やさいの色彩や都市型農業の生産プロセスを通して 贈与経済文化の醸成・発信を目指す
- イベントレポート
日本の食はまだまだ可能性だらけ。「EAT VISION3~育てる、つくる、いただく~」イベントレポート
ナナナナ祭2022の2日目、7月2日(土)に行われたのがトークイベント「EAT VISION 3」。食の原点と未来を志向するシンポジウム「EAT VISION」シリーズ第3弾となった今回は、来場者だけではなく、登壇者も会場とオンラインの両方いるハイブリッド形式で開催され、食に関するメンバー5名がそれぞれが食の現場から見て感じたことを縦横無尽に語り合いました。
<インプットトーク>「つくる」と「食べる」の新しい関係づくり
- フードハブ・プロジェクト 支配人 真鍋 太一
- カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役 楠本修二郎
- YASAI no CANVASプロジェクト リーダー 瀬戸山 匠
- ORDERING SYSTEM for aged personプロジェクト リーダー 佐藤飛鳥
- The Herbal Hubプロジェクト リーダー 新田 理恵
日本の食が持つポテンシャルはまだまだ眠っている
最初の登壇者は、農業法人フードハブ・プロジェクトの共同代表として活動する真鍋さん。2015年に参加したワーキンググループで「地域の循環の仕組みづくりが必要だ」という考えに行きついたことから徳島県の神山町へ移住しました。そこで見えてきたのが、神山町の問題であり、中山間地域に共通してある問題である農業者の高齢化や耕作放棄地・鳥獣害などです。
真鍋:農家が育てたものをJAや市場を通して不特定多数の人たちに届ける、というのが農業の単純なビジネスモデルですが、我々は「地域の生活者に届けよう」ということでやってます。農業は地域で産業化されているけれど、生産したものをその地元の人が食べていないという、地域で経済が循環していない問題があります。
真鍋:それが必ず悪いっていう話ではなく、地元のお米を地元で買うという選択肢がないことが問題で、我々はもう一つの選択肢として、地元の食材を地元に残す活動も行っています。フードハブ・プロジェクトは、食堂やパン屋も自ら運営しており、新規就農者もよく訪問してくれる。そこで彼らが言うのは「自分たちが作ったものがどうやって食べられるか、美味しく料理されているがわかるのは(フードハブ・プロジェクトが)他と違うところだ」と言うことです。
真鍋さんは、1978年にGHQ が戦後仕掛けた生活改善運動の一環で作られたという「神山の味」という本を紹介。真鍋さんがバイブルのように思っている本で、「私とほぼ同い年の本ですけど、地域の味を郷愁にしてはならない、次世代に繋いでいかないといけないという、いまの我々の活動と同じことが書いてあります」と語りました。
続いて登壇したのは、「YASAI no CANVAS」の瀬戸山匠。ナナナナ祭2022では、キャスターがついていて動かせる組み立て式の畑「100BANCH farm」を出展しています。
瀬戸山:今回のナナナナ祭では、「みんなで育てて収穫して料理して食べる」っていう一連の行為を100BANCH前のこの狭い空間の中でやることが実験のテーマになってます。渋谷って気軽に行けるけれども、孤独感があるなとか、何かに参加したいのに参加しづらいなとかっていう気持ちを抱えてる人たちが、水をあげるぐらいだったらできる。そういう感覚で参画できるプロジェクトを渋谷でやるっていうのは、実はすごく相性がいいんじゃないかということを考えて今回この企画をやっております。
ORDERING SYSTEM for aged personプロジェクトのリーダーである佐藤飛鳥は、自身が運営する秋田県産の野菜の卸「ゴロクヤ市場」を紹介。ゴロクヤ市場のテーマは「お野菜と一緒に農家さんの想いを卸す」で、秋田の農家さんから仕入れたものを東京の飲食店や量販店に販売しており、昨年からは香港とマカオにも輸出しているそうです。
佐藤:農業ってたくさん課題があり、農業の形や栽培方法まで関わる人の気分によって課題感が違います。私たちは農業に足を踏み入れたからこそ、その課題を一つずつ解決していくのが使命なんじゃないかなって思い、今新しく「イージー」という、高齢者でも使える農作物のBtoBサービスを作っています。
日本の在来植物・薬草を暮らしに取り入れるために伝統茶ブランド{tabel}を立ち上げた、TABEL株式会社の新田理恵は、自身の活動を紹介。
