• リーダーインタビュー

Now Aquaponics! 邦高 柚樹×岩田 洋佳: 来たるべき未来、僕は地球をつくる——— 必要なのは、自然に逆らわず、自然と向き合うこと。

100BANCHの2F GARAGEに足を踏み入れると、なにやら大きく存在感のある装置が目に入る。その装置は、水が流れ、魚が泳ぎ、植物が伸びていた。しかし、それ以上のことは分からない。

これは、水産養殖と水耕栽培をかけあわせ、魚と植物を同じ環境で育てる農法「アクアポニックス」を体現した装置で、「水槽」という生態系からコミュニティと未来について考えるNow Aquaponics!プロジェクトが制作したプロダクトだった。

「アクアポニックスは、自然の摂理そのものなんです」と、話す邦高柚樹。そもそも、なぜ「アクアポニックス」に注目しプロジェクトを立ち上げたのか。その先にどのような未来を想像しているのか。このプロジェクトをメンターとして支えた、東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授の岩田洋佳さんとの対談でその根幹を探った。

邦高「情熱だけで応募しました」 岩田「この人、すごい熱いなって」

邦高:もともと知り合いだった100BANCHスタッフがFacebookで「100BANCHができるよ」って投稿していました。これはチャンスだと思って、詳細をよく見たらプロジェクト応募の締め切りが迫ってるから、めっちゃ焦って。急いで企画書を作って、締め切り最終の2分前に提出しました(笑)。2017年4月に転職して九州から都内に出てきた自分にとって、100BANCHがいちばん最初のチャレンジになりました。

岩田:そうだったんだ。実は、僕は魚が好きだったので、農学部でも魚の研究をやろうと思ったことがありました。でも、結局やらずに植物の方に進んでいたところ、邦高くんの植物と魚のごちゃまぜみたいプロジェクトを見つけて、「これはいい!」って(笑)。でも、これって、どこまで本気でできるか半信半疑でした。計画はよさそうだけど、本当に作れるのかなって。

邦高:情熱だけで応募したことを、今でも覚えています(笑)。

岩田:うんうん、どこまで本気なんだろうって気持ちで邦高くんに会ってみたら、本気だった(笑)、この人、すごい熱いなって。だから、どうやって資金を調達できるかわからないけど、熱そうだから、大丈夫だろうと(笑)。なんの根拠はないけど、絶対大丈夫そうな気がしたので、「とにかくこれやろう!」ってね。

邦高:「こんなのあったら、いいですよね!」「いいですよね!」「じゃあ、しましょう!」みたいな、シンプルな流れでしたよね。

岩田:すぐに意気投合したよね。

 

不安要素しかなかった。でも、少しずつ向き合い方がわかってくる

邦高:計画ではすぐに植物を収穫できるだろうって考えがあったので、「収穫して食べたいですよね」って軽い話をしてたんですけど、まあ、道のりはそんなに……。

岩田:甘くはなかったね(笑)。

邦高:はじめから苦労しましたよね。適した水質がなかなか作れなくて、時間がかかってしまいました。それで1カ月くらい経ってしまったので。

岩田:そうだね。「全然うまくいきません、アンモニアが消えません!」ってね。

邦高:アンモニアの濃度が高すぎて、「魚にとって、いちばんマズい場所ですよね」って(笑)。アンモニアの量が多すぎたので、間引いたりしながら水質を最終的に調整できた時点で、ようやくスタートラインって感じで外枠を組み始めました。

岩田:最初は丸いカタチにする予定だったよね。

邦高:理想は地球みたいな球体にして、生態系の循環を表現したかったんですけど、水槽とか重いものを載せるから無理があって。だから、カタチを変えることになりました。水槽の型から決めて、それに合う配管を探してたりして。

岩田:そのあと植物を植えたらジリ貧で育って「これ大丈夫かな」って(笑)。

邦高:分からないことが多すぎて、不安要素しかなかったです(笑)。いまいち植物の成長が遅かったから追加でライトを入れたり、魚と植物が好む水質環境に合った種類を選んだりと、できることからひとつずつ問題を解決していきました。

