三軒茶屋のシェアハウスで育んだ文化と ヒューマンリソースをインストール
- メンバーズボイス
チャイはなぜ、あんなに熱くて甘いのか。—ナナナナ祭2022を終えて
あなたは、急に知らない人からチャイを渡されて飲んだことはあるだろうか?インドで実際に『よくある光景』として語り継がれる、チャイについての秘密を探った。
インドでは、街を歩いているとチャイをご馳走してくれるらしい。
ふと、Twitterのタイムラインを眺めているとこんなツイートがバズっていた。
『インドでは、お金を払ってチャイを飲むことは滅多にない。街を歩いていると必ず誰かがチャイを飲むかいと声をかけてくれてご馳走してくれる。インド人にとってチャイはただの飲み物ではなく、初対面の人との距離を縮めるコミュニケーションツールなのだ。』
なるほど、これは面白い。
インドは、数百の民族と22の公用語、そして14億人という世界一の人口を抱える、世界でも最も多様性を体現している国家である。同質性の高い日本で、シェアハウスなどの多様性を受け入れるコミュニティを作っている僕にとって、その秘密を知ることは非常に意義があるし、私だけでなく100BANCHにその秘密を還元することができればきっとさらに面白い場所になっていくだろう。
チャイを作る上で大事なこと
僕は今回の企画でチャイを作ることになったが、僕は料理が得意ではないしチャイを作ったこともない。そのため、まずYouTubeで現地のチャイのお店の動画を徹底的に調査することにした。
様々な動画をみてわかったことは、チャイの作り方は多種多様で、どれひとつとして同じものがなく『一般的なチャイ』というものが存在しないということだ。これには愕然とした。
しかし、何度も見るうちに共通項が見えてきた。それが、『チャイに空気を含ませて、ふわふわにする。』という工程だ。
今回は、街を歩いている人にチャイを奢ると何が起きるのか? という疑問をもとにインドの多様性を受け入れる秘密を解き明かしていきたいと考え、ナナナナ祭で実験を行った。
今回はレシピは比較的シンプルかつ経済的なものになったが、鍋から直接グラスに注がずに、一度チャイサーバーに入れ、さらにやかんに注ぎ、さらにそのやかんからグラスに注いで提供するというスタイルを採用した。これによって、注ぐたびに空気が入ることで最終的にふわふわのチャイが作れたのだ。
さあ、これで実験に進める。
チャイを見知らぬ人に配って飲んでもらう実験
作ったチャイを、まずはナナナナ祭の会場内で色々な人に配ってみた。『美味しい』『インドで飲んだチャイはもっと甘かった』『初めて飲みました』
など、色々なコメントがもらえて素直に嬉しかった。
いや、しかし喜んでる場合ではない。
僕らの目的は美味しいチャイを飲んでもらうことではなかった。
僕らは知らない人から急にチャイを渡されるというシチュエーションを作るために、会場内から会場外へと場所を移した。そう、屋内では来場者はチャイを出店者として認識しているため100%受け取ってしまったからだ。
外でチャイの実験をすると、チャイを受け取ってくれる人の割合は60%程度まで下がった。この時点でチャイを受け取ってくれる人と受け取ってくれない人の大まかな傾向が掴めてきた。
チャイを受け取ってくれない人の特徴は、『私がチャイを受け取れない理由は見ればわかるでしょ?』という言い訳ができることだ。具体的には、片手に何かを持っている、イヤホンをしている、サングラスをしている、相方に確認する、などといったことだ。これらは、チャイに限らず『外界からのアクセスを全て遮断します』という意思表示でもある。
こういった特徴がない人は、比較的チャイを受け取ってくれるかあるいは、『今日はごめんね!』といったようにコミュニケーションとして何かを返してくれる。
さあ、そしてチャイを受け取ってくれた人たちとはどのようなコミュニケーションが生まれたかを振り返ってみる。
飲んでくれた方が最初に発するのは『美味しいですね』『シナモン入ってますか?』『めちゃくちゃ熱いですね!』『これインドで飲んだやつです!』『チャイってこんな味なんですね!』『So sweet!』といった感じだ。
そして、会話はさらに続き『今日も暑いですね…』『私スパイスに詳しいんですが…』『100BANCHずっと気になってたんですがちょっと入ってみようかな…』といった感じで雑談が続き、平均的に3分程度は会話が続くケースが多かった。(もちろん、すぐにありがとうございますと言って去っていくケースもないわけではなかった)
チャイ以外の飲み物を配っていたわけではないので単純に比較はできないが、確かにチャイを飲んでくれた方とはコミュニケーションが続くケースが多いと感じた。
そして一つの結論に辿り着いた。
なぜチャイは熱くて甘いのか
なぜ会話が長く続くのか、僕はその理由の一つをこう推測する。
それは、チャイが熱くて甘いからだ。
チャイが熱くて甘いことで、飲むのに時間がかかる。そして、飲み終わるまでの間、話を続けてみてもいいかなと思ってもらえるのではないだろうか。すぐに飲み終わってしまったら、話を続ける人もいるだろうが、帰ってしまうことも多いのではないだろうか。
インドでもチャイは熱いものを出されるケースが多いと聞く。一説によれば、それは発汗作用を促して体を少しでも熱い状態から冷えさせるという効果があるみたいだが、きっとそれだけではないのだろうと感じている。
ちなみに、僕はまだインドに行ったことがないので、いつかインドに行って、チャイの真実をこの目で確かめてみたい。
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