新田:元々私は管理栄養士で、体の健康と食べ物の関係を研究していますが、その一環で「どうやったら健やかな食卓を作っていけるのか」と考えたときに、この薬草というものに出会いました。何百年も前から実はどんな町にでもこの薬草文化というものが根付いていて、おいしいハーブや実はたくさん眠っている。今回ナナナナ祭では、各地で出会ってきた人たちから教えていただいた物語や学びを皆さんにお伝えしたり、逆に皆さんが今まで感じていたような物語を教えていただけたら嬉しいなと思って展示に参加しています。
カフェ・カンパニー代表取締役社長の楠本 修二郎さんは、遠隔からリモートで参加。ご自身が課題として捉えている日本の食文化について語りました。
楠本:やっぱり僕は美味しい良い社会を発展させるかしか日本の勝ち筋はないと思っているんです。日本の食産業は農業から外食小売食品まで全部合わせると117兆円もあります。。しかもコロナ後に世界の人たちがどこに行きたいですかっていうと、アジアではダントツナンバー1の人気で、欧米を含めてもアメリカに次いで第2位。この日本に行きたいっていう人たちの70%が食を経験すると、観光事業も含めると150兆円ぐらいが食関連ということになります。
楠本さんは現在、地方創生のプロジェクト、ウェルビーイングと健康エンタテインメントを掛け合わせたプロジェクト、フードテック関連と、大きく3つの分野で事業の立ち上げを手がけています。
楠本:フードテック、審査などいろいろやらせていただいていますが、断言できるのは「美味しいフードテックがない」ということ。生産効率化や培養肉、マーケティングをAIで学ばせて顧客データ化するなどはあっても、美味しくするというフードテックはございません。美味しくて健康的でサステナブルな日本の食を活かして、美味しく世界に展開する仕組みは、僕はできるなという確信を得ております。
楠本さんは佐藤が自身の事業について説明した「農家さんが値付けができる社会を作りたい」というコメントにも「まさにそう」と同意。「日本って本当にそれが一番できてない国で、食の鮮度の技術があることによって生産者が値付けのマジョリティを持ち、その技術がどのように社会変換を促していくかといったデザインも含めて、大人の責任が問われとるんじゃないかと思っております」と語りました。
農家にとって作物の値付けは実は難しい
登壇者の自己紹介が終わった後は、新田が司会進行を担当。「ワクワクするようなお話ばかりですが、これをもっともっと深めていきたいと思います」と登壇者に投げかけ、クロストークがスタートしました。
「ゴロクヤ市場」の特徴である農家が自ら根付けするという仕組みについて新田は、「経済を回して行く一番のとっかかりとなる部分だと思うんですけれども、それって農家さんがつけるの結構難しかったりしませんか」と佐藤に尋ねると、佐藤は「実際に価格を付けようと思ったら農家さんも価格を付けることに慣れていなかったり、付け方がわからないんですね」との実情を披露。「いままで価格はセリで決められて、実際に収入となるのは数ヶ月後なので、その時期の価格というのを1年後には覚えていません。もっと農家が価格を付ける練習も必要だと思います」と語りました。
一方、新田は「薬草も地方に行けばその辺に生えてる草だから本当に値段が付くだろうかと思っていらっしゃる方もいるけれども、東京だとその薬草は全然取れないし、もっと高い価格でも本当は大丈夫、ということがあり、ちゃんとした価格をつける国内フェアトレードみたいなことはすごい難しい」と自身の経験を語り、「神山町で活動する真鍋さんに対して、東京から来た人と現地の人の感覚が違うなかで、工夫されていることはありますか」と質問を投げかけました。
真鍋さんは、価格付けの事例として自身のパン屋で最初に作った「いつもの食パン」の事例を紹介しました。「もっちりとふわっとした感じの天然酵母の食パンを300円で作ったんですけど、地元のおばあちゃんたちは硬いというんです。そこで、飲める食パンを作ろうと、牛乳100%の500円の食パンを作ったら、みんなそっちを買うんです」。
こうした経験から真鍋さんは「最初から高いのではなく、300円のパンがあって500円のパンがあって、隣のコンビニには200円以下のパンがあるという選択肢が重要」との意見を披露。「こちらを選んでくれるのは価格の設定だけでなく文脈も必要で、そこも気をつけながらやっています」と付け加えました。
文化の伝承は「孫力」にかかっている
続いて新田は世界中で活動する楠本さんに「どういった地域がうまくいっているとか、もしくはなかなかできないとこってどういう課題感があるとか、俯瞰された目線で感じてらっしゃることはありますか」と質問すると、楠本さんは「神山町が本当にすごいですよね、神ですよね」と高く評価しました。
楠本:外から見て「ここいいよね」という人が着目して、外からのプロデューサーではなく中に入村して自らリーダーシップを取ってやっていらっしゃる。SNSで「こんな服が好きだ」といった横のコミュニティは簡単に世界中に広げられるようになりましたが、孫世代とおじいちゃんおばあちゃんという縦のコミュニティで、よそから来た孫世代が「この地域はこんなに素敵なんです」と正面から言える事例が一番強いのではないでしょうか。