岩田:だいぶ安定したよね。

邦高:時間とともに向き合い方が分かってきた感じですね。あれは、苦くもいい思い出でしたね(笑)。

岩田:だから、入り口の装置ができたときは感動たよね、「やったー!」って。

邦高:本当にそうですね。やっとカタチにできたってことが大きかったですね。

 

プロジェクトの先にあるのは、人間本来のあたたかさ

邦高:パナソニックの植物工場の見学に行けたことも、とてもよいインプットになりましたね。

岩田:あれはすごかったね。

邦高:その頃は、アクアポニックスで薬草とか漢方生薬とか作りたいって淡い期待を膨らませながら見学に行きました。でも、専門の方と話をしていくうちに、できることとできないことのラインというか、システムの限界を感じました。だからこそ、アクアポニックスでできることが分かってきて、そこから、どんどん楽しくなってきました。

アクアポニックスは田畑でおこなう農業と、テクノロジーで不確定要素を削っていく植物工場の中間のイメージを持っています。田畑の土っていろんな外部からの要因で成り立っているから分からないことが多いけど、アクアポニックスだと室内のワンコーナーで、家族でも子どもだけでも自由に植物が作れるんです。レゴみたいに楽しく組み立てられることができたら、なんかあったかくていいなって思います。

岩田:アクアポニックスは魚も食べられるし、野菜も食べられるから食物を生産するための装置なはずなんですけど、邦高くんの心の中には「いろんな人の部屋に自然を持っていきたい」って、そんな気持ちがあるでしょ?

邦高:ありますね。

岩田:邦高くんの頭の中には、この装置を大規模に生産して薬草を育てるって話がある一方で、個々の部屋に小さな地球を置いて欲しいってイメージもある。そのふたつは全然違う方向だから、その都度であちこち迷いながら進んでいるけど、おかげでいろいろ考えられたよね。

邦高:本当にそうですね。最初は「このプロジェクトをどうしても成り立たせないと!」って気持ちで焦ってたけど、日が経つにつれ、「正解ってひとつでもないんじゃないか」って考えられたことが大きかったですね。ゆくゆくは大規模な生産をするって目標はいいけど、まずは、アクアポニックスがどこでも作れるプロセスを確立したいと思っています。誰でも生産者になれる環境であれば、食糧問題に陥った場合に「自分で食糧が作れるよ」ってことで、貢献できるんじゃないかとひっそり思っています。

 

「置く必要はない、吊すんだ」 化学反応でプロジェクトは進化する

邦高:将来、僕はアクアポニックスのプラットフォーマーになりつつ、そこで新たなコミュニティが生まれる循環を作れたらいいなと思っています。海外ではすでに小規模スペースでビールが作れるプロジェクト「BRUSSELS BEER PROJECT」が進められていて、自分の酵母を作ったりオリジナルラベルを貼ったりしているそうです。自分色のビールを造ってみんなで飲むって単純に楽しいじゃないですか。そういう楽しさを提供するために、今なにができるかを考えてることですね。

岩田:楽しさって大事だよね。今、制作している新しいプロダクトはもっとアート寄りに楽しめるものだしね。まずは都会の人たちが見てキレイだとかカッコいいと思うようなものを100BANCHから発信して、その先にある広い視点もちゃんと見据えることが大事だと思います。新しいプロダクトはこれからデザインするんでしょ?

邦高:もう作っています。3月に開催される「Slush Tokyo 2018」に出品する予定なので、スケジュールがタイトですけど(笑)。新しいものは吊るすタイプなんです。後ろから光を当てたり、水槽を動かしたり、重力によるオーバーフローで水が流れるようにしたりと、いろいろ検討中です。

岩田:これ? カッコいいー!

