
LobbyAI
全ての人に「政治・行政」が行き届く世界を実現したい。
100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験“を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2025年3月25日に開催した実験報告会では、自走式ロープウェイZipparの開発に取り組み、渋滞問題を解決する次世代の交通システムの構築に取り組むGARAGE Program28期生「Ropeway Innovation!」の須知高匡(Zip Infrastructure株式会社 代表取締役社長)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した6プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではその発表内容をお伝えします。
全ての人に「政治・行政」が行き届く世界を実現したい。
登壇者:髙橋京太郎
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/lobbyai
「LobbyAI」は、DXやAIが未活用の公共政策プロセスにAIを活用することで、誰もが政治という道具を平等に使える世界を実現を目指すプロジェクトです。
高橋:3ヶ月間の成果報告ですが、私たちのチームは4,000万円の資金調達に成功しました。これによりLobbyAIというサービスの開発が本格化しております。また、3月27日に100BANCHでイベントを行うのですが、さまざまなバックグラウンドを持つ100名の方が参加を予定しており、多くの方から注目をいただいているという状況です。プロダクトに関するお問い合わせなどを含め、商談の数は83社にのぼっています。
LobbyAIは誰の何を解決するかというと、政策渉外・自治体営業の情報収集にかかる工数を削減します。「政策渉外」業務とは、行政への提案や地域連携を担う活動のことです。行政や政治というのは実は多くの領域に関わっています。しかし、この「政策渉外」業務は多くの企業にとって、とにかく複雑で面倒なものです。米国ではSaaS型のシステムによってDXが進んでいますが、日本ではとにかくアナログで、どの議員がどういうことをやっているのか、誰にどうやって伝えればよいのかもわかりません。そのため、役所、官公庁内をたらい回しにされてしまったり、議員にも相手にされなかったりすることがあります。これを解決するのがLobbyAIで、週18時間かかっていた業務が1時間で終わる世界を実現できると考えています。
現在は、5月のα版リリースに向けて全力を尽くしているところです。今後、大学やコンサルティングファーム、インフラ企業、自治体などへの導入に加え、日系企業の海外進出時の現地情報取得等の情報格差が大きい領域について探索をしていきます。それによって5年目に売上30億円を目指しています。
「政治や規制を理解し活用している企業・団体と、そうできていない企業・団体との間には大きな情報格差があります。その格差を埋めることで公平性を実現し、社会全体の活力を引き出すことが可能になると考えています。LobbyAIで誰もが政治というツールを平等に使える世界を実現します。」と高橋は話しました。
あなたは大切な人のことをどれだけ知っていますか?自分の人生を誇れる未来をつくる。
登壇者:川邊祐詩
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/jinsei-socho
「JINSEI SOCHO」は、本づくりを通して、自分の人生を誇りに思える社会の創造を目指すプロジェクトです。
川邊:「人生想帖」は、一人の人の0歳から90歳まで、つまりその人のこれまでのすべての人生の話を聞いて、それを1冊の本にまとめたものです。栃木に住む90歳のおばあちゃんに話を聞いて、約200ページの本をつくったのですが、構想から完成までに約10ヶ月かかり、7冊刷るのに約40万円かかりました。この膨大な時間と費用をどうしていこうかと考え、100BANCHに入居しました。
100BANCHでは、コスト削減や制作フローの効率化の実験のために、新たに100歳のおばあちゃんを題材に本をつくりはじめました。90歳までスクーターに乗って仕事をしていたくらい元気なおばあちゃんで、地元でも有名な方なのですが、亡くなる前に「何かカタチに残しておきたい」というご希望をお孫さんからもらいつくることに決めました。実際にそのおばあちゃんに話を聞きながら、昔の写真も用意してもらい、約3時間かけて一生を振り返ってもらいました。今回、制作時間を短縮することとコストをできるだけ安くすることが目的だったのですが、文字起こしにAIを使ったり、デザインをフルオーダーではなくセミオーダーにしたりして、制作期間は1ヶ月まで短縮することができ、コストも10万円以内に抑えることができました。ただ、本の制作にはどうしても人的コストがとてもかかってしまうので、良いものを届けようと思ったら高くなってしまうという課題を強く感じた3ヶ月ではありました。
「今後、持続的にやるためにはどうすればいいのかを考えたり、さらに何冊かつくって効率化を進めたいと思っています。また、その人の人生を読んでみたいという人が意外と多かったので、つくった本を読み物として販売していこうと思っています。」と川邊は話しました。
移動式ミニマム劇場〜見るものを限定しない公演を〜
登壇者:ソーズビーキャメロン
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/tinytheater
