• イベントレポート

100年先の未来を描く4プロジェクトが登壇 2024年11月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2024年11月19日に開催した実験報告会では、ガーナにチョコレート工場を建設し、カカオのフェアトレードを起点にした持続的発展モデルでコミュニティの生活水準の向上に取り組むGARAGE Program32期生「Mpraeso Project」の田口愛(MAAHA株式会社 代表取締役)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了したプロジェクトが活動を報告しました。

本レポートでは、GARAGE Programの4プロジェクトの発表内容をお伝えします。

kamitsukitei

「アーティストコレクティブ」の思想で面白いものをたくさんつくる

登壇者:アトプルーニャ円周率

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/kamitsukitei

「kamitsukitei」は、「アーティストコレクティブ」の思想を用いて面白いものをたくさんつくることで、他者へのリスペクトを送ることのできる社会を目指すプロジェクトです。

アトプルーニャ円周率:我々は今高校3年生で、これまでプログラマーとしてIT企業に携わったり、生物学の大会やビジコンへの出場、ウェブサイトの運営などしてきました。最近はゲームクリエイターをしています。我々がやりたいのは「21世紀的コレクティブの社会実装」です。アーティストが集団で制作する際、ボスがいて、その人のやりたいことを叶えていく、ようなな方法ではなく、同じぐらいのヒエラルキーでいろんな分野のアーティスト同士が議論して新しいものをつくる形式を実装したいと思っています。色んな分野の人材が集まっており、上下関係がなく、単一の思想を持たず話し合って決める、といった多様性を重視した組織のあり方です。Z世代と呼ばれる我々若者は、自分たちで文化をつくっていこう、というハングリー精神がないことを課題に感じ、ハングリー精神を取り戻すためにプロジェクトを進めています。その実証のために「噛み付き亭」というコレクティブを立ち上げました。チームメンバーは17歳が1人、18歳が2人の同世代で構成されているのですが、「メンバーが同世代であることはヒエラルキーの破壊に有効である」という仮説は当たっていました。もし、この中に、歳の離れた人が交じるとその人の言うことを聞かなければいけなくなると思います。同じぐらいの熱量で、同じ立場で集まった違う分野の人同士で話していると議論がとても円滑に進むので、思いもよらないアイデアがたくさん生まれるのが面白いし楽しいです。現在、「rurukiki」というゲームを制作しており、予告編のトレーラーがファミ通さんや電ファミニコゲーマーさんに取りとりあげられ、良いスタートダッシュをきることができました。

「まずはリリースして社会の反応を見つつ、たくさんディスカッションを重ね、コレクティブの形式やの今後の活動方針を決めていきたいと思います。」とアトプルーニャ円周率は話しました。

 

ILL PARTY

当事者が自らの感覚や言葉を取り戻す。文化から医療を、そして社会を変えていく。

登壇者:Kanata Blue

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ill-party

「ILL PARTY」は心や体の病を抱える人々、そしてその治療やケアに関わる人々を「当事者」と捉え、彼らが自身の経験や哲学を表現するための企画を提供することで「全ての当事者のためのクリエイティブな実験場」つくるを目指すプロジェクトです。

Kanata Blue:私たちは、研修医、精神科の看護師、介護士、シェアハウスの運営など、「ケア」の分野に深く根差している人が集まっていて、同時に、音楽や歌、ダンスなど、それぞれが何かしらのアート活動にも関わっているチームです。そんな私たちが注目したのが「当事者性」です。医療の現場、ケアの現場に当事者性はあるのですが、社会の中ではかなり取りこぼされてしまう部分です。そこで、当事者性を文化や芸術に落とし込むことで、生きづらい人を減らすことができるのではないか、という仮説からポップで親しみやすい、新しいケアを実践することにしました。

具体的な3ヶ月の活動としては、短歌という身近な芸術表現によるケアの可能性を追求しました。100BANCHでは何度か歌会を開催したのですが、その中で、「ただ相談しているだけでその人だけの歌が読める短歌ワークショップ」というメソッドを開発しました。オンラインでも歌会を6回行い、75人もの方が歌を詠んでくれました。そこで生まれた歌を「素人が作った短歌集」というコンセプトでZINEにまとめたものを制作したり、「啖呵キル短歌会」と題してネガティブな感情を短歌で表現する実験的な企画も行いました。こういった活動が世の中に通用するのかを実験するため、アートスペースで展示と短歌のワークショップも行いました。それらの結果をまとめると、この短歌ワークショップの可能性に気づけた3ヶ月だったと感じています。誰でもその場で短歌を生み出すことができる私たちのメソッドはアートなワークショップとして十分に成立することが確信できました。また、短歌を使って内面的な心理状態を表現することが可能ではないか、短歌の気軽な表現がセルフケア的な役割を果たしたのではないだろうか、という新たな仮説も生まれました。

「当初に提示していた『当事者性を育み、当事者性を文化にする』という仮説は少し抽象度が高かったように感じていますが、やってみなければ気付けなかったと思うので、改めて実験の大切さを痛感しました。今回の短歌のような企画を通じて、新たな視点を社会に提供していけるチームに成長していきたいと考えています。」とKanata Blueは話しました。

