
衣服社会における、宇宙環境の視点から、既成概念を壊すこと、既成概念を創造することを「宇宙服の場合」と題し、「宇宙と共に生きる服」を主題に、地球文化に一つの軸を提案することを目指しました。ナナナナ祭やDESIGNARTに出展し、【宇宙服の場合】 Vision1/ヘルメットや【宇宙服の場合】VISION2/FINGER GLOVESを発表しました。ICHIGIKUができたのは2023年の秋。活動が始まってから1年の間で多くの方々に作品やコンセプトを見ていただくことができました(100BANCHの皆様、ありがとうございました!)
https://100banch.com/magazine/64647/
https://100banch.com/magazine/65937/
宇宙服と聞くと、多くの人が最先端の技術や科学を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちが追求しているのは、それだけではありません。宇宙服を通じて、「未来を着る」という感覚を日常の中に持ち込み、変化に対するポジティブな視点を育むこと。それは単なる”衣服”ではなく、人々の想像力を広げ、未来への希望を再び灯すものだと考えています。
2025年と言えば、待ちに待った大阪・関西万博の年でもあります。1970年の大阪万博を知る方々にとっては、当時の未来への希望に満ちた空気を懐かしく思い出すでしょう。私はその時代を直接は知らないものの、「ナナナナ祭2024 ブラッシュアップ合宿 at 大阪」に参加した際、万博記念公園にある太陽の塔を訪れ、その圧倒的な存在感と爆発的なエネルギーを感じました。月の石をはじめとした展示は、人類がついに宇宙へとその手を伸ばした瞬間を象徴し、夢のような輝きに満ちていたのではないかと想像しています。
一方で現在の私たちはどうなのか顧みてみます。技術は日々進歩し、SFの世界で描かれたような未来が少しずつ現実となりつつあります。それに胸を高鳴らせる一方で、未来に対する漠然とした不安や悲観的な見方が広がっているようにも感じます。ニュースを見れば、気候変動や社会問題が次々と取り上げられ、そのたびに「未来へのわくわく感」は少しずつ色あせているようにも思えるのです。
年末年始、餅をむさぼりながらスマホを眺めているとき、偶然目にした一つの記事が強く印象に残りました。
「かつて輝いていた未来へ」
この記事によると、1950年代から70年代にかけて、子供向けのメディアを中心に《未来予想図》が数多く世に送り出されていました。当時のポスターや雑誌、絵本には、空を自由に飛び交う車や、家事をすべてこなすロボット、宇宙に進出した人類の姿など、「明るい未来」のイメージが豊かに描かれ、私たちが理想とする未来がまるで手の届くところにあるように感じられました。未来は未知なる可能性の象徴であり、希望そのものだったのです。
昭和ちびっこ未来画報 ぼくらの21世紀 (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ) ペーパーバック – 2012/2/1
しかし、1970年を境に、その輝きは徐々に薄れていったと言われています。科学や技術の発展に裏打ちされた「科学万能主義」が支えた未来像は、時代の転換点でその陰の側面を露呈するようになりました。産業活動の加速による環境破壊、核技術の軍事利用、技術格差の拡大といった課題が表面化し、科学技術の発展が必ずしも全ての人々に幸福をもたらすわけではないという現実が突きつけられたのです。
科学はそれ自体が善でも悪でもなく、人類の未来を切り開く中立的な手段にすぎません。しかし、当時は科学が全ての問題を解決するという楽観的な「陽」のイメージが先行し、「陰」の部分には目を向けられていなかったのかもしれません。未来への希望が科学技術によって形作られる一方で、その希望を支える土台が徐々に崩れていったことが、「未来予想図」の輝きが失われた理由の一つなのかもしれません。
でもでもでも!どんな困難があろうとも、新たなことを想像し、未知なるものを探求し続けることは人類にとってのお家芸です。立ち止まったり後ろを振り返っている暇はないはずなのです。ここ半世紀は、人類が初めて地球の外へ飛び出し、未知の宇宙へと挑戦した、まさに人類史上でもレアでエキサイティングな時代です。この間、科学技術が進歩することで多くのことが明らかになり、同時に新たな謎も次々と見つかるという、極めてダイナミックな変化を経験しています。多くの困難が生まれ暗いニュースが流れる毎日ですが、そんな時代だからこそ、未来を信じて前を向き、進むことの大切さを強く感じます。
餅を食べ切ると同時に記事を読み終えて感じたのは、かつて未来を信じて疑わなかった人々の情熱や夢、そしてその象徴であった大阪万博のような出来事を、現代の私たちがどのように受け継ぎ、次世代へとつないでいけるのかを真剣に考える必要があるということです。未来に対する夢や希望は、それを支える現実の課題への取り組みとセットで初めて実現可能になるもの。だからこそ、夢を描くことに留まらず、その実現のための行動を伴わせることが重要です。
ICHIGIKUの活動が果たせる役割はますます大きくなっていると感じています。宇宙服を通じて描く未来は、単なる新時代の象徴ではなく、人々が変化を受け入れ、楽しむ力を持つ社会の在り方そのものです。ファッションというジャンルを通じて、環境に適応した素材選びや、文化の変化を柔軟に受け入れ楽しむ姿勢を提案することで、単なる「未来の衣服」を超えた価値を生み出したいと考えています。
私自身、バックグラウンドは工学であり、ファッションとは縁遠い分野からのアプローチをしています。しかし、あえて異なる分野から視点を持ち込み、創造性に溢れたICHIGIKUのメンバーと活動を進めていくことで、これまでにない新しいシナジーが生まれると信じています。技術と文化、機能と美意識といった一見相反する要素を統合しながら、未来の楽しさを創造していけるのではないかと感じています。こういった活動を通じて、科学技術への信頼を再び取り戻し、「かつて輝いていた未来」をもう一度輝かせるためのきっかけを作りたいと思っています。
今年の目標は「跳躍」です。当初は「飛躍」と表現しようかと迷いましたが、あえて「跳躍」を選びました。
「飛躍」には、どこか地面から離れ、空高く舞い上がるイメージがあります。一方、「跳躍」は、地面をしっかりと踏みしめ、その反動で力強く跳ぶ行為です。地球の重力を感じ、足元を意識しながら視座を高め、新しい世界へ踏み出していきたいと思います。
2024年は、試行錯誤を重ねながら、自分たちがやりたいことを言語化し、それを少しずつ具体化できた一年でした。この経験を基盤として、2025年はさらに視野を広げ、社会にインパクトを与える活動を展開する年にしたいと考えています。
それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします!!
メンバーたちの抱負をリレーエッセイでつないでいく新春特別企画「2025年 今年の抱負!:巳(実)のなる1年に」をお届けしています。他のメンバーによる記事は以下のリンクからご覧いただけます。若者たちの熱や未来への兆しをお楽しみください。