• イベントレポート

100年先の未来を描く4プロジェクトが登壇 2025年1月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2025年1月21日に開催した実験報告会では、様々なバックグラウンドを横断して固定観念をナノサイズまで噛み砕き、建築・建てることに向き合い続けるGARAGE Program1期生「SHIMA Doctor Project」の三谷裕樹さん(株式会社ナノメートルアーキテクチャー 一級建築士事務所 代表)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した4プロジェクトが活動を報告しました。

本レポートではGARAGE Programの4プロジェクトの発表内容をお伝えします。

DAJARE PRODUCTS

ダジャレの「発想法」としての可能性を探求する

登壇者:加藤寛大

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/dajare-products

「駄洒落プロダクツ」は、ダジャレの「発想法」としての可能性の探求を目指すプロジェクトです。

加藤:ダジャレが発想法として広まれば、「世の中にユニークなアイデアや商品が生まれやすくなるのではないか」と仮説を立てて100BANCHに入居し、3ヶ月間で主に3つのことを行ってきました。1つ目はダジャレでブレストするワークショップ「ダジャブレ」の実施です。僕はコピーライティングやプランナーの仕事をしているので、言語でものを考えることが多く、“ダジャレ”が割と得意なのですが、他の人はどうなんだろうかと思い、検証してみたくて実施しました。2つ目は「CopyLighting」です。「Writing」の「W」を「L」に変え、人やブランドを言葉で照らす、光をあてることを企画しました。3つ目は「麻雀拳」というボードゲームの制作です。

まず「ダジャブレ」ですが、参加者全員から「今までのブレストで1番楽しかった」という声をいただきました。また、アイデアがテーブルを超えて会場全体でブレストになることもたびたび起こり、ダジャレならではの軽やかさがあると感じました。一方で、アイデアが出しにくくなっている方もいました。ダジャレはブレストを楽しくするのには有効ですが、アイデアの促進につながるかどうかは、その人が言語志向かビジュアル志向かでけっこう変わりそうだと感じました。2つ目の「CopyLighting」ではネーミングを「Lighting」と変えただけで、自分のアイデアをつくるプロセスが変わったことが面白かったです。照らすという意識でやると、照らすために相手のことをより知ろうとしたり、魅力をより発見しようとしたりする動きが強まりました。最後の「麻雀拳」はボードゲームを制作してイベントやマルシェでの販売を行ったりしました。

これら3つの活動をふまえて、「ブレストにダジャレが有効かどうか」を分析してみます。アイデアの幅・アイデアのぶっ飛び度としては◎、アイデアの量としては人によるので◯か△。場づくりという意味では、すごく楽しい場が生まれやすい、人の垣根を飛び越えやすいので◎という評価です。アイデア出しをダーツのように考えると「当たるかどうか」ではなく「とりあえず色んなところにたくさん投げる」という点においては、ダジャレは非常に有効だと思います。「企画としてどうか?」という点では、「人が動くか?」「人が集まるか?」「自己満足しているか?」という3つが揃ったら良い企画だと思うのですが、人が動く・集まる、という点ではまだまだです。人が集まる企画を作るには、「ハードルの低さ」「人が集まる器としての美しさや強度」という2つが大事だと思っていますが、駄洒落にはこの2つ目の「人が集まる器としての美しさや強度」が足りておらず、良い企画になりづらいのでは、と分析しています。

「実験を経て、新たな仮説として、『駄』の塩梅が大事だという説が生まれました。どれだけしょうもないのかを自由自在に調整できるようになることで、ダジャレをブレストとしても企画術としても有効活用できるのではないかと考えています。」と加藤は話しました。

 

LaMuse

ファッションを通じて、誰もが自己表現し、インスピレーションを受け取れる世界を創造

登壇者:鶴健一郎

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/lamuse

「LaMuse」は、AIを活用して誰もがファッションで自己表現を楽しむ世界の実現を目指すプロジェクトです。

鶴:私の友人は、お金の面、技術的な面で服をつくることを諦めました。個人のデザイナーが服をつくる場合、「市場での成功」「製造プロセスの複雑さ」「専門知識」といったさまざまな障壁がありますが、私はもっといろんな人からファッションアイテムがつくられていく世界を見たい、ファッションを通じて誰もが自己表現し、インスピレーションを受け取れる世界をつくりたいと思いました。そこで、生成AI技術を使えば、1人1人の背景やストーリーを反映した個性的なファッションを実現し、新しい形の自己表現をつくり出せるのではないかという仮説を立てました。そして私たちが計画したのが、思い描いたファッションを現実にするプラットフォーム「LaMuse」です。プロンプトを入力するとデザインを生成したり、画像をアップロードでき、その画像を模した服のデザインとなるイメージです。しかし、生産や販売においても障壁がいろいろあります。そのために私たちは服づくり効率化AIツール「パタンナーAI」も開発しています。服をつくる際に必要な型紙をつくる専門職の方をパタンナーといいます。デザイナーによるデザイン画を基にサンプルパターンをつくったり、縫製仕様書を作ったりする職業です。このパタンナーとデザイナー間のコミュニケーションを最適化し、仕様書を効率よく作ることができるのが「パタンナーAI」です。まだ型紙を作るところまではできないのですが、型紙を自動生成できるようにすることで、より完成度を高めていきたいと思っています。クリエイターの可能性を解き放ち、アパレル産業を民主化できるのではないかと考え、企業がアパレルブランドを運営するのではなく、個人が直接市場とつながって、自分たちの思い描いたファッションアイテムを世の中に出すことができる、そんな仕組みを作っていきたいと思っています。

「最終的にパタンナーAIはLaMuseのプラットフォームに統合することを考えています。現在、資金調達も完了したので、9月の正式リリースに向けて開発を進めています。」と鶴は話しました。

