• イベントレポート

一枚の写真はその人自身を語る?心の状態でカメラの仕組みを制限するココロカメラとヒトはどのように交流するのか?

カメラを媒介に人と人のつながりを誘発し、「信頼」の移り変わりを探ることを目指すプロジェクト「utsuRe」。新しいカメラのあり方をデザインすることに挑戦中です。今回は開発中のアプリ『ココロカメラ』を使った写真撮影ワークショップを、2025年9月20日(土)に100BANCHにて開催しました。参加者とともに100BANCH周辺を散策し撮影しながら自分との対話を試みたワークショップの模様を、utsuReの稲垣がレポートします。

utsuReとは?

100BANCH GARAGE Programの97期として採択頂いたutsuReはカメラが主役のプロジェクトです。

自作カメラを制作し所有者を持たずヒッチハイクに送り出し、既存のカメラを第三者に渡して世界旅行させるなど、カメラを中心とした人間の信頼やつながりを実証研究しています。

本ワークショップはそこから発展させ、カメラが持つ場を作る可能性やセラピー的新しい価値を開拓することや、開かれた機械の機能が人間を触発し、自分の状態が表現に影響を与えながら楽しめる撮影体験を作ることを目的に構想しました。

 

ココロカメラとは?

『こころのF値』ワークショップでは、心の状態を表現に生かすカメラと人間のコラボレーションアプリ、『ココロカメラ』を使用しました。

カメラには二つの代表的な制限機能、絞りとシャッタースピードがあります。これらの機能で入ってくる光の量や時間を変化させて異なる写真表現が生まれます。絞りはF値とも呼ばれ、光が入る大きさ・量を調整し、明るさや被写界深度が変化します。

https://www.tamron.com/jp/consumer/sp/impression/detail/article-what-is-f-number.html

シャッタースピードは、光が入る時間を調整し、被写体の動きが変化します。

この二つの要素を心の状態と詩的に照らし合わせて本アプリを開発しました。

ココロカメラでは、

・心の開き具合(開放値)をF値

・心拍数をシャッタースピードに見立て

自分の状態と対話しながら一枚一枚撮影する体験と新たな角度からの自己理解を実験しています。

↓こちらが開発したカメラをご使用いただけるリンクです!

https://utsure.github.io/kokoroF/

使い方

  1. 「はじめる」をクリック
  2. こころの開放度を設定 
    (円が大きいほど開放的、小さいほど閉鎖的)
  3. 心拍数(BPM)を測定
    カメラを指の腹で覆って「測定開始」15秒間で完了
  4. 撮影開始!
  5. 写真は『ギャラリー』にて確認(メモ欄にその時の心情や印象などを記入)
  6. ページ(URL)を同じタブで再読み込み!(データは残ります)  

次の場所にて心ともう一度対話、、、

https://drive.google.com/file/d/10ezKYcBYw3kLWBTAKy15-jEteLdV77Nc/view?usp=drive_link

このアプリを片手に100BANCH周辺をお散歩。このようにして一枚ごとにF値とBPMを設定して撮影していっていただきました。

撮影ではカメラを揺らして撮っても固定して撮ってもなんでもあり!心の赴くままに自由に撮影していただき、ルーティーンの調子で心と対話しながら撮影していきました。

参加者の皆様が撮影した写真です↓

https://drive.google.com/drive/folders/11x_0XX_TbgCVteDYXaAbij0kPRsvBLeb?usp=drive_link

その後に撮影された写真をこちらのワークシートに数値と合わせてグラフ上に貼り合わせて自分の傾向や心の状態とその時に撮られる写真表現を分析する時間をとりました。ワークシートを四つのブロックとしてそれぞれの状態の時の写真の傾向や、反対に写真から心の状態を考察して頂きました。また最後には撮影してもらった合計6枚の写真から自分を最も表していると感じられる写真を1枚選択し、その理由を発表してもらいました。

例)

 

ワークショップ参加者の体験や発表を聞いて

写真をじっくり考察し、その時の自分の状態を振り返ってみる、そんな時間をとってから、参加者の方々の発表を聞いてみると、一枚の写真が普段の自分の思考パターンや傾向を象徴している可能性が感じられました。

例えば参加者さんが撮影したこのお写真、F:22 BPM:100で撮影されたのですが分析として、「自分は心が閉まっている時に大きな物を撮影しがち」というように分析していただきました。自身を象徴する写真としてもこの写真を選択され、それは普段から自分が逆境にいる時にこそ大きな目標に向かっていく傾向にあると話されていました。

また、普段から目を向けている世界の捉え方が写真に現れているとの声や、普段写真には撮らないが向けている視点の傾向に気がつく機会になったとの声がありました。何よりお散歩中皆さんがカメラを開きながら街をそれぞれの視点で切り取っていく様子を眺められたことが幸せで嬉しい瞬間でした!

 

振り返りと展望

カメラの基本的な要素が自分の心の状態と対応し、自身とカメラの対話として写真表現が出力される世界観を感じてもらえたかなと感じます。伝わりにくいかなと思っていたのでカメラの基本的な構造とそれによる効果まで説明したところがこれから一眼レフを使う上でも興味深かったとの言葉もいただけました。シャッタースピードが遅い時にブレた表現が楽しめるよう、写真を数枚重ねてブレを演出しているのですが、普段はブレた写真は撮影されることが少ないが、新しい可愛い表現に出会えたとの声もありました。

リフレクションを通してF値やBPMの値という数字的な面が写真や参加者に及ぼす印象は薄かったかもしれないと感じました。アプリの機能や制限よりも、一枚の写真を撮ることに時間をかけて向き合い、写真をより深く考察するという時間を持ったことで自分を見つめ直すきっかけや機会を作ったことが本ワークショップがもたらせたものだったように感じられました。つまり自分の状態が表現に影響を及ぼした感動よりも、写真を集中して撮るという行為の機会によって普段の視点が写真として目の前に再現性あるものとして立ち上がってきたことで自身の傾向を振り返る機会になったのだと感じます。

ある意味「場」を作ったと言えるのですが、参加者の方々の声を聞くことで開発した心の状態を表現に活かすカメラで撮影した意味をより考えさせられるきっかけになりました。

 

これから

撮られているという状況認識によるカメラの場を作る可能性は多くの人に共感してもらえるかもしれないと考えていたのですが、今回新たに写真を集中して撮影し、一枚一枚見つめる時間をもつという場もカメラはもたらすことができるのかもしれないと新たな仮説が生まれました。普段の視点の延長を形あるものとして出力し、自分自身を捉え直すきっかけをもたらせられるように感じました。カメラの媒体以上の可能性を感じているので、もっとカメラというモノや見た目が人間を触発していく様子や過程を実証していけたら嬉しいです。

ご参加・ご協力ありがとうございました!📸

ワークショップ後の私の心の状態(F:2 BPM:92)で撮影した集合写真☆

 

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