Pantomime Drawing

「Pantomime Drawing」は、建築設計図面を代替するドローイングを制作するプロジェクトです。現在は、個別具体的な空間を、図面や言語とは反対の手法で表象するにはどうしたらよいのか、という方向を模索しています。
今回のナナナナ祭2026では、映画のフレームから制作した「人物のみのドローイング」を素材に、参加者が漫画を制作するワークショップを行いました。背景は空白のまま、参加者に手渡し、自分自身の想像で描き込んでもらう、という試みです。その実験の模様を、Pantomime Drawingの金子柚が振り返ります。
今回のワークショップで検証したかったのは、いわゆる「空間」と呼ばれるものが、参加する人の主観によって、どれほど多様なかたちで立ち現れるのかということでした。
図面、写真、パース——建築や空間は、これまで「客観的に対象を示すための形式」で表現されてきました。そこで背景という形に退いてきた、一人ひとりの主観を、ドローイングという手法で拾い直せないか。そんな問いから、このワークショップは組み立てられています。
そして、その主観を引き出す装置として、参加者に「背景画を描く」という体験を提供しました。
ワークショップを設計するうえで一番考えたのは、絵を描けない・描かない人が、いかに楽しく手を動かせるかということでした。
そのために、以下のような工夫を用意しました。
・見本となる背景画の例
・文字を書き込むだけでも、作品として成立することを提示

「絵が描けないから」と最初は身構えていた方も、一度手を動かし始めると、それぞれの世界を紙の上に立ち上げていきました。
体験してくださった方々からは、こんな声が集まりました。
「難しい」
「急に描けと言われても、、」
「意外と楽しい」
「(参加者は)みんな才能があるね」
「すごく考えてしまう」
「普段使わない脳を使った」
「難しい」から始まって、「意外と楽しい」に至る道のり。そして、「普段使わない脳を使った」という言葉——この一言に、このワークショップが引き出したかったものが凝縮されていた気がします。
総勢100名以上の方に参加していただきました。同じ人物ドローイングを素材にしていても、背景に描かれる空間は、まるで別の世界のように立ち上がっていく。そのことを、実際に紙の上に並んだ作品たちが証明してくれました。
一方で、想像していなかったこともいくつかありました。ひとつは、子どもの参加が予想以上に多かったこと。ワークショップの進行を、こちらで完全にコントロールしきれない場面もありました。それは、この体験がある種の予測不可能性を持っていることの証でもあり、今後の設計にとって大事な発見でした。
もうひとつは、「セリフ」に逃げてしまう参加者が思いのほか多かったこと。つまり、背景を絵として描くよりも、文字や吹き出しで世界を語ろうとする傾向です。背景を絵で描くという行為には、私たちが思っている以上に抵抗感が残っているのかもしれません。ですが、これはむしろ興味深い発見でした。
人物と背景(=世界)は、思ったほど強く紐づいていない。世界は、絵として提示されるより先に、「語り」によって作られてしまうのかもしれない。そんな仮説を、参加者のみなさんの手が教えてくれました。
今回、私が最も検証したかったのは、次の三つの問いです。
これから展開したいのは、いろいろな語りやストーリーに対して、具象的な背景を描き出したり、付け加えたりする活動、それを建築と呼べるまでの強度のあるアウトプットとして提示していくことです。
文学、演劇、音楽、雑談、podcast——などなど。

今後、以下のような方々と繋がっていきたいと思っています。
企画者として:メディアアーティスト、建築家、詩人、デザイナーなど
フィールドとして:具体的な場所の設計を必要としている方
ぜひお気軽にご連絡ください。
最後に、ワークショップに参加してくださったみなさん、ブースに立ち寄ってくださったみなさん、そして100BANCHのスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。
みなさんの手が生み出した不思議な世界は、これから冊子として、一冊にまとめられていきます。続きの発表を、どうぞお楽しみに!