邦高:昆虫食プロジェクトの高橋くんにプロダクトデザインで参加してもらっています。高橋くんをはじめ100BANCHの人たちと話していると、僕にはない発想を引き出してくれるんです。高橋くんは床に置くのが当たり前だと思っていた水槽の概念を、「これ、吊せる」っていうひと言でひっくり返してくれて(笑)。

岩田:そうだよね。普通、水槽は重いから下から支えてって思うよね。

邦高:100BANCHにはクリエイティブな人が集まっているから、刺激をし合いながら、いい意味で作るものが変化していくんです。最初の計画とはだいぶ変わりましたけどね(笑)。

岩田:よい方向に進んでいるから、今から楽しみだね。

震災で被災経験 根底でつながることの大切さ

邦高:アクアポニックスの概念を知れば知るほど、これって地球に優しいなって思うんです。僕は住宅街で生まれたので、一次産業とは遠い存在でした、でも、阪神淡路大震災で被災した経験によって、今ある平和な環境が明日も続いているか分からないという危機感を常に持っているんです。日本は台風とか地震などの環境要因に影響されやすいので、そんな時に食糧が足りるのかと疑問に感じることがあります。

今の日本は豊富だから見えにくい部分があるけど、被災をしてたくさんの支援をいただいたときに人間の繋がりを感じました。どんな時代でも、みんなが根底では繋がっているってことが大切だと思っています。そんな時にアクアポニックスが役立てばうれしいし、そこであったかい世界が少しでも生まれたら素敵だなと思っています。

岩田:アクアポニックスは「自分たちが食べているものが、一体どんなものなんだろう」ってことを体感できるから教育的にもよいと思います。たとえば、子どもが大事に育てていた魚がいきなり食卓に上がったら、けっこうショックだと思うんです。でも、実はそれが人の営みだったりするので。特に都会で活用することはとってもインパクトがあるし、重要な気がします。

邦高:育てた野菜は食べるけど魚は食べないっていう問題も一緒に考えてもらうきっかけになるかなって思います。

 

農業でも水産養殖業でもない、僕は「地球業」をやっている

邦高:アクアポニックスの概念を知れば知るほど、これって地球に優しいなって思うんです。僕は住宅街で生まれたので、一次産業とは遠い存在でした、でも、阪神淡路大震災で被災した経験によって、今ある平和な環境が明日も続いているか分からないという危機感を常に持っているんです。日本は台風とか地震などの環境要因に影響されやすいので、そんな時に食糧が足りるのかと疑問に感じることがあります。

今の日本は豊富だから見えにくい部分があるけど、被災をしてたくさんの支援をいただいたときに人間の繋がりを感じました。どんな時代でも、みんなが根底では繋がっているってことが大切だと思っています。そんな時にアクアポニックスが役立てばうれしいし、そこであったかい世界が少しでも生まれたら素敵だなと思っています。

岩田:アクアポニックスは「自分たちが食べているものが、一体どんなものなんだろう」ってことを体感できるから教育的にもよいと思います。たとえば、子どもが大事に育てていた魚がいきなり食卓に上がったら、けっこうショックだと思うんです。でも、実はそれが人の営みだったりするので。特に都会で活用することはとってもインパクトがあるし、重要な気がします。

邦高:育てた野菜は食べるけど魚は食べないっていう問題も一緒に考えてもらうきっかけになるかなって思います。

邦高:僕は今「地球業」をやっていると言っています。アクアポニックスは最先端農業と表現される事が多いけど、農業でもあるし養殖業でもあるから、それを組み合わせた表現が本当に難しくて。ずっと考えるうちに、「アクアポニックスって自然の摂理を借りる装置だな」って行き着いて、それなら「地球」の2文字が当てはまると思いました。だから、農業でも水産養殖業でもなく、僕は「地球業」をやっている。

岩田:「地球業」……なるほどね。

邦高:生態という意味も含めて「地球業」ってパワーワードが生まれました。いつか「地球業」がトレンドワードになってほしいですね(笑)。

岩田:邦高くんもそうだし今の若い人たちって、地球とか自然に対する愛がとてもありますよね。だから、目の前に広がる問題をなんとかしたいって思いがひしひしと伝わってくるんです。むやみに魚や植物を収奪したり、大量に化学肥料を使って育てたりすることは、よく考えると地球とケンカしているような気になります。でも、今の若い人は「それじゃダメだよね」って直感的に分かっていて、「僕たちがなんとかしたい」って考えているんです。そのひとりとして、邦高くんにはこれからも大きな愛で「地球業」を育んで欲しいと思います。

 

撮影:岩本良介

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