EVENT REPORT

2020.08.28 Fri

80人の<いのち>が光になる——
鼓動を光に変え、祈りを届ける「pray with kodou」がもたらした世界

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2020年7月22日、「KODOU」プロジェクトは今年のナナナナ祭で「pray with kodou 〜いのちが光であったなら。〜」を開催しました。

「KODOU」プロジェクトは、「いのちが光であったなら。」をコンセプトに、ヒトの鼓動を光に変換する作品群を制作。まずは人間の鼓動から始め、今後は、植物、動物、大地、空気など、様々な<いのち>を光に変換していきます。

今回の「pray with kodou 〜いのちが光であったなら。〜」では、オンラインで集った人々が、一人ひとりの鼓動と連動して光る小さなアート作品「kodou」とともに、静かな暗い空間の中で自身のリズムを感じながら、身近な人や遠くの人に祈りを届ける参加型アートプロジェクトを実施。 ナナナナ祭の特別企画として、「The Herbal Hub」プロジェクト(tabel)の新田理恵さんと共同で行いました。

当日の様子を、「KODOU」のプロジェクトリーダー・松島宏佑がレポートします。

1917年、サイエンス誌にフィリップ・ローランという冒険家が寄稿した文章があります。

 

「かれこれ20年も前のことになるだろうか、ホタルがいっせいに光るのをみたことがあった。いや、ただそう思っただけのことなのかもしれない。私は、自分の目がどうしても信じられなかった。というのも、そんな現象は、あらゆる自然法則に反することになるからだ」

(出典:スティーヴン・ストロガッツ『 SYNC』 )

 

ホタルといえば日本の夏の風物詩であり、子どもから大人まで、誰しもが美しさを感じてしまう生き物です。「こっちのみーずはあーまいぞー、あっちのみーずはにーがいーぞー」という歌を知っている人も多いでしょう。しかし、何千匹ものホタルが同期して光るなどという現象は見たことがありません。実際、上のフィリップローラン氏以外にも、ホタルの同期明滅現象を目撃した冒険家や科学者は多いのですが、あまりにも非現実過ぎて、ある冒険家は、「眼が痙攣してしまっていると思った」と語ったそうです。

 

パプアニューギニアに、「ホタルの木」と呼ばれる、一本の有名な木があります。

 

こちらの映像をご覧ください。

 

 

一本の木に数千匹のホタルが集い、完全に同期しながら明滅しています。私は、この映像を見た時に、あまりに美しくて、神秘的で、圧倒されてしまいました。

その後、「ホタルが同期して光るのならば、人間のいのちが光になったとしたら、どんなリズムが奏でられるのだろう。そして、どんな景色が見えてしまうのだろうか」という問いが湧き上がってきました。

この問いが、<いのち>のリズムを光にする、「kodou」 という営みに繋がりました。

 

例えば、地球に見立てたひとつの球を20人が囲み、それぞれの鼓動と連動して光る糸を接続した、ひとつの球を生み出すインスタレーション作品 “we are alive” 。一人ひとりの鼓動が重なり合い、ときにその鼓動のリズムが連動することで、自分と他者の境界がゆらぎ、全体としての<いのち>を感じてしまう作品です。

 

 

しかし、新型コロナウイルスの流行により、人が一箇所に集うこのような体験は提供できなくなりました。

 

そこで生まれたのが、“pray with kodou ”という営みです。

 

世界中からオンラインで集った人々が、お互い顔も見えない、声も聞こえない中で、「kodou」 の光だけで繋がり合い、物理的に会うことは出来なくても、お互いの存在を感じ合う。その上で、pray (祈り)という行為を通して、身近な人、大切な人、世界中の人々、あらゆる生き物たちの<いのち>に想いを寄せる。そんな時間を過ごす体験が、pray with kodou です。

今回のナナナナ祭では「pray with kodou 〜いのちが光であったなら。〜」と題して、tabel の新田さんが特選した「中国茶」との共同企画として実施しました。

この中国茶は飲むだけで血流が活性化し、鼓動への意識が高まるだけでなはく、生命力が昂ぶり、「お茶酔い」と呼ばれる、お酒を飲んで酔っ払った時のように、意識がぼうっとしたり、焦点が定まらなくなったりする効能があるといいます。

これらの効能を持つ中国茶を体験した後で「 kodou」 を体験することによって、身体感覚が鋭敏になった状態で鼓動のリズムを感じ、更にお茶酔いによって、自分の<いのち>の焦点がぼやけ、自分と他者の<いのち>の境界が揺らいでしまうのではないか。