「TinyTheater」は、移動式のノマド劇場で、人が集まる場所に劇場を持っていくことで、豊かな表現と豊かな批評による新たな劇場文化の創造を目指すプロジェクトです。
ソーズビー:私は武蔵野美術大学に在籍中に「タイニーシアター」という移動式のノマド劇場をつくりました。大学にはパフォーミングアーツを披露する場所や施設がなかったのです。芸術祭で演じようとした際は、コロナの影響で踊る際にもマスクを強制されました。「こんな環境しかないなら、自分たちでつくればいいじゃないか」と思い、友だちに依頼し自分たちで劇場をつくりました。現代では、お客さんがわざわざ劇場に行くこともなく、自分のところに流れてくる動画を観るだけの受動的にコンテンツを消費する時代になってしまっています。劇場に人を呼ぶのではなく、流行っている場所や人がいる場所に劇場を持っていこうと考えてつくったのが、ノマド劇場「タイニーシアター」です。
100BANCHでは、新企画のパイロット版の制作や各種営業、デザインを見直すことを行いました。3月にはバービー人形のイベントのハーフタイムショーに参加したり、クラシックバレエの面白いところだけを切り抜いたような「PARK BALLET」という公演をしたり、100BANCHで頑張ってきました。また、埼玉大学のモダンジャズ研究会とコラボし、生演奏を楽しんでもらいながら同時に配信も楽しんでもらうイベントを実現しました。そして、化粧品ブランドやスーツケース会社、「セキララカード」さんなど100BANCHプロジェクトともコラボを実現することができました。100BANCHに採択されてからは、テレビをつくっている個人事務所の方に映像制作で協力いただいたり、プロのダンサーの方にアドバイザーとして参加していただいたり、音楽監修メイクやビジュアル監修も技術者で固めることを始めました。100BANCHに入るまでは、ボランティアとして様々な方に携わってもらっていたのですが、プロフェッショナルの方に出演料をお支払いすることも初めて行いました。その経験から、私たちの原点を「見るものを限定しない」から「演るものを限定しない」とコンセプトを変更しました。見る人に委ねるのではなく、演る人に委ねる、出る人たちをやる気にさせるように進めています。
「今週末、武蔵野美術大学の市ヶ谷キャンパスで、フリーライブをやります。埼玉大学が助成金を出してくれて頑張りました。今日も寝不足ですが、このままリハーサルに向かいますので、どうぞよろしくお願いします。」と ソーズビーは話しました。
お出かけ先の提案アプリ「GatherGo」を開く度、新しい冒険が始まり、最高の思い出が生まれる。
登壇者:高比良ハルカ
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/gathergo
「GatherGo」は、自分にぴったりなお出かけ先を提案するAIの開発を目指すプロジェクトです。
高比良:チームメンバーで「普段お出かけ先を探すときにどうやって探しますか?」と100名弱の方に独自アンケートを取ったところ、第3位「おしゃれなカフェ」でインターネットで検索する、第2位「新宿 居酒屋」のようなキーワードでMap検索する、第1位「#渋谷ランチ」とInstagramでハッシュタグ検索するという結果でした。しかし、場所を探している皆さんの気持ちや状況などは、このキーワードのように単純でなく、いま皆さんが抱えている日常の細かな不便を解消できないかと考え、「GatherGo」を開発しました。私たちは「GatherGo」というプロジェクトで100BANCHに入居したのですが、最近「iino」という名前にリブランディングしました。自分の状況を入力するだけで、その条件に合ったぴったりのお出かけ先をインターネット上から探して提案してくれる、パーソナルAIエージェント。これが私たちのつくっている「iino」というAIアプリです。「渋谷でデート」「先輩起業家と新宿でサシ飲み」のように「いつ誰と出かける」を入力するだけで、長話ができる・落ち着いている・静かすぎない、といった潜在的なニーズを理解して、お店を提案してくれるサービスになっています。
100BANCHに応募したときは、絵に描いたようなモックでしたが、この6ヶ月を通じてアプリができ、バージョンアップを重ねて、実際のお出かけ先を見つけるのに使える品質になってきました。100BANCHでは、ヒアリングを実施させていただいたり、よくここに集まらせていただいたり、自分たちのチームにとっての1つの家のような環境で、他のプロジェクトの方々とも交流でき、本当に良い時間を過ごせました。私たちは、家や街といった生活空間をAIで便利にしたいという目標があり、今回の「iino」はあくまでその第一歩にすぎません。挑戦は、まだ始まったばかりです。
「iino は公式Instagramでも最新情報を配信しています。また、本日特別にみなさんにアプリのクローズドβ版を公開しますので、ぜひお手に取っていただけたらと思います。」と高比良は話しました。
性別や背景に関係なく、誰もが科学技術の恩恵を享受できる社会を目指して
登壇者:江連千佳
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/blend
「Blend」は、若手研究者に向け、日本でまだ十分に重要性が認識されていない「ジェンダード・イノベーション」の実践をサポートし、包括的な研究を推進するプロジェクトです。
江連:ジェンダード・イノベーションというのは、生物学的・社会的な性差を考慮した分析を、研究や開発、デザインの中に組み込んでいこうという考え方です。しかし、日本ではまだその考え方は浸透していません。日本でもジェンダード・イノベーションの観点を入れることが研究開発の中で当たり前になっている状態をつくるため、私たちは若手研究者に向けたジェンダード・イノベーションの実践をサポートするイニシアチブをつくりたいと考え、100BANCHに入居しました。