 

Spring Creators

親子の信頼を深め二人三脚の受験を支援するアプリを開発!共に成長できる体験を提供する

登壇者:中能真之介

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/spring-creators

「Spring Creators」は、親子の絆と信頼を深め、二人三脚で中学受験を乗り越えるためのコミュニケーションアプリ「サクラサク」の開発を目指すプロジェクトです。

中能:私が取り組む分野は教育コミュニケーションです。何も心配せずに勉強に集中することができる環境を作りたいと考え、教育を受ける子供と親に、円滑なコミュニケーションを提供するアプリケーション「サクラサク」の開発を行っています。100BANCHでの進捗ですが、高等専門学校から招いたFlutterのエンジニアがジョインし、どんどん開発を進めている状況です。さまざまな機能を広げ、最終的に検証できるところまで持っていくのを2月に予定しています。また、UIの大幅な改善と機能の見直しを行い、「ホウコク」機能を新たに追加しました。「これやったよ」と勉強の成果を親に報告することで会話が促進できないかという仮説を立て、現在、検証を進めています。そして、Instagramメディア「サクラナビ」を開設し、運営を始め、ユーザーテストのための顧客獲得を始動しました。「サクラナビ」は、中学受験を経験した学生が届ける中学受験情報メディアで、毎週土曜に配信する予定ですが、配信のペースはどんどん上げていきたいと思っています。目的はアプリ「サクラサク」へのコンバージョンなのですが、メディアを通じて、中学受験の親子が集まる場にしたいという思いもあります。

「サクラナビ」をメディアなどに広げていき、ファイナンスの具体化を進めていき、アプリを法人として運用していきたいと思っています。「サクラサク」はコミュニケーションツールという中心軸は変えないのですが、将来的には、中学受験のマネジメントや情報収集など、すべてがアプリ内で完結するスーパーアプリを目指していきたいと考えています。そして、アプリ内のコミュニケーションデータなどを活用し、次のイノベーションにつながるインサイトを収集していきたいと思います。

「どうやって学習を最適化するか、のようなサービスはすでにたくさんありますが、ユーザーが学習に集中できるようにするサービスはほとんどありません。我々はそちら側を攻めていきたいと思っています。」と中能は話しました。

 

A1 ROAD

DAO(自律分散型組織)で境目のない滑らかな世界をつくりたい

登壇者:田村一馬

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/a1-road

「A1 ROAD」は、DAO(自律分散型組織)によって世界の境目をなくし、全人類へのWeb3の拡大を目指すプロジェクトです。

田村:我々は経済的な制約による機会の減少が妨げられる世界を作りたいと思っています。先進国と発展途上国みたいな大きな話ではなく、身近な課題として地方や地域間格差を大きな課題と考え、プロジェクトを進めています。地域や地方の文化の存続問題は大きいです。産業が弱体化してしまい、地域経済で自給自足できなくなってしまっていたり、人口流出が激しくて文化自体がなくなってしまっていたり、派閥であるとか目には見えないけれども権力者の空気があったり、などが大きな課題です。そのソリューションとして、私たちはコミュニティを選びました。なぜならコミュニティは、地域の資源を物理的な障壁なく共同保有でき、現実の社会にある力学を気にすることなく、いいものをいいものとして認めてくれる人たちを外部・内部から呼び込むことができるからです。我々の仮説は、文化の価値を世界中・日本中の人たちと共同所有することで保全と継承につながるのではないか、というものです。この6ヶ月検証した結果、「結局はLINEが最適だ」ということがわかりました。また、AI×Web3は好反応でした。そして、文化のみならず、伝統産業に対しても大きなニーズがあることを発見しました。

現在は、沖縄県の石垣島でシンポジウムの運営支援をしたり、登壇させていただいたりしています。そして、助け合いの精神を前面に押し出し、全員で八重山の文化を育てていこう、というコンセプトで「石垣島DAO」というバーチャルコミュニティをつくっています。島民と島民以外、老若男女が交流して、地域課題への交流や理解を深めることを促進するものになっていて、コミュニティの貢献を可視化し、主体的にコミュニティのつくり手になることによって、石垣島周辺の「くにづくり」を実現しています。扱うテーマは主に人口の減少や食料自給率のような社会課題などで、LINEグループから投稿ができます。島外の方も、地元の人しか知らない秘密のスポット情報が知れたり、限定のクーポンがもらえたり、島の方々と一緒に体験をつくることができます。3ヶ月間でLINEの登録者が200名くらい増え、少しずつユーザー体験を磨いているところです。今後はブロックチェーン技術を導入していきながら、提携先を増やし、導入を増やしていかなければいけないと思っています。そして導入数を増やすことで、ユーザー体験の定量的な改善を行い、さらなるユーザーの増加や、いろんな方が使ってくれるようなものにしていこうと思っています。

「言語や伝統産業についてヒアリングを重ねた結果、レガシー化が進む中小企業が実はかなり多いことに気が付きました。石垣島に続き、京都府でも半年から1年ほどの実証実験を行おうと考えています。」と田村は話しました。

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。​​​​

DAJARE PRODUCTS https://www.youtube.com/watch?v=YWzADUsWF8A

LaMuse https://www.youtube.com/watch?v=zgOfZNE7n98

ProjectSpring Creators https://youtu.be/EK9zwzA5n4Q?si=IeE9IBeRBHgRnb_W

A1 ROAD https://www.youtube.com/watch?v=DJWd5pgZpd8

次回の実験報告会は2月19日(水)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

 

<次回実験報告会>

「食べる喜びを未来に結ぶ、新しいおむすび屋のカタチ」100BANCH実験報告会

 

 

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・食に興味がある
・地域に興味がある

【概要】

日程:2/19(水)

時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

 

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/67718/

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