また、このような、個でありながら、個に意識が向かず、全体への意識が向いてしまう状態の時、ホタルの同期のようなリズムの重なりが起こりやすいのではないか。

そして、そのリズムはきっと美しいのではないか——。

 

そんな仮説をもとに、今回のプログラムはスタートしました。

 

参加者に届けたキット

 

参加者のご自宅にはあらかじめ、薬草師でもある新田さんが特別に厳選した、内なる自然を感じることのできる“3種類の中国茶(茶葉)”と、手の平の上で自分の鼓動と連動して光る小さなアート作品「kodou」をお届けしました。

 

イベント当日、まず参加者は新田さんのガイドで、中国茶を1種類ずつ堪能することから始まりました。

1つ目は、文山包種茶(青茶)。台湾の文山という産地で、全ての作業が手作業で行われており、伝統的な作り方で手間隙をかけて作られた、初夏のような清涼感を感じつつ、クチナシの白い花のような香しさを併せもつ銘茶です。

参加者は目を閉じ、中国茶の香りを堪能。身体感覚に身を委ね、同時に、香りが想起してくれる過去の記憶をさかのぼり、生まれた瞬間のことに想いを馳せます。

 

文山包種茶(青茶)

 

2つ目は、老木雲南白茶樹齢800年とも言われる、永い永い年月、地球を見守ってきた雲南省の秘境の茶樹の葉を使用したお茶。微かに発酵させ、白ワインのようなフルーティさと柑橘のような余韻が印象的です。お茶の育ってきた歴史とともに、自分の生まれ今まで育ってきた道のりを思い返します。

 

雲南省の秘境の茶樹の葉を使用したお茶

 

3つ目は、茯磚茶(黒茶)。シルクロードで800年以上も愛される、長く発酵させたお茶です。生命が母なる大地に還っていくような安心感のあるミネラル感や深みのある風味で、終焉とはじまりのお茶でもあります。自分の人生が終わり、死を迎え、土となって大地の一部となっていく、そんな風景を思い描きながら、お茶を堪能しました。

 

茯磚茶(黒茶)

 

参加者からは、次のような声が聞こえてきました。

 

「茶葉がひらくように、自分の身体と心もひらいてほどけてゆくような快さがありますね」

「なぜか思春期の時の、母の姿を思い出しました。当時気づかなかったやみえなかったことなど」

「目をつぶり言葉に耳を傾けていたら一筋の涙がこぼれました」

中国茶の体験を終え、次は、「kodou」の時間です。

 

鼓動と連動して光る小さなアート作品「kodou」

 

目を閉じ、普段は意識することのない鼓動に意識を向け、心臓から全身に行き渡っている血液の流れを感じます。「kodou」 は、脈拍センサを活用して血液の流れを感知し、リアルタイムで脈拍を光に変換。鼓動と血流という身体内部の感覚が、身体外に光として可視化されている様子を体験します。

 

そして終わりに、「kodou」とともに祈りを届けます。

自分の鼓動の光を感じながら、自分のいのちの声に耳を傾ける。大切なヒトの声。場をともにしているヒトの声。世界中のヒトの声。世界中の生きとし生けるものたちの声。

 

声なき声に、耳を傾けるところから、祈りの時間は始まる——。

 

地球上に過去存在してきた、生きとし生けるものたちすべての<いのち>、今この瞬間に存在している<いのち>、これから育まれていく<いのち>、そのすべてに想いをはせ、80人もの参加者が目を閉じ静かに過ごしながら、自身のいのちの光とともに、祈りを届けました。

 

その時の映像がこちらです。

 

※ 映像録画の問題で、参加者80名のうち60名程度の「kodou」のみ収録

中国茶、kodou 、祈り。一体、この場は何だったのでしょうか。

 

正直、主催者である私自身も、何をするための場だったのか、何が行われた場だったのか、なぜこのような場が開催されたのか分かりません。

忙しない日常の中で静かに過ごせた方、過去の嫌な記憶を思い出してしまった方、お茶の美味しさに感動した方、特に何も感じなかった方……。ひとつだけ言えるのは、参加者一人ひとりにとって、違った体験であったのだろうということ。

 

私たちは、この場や体験というものを説明してしまった瞬間に、それが失われていくような気がしています。では、改めて、これはどういった時間だったのか——。

イベントの翌日、ある参加者が一篇の詩を送ってくれました。この「詩」の言葉に代えて、その一端を感じて頂けると嬉しいです。

 


 

中国茶を通して人生を振り返る。

こんなふうに中国茶を味わったのは生まれて初めて。
中国茶の豊かな世界に心を奪われる。
この世に生まれ落ちてから、成熟し、
魂が肉体から離れていく、その瞬間を感じる。