新田がこれを「孫力」と呼ぶと、楠本さんは「孫力がひ孫力まで見せると、もうデレデレじゃないですか」とさらにコメント。
「移住をみんながしたくなる仕組みを作っていらっしゃるところも大きいのではないでしょうか」という新田に対して、真鍋さんは「楠本さんがおっしゃっているとおりで、縦につなぐっていうのをすごい意識していて、イベントをやる時も必ずおじいちゃんおばあちゃんがいても子供がいてもその違和感がないものにするようにしています」との考えを披露。最近移住してきてくれる若い世代も地元の人たちとやり取りをしていて、「あんたらだったらええわ」と認められているそうです。
伝承料理の伝承活動を行う「津軽あかつきの会」をサポートする楠本さんは、「地方のおばあちゃんたちが作る料理をなんとかレシピ化したいのですが、かといってそれを見て作ったところであのおばあちゃんの味にならないという課題がある」と、地域文化の伝承をトークのテーマに設定しました。
瀬戸山:それは料理に限らずあって、僕も知りたいです笑。いま神山で師匠のような方に教わっているのですが、言葉が半分わかっているようで、半分はわかっていない笑。感覚的にフィールドが出来上がっていくのですが、あれを習得するにはあと20年30年かかってしまうんだろうなと。数値化するのが当たり前になっているなかでずーっと暮らしているので、それがいますごい弊害になっています。
真鍋:農文教(農山漁村文化協会)さんなんかは、婦人会ネットワークなんかを使って全部聞き書きしたレシピを保存していて、あのネットワークと編集の力は本当にすごいので、皆さんぜひ見ていただけるといいと思います。
真鍋:一番手間がかかる方法は、一緒にまず生活すること。そこは口伝の世界で、でも家庭に受け継がれている手帳のようなものがあるんですね。うちの白桃のおばあちゃんも「おばあちゃんの農業日誌」というのがあって、これより植えるのが遅いとダメだと書いてあったら、本当にだめなんですね。日常的に一緒にいるなかで、それはどんどん引き出していっている。うちの加工チームの女の子たちは、残したいというモチベーションが高いので、きっとうちの町は大丈夫ですが、ほかの町もそうなっていけばいいなと思いますね。
楠本:さっき言った「津軽あかつきの会」を僕の友人が全部レシピ化して本にしたら、青森県ではずっとベストセラーで、今度は日光の方に残っていた江戸料理の古文書を再解釈してレシピ化しようプロジェクトを今やっています。この縦の伝承ラインが消えたら、日本の美味しい国の保全と発展を果たせないので、これは国民運動のようにその伝承していく仕組みを国の事業として作りましょうという話を今やっております。
新田:私も2週間前に群馬県にリサーチに行ったのですが、江戸時代にお医者さんだった井上正香さんという方のお孫さんがいろんな古文書を図書館に寄付をされていて。その中の一冊「農家万年栞」では農家さんは何月何日に何をしようをみたいな感じで全部まとめてくださっている。ただ、私は古文書読めないというのもありまして。それをビジネスとしてうまく回せる仕組みみたいなものもやっぱり大事だなと思うので、民間でできるところとサポートいただくところと、いい形が作れるといいですね。
佐藤:私たちが一番よく感じているのが、山菜採りのおばあちゃん達がそれぞれ自分の取ってる場所を教えたくないということですね。自分の分を取られたら直売所に売れなくなって困るのはわかるのですが、腰を悪くしていけなくなったときに、そのめちゃくちゃ美味しい黒蕨をこれから先も食べるために後を整えるということはやったほうがいい。さっき楠本さんがおっしゃってたみたいな形でまずは一緒に過ごしてほぼ孫になるとか、コミュニケーションが結構大事な気がしています。
佐藤:それで私もみんなでお茶飲んでて、そのホップがどれだけいいかっていう話をみんなで食卓を囲みながらしていたら、私のおじいちゃんが「よし、山に行くか」と言ってくれて笑。外の人たちに評価されたことが私のおじいちゃんおばあちゃんたちもうれしかったのだと思います。
楠本:今ここで議論してる話って、例えばグローバルの視点で見ると、レネさんとかクラウスマイヤーとかがやってきたデンマークの国家戦略の話でもあるわけですよね。彼らは別にそのおじいちゃんおばあちゃんから伝承されてないけれども、それを逆にどうPRしていくかをやってのけたっていうのがいまのデンマークの状況だと思います。だから日本は伝承できるものがまだいっぱいあるからそれをN乗が2掛け合わせてってそれをデータベースにしていくと、ものすごい国になるんですよ。
知財はオープンソースにするべきなのか?
