食やテクノロジー、コミュニティなどの観点から探る新たな可能性
未来のコンビニプロジェクト
食やテクノロジー、コミュニティなどの観点から探る新たな可能性
次の時代に求められるコンビニを一緒に描き、つくっていこうとする「未来のコンビニプロジェクト」。
2/16に未来のコンビニプロジェクト第2回目を開催いたしました。視点を「今」から「未来」にジャンプさせ、未来の暮らしを大胆に描きつつ、その時代にコンビニがどのような役割を担っているか考えを広げていきました。当日の模様を、プロジェクトの企画メンバーである大山貴子がレポートします。
ワークショップを始める前に、第1回終了後、他の参加者とともにコンビニを巡るツアーを企画した参加メンバーの吉原潤一さんに、ツアーの感想を共有いただきました。今回のツアーでは、主要コンビニエンスストア本社ビル近くのコンビニを巡ったとのこと。セブンイレブンではクリーニング機能があったり、ファミリーマートでは広いイートインコーナーや最新のコーヒーマシンを使ったコーヒーの販売があったそうです。またローソンは、からあげクンと遊べるコーナーがあったり、冷凍コーナーがかなり充実していて海外のスーパーのようだったとのこと。各店舗からコンビニそれぞれの特徴がうかがえました。
第一部では、未来の暮らしを考えていく上でのヒントを得るため、参加者の中からさまざまなフィールドで活躍されている4名に、ユニークな活動を紹介いただきました。
■前田塁さん(polca食堂)
食のベーシックインカムをテーマに「polca食堂」という活動を行っている前田塁さん。
「polca食堂」は、夢を叶えるために頑張っている人たちに、無料で料理を振る舞う食堂です。夢を叶えるために頑張っている人が、食の安定を担保できないために、夢をあきらめているのではないか。そうであれば、衣食住の「食」の部分の不安を払拭することで、安心&安定した暮らしができ、やりたいことに専念できる世の中になるはず。
そんな思いから、polcaというフレンドファンディングの制度を使って、夢を応援したい人から資金を集め、夢のある人たちを「食」の面からサポートしています。
今後の展望として「polca食堂」がコミュニティ化し、夢がある人がどんどん集まるようになればとお話しされていました。polca食堂は100BANCHのプロジェクトにも採択されています。
polca食堂 プロジェクト紹介|https://100banch.com/projects/polca-cafeteria
■佐藤達哉さん(プロデューサー、プランナー、フォトグラファー)
佐藤達哉さんは、アートとテクノロジーで人々の認識を変え、違う景色を人にみせるということをテーマに活動されています。最近では、銭湯とアートを掛け合わせ、浴室のなかに巨大な木を設置し、入浴しながら木をながめる「夏至祭」を行ったり、マイクロビーズをお風呂に入れて着衣で混浴するイベントを実施されています。
未来のコンビニプロジェクトでは、コンビニ本来がもつ利便性などの良さをそのままに、アートとテクノロジーを使って新しい価値をつくり出したいと意気込んでいました。
■山倉あゆみさん(フードディレクター)
新潟と渋谷を拠点に、食や農業のプランニングディレクターとして、地域創生伴走型のコンサルティングを行っている山倉あゆみさん。
これまでの主な活動として、新潟県三条市の公共施設内にある飲食店「三条スパイス研究所」の企画から広報戦略、クリエイティブ統括ディレクターを勤められました。
また、今年初めには、佐賀県主体で開催した伝統的なものづくりと地域文化を現代の暮らしに取り入れて佐賀独自の豊かな暮らしを創造していく活動「ニューノーマル」の「たべる」研究会でも活躍。
そこで、敷居が高く料亭や旅館で使われているイメージが強かった唐津焼を、普段の食卓の中に取り入れてみるイベントを実施し、私たちのくらしにどのような変化をもたらすのかを参加者とともに考えました。
未来のコンビニプロジェクトでは高齢者や子供に対して社会がどのような取り組みをしていくかを、コンビニから考えていきたいとのことです。
