恐怖心・好奇心と向き合う体験型アトラクションで未来の人々の好奇心や生きる力を育む
Omoracy
恐怖心・好奇心と向き合う体験型アトラクションで未来の人々の好奇心や生きる力を育む
毎月、GARAGE Program※採択メンバーの活動を報告する「実験報告会」。
2019年10月24日に開催した今回は、秋の芸術祭『OKTOBERFEST』で体験型ブースをつくった3名が登壇し、各々の活動を紹介、そしてクロストークを繰り広げました。
今回のテーマは「テクノロジーから新しい体験を生みだす方法を考える」。
欲しい未来に向け、テクノロジーを使う上で心がけていることから始まり、来場者からの質問も交わって、話は「没入、想像力の拡張、エデュース(引き出す)」というキーワードへと広がりをみせました。
※これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム
OKTOBERFESTの様子はこちらから
VRバンジージャンプの試作を重ねる様子。イベント前日についに「どこでもバンジーVR」という名前で池袋でお披露目イベントを開催。
野々村:「Lunar BUNGY」は、健康器具を利用したプロトタイプを使ったもので、地球と月の重力を比べられるようなVR体験ができます。これはYspaceの木村くんと一緒に開発しました。
木村くんが「遊びが学びの原点ですよね」と言うように、アトラクションを体験して楽しかったね、で終わるのではなく、VRを通して宇宙について興味を持つきっかけになるといいなと思って、コンテンツを作っています。
omoracyの目的は、好奇心や生きるチカラを育むことなんです。詰め込み型の教育から、探究型のアクティブラーニングに移行していく時代なんじゃないかと思っていて。遊ぶように学ぶことが、これから必要になってくると思うんです。
自発的な学びのきっかけ
VR×Space Education Project by Yspace 木村亮仁
木村:僕らは2018年6月から、「宇宙×VR」で今までにない視点から宇宙開発を盛り上げていこうという合同会社を設立し、開発を始めています。
今の教育って受験が優先のシステムになっていて、みんな何をやりたいの?ってことが重視されていないと思うんですよね。僕自身もどうして勉強しているんだろうって高校時代につまずいて浪人していた時期があったんです。
まずVRで体験することによって興味をもつ。それが自発的な学びのきっかけになるんじゃないかと思っています。
木村:2019年8月に入居してからは、ワークショップを開催したり、小学生向けの理科教室を開いたり、今日のように展示や体験を通して実証していく実験をしています。
ワークショップでは「VR×教育」というテーマに関心を持ってくれた人が集まり、いろいろなアイディアが出ました。たとえば動物の解剖VRとか、数学のわかりにくい図形の断面図をVRにしてみるとか。関ケ原の戦いがVRで体験できたら、歴史の見方が変わるんじゃないか、というものもあって、面白かったですね。
仮想の世界を体感する
KAMING SINGURARITY 雨宮優
雨宮:普段は音楽フェスのプロデューサーをしています。こんな未来があったらどうだろうっていう世界を1日だけフェスティバルとして表現して、身体感覚から未来の舵取りを考えていく。スペキュラティブデザインとエンターテイメントを掛け合わあせたようなコンテンツづくりをしています。
3年前エネルギーをテーマに、電磁力のフリーエネルギーをつくって未来を表現するフェスをやりました。2年前は経済をテーマにフェス内だけで使える通貨をつくってローカルベーシックインカムみたいな実験を、2018年は直接民主制を使ったフェスづくりをやってみたりしていて。エネルギー、経済、政治とやってきて、「今年何やろうかな、宗教をやろう」と思いました。宗教の未来を考えていくと、AIが神になっていくことがなんとなく予感できて、実際どんな感じなんだろうなと思ってつくってみたというフェスです。
実験報告会の前日にフェスのアフタームービーが完成。当日が本邦初公開となりました。
深く、純粋に自分の興味を深堀りしていく
3名の実験について報告を聞いたところで、100BANCHのオーガナイザーで運営に携わるパナソニック株式会社 コーポレート戦略本部の則武里恵が進行役となり、クロストークに移ります。
まずは今回のイベントテーマ「テクノロジーから新しい体験を生みだす方法を考える」から、来場者にエンジニア的にモノづくりに関わっている人や、体験を生み出す仕事をしている人が会場に集まっていることに着目。3者のプロジェクトとテクノロジーの関連性から紐解きます。
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則武:omoracyの野々村さんとYspaceの木村さんは自分がすごくVRのテクノロジーを研究しているわけではなくて、体験を生み出すコトづくりの人ですよね。
野々村:バンジージャンプで未来につながる活動をしていこうと決めたとき、時代的にVRを取り込むのが楽しいと思ったんです。もっとこうしたらいいのに…と思うところがあって、自分でやるぞ!」って会社を辞めてここに来ました。
木村:僕は理系の単科大学に在籍していて、専門はロボットです。もともとテクノロジー側なんですよね。宇宙開発に関わりたくて、インターンをしていた企業で出会ったのがYspaceの創業メンバーです。どうしたら宇宙開発が盛り上がるか考えていくなかで、宇宙とVRって親和性高いよなって実感して。体験は後付けでした。
雨宮:実は僕も、テクノロジーに特化しているわけではないんですよ。この前は田んぼで泥だらけになって野菜を食べるようなフェスもやりました。僕は未来を予想しているのではなくて、できるだけオルタナティブを増やすことに意味あると思っています。それだけ未来のワクワクが増える、こんな可能性があるなら、まだ生きてていいかって感じられるから。
則武:テクノロジーがバリバリ使われている未来もひとつのシナリオだし、ぜんぜんそうじゃない世界ももう一つの未来ですよね。そういえば、雨宮さんは一緒にPanasonicの技術をつくる部署の人たちに会いに行ったとき、すごくおもしろいって言ってましたよね。