続いて新田は、食に関する知恵をオープンソースにするべきか、という知財の観点からトークテーマを設定しました。
真鍋:オープンするべきだとは思いますけど。知人が先日海外に行って発酵に関するワークショップをやったんですけど、みんな作り方を知ってるんですよね。でもポイントが、正解がわからないこと。どの味が正解っていうのは、ないっちゃないんです。
真鍋:その日本の美味しい味覚の定義を数値化しても面白くない。手法やレシピは公開していいけれど、相応のものを食べるには日本に行かないとどうやらダメらしいっていう風におそらく帰結すると思いますし、その時に我々がちゃんと軸足をやっぱり土の上に置いて、ブレないことをちゃんとやっているのが大事だと思います。
真鍋:知人で鳥取大学の准教授の大元鈴子さんという方がローカル認証制度を研究されているのですが、そういう認証制度って全部海外から来るものばっかりじゃないですか。「なんで日本の認証制度がないんだ?」という話をしていて、世界に誇れる食文化としての認証制度をちょっとなんか一緒に作ろうかみたいな話をし始めています。自分たちのことをちゃんと自分たちでちゃんと評価をして、海外にも発信して、自分たちなりの基準をちゃんと作っていこうよっていうのは責任でもあるし、意識しているところです。
都市圏で食のプロセスを感じられる機会を作るには何が必要か?
地方の話題が中心だったクロストーク前半に対して、後半は都市をテーマに「都市だからできることの手ごたえ」について、新田が瀬戸山に質問を投げかけました。
瀬戸山:私は元々埼玉の越谷で育ってきましたが、周囲に農地はあっても自分は消費者側で、農地は入ったら怒られる場所で、ザリガニ釣りとか小さい頃カエルとったりとかその程度しか多分接点がありませんした。けれど、大学生の時に行ったラオスは、農村では畑にみんないるからとりあえず畑に行けば誰かに会えるみたいな。日本とは逆の環境に驚きました。
瀬戸山:今大都市近郊まで含めて考えた時に、作るプロセスの物語がたくさんあるのに、食べるときに想像力が働かないのってすごいもったいないと思っています。例えばオクラって重力に逆らって生えていて、花もきれいなんだけど、その楽しさを知らずにいるというのが分断の一番危ないところで、農業やりたいという人が増えない大きな理由なのではないか。誰かが作っている畑を一緒に作れたりすると、楽しむというだけじゃなくて、いい影響があるんじゃないかなと思っています。
真鍋:小学校1年生2年生で育てているあさがおの種をオクラの種に置き換えていただけると全員ハッピーだと思います。あのむなしい、何も食べられない朝顔育てるんだったら、オクラの花ってめちゃくちゃ美味しくて素晴らしい。楠本さんにはぜひ文部科学省にお願いして欲しいです。
楠本:このあとの登壇で話をしてみます(笑)。
佐藤:私たちは加工業者的な 6次業者ではなく、地域商社でもなく、あえて野菜の卸という選択をして、県内じゃなくって県外の方に届けるという選択肢を提示することを選んでいます。農家さんたちが作り手のプロであれば、私たちは伝え手のプロとして農家さんの人柄だったりとか、瀬戸山さんがおっしゃっていたような作られ方を伝えていく方法のような、産地と都市との連携みたいなものは今後も考えていきたいと思います。
楠本さんは「都市の役割はやっぱり世界発信とイノベーションセンターみたいなこと」と前置いた上で、「日本版のカリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(料理の学位を付与する非営利のプロフェッショナルスクール)みたいなものってないよね」と指摘。
楠本:経営大学院かは別として、知の集積みたいなことを都市がどれだけ実験できるかっていうのはまさに100BANCHの使命だと思いますけれども、日本ってケーススタディがなさすぎる。都市の役割は発信性と人が集える物理的なアドバンテージで、多くの人、多くの叡智が集った時にどういう実験と失敗ができるかみたいなことが、実は日本の食のイノベーションセンターとしての役割がすごくでかいとか思っているんですよね。
