「水槽」という生態系から、 コミュニティと未来について考える
- イベントレポート
【ナナナナ祭2019】渋谷でSTEAM教育体験。疑似シュノーケル体験や落語家ガイドの妄想どうぶつえん。先週末の小さな地球を作るプログラミングやなどのイベントレポートをお届け
パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが運営する100年先を豊かにするための実験区「100BANCH(ヒャクバンチ)」が、7月6日から14日まで『100BANCHナナナナ祭2019』を開催しています。
本記事では7月6日・7日に行われたSTEAM教育関連するイベント「渋谷いきものテーマパーク」「小さな地球を作ってみよう!」のご紹介。ここで紹介されたいくつかの展示は、14日までのナナナナ祭期間中、STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)教育関連の展示として、いつでも無料で見学・体験することができます。ぜひ会場まで足をお運びください。
魚と植物の共生関係アクアポニックスをプログラミングで実現「小さな地球を作ってみよう!」
7月6日(土)にNow Aquaponics!、lightful、Teenetの3プロジェクトからなる、「小さな地球を作ってみよう!」という子ども向けのワークショップが開催されました。
沢山の親子連れが、パソコンの置かれたテーブルに着くと、くにたか先生(邦高柚樹/Now Aquaponics! リーダー)が、ワークショップで中心となる、「生き物の循環」の概念を説明がはじまりました。初めに、子どもたちに「なぜ地球にはたくさんの動物や植物が住んでいるのでしょうか?」と子どもたちに問いかけ、画面に3つの選択肢が表示されると、子どもたち全員が「動物や植物たちが、みんな助け合って生きているから」を選びました。
そして、これからワークショップで使う、生き物の循環をより簡単に示した魚と植物が共生する「小さな地球=アクアポニックス」の説明が行われ、 「これから使う、アクアポニックスの下の部分の水槽には、お魚が住んでいます。この魚のフンが水のなかで栄養分になって、魚の水槽の上にあるお野菜や植物にとってのご飯になります。植物にとっての栄養となり、濾過された水が魚のいる水槽に戻ってくることで、魚たちにとって良い生活環境を作ってくれます」と紹介しました。
説明が終わると、さっそく各テーブルに事前に準備されたアクアポニックスのキットが置かれました。子どもたちは興味津々に見入っていました。
アクアポニックスの下には、LEDライトや給水用のモーターなどと一緒に「micro:bit」という小さなコンピューターがあり、これをプログラミングで制御することで、アクアポニックスに光をつけたり、水を循環させるポンプを動かして、魚と植物が共生するための基本的な環境を実現します。
このmicro:bitは、小中学校で必修化予定のプログラミング学習でも利用される、子ども向けプログラミング学習ツール「Scratch(スクラッチ)」を利用して動かすことが出来ます。今回、プログラミングを教えてくれたのは、Teenetのやながわ先生(柳川優稀/NPO法人ハックジャパン 副代表理事)です。
まず最初に、プログラムは、コマンドという命令が集まったもので、日常の様々なところで使われている実は身近な存在であるといことや、それぞれのコマンドについて教育用動画を使ってわかりやすく説明してくれました。その後、実際にアクアポニックスを動かすためのプログラムを、ひとつひとつ子どもたちに教えていきました。
会場には難なく「Scratch」を進める小学生の姉妹もいました。お話を聞いてみると、ご両親がプログラミングに関わるお仕事をしており、お姉さんはお父さんのお古のパソコンで「Scratch」でプログラミングを楽しんでおり、妹さんもその姿に影響されて、「Scratch」をいじっていたそうです。
みんなが「Scratch」でプログラムを作り終わったところで、パソコンから「micro:bit」にインストールしました。プログラムが作動し、魚を飼育する水槽から植物エリアまで吸い上げられた水は、ハイドロボールやスポンジによってろ過され、水槽に排水されました。
キットの不具合などもあり、ポンプの水圧にばらつきで吸い上げた水の量が多く、なかなか排水されないテーブルもあり、子どもたちが悩んでいると親御さんも参加して議論を始めるテーブルも。
どのテーブルでも、いつしかお父さん・お母さん同士や、他の子どもたちも加わって、「水が多すぎる」「ポンプが動く時間を短くしたら?」「ポンプが動いた後、次に動くまでの時間を長くしよう」などと、自主的に相談しあう姿が見られました。
(※当初お土産でアクアポニックスをお渡しする予定でしたが、キットに一部不具合があったため参加費返金の上で回収を行いました。改良の上で、ご参加頂いた皆さんには改めてお渡しする予定です。)
渋谷に動物園と水族館ができちゃった! 1日限りの「渋谷いきものテーマパーク」
7月7日(日)に、3つのアトラクションを楽しむことが出来る「渋谷いきものテーマパーク」を開催しました。