■村木勇介さん(京都の人)
京都から参加されている村木勇介さんは持続可能社会の実現を目指し、環境課題をはじめ社会課題の解決に取り組む会社に務められています。
その事業の中の1つである、宮城県南三陸町にある町内の家庭ごみ100%資源化およびコミュニティの活性化を目指す「MEGURU STATION」のプロジェクトを紹介いただきました。
この「MEGURU STATION」ではゴミを持ってきてくれた人に感謝ポイントを渡し、ポイントがたまるとコーヒーや花をプレゼントするなど、ゴミ捨て場としての機能だけではなく人が集まる場としての利用を地域住民の人に提案。
結果として、薪ストーブを置いて暖をとる人や、ポップコーン屋さんなどのキッチンカーが集まるなど、コミュニティが生まれたそうです。ごみの循環から始まり、ものの循環が生まれ、結果としてお金が循環するという、小さな経済圏のインフラが生まれました。意識していない行動が環境にいい行動につながっていて、さらに人間関係を良くする活動ができたらと語ってくれました。
第2部では、RE:PUBLICの共同代表 市川文子さんをお迎えしたトークセッションを実施。RE:PUBLICは、会社の理念として「Think and Do Tank」を掲げ、どうやって新しいものが生まれるのかのエコシステムを地域や海外の都市、企業を研究し、実践されています。
今回は、よりワクワクするような未来を描いていく上での発想の広げ方やアイデアの見つけ方について、過去の事例を踏まえながらお話ししていただきました。
まず、これまで関わってきた地域のお話から「地域それぞれが独自にもっている産業や技術、伝統、文化は異なり、それぞれ人の関わり方も異なるため、未来を一つの形に落とし込むことが難しい時代になってきた」と前置きした上で、「今回のコンビニに関しても箱となる部分は一律かもしれないが、それを回している人や関わってくる地域によって変わってくると思うので、そこを考える機会になれば」とお話いただきました。
1. 近江商人の三方よし「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」を意識する
プロジェクトや事業を考える上で三方よしの概念がとても役立つと市川さん。これは、事業をするときには「自分」「相手」「社会」という3つの柱のバランスが整っているかを考えなさいという近江商人の心得なのですが、ここで一番大事なのは売り手である「自分」。
自分が何をしたいか、パッションに思えることを認識することができたら、次に残りの2つが確立されるそうです。この部分をきちんと自分で分かっておかないとアイデアの地盤が緩くなり、揺れ動いてしまいます。チームでは対話を繰り返しながら自分の興味関心に対する問いを深掘り、どんなことを大切に考えているかを言語化することが大切だそうです。
2. 自分がもつ固定概念とはかけ離れた場所から気づきを得る
フィールドワークやインタビュー、リサーチをするときには、自分たちが今まで気づいてなかったような新しく感銘を受けたアイデアを大切にしてほしい、と市川さん。
「設定した問いの答えはきっとこうだ」というような固定概念は一度脇に置いて、人に会い、話を聞き、得た気づきから、自分やチームの問いの答えを考えることが、未来に向けてのアイデアを考える上では重要となります。
コンビニの持つ技術や物流などの関連リソースを、いかに未来の暮らしに向けて変化させるかは、これまでの伝統や文化を2040年に向けてどうやって編み直していくかということに通じるものがあるため、今ある価値を咀嚼しながら考えていくプロセスがとても大事と、強く語っていらっしゃいました。
3. エクストリームユーザーに話を聞きにいく
提言に向けたリサーチでは、できれば固定概念を覆してくれそうな人に話を聞きにいくのがよいとのこと。
リサーチ先の候補事例としてご紹介いただいたのが、高齢者向け住宅の「銀木犀」。施設内には、認知症の入居者によって運営される駄菓子屋さんがあり、近所の子どもたちが駄菓子を買いに集まります。子どもたちの親は、銀木犀の存在やそこでの認知症患者と触れ合いを子どもたちから聞き、併設しているカフェでランチ会をしたりするそうです。