楠本:一番最初に真鍋さんがチラッとおっしゃったんだけど、日本が世界に向けて食をOS化していく仕組みを作る上では重要なのは、生産地から都市部あるいは海外に向けてどう物流を入れてくのかということ。けれど、この物流の科学という一貫体制に対して、みんな部分最適の議論しかしていないから、誰もやらないんですよね。けれどここにご登壇されてる皆さんはその感覚をお持ちだと思うから、このメンバーでチーム作ったら全然できちゃうんじゃないかな。
中規模流通の可能性への挑戦
真鍋:分断の話でいうと、我々の分析では市場がやっぱり全部分断してるんじゃないかという仮説があります。神山の給食は約2000食くらいの規模なんですが、この規模で農家さんをどう支えられるかを一旦組み立ててみようというのが我々が「中規模流通」と言っているところです。複数のレストランを束ねるのってやり取りが非常に細かすぎて、その手間が流通としてはかなり課題になっています。
真鍋:今うちがやれる700食から1000食くらいで、これを2000食ぐらいへ徐々にビルドアップしていくためには、どういう計画で生産していくのかも検証してくるってことになります。うちの農家の中だけだとダメなんで全国のちっちゃい農家さんや市場みたいなとこを使わざるを得ないんですけど、その商品の出口側を我々がコントロールできる状態でどれぐらいの感じになるのかなっていうのは、ここ3年ぐらいで検証できたらなとは思ってます。
楠本:これは私の仮説なんですが、僕ら民間の仕事として地域を「藩」に戻せばいいんじゃないかと私は思ってるんですよね。昔の「藩」は260から300ぐらいあって、山に囲まれたり川で区切られたりして、藩主さんがいて、そこでみんなを食わしてるから元祖地産地消なんですよ。
楠本:去年日経新聞がアフターコロナで住みやすくて働きやすい都市ランキングっていう謎のランキングを発表したんですけど、1位が石川県の小松市で、さらに10都市中の7都市ぐらいが人口15万人ぐらいなんですよ。サンセバスチャンって人口15万人ぐらいなんですが、それくらいの単位の地産地消のその地域性を活かした食の発展がしやすいのかな、というように数字に置き換えてみたらなんとなく目標設定しやすいかなと思っています。
新田:知り合いの知り合いで繋がって行ける範囲で自分たちの家を作るといいますか。自分の自治をつくるといいますが、先ほども基準をつくった方がいいよねとかそういったこともありましたけども、自分たちの意思だったり責任だったりを持ちながら動いていけるような気がしました。
真鍋:都市のサイズは大きな話すぎてよくわからないのですが、議会との合意形成とかそういうのが15万人ぐらいになってくるとかなり複雑になってくるので、フードハブでよくどれぐらいの都市できますかって聞かれる時には、「1万人以下じゃないですかね」と答えています。それ以上ちっちゃすぎても5000人ぐらいまで行けるんですけど、ちっちゃすぎたら商売として成り立たないので。うちはコンビニが一軒あるんで1万人ぐらいは商圏があるとみてビジネスモデルは事業計画組んでるんですけど、売上ベースで言うとその通りに来てるんでしょうね。
新田:それが都市圏だったらまた違う単位になったり、その単位で出来る事みたいなグラデーションがあっても面白いのかなって思いました。
楠本:ビジョンの作り直しだからビジョナリーから考えるという手もあるんだけど、でも実は今起きてることって田畑の話からしないと絶対に解決しないわけですよ。そのビジョンと田畑ということが、これほどまでに近くなきゃいけない時代ってなかったわけですから、今日の皆さんみたいに実践して学びあえたらと思いますし、新田さんにはぜひ薬草の師匠になってもらえたらと思います。8月には月100BANCHの1階でラボをやりますので、今日の皆様にはご案内できるようにできたらいいなと思っております。
トークセッションの終了後、会場に参加された方たちに3人チームを組んでいただき、それぞれのグループに登壇者が入ってのダイアローグ『未来における「おいしい」ってなんだろう?』を実施。それぞれの簡単な自己紹介のあと、食への問題意識を持ちながら偶然同じ場に集った人たちがそれぞれの考えを語り合う貴重な機会となりました。
会の終了後には、かま家のパンや新田さんの薬草茶など、登壇者に関係するフード類も並ぶ立食パーティに。リアル開催で多くの人と集えることは多くの考えに触れ、新たな知見を得られると多くの人が感じたのではないでしょうか。
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