培養肉技術から生まれた、
身体を育む培養液エナジードリンクをつくる
A cultured energy drink
培養肉技術から生まれた、
身体を育む培養液エナジードリンクをつくる
A cultured energy drink 田所直樹
2025年も未来に向けた実験を大胆に繰り広げる100BANCH。メンバーたちの抱負をリレーエッセイでつないでいく新春特別企画「2025年 今年の抱負!:巳(実)のなる1年に」。
今日の執筆者は、培養液エナジードリンクをはじめ、様々なバイオ実験に取り組むA cultured energy drinkの田所です。
新年あけましておめでとうございます。
A cultured energy drinkの田所です。
100BANCHへ2023年3月に入居しており、巷のエナジードリンクがカフェインやぶどう糖の覚醒作用、GABAのリラックス作用をベースにしていることに対し、それが本当に身体に良いのか?という疑問を抱き、専門分野である再生医療と培養肉技術を応用して、細胞レベルで身体に良い「培養液エナジードリンク」を作るプロジェクトとして入居しました。2023年はエナジードリンク開発に没頭していましたが….
あれ、2024年はエナジードリンク作ってなくね?って気づいた勘のいい人もいると思うので、私たちが2024年に何をしていたのか?そして、2025年の企み(抱負)は何かをお伝えします。
まず、私たちの2024年について少しご紹介します。
私たちは、文理問わず学生から社会人まで、多様なメンバーが集まり趣味で研究をするバイオ研究者チームです。「敷居が高いと感じられるバイオ研究をもっと身近にしたい!」という想いから活動しています。平日はそれぞれ学校や会社で勉学や仕事に励み、週末になると100BANCHの机に並べた実験道具を前に、雑談を交えながら生まれた新たなアイデアを基に幅広いバイオ研究に取り組んできました。2024年は、そのみんなのアイデアが発展し、また私たちの活動を見てくださった方々からの相談も増え、100BANCHの外に飛び出し、バイオの新たな可能性を探り続けた1年でした。
1月は、Academimicの浅井さんにお誘いいただき、PxCellの川又さんと共にDIG SHIBUYAで「あなたの人生の培養技術」と題したインスタレーションを展示しました。これは、初のバイオ×アートへの挑戦でした。
2月は、長らくずっと一緒に研究をしてきた西村さんがバイオ×発光をテーマにしたBioCraftを立ち上げました。
3月は、BioCraftの西村さんと宇宙系の方々と共にバイオ×宇宙をテーマにしたイベントを開催しました。
4〜6月は、バイオ×ラーメンをテーマに、バイオ研究に用いる高価な研究器材と最先端の技術で究極の1杯を目指すバイオラーメンの開発に取り組みました。
7月は、ナナナナ祭で100BANCHのバイオ系プロジェクトが集まり、みんなの妄想世界が爆発!バイオがもたらす100年後の未来の可能性を来場者に楽しんでいただきました。
8月は、新国立美術館にて「龍の肉」の展示を実現。
9月は、一次産業の方々から相談が届き、話を聞く中でバイオ技術が貢献できることの探索を行い、牡蠣の生育環境の改善や土壌菌、ルーメン菌の活用に焦点を当てた新たな研究が始まりました。
10月は、バイオアーティストのNeneさんと共にDESIGNARTで「人魚の肉」を展示。
11月は、牡蠣漁師を救うために生み出した技術がビジネスコンテストで入賞を果たしました。また、一次産業の方の支援のため実際に宮崎の海や山や農場に伺い、宮崎では漁師や畜産家の方々とバイオ技術の可能性を探る現地調査も行いました。
12月は、SHISHIMAI habitat cityの稲村さんと共に、世界初(?)の獅子舞肉鍋を企画しました。また、「培養液エナドリ」が知財図鑑に入賞し、「龍の肉」が日経新聞の一面を飾るなど、私たちの活動を通じて新たなバイオの可能性を示す成果が次々と生まれた一年でした。
このように2024年は誰かの想いにバイオを掛け合わせることで、その人の願いを叶えながら新たなバイオを生み出し続けました。その中でも多くの学びがありました。
バイオ研究は、研究器材や試薬が高価であるため、一人では研究を継続することが難しい分野です。かつて大学で学んでいたり、研究職として活躍していた人でも、研究を続けることができず諦めてしまうケースは少なくありません。また、理系でないことを理由に、自分には縁遠いと感じたり、研究は大学や企業でしかできないと思い込んでいる人も多いのが現状です。こうした人々が気軽に、そして楽しく研究に取り組めるオアシスを作りたいという思いから、趣味としてのバイオ研究を楽しめる新しい世界を築こうと活動してきました。
最近では関係者も増え、大人数で楽しく研究できる環境が整ってきました。個の研究者が集まり、それぞれの専門性を掛け合わせたり、未経験でも技術を学びながら、チームで協力して研究を進める「個からチーム」への移行が進んでいます。閉鎖的な研究室では得られない刺激や活気に満ちており、オープンな環境が生み出す創造性と可能性に大きな魅力を感じています。
100BANCHに所属したことで、多様な人々と交流しながら、バイオの可能性が加速しています。数年前までは、バイオは専門家だけが語る領域でしたが、最近では小学生からアーティスト、投資家、企業人まで、多くの人がバイオに関心を寄せ、認知度が高まっていることを実感しています。そして、多くの期待が寄せられる中で、これまで趣味として楽しんできた活動が、次第に誰かの役に立つフェーズに移りつつあります。
そこには責任が伴いますが、同時に時代の大きなチャンスでもあると感じています。かつてバイオ研究は、遠くの未来を築くための「仕事」として存在していました。しかし今では、誰もが楽しめる「趣味」へと進化し、身近な人を助けるための「手段」、そして「生き方」へと広がる予感がしています。
2024年はバイオの新たな可能性に気づいた年でした。そして2025年は、それらを芽吹かせるフェーズになると考えています。
従来、研究と言えば研究室で書(論文や実験ノート)を読みふけり、ひたすら研究を進めるイメージがありました。しかし、これからの研究者は、書を片手に研究室を飛び出し、人々がいる場所へ向かうことで新たな発見が生まれると信じています。
長くなりましたが、2025年の抱負。それは、「バイオの研究を趣味から生き方へ」、そして「書を持ち、町へ行く心構えを」。書(知識)を大切にしながら、大切な人々を救うために町へ出て、新たな「生きた」バイオ技術を生み出していきます。今年も私自身を含め、皆さんにとって素晴らしい年となることを願っています。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。皆さんがワクワクする一年になるよう、私たちも全力で歩んでいきます!
メンバーたちの抱負をリレーエッセイでつないでいく新春特別企画「2025年 今年の抱負!:巳(実)のなる1年に」をお届けしています。他のメンバーによる記事は以下のリンクからご覧いただけます。若者たちの熱や未来への兆しをお楽しみください。