このように高齢者向け住宅内に周辺の人々のコミュニケーションが生まれる場所をつくることで、最終的には街全体が認知症に優しくなることが銀木犀の目標。今では高齢者住宅の域を超えてまちづくりまでに発展しています。
このように一見領域が違うと思える場所でも面白い活動には必ずなにかヒントがあるので、この機会にこれまで気になっていた少し変わった活動をしている人や団体にアプローチしてインタビューするのは、とても面白いのではないかとお話されていました。
第2部後半のクロストークでは、今回の「未来のコンビニプロジェクト」の最終目標であるアウトプットワーク時に必要なポイントについて、市川さんの考えを大きく2つお話いただきました。
まずはじめに、自分がいつもいるコンフォートゾーンの外にある様々な情報にリーチし、スキャニング、チームで共有をして共感性の高い情報は掘り下げてみることが大切だということ。
新聞の一面に載らないトピックでも自分のアンテナに引っかかるものは、今現在はメインストリームにはなってないけど将来的に何か大きなアイデアのタネになりうるものだったりするそう。
これはスタンフォードインスティチュートが1960年代に開発したスキャニングと呼ばれるもので、対象テーマとはまったく関係のない領域の情報をスキャニングしていくなかで発見するインパクトの強い情報は、イノベーティブなアイデアが生まれる可能性を秘めているという未来洞察の手法なのだそうです。
これまで市川さんが出会ったイノベーター達も、スキャニングによって未来を見出したというケースが多いとのこと。こうして個人レベルでスキャニングし、インパクトがある情報についてチームメンバー間で共有し、それが共感性が高かった場合は、実現可能性があるものとして掘り下げていくことで新しいアイデアが生まれる可能性があるようです。
2つ目は、価値観のエクストリームから問いの答えのタネになるような気づきをもらうこと。例えば健康をテーマにリサーチを行いたいとして、小学生や中学生に問いを投げかけても、答えになるような情報はでてこない。
それよりもトライアスロンアスリートや糖尿病を克服した人など、健康というテーマを軸に、今その人がその状態に到達するまでに努力を重ねた上でたどり着いたような人に、彼らがもっている価値観を聞く。または自分の知識や価値観の対岸にいる人に話を聞くことで、自分が思いつかなかった気づきを得ることができます。これらは大概そのまま自分が設定した問いの答えには直接繋がらないが、エクストリームな体験をした人がそこにたどり着いたプロセスの片鱗を知ることは、問いの答えのタネになりえる可能性を秘めているので、設定したテーマに関して様々な角度からエクストリームに取り組む人に会いに行ったり、リサーチを繰り返すことが大事だと主張していました。
最後にチーム内で共通の問いに作り方についてのアドバイスとして、最初はどうしたら〇〇なコンビニになるだろう? の〇〇に当てはまる言葉を推測し、同じような興味関心をもつ人たちが共通で持つ問いを言語化。その後、かかり代をつくれるところや人にヒアリングをしていく中で感じた最初の問いとのギャップをもとにまた問いを考え直す。
すると、対象テーマに対する精度が高まってくるので、その後、出てきたアイデアの中から各メンバーが持っている技術や強みを活かせるようなトピックを切り取り、それを主軸にアウトプットを行うことで質の高い提言になっていくのではとアドバイスをいただきました。
ワークショップ終盤には、市川さんのお話しを経て、今一度自分たちの未来や未来のコンビニの姿を内省した後、最終提言に向けたチーム分けを行いました。共通の興味関心のある人たちで集まり、8チーム(うち1チームは協同ワークを経て最終的に2グループに分かれる予定)に分かれました。各グループごとの対象テーマは以下の通りです。
これから5月の最終提言にむけてどんなアイデアが生まれてくるのか、楽しみです。