★「生き物×ものづくりワークショップ」 by STEMee
工学を学ぶ女性の割合が世界ワースト1位の日本では、玩具や売り場が男児用・女児用に分かれており、女児が組み立て玩具に触れる機会が少ないのではないかという仮説のもと、「男女関係なく遊ぶことのできるエンジニアリング玩具」を作る活動をしているSTEMeeによるワークショップ。
まず、簡単な実験で「紫外線を当てると光る物質がある」ということを学びます。そして、海で育つサンゴのなかには蛍光タンパク質という成分を持ち、紫外線で光る種類があることを説明しました。この仕組を応用し「光るサンゴ礁をつくる」ワークショップを行いました。
実際には、おもちゃのサンゴに紫外線に反応して光る蛍光塗料を塗り、サンゴの準備をします。そして、LEDライトと電池パックを接続し、光る姿を体験します。ひとつひとつの細かい作業に、子どもたちも親御さんも一苦労していましたが、無事に完成。
自分の作ったLEDライトが光ると、子どもたちからは歓声があがりました。そして、サンゴをLEDライトのついた電池パックに固定すると、LEDの紫外線が当たり、赤く光る「自分だけのサンゴ」を手に、子どもも大人も満足げでした。
★「渋谷サンゴ礁」 by Inoca
水槽を作るアクアリストでもある高倉葉太さん率いるInocaは、ナナナナ祭期間中の常設展示としてサンゴを健康に育て美しく魅せる水槽を作成しました。今回のワークショップでは、円形のヘルメットをかぶって水槽内の生き物を観察する疑似シュノーケリング体験が行われました。
ヘルメットを支えるスタッフから、水槽の中にいる生き物についても詳しく解説がされ、水槽を横から眺めるのとは全く違った体験に、子どもも大人も大興奮。
たとえば、水槽の中でサンゴの間に隠れている足が細くて長いエビは、自分より大きな魚のからだに付着しているゴミや微生物を食べるため、手を差し入れてみると、魚と勘違いして手に寄ってくるのだそう。実際に手を入れてその様子も観察できたため、周囲に集まった参加者たちは、その様子を興味深げに見ていました。
また、その横では、3Dプリントで制作した6つの惑星に見立てた球体で、それぞれ異なるサンゴが球体を包むように成長する過程を展示。
サンゴは成長に時間が掛かるため、現在は2ヶ月たってもまだ小さなサンゴですが、成長に必要な膨大な時間を想像しながら、その特徴のある美しさを観察できます。
★「妄想どうぶつえん〜もしも落語家が音声ガイドの解説員だったら〜」 by zoojo
動物園の楽しさを広める活動をしているzoojoは、落語家立川かしめさんによる音声ガイドを聞いて、頭のなかで動物を思い描く「妄想どうぶつえん」を紹介しました。こちらも14日までのナナナナ祭期間中、2階で常設展示されるそうです。
「妄想どうぶつえん」では、4、5分程度コンテンツが3種類用意されていました。コンテンツの1つを流してみると、立川かしめさん演じるチャキチャキの江戸っ子ハチゴロウと、さまざまな動物の会話が聞こえてきます。参加者は、その会話の内容から、ハチゴロウが、どんな動物と話しているのかを想像し、絵を描くというものです。
ハチゴロウと動物との軽快な会話から、それぞれの動物が「なぜそのような姿をしているのか」「どうしてそういう特色を持っているのか」をありありと想像することができ、落語の世界観を通じて、動物に対して深い洞察と理解が得られる内容でした。
また、落語らしいオチもちゃんとついており、動物に詳しくなくても、子どもも大人も楽しめるコンテンツです。
平日夜と13日・14日の週末がおススメ、オトナもコドモも楽しめる「STEAM教育」常設展示
イベント詳細:https://100banch.com/events/18117/
ナナナナ祭期間中は、100BANCH 2F GARAGEにて、これまでご紹介したSTEAM教育に関する常設展示が無料で体験できます。会社勤めや学生のメンバーがプロジェクトを行っているため、詳しい解説を聞いて楽しみたい場合は、平日夜や土日の来場がおススメです。
・「STEAM 教育の未来」by Now Aquaponics/lightful/TeeNet
「小さな地球を作ってみよう!」で登場したアクアポニックスのキットが展示されています。それぞれの部位・部品の役割や、育成に適した魚の種類や植物の種類などを解説するパネルがあり、アクアポニックスに関してより深く知ることができます。さらにNow Aquaponics!の活動を紹介するリーフレットの見本を観ることができます。
・「渋谷サンゴ礁」by Inoca
常設で水槽を展示しています。「渋谷いきものテーマパーク」で行った疑似シュノーケリング体験をすることができます。また、水槽の魚に餌やりをすることもできます。
・「妄想どうぶつえん」by zoojo
「妄想どうぶつえん」の音声コンテンツを視聴することができます。さらに、zoojoの制作しているZINEの見本も展示しています。
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