林業イノベーターのためのWEBメディア「ソマノベース」から 林業に革命を。
soma no base
林業イノベーターのためのWEBメディア「ソマノベース」から 林業に革命を。
日本は世界有数の「森林大国」です。
国土面積の約66パーセントは森林で成り立っています。
そんな森林の中で、木を育て、森を作り、育った木を切って、販売する林業。
林業は、森林の多面的機能を保つことにも大きく関与する産業です。
しかし、現在衰退の歯止めがきかない状態にあります。
「ソマノベース」は、林業界の情報を集約したWEBメディアの構築に取り組んでいます。このメディアを土台にして、林業家と他業界を繋ぐプラットフォームとなり、林業家が収益を得られ、十分な森林管理を行える社会の実現を目指します。
そのひとつとして、2019年12月14日(土)に、林業界と他業界を繋ぐ新イベント『ソマノベースキャンプ』を開催しました。当日は林業界・他業界を合わせた計約80名にご来場いただき、オフラインで意見を交えました。
「ソマノベースキャンプ」で見えた林業の可能性を、ソマノベース 河合志帆がご報告します。
【イベントコンテンツ】
1.林業界の未来を考えるパネルディスカッション
2.林業界と他業界が意見を交わす「Meet Up Party」
3.フラワーディレクション「SCENEMASS」が木と花で表現する「100年後の林業」
イベント詳細:https://100banch.com/events/23255/
北都留森林組合 参事 中田 無双氏
株式会社中川 創業者 中川雅也氏
株式会社中川 樹木医 大谷栄徳氏
(左から中田氏、大谷氏、中川氏)
業態の異なる3名のパネラーが、林業界の課題や今後のあるべき姿を語りました。
課題はたくさんある上で3名が目をつけたのは、情報の滞りに労働環境の危険さ、林業家の山に対する意識の薄れでした。
特に興味深かったのはそれら課題に対する解決策に「山と人の関係性」という共通点が浮かび上がったこと。その中でも中川氏が提起した「山主の管理意識の低下」は、「森林の価値」と直結しているだけでなく、「日本人の森林との関わり方」という文化的な側面も含んだ根本的な問題であると考えられます。
業界をよりよくしようと動く方と動きたい方など林業界の人同士はもちろん、例えばITや情報発信などが得意な他業種の人と山をつなぐことがひとつの解決策になりうるようです。
(北都留森林組合 参事 中田 無双氏)
(左から 竹内氏、原田氏、中川氏)
3名はそれぞれ建築、アート、貿易など他業種から林業界に入られました。竹内さんは製材の会社で働きながら、林業BARという「お酒を飲みながら林業を語る場」を作っており、林業の世界に入った時は林業情報を獲得することが難しかったと、当時の苦労を語りました。
原田さんは自身でNPOを立ち上げ、森林管理などを行う中で、土地の管理の問題に苦労されたようです。山林の土地管理は曖昧であることが多く、どこまでが誰の土地か分からなかったそう。中川さんは現在、育林に特化した事業を展開していますが、起業時は投資をしてくれる銀行がなかったというエピソードを披露してくださいました。林業という業界の採算を提示できないという理由から投資を拒まれたそう。
しかし、みなさんそれらの苦労を、地道な努力や周りの林業家とのコミュニケーションを通して乗り越え、現在に至ります。イノベーションを起こすために新しい業界にはいり、活動するということは相当な苦労があるようです。
中川さんは「地元の人からのありがとうという言葉が原動力」と語りました。今後イノベーションを起こすためには何が必要かという質問に対して、竹内さんは「各地域の想いのある人が繋がっていくこと」、原田さんは「ブランドをうまく作っていけること」等と語りました。
(左から 奥川、中田氏)
(永井氏)
「他業界の参入によって、実際どのようなことができるのか」「他業界が入っていくためには、どのような情報や場が必要なのか」について議論が弾みました。
山の情報を市場に、市場の情報を製材所に、製材所の情報を小売に…というように情報を少しずつ次のプレイヤーに届けていくことが需要と供給をマッチさせる上で重要なのではないかという、集成材の専門販売を行う東集の永井さんからのお話しには中田さんや竹内さんも肯いていました。
参加者は林業関係者と林業に関心のある他業種の方々。普段なかなか直接の関わりを持ちにくいこともあり、Meet Up Partyでは積極的に交流される姿が見られました。
名刺を交換する方も多く、アンケートでも満足度の高いコンテンツになりました。
Meet Up Partyでは、パネルディスカッションでご登壇された竹内氏ご提供のヒノキやクロモジを使ったお酒が。食用に活用されるイメージがまだ薄い木材ですが、香りが高く香ばしい風味はスパイスとして注目されているようです。
(林業BAR 竹内氏)
会場を彩ったのは、「100年後の林業」をテーマにしたフラワーアート。
人々が人生を過ごす中で体感する様々な感情の一部分を切り取り、その感情を植物や生花に代替し映像作品や写真、インスタレーションで表現する「SCENEMASS」が手がけました。隠れた切り株の周りには色鮮やかな花々が散りばめられ、会場に入った方々の目を釘付けに。
SCENEMASS 公式HP:https://www.scenemass.com/
林業は衰退産業と呼ばれています。
木材価格の低下や生産規模の半減、従事者の減少や減らない作業中の死傷者数…
それぞれの課題には複数の要因が複雑に絡み合い、一筋縄では解決できません。
こんな話をするとネガティブなイメージを持たれがちです。
ですが、必ずしも「お先真っ暗」な業界ではない。
業界の中から、伝統的な概念に捉われずに新しい方法を試していく動きがあり、業界の外から、木材だけでない森林の持つ価値を見出し、ビジネスにする動きがあります。
また、そんな林業界の動きに興味をもつ方々がいます。
山の中で挑戦を続ける林業家の方がいて、
その山にはまだ知られぬ価値が眠っていること。
そしてその価値に興味を持つビジネスプレイヤーがいること。
山の中で新しい物事が生まれることが、
林業界をより面白くする可能性なのではと感じました。
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次回の「ソマノベースキャンプ」は2020年5月〜6月に開催予定です。
乞うご期待。
(写真:江頭昇吾)