主な活動内容として、主軸にしているのがマンスリープログラムです。5ヶ月間、月1回1.5時間だけ、自分の研究にどうやったらジェンダード・イノベーションの観点を入れられるのかを、STEAM分野の若手研究者の方に考えていただいています。理系の学生の方に話を聞いたときに「自分の研究が忙しすぎて、なかなか暇がない」というフィードバックをいただき、なるべく時間内に終わるよう、みなさんが参加しやすいようなプログラム設計を目指して実施しています。現在は、2回目まで終わっていて、明日3回目を開催する予定です。元々5名くらいで実験的に始めようと思っていましたが、それ以上の応募をいただいて、8名で進めています。日本語での情報がほとんどない領域なので、「どんな人が実践しているのか」「どのようなプログラムの内容なのか」「どんな学びがあったのか」というところをしっかり発信するようにしています。
また、東京大学のD&Iを推進するセンターと共同で、ジェンダード・イノベーションを提唱した先生をお呼びして、フィードバックをもらうワークショップも行ったりしています。さらに、非営利スタートアップを支援しているSoilさんから助成金をいただけることにもなりました。チームメンバーが増えたことでワークショップが安定的に運営できる体制になったことが大きな進展だと思っています。
「これまではジェンダー・イノベーションの実践にフォーカスし、ワークショップの開発にリソースを割いてきました。次の3ヶ月では、ノウハウの活用やブラッシュアップ、そして、コミュニティを耕していくことにトライしていきたいです。」と江連は話しました。
人類を守るバイオシールドを開発し、地球人の宇宙進出を支える!
登壇者:山本若菜
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/bio-shield
「Bio-shield」は、今より宇宙が身近になった未来の人々の身体を紫外線や宇宙放射線から守るバイオシールドの実現を目指すプロジェクトです。
山本:小学3年生の頃に「将来、宇宙飛行士になりたい」という親友の言葉を聞いて、その親友を支えるプロダクトをつくりたいと思い、この研究開発をはじめました。バイオシールドは、宇宙基地で使うプロダクトで、宇宙飛行士を宇宙放射線や紫外線から守ります。デザインでも個性を表現でき、宇宙で100%循環できるプロダクトです。
まず素材探しをはじめたのですが、放射線や紫外線に耐性があり、人工栽培が可能で食べられる植物、という条件にしました。その結果、ミドリムシやユーグレナのような微細藻類にたどりつきました。そこで、宮古島に行き、マイクロアルジェコーポレーション社の工場見学をさせてもらって、イシクラゲという微細藻類の採取と栽培方法を教わりました。次に、自分で乾燥させたイシクラゲをすりつぶして色素を抽出し、紫外線吸収に関する実験を行ったところ、イシクラゲの色素はバイオシールドに有用であるとわかりました。実際にいくつかプロトタイプもつくりました。第一弾は、ヒマラヤ山脈に生息するセイタカダイオウという植物の花びらを模したもので、表面の葉っぱが中の実を紫外線から守るシールドのようになっており、これを応用してみました。寒天を素材に、乾燥を防ぐためにオイルで表面を加工したのですが、厚さが5mmと厚すぎて、肌に乗るようなものにはなりませんでした。第二弾として、ソースボトルを使ったり、作成方法を変えたりしてつくったものは、厚さ1mmでちょうどいいものができました。
100BANCHに入居した当初は何をすれば良いのか分からず、ずっと絵を描いていたり、大学の課題をやっていたりと、バイオシールドに関することができていませんでした。しかし、100BANCHで過ごす中で「やっぱりカタチにしたい、私は藻類で生きよう」と決めることができました。また、様々な色素を採取してみて、水に溶けるものは私に必要な素材だということもあるんですが、水溶性色素にすごく面白さを感じました。
「今後は、UVCや放射線下で栽培したイシクラゲは色素の含有量が多くなるのか、などイシクラゲの色素に関する研究を進めたり、シートのベストな形を探ったりしたいと思います。」と山本は話しました。
実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。
LobbyAI https://youtu.be/uIIaAtqltP8?feature=shared
JINSEI SOCHO https://youtu.be/2GufKKnMoFY?feature=shared
TinyTheater https://youtu.be/zLUTvhu3k_A?feature=shared
GatherGo https://youtu.be/pIRpQHnOtKE?feature=shared
Blend https://youtu.be/zmKfvacfyqU?feature=shared
Bio-shield https://youtu.be/XaWUt53tUjY?feature=shared
次回の実験報告会は4月23日(水)に開催。ぜひご参加ください!
(撮影:荒井孝治)
【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・アパレル関係に興味がある
・ものづくりに興味がある
【概要】
日程:4/23(水)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:無料(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/69093/