
ひとつの椅子を一緒につくるMUSUBI-CHAIR
「LifehackMaterial」は、素材(もの・こと)の使い方や使われ方を見つめ直し、そのポテンシャルを引き出すデザインに取り組むプロジェクトです。制作物を通して新しい「モノの見方・使い方」を示し続けることを目指しています。
ナナナナ祭2025では「MUSUBI_CHAIR」の展示と、椅子と同じ素材を用いたワークショップを実施しました。MUSUBI_CHAIRは複数人で組み立てる楽しさをデザインした椅子で、完成するまでの共同作業が、心を結ぶ時間になります。今回は限られた時間でその時間を体験してもらうため、同じ素材でのアクセサリー作り体験を企画しました。その模様をLifehackMaterialの五月女がレポートします。
こんにちは、LifehackMaterialの五月女です。私たちは、「素材(もの・こと)の可能性の拡張」をコンセプトに活動するデザインチームです。「日常を、より創造的に楽しむ」を目指し、ありふれた日常に、デザインを用いて小さな驚きや気づきを与え、人々が「考える・感じる・試す」余白を持てる社会をつくっていきます。
ナナナナ祭2025では、「自分で使うものを自分で作る」をテーマに、私たちLifehackMaterialはオリジナルプロダクト、「MUSUBI_CHAIR」の展示販売と、椅子と同素材を用いたバングル、MUSUBI_BANGLEを制作するワークショップを開催しました。当日はLifehackMaterialから来場者へ、一方的に自分たちを伝える場にしたくはないという思いから、ワークショップを通してコミュニケーションを試み、体験として自分たちのプロジェクトの理念を理解してもらいたいという狙いがありました。
MUSUBI_CHAIRは、完成品としての椅子ではなく、“組み立てる時間”をデザインした椅子です。アルミフレームやパラコードといったパーツをひとつひとつ手に取りながら、迷い、考え、ときに語らいながら、椅子を完成させていく。このプロセスを通じて、「つくる」ことの豊かさを再発見してもらいたいという想いから生まれました。展示会場では、実際に組み立て途中の椅子をディスプレイしたほか、組み上がった完成形の椅子にも自由に座って体験できるコーナーを設け、多くの方に“座る前の物語”を感じてもらいました。
自分で使うものを自分で作るという体験をより短時間で体験してもらうため、今回のイベントでは、MUSUBI_CHAIRの座面を編む工程で出たパラコードの端材を活用した「バングルづくりワークショップ」も同時開催しました。捨てられてしまうはずだった素材を、手のひらサイズのアクセサリーとして再生するこのワークショップは、来場者の皆さんに好評を博しました。ワークショップでは、好きな色のパラコードを選び、自分の手で編みながら、世界に一つだけのバングルをつくり上げていきます。単なる“ものづくり”ではなく、MUSUBI_CHAIRの背景や素材への眼差しに触れる時間にもなりました。ただ「かわいい」「かっこいい」で終わらせないために、私たちは参加者一人ひとりに、ある問いを投げかけました。
「あなたなら、このバングルをどう使いますか?」
「私たちのプロダクトをHACKして新しい使い道を考えてください」
この問いに、子どもから大人まで、さまざまなアイデアが返ってきました。
ワークショップ参加者は40人以上に上り、全員が違う使い方を考えてくださりました。既存の使い方にとらわれない視点から、たくさんのアイデアが生まれ、「ものの使い方は自分で決めていい」という感覚が自然と広がっていくのを確かな手応えとして感じることができました。
この展示とワークショップを通して感じたのは、「ものをつくる」という営みが、日常にあるだけで、少し豊かに、ちょっとだけ楽しくなるということ。椅子を組み立てることも、端材からアクセサリーを生み出すことも、どこか“自分の手が介在する余白”があって、そこに人の想いが自然と宿ります。これからも私たちLifehackMaterialは、暮らしのなかにそうした余白を届けていけるようなプロダクトと体験をつくっていきたいと考えています。ご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。