祖母宅がある八女の茶畑を思い浮かべながら、
祖母に包まれるような暖かさを感じながら、
悠久の時を味わう。

そして、真っ暗な宇宙を漂うような…
そんな不思議な感覚も。

次にいのちの鼓動を光で味わう時間。
いのちの鼓動を見つめながら祈りを捧げる。
自分のいのちにここに集まったいのちに
この地球に生まれ落ちたいのちに対しての祈り

何があっても止まらずに
鼓動を続けてくれている心臓に
身体中に血液を巡らせてくれている心臓に
生き続けている自分のいのちに
感謝の念が溢れてきて、
涙がこぼれ落ちる。

職場を出た時には、
不甲斐なくて、情けなくて止まらなかった涙が、

今は、
自分のいのちへの感謝の涙に変わっている

 


 

 

初めに提示した、問いを覚えていますか?

 

「ホタルが同期して光るならば、人間のいのちが光になったとしたら、どんなリズムが奏でられるのだろう。そして、どんな景色が見えてしまうのだろうか」

 

今回の営みから生まれた、祈りの映像。この中には、どのようなリズムが奏でられていたのでしょうか。最初にお見せしたホタルの同期現象は、ホタルのリズムが完全に同期していました。しかし、鼓動は人によって速さが異なります。子どもは早く、歳を重ねると遅くなる。それは生理的な違いによるもの。そのため、人間の鼓動のリズムがホタルのように完全に同期することは原理的にありえません。

しかし、例えば、オーケストラは、一つひとつの音は異なっているのに、全体としてひとつのシンフォニーを形成しています。この祈りの映像を<いのちのオーケストラ>と捉えたとき、あの映像はどのように見えてくるでしょうか。

 

大きな何かの流れがあるようにも見えますし、一切の規則性も存在しないようにも見えます。現在、100BANCHの「Physics As Art」プロジェクトのリーダーであり宇宙物理学者の の加藤雅貴さんとともに、この映像の数学的解析を試みることにしました。

個としての<いのち>と、全体性としての<いのち>。これらは、どのように顕(あらわ)れてくるか。この解析から何かが見えてくるのか。何も見えてこないのかもしれませんが、今はその結果を楽しみにしているところです。

 

 

私たち「KODOU」プロジェクトは、アート、エンジニアリング、サイエンスを駆使して、すべての<いのち>を光にする営みを行っています。このプロジェクトに興味を持ち、ご一緒いただける方は、ぜひご連絡下さい。

特に、鼓動を光にすることを通じた新しい表現を創作するアーティスト、いのちのデータの解析(リズム解析など)を行うデータサイエンティスト、kodou の映像作品を作るための映像作家の方を探しております。

 

「すべてのいのちが光であったなら。」

 

一緒に、この世界観を目撃していけたら嬉しいです。

 

■関連リンク

pray with kodou
https://pray-with-kodou.jp/

tabel
https://tab-el.com/

今回お出しした3種類の中国茶は、下記からご購入できます。
https://tab-el.net/?category_id=54621d8aef3377efb80000f6

祈りの映像でも使用している音楽は、下記からDL可能です。
https://mmmuuukkkuuu.bandcamp.com/releases

「霊性や儀式・信仰などカルチャーを改めて見つめる未来」に興味のある方はこちらもチェック!

■うどんセレモニー

「うどんセレモニー」という儀式を通じて、霊性という調味料を駆使し、自らの手で生涯最高のうどんを作ることにより、うどんに神を感じてほしい。

 

レポート公開中:意味を越えていく価値を——うどん教の儀式「うどんセレモニー」開催レポート

 

■るすにする

「魔除け」を通して着物の面白さを伝え、ファッションで非接触型コミュニケーションをとる未来を作りたい。

https://100banch.myshopify.com/products/kisaburo-kimono-project

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>その他の未来についてはこちらから:まずはこれをチェック! リアル×オンラインで未来を届ける夏祭り「ナナナナ祭2020」キーワード別おすすめプログラム

 

WRITER

松島 宏佑

株式会社 biotope system designer

宮城県白石市出身。物理学科卒業後、島根県にある人口 2400人の島、海士町に移住。田舎ベンチャー企業にて新規事業開発に従事した後、東日本大震災で地元の宮城へ。コミュニティー支援や人材育成事業を行うNPOを設立。その後、東京の組織コンサルティングファームで活動し、宮城と東京の二点地居住を経て、戦略デザインファーム biotope に参画。表の顔として企業向けのビジョンデザイン支援を行いつつ、裏の顔として詩を書き続ける日々。

#ナナナナ祭2020