• イベントレポート

触覚であそぶ、新しい遊具?『TOUCH PARK』を京都・円山公園で展示!

100BANCHのGARAGE Programの活動期間は3カ月ですが、その期間が終了した後も、100年先に向けたプロジェクトの活動をさらに先に進めるため、100BANCHを拠点にさまざまな実験を行うメンバーが多くいます。時には、メンバー同士がコラボし、新たなチャレンジをすることも。
今回のイベントレポートは、そんな取り組みの一つ。Braille Neueの高橋鴻介と異言語Lab.の和田夏実が参加するクリエイティブコレクティブ・MAGNETが、京都・円山公園で行われた「KYOTO FRAGMENT ART PROJECT」に触覚で楽しむ遊具『TOUCH PARK』を出展しました。その時の様子を、Braile Neueプロジェクトの高橋鴻介が紹介します。

わたしたちと、今回の展示について

まるで磁石のように、他者と自然とくっついてしまうような体験を作ること。MAGNETは、「つなぐ」をテーマに制作を行うデザインコレクティブです。もともと100BANCHで活動していたBraille Neueの高橋鴻介とIGENGO Lab.の和田夏実が、触覚デザイナーのたばたはやと、編集者の木村和博、プロジェクトマネージャーの井戸上勝一とともに、異なる感覚をもつ他者との共創を起点に、人のつながりを生み出すための遊びなどを制作しています。

今年の冬〜春にかけて、GARAGE Programの発展系の活動として100BANCHを拠点に制作させていただきましたので、それがどんなものになっていったのかをお伝えするため、京都・円山公園で3月16日(木)〜19日(日)に実施された「KYOTO FRAGMENT ART PROJECT」の様子を紹介したいと思います。

 

触覚のアフォーダンス

今回の展示では、かねてからチーム内で議論されていた「触覚の可能性」を起点に新作をつくることにしました。「触覚の可能性」といっても様々な視点がありますが、今回、私たちが注目したのは「触覚のアフォーダンス」という考え方です。このアイデアはMAGNETメンバーであり、盲ろう者である、たばたはやとの言葉から生まれました。

「最近は視力が落ちてきて、通訳・介助者と一緒だが、以前は一人で外出することもあった。そのとき、触覚のアフォーダンス(触覚から与えられる意味や情報)から、色々な気づきがある。電車やバスなどに乗ると、乗り物によって手すりの形が違うことが、私には大切な情報だ。物の形状や触った感じによって得られるものは多い」

普段からさまざまなものを触っているはずなのに、視覚を中心に置いた生活では意識される機会が少ない触覚。

「👉」のようなビジュアルから、直感的に方向を理解できるのとおなじく、触覚においても、触った瞬間に直感的に意味を感じる要素があるのではないでしょうか。それを「触覚のアフォーダンス」と定義すると、視聴覚の伝達だけでない、触覚を通じたあたらしい情報の伝え方が生まれる可能性があるかもしれない。そんな仮説をもとに、アイデアを考え始めました。

 

制作プロセス

たばたはやとが触れている身近な触覚について聞いてみると、手すりや点字ブロックなど、移動に関わるモチーフが多いことに気が付きました。

さまざまなアイデアを踏まえ、手すりをベースに具体的なイメージを膨らませていきました。その中で出会ったインスピレーションが、スケートボード。手すりを手でたどる行為から、スケートボードのコースをたどるというイメージが想起されることから、手すりの間を飛び回るように移動する誘導サインのプロトタイプが生まれました。

移動するときに、次に進むべき場所を予感させられるのはもちろんのこと、何より楽しく移動可能なこのアイデア。盲ろう者の主体的な移動にも使えることはもちろん、視覚情報に頼りづらい場所(夜間、野外、火災時で煙がある場合など)の移動にも活用できるのではないかという意見もあり、視覚障がい者や盲ろう者に限らず、すべての人が触覚情報を中心に移動をたのしむ展示になっていきました。

実際の制作では、同じく100BANCH出身の仮設建築プロジェクト・REPIPEの力を借りました。組み換え可能な塩ビ管を用いて、手すりのコースを組み替えられる迷路のような構成を提案してくれました。

 

そして出来上がったのがこの『TOUCH PARK』。目をつぶった状態で、手の感覚と触覚パーツのヒントを頼りに、迷路のような空間を自らの力で進みます。触るだけで次に向かうべき場所がわかる。そんな触覚のアフォーダンスを形にしました。触覚のアフォーダンスを用いた誘導サインのプロトタイプであると同時に、触覚で遊ぶアトラクションにもなっている作品です。

 

展示の様子

実際展示を行ってみると、予想以上の好反応。遊具として展示したからこそ、普段は触覚を意識しない人にとっても、触覚世界の面白さに気軽に出会うきっかけになっていました。

「最初見たときは、目をつぶって移動するなんて無理だと思ったけど、意外とできた」「移動自体がとても楽しかった」という反応も多く、触覚のアフォーダンスの可能性を感じる展示結果に。また「何かこっちにありそう、という予感を感じさせるのが面白かった」という意見もあり、触覚の新たな可能性を広げてくれる言葉も生まれました。同時に、誤った方向に誘導されてしまうことも多々あり、改善の余地もたくさん発見することができました。

今後は、このプロトタイプを活用しつつ、触覚を用いた誘導サインの研究を進めていく予定です。もし興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、一緒に研究しましょう。

TOUCH PARK : https://touchpark.studio.site/

 

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