 

Third Culture Scape Project

複数のカルチャーが入り混じる景観の、新たな見方を確立したい。

登壇者:張伊琳

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/third-culture-scape-project

「Third Culture Scape Project」は複数文化を越境した、新しい風景の見方の確立を目指すプロジェクトです。

張:私は中国人の両親の元、日本で生まれ育ちました。幼い頃は中国のアイデンティティを隠したり嫌った時期もありましたが、成長の過程で日本と中国のことをより深く知り、今ではどちらのアイデンティティも同じくらい自分の中で大切なものになっています。 私のように、国籍とは違う国で生まれ育ったり、複数文化の中で育ってきた人は「サードカルチャーキッズ(TCK)」と呼ばれています。このような子どもたちは、成長の過程で自分のアイデンティティに迷ったり、居場所のなさを感じることが非常に多く、私自身もそのような葛藤を覚えたことがたくさんあります。そんな私は大学の卒業制作で、多数の文化が入り混じった「チャイナタウンの景観」について研究と制作をしていました。世界中にチャイナタウンが存在し、それぞれの国で中国らしい風景を醸し出しています。そんな、中国とは別の土地でつくられた文化と土地がミックスした景観を「サードカルチャースケープ」と名付け、実際に行って観察したり、風景を分析したりしてきました。その中で、チャイナタウンの振る舞いがサードカルチャーキッズとして育ってきた自分の振る舞いに重なる部分が多くありました。100BANCHでは多くのサードカルチャーキッズの方にインタビューをしました。お話を聞きながら、彼らの人生は、まだ存在しなかった自分のアイデンティティを説明するための言葉を探す、終わらない旅であるような感覚を覚えました。 同時に「サードカルチャーキッズ」という言葉自体も一般的には身近ではなく、その感覚は伝えづらいことに気がつきました。

「今回のインタビューはいろんな気づきが得られたり、私自身のアイデンティティを考える励みにもなったので引き続き行おうと思います。また、同じく曖昧な『サードカルチャースケープ』の概念を、当事者以外の方にも伝えられる作品制作を模索していきたいです。」と張は話しました。

 

new shodo development committee

書道を通して遊び心を解放したい!!

登壇者:増田海音

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/new-shodo-development-committee

「new shodo development committee」は書道と他の分野とを掛け合わせることによって、新しい書道の遊び方を開発するプロジェクトです。

増田:私たちは「書道×他分野」を通じて、上手い下手の先入観にとらわれない書道をつくり、個々の遊び心を解放させたい、と活動しています。この活動をしているのは、私が高校も大学も書道を専門に勉強してきたという背景があるからです。私は「かな」の分野が好きで100BANCHでは「〇〇なひらがなを筆でしたためるゲーム」を制作しています。ルールはとても簡単で、お題に合わせて指定されたひらがなをしたためるというものです。この3ヶ月では大きな出来事が2つありました。1つは、この3階のスペースでカードゲームを通して書道に触れてみる会」を開催し、14名の方が集まってくださいました。参加者全員で書をしたため、それをホワイトボードに貼って鑑賞し、みなさんで和気あいあいと感想を話すことができました。イベント後半では「にゅ〜書道講座」として、今では使われていない「かな」で似ている文字をランキング形式で発表し、見分けポイントを伝授しました。書道への関心が変わることがイベントの狙いだったのですが、興味があると答えてくれた方が増えたので成功ではないかと思います。もう1つの出来事は、DESIGNART TOKYO 2024 に携わらせていただいたことです。BioCraftさんとの共同企画でバイオラブレターを書きました。イカの発光細菌を培養した液体で書いたのですが、3日間ほどしか光らないという儚さがあることから、それを想いが伝わらなかった気持ちに重ねてみたらいいのではないか、と考え制作しました。

「今後はアーカイブの方法を考えたり、新しい筆を開発するなど新しい『にゅ〜書道』を開発したいと思っています。また、活動していると100BANCHのプロジェクトメンバーとの交流が広がっていくのが楽しいので、継続して交流を深めていきたいです。 」と増田は話しました。

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。​​​​

kamitsukitei https://youtu.be/cmiDjocj_dE?si=MuKctY7EqJrTspOH

ILL PARTY https://youtu.be/3MD-vdhNRgk?si=6fSbzmNU6kphDE7F

Third Culture Scape Project https://youtu.be/EK9zwzA5n4Q?si=IeE9IBeRBHgRnb_W

new shodo development committee https://youtu.be/7ONSFMC69Bs?si=Jnzb-o-uSD6-cimD

次回の実験報告会は12月19日(木)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

 

<次回実験報告会>

「ありのままの姿を肯定し、WAGAMAMAでいられる社会を」100BANCH実験報告会

 

 

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・ジェンダー問題に興味がある
・女性アスリートの世界に興味がある

【概要】

日程:12/19(木)

時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

 

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/66182/

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