雨宮:使いみちのない技術みたいなのがめっちゃ好きなんですよ。市場のニーズに答えるためのテクノロジーではなく、技術が生まれてそこから市場が生まれるような。副産物的にこんな技術が生まれてしまったみたいなのがワクワクポイントです。僕はエンターテイメントとかアートの領域なので、そういう技術をいくらでも使うことができる。実は明後日やるイベント「aroma for earth-いやしの祭典2019-@TOKYO」で、紹介してもらった技術を使ってみることになっています。
則武:絶対交わらないと思っていた技術者と雨宮さんが真剣に話し始めたとき、なにか真理を探求していく共通言語みたいなものがここにあるんだなと感じました。
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素直な探究心が育つ社会
雨宮のプロジェクトにスペキュラティブデザイン(問題提起のデザイン)のような、未来を探求していくスイッチが入る面白さを感じます。そこから探求や学びといった会話へと転じていきます。
則武:木村さんや野々村さんは、VRで宇宙を体験することをきっかけに、探求していく学びをつくっている。学びという部分をついてどう考えているのか聞かせて欲しいです。
木村:学びを深めていくのは、もっと自由でいいと思っていて。僕らはまだ、好奇心に火を付けるというところにしかアプローチできてないんですが、将来的にはもっと純粋に自分の興味を深堀りしていきたい。今は広く浅くなんでもやることができるけど、なにか1つ突き抜けたひとって、周りのことも見えてる人が多いなって思うんですよね。そうやって自分の興味を後押ししてくれるような未来になったらいいなと思います。
雨宮:なにやるかよりも、どうやるかなんですよ。人生って全部学びだし、コンビニ行けば道徳もマーケティングも、心理学も学べるじゃないですか。やり方がイケてないなと思うのは、数が多すぎるからだと思ってる。人間の意識ってすごい不自然で、感情とかやりたいことが発露していくような環境づくりはもっと狭くていいと思う。
野々村:脳について学ぶなかで、「報酬系」という魅力的でモチベーショナルな行動を誘発する刺激がつくられるのがおもしろくて。小さいころからさまざまな体験をするなかで、どういうことが楽しいかを成長過程でずっと学んでいる。それがその人の行動原理になると思っているんです。
則武:例えば、どんなことでしょう。
野々村:僕は関西の生まれっていうこともあって人を笑わせるのが好きとか、誰も考えてないことをやるぞ!みたいな性格で。たとえばVRバンジージャンプも、誰かが先にやっていたらやる気になってないと思います。今は知識から入る教育が多いですが、自分の体感を大事にする感覚を大切にしたい。自分でいろんな体験をしてきたなかで、予測値との振れ幅が1番大きかったのがバンジーだったんです。
想像力をエデュースする
クロストークが一段落したところで、会場からの質問を受け付けることに。手を挙げたのは、ご自身もVRの開発に関わっているという方でした。
参加者:教育というキーワードが響いています。学んでも使わない、型にはまったものを教えているだけでいいんだろうかと思うんです。たとえばVRで自動車運転を再現するときにも、事故を起こさないためにはどうすればいいか考える。だけどVRだからこそ、人間が倫理的にも抑圧でされたものを解き放ち、可能性をぐっと広げてくれるのがVRなのかなと思いました。
雨宮:VRの価値って、想像力の拡張だと思っています。エデュケーションの語源って、ラテン語のエデュース、引き出すっていう言葉なんですよ。教育ってそもそも引き出すっていう意味合いがあった。社会の秩序や法律、基盤が固まっていくなかで、どうエデュースしていくか。そう考えるとVRは想像力の拡張、つまり自分がイマジネーションできる範囲を広げることができる思うんです。
木村:VRは、まず遊びを拡大する大きなツールだなと思っていて。そこでどんな失敗をしてもいいし、そこで学びがある。そういう感覚が育っていく可能性もありますよね。
野々村: 没入している状態って、自分の意志で行動ができるっていうのが楽しくて、のめり込むっていうことだと思うんですね。そうなったほうが、学びも多くなる。だから頭だけよりも体ごとVRのほうが面白いんです。
則武:没入、想像力の拡張、エデュースされていくという話は、100BANCHのいろいろなプロジェクトでたくさん目撃しています。自分でどんどん深ぼっていく、没入していく。そういうスパイラルに入った人って、羨ましく見えますよね。
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きっと誰しもそういう兆しはある。今回のテーマである「テクノロジー」などを使って、没入、想像力の拡張、エデュースを体感することで、そういう一歩を踏み出すことは誰にでもできるかもしれない。そんな話でこの会を締めくくりました。
(写真:鈴木 渉)
実験報告会 〜自分らしく働くU35のシゴト観〜
100BANCHメンターの 横石崇さんが主催する TOKYO WORK DESIGN WEEK 2019 が本日からスタートし100BANCHメンバーも登壇します。
11/28(木) 100BANCHでも『自分らしく働くU35のシゴト観』をテーマに実験報告会を開催します!
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日時:11/28(木) 19:30〜21:30(開場19:00)
場所: 100BANCH 3F
登壇: 高橋 鴻介 (Kosuke Takahashi) 下西 竜二 (Ryuji Shimonishi) Tokika Okugawa
モデレーター: 加藤 翼 (Tsubasa Kato)
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就職活動を目前に「働く」ってなんだろう?を考えたい方、働きながら他にも色んなことをやってみたい方、好きなことを仕事にしてみたい方など、100BANCHで実践しているメンバーの話を聞きながら、働くことについて一緒に考えてみませんか?