• イベントレポート

自然物と人工物の狭間を探る試み「HAZAMA」——DESIGNART TOKYO 2024を終えて

身の回りに存在するすべてのモノを素材として捉え、素材の可能性を引き出し、アウトプットしていく活動を行うプロジェクト「LifehackMaterial」。DESIGNART TOKYO2024では、芝・井草・竹の素材から制作したインテリア作品「HAZAMA」を展示しました。実際に触ったり座ったりして多くの来場者の方に作品を体験していただいた様子を、LifehackMaterialの五月女が振り返ります。

こんにちは、LifehackMaterialの五月女です。

私たちは素材の研究をし、その可能性を拡張するデザインチームとして日々活動をしています。今回は自然×デザインというテーマに合わせて、芝・井草・竹の3種類の素材を取り入れたインテリアを制作しました。

自然物を人工物へと置き換えていく流れがある中で、完全な工業製品を目指すのではなく、自然物と人工物が共存するようなデザインを意識して制作しました。

効率性や機能性が重視される昨今の世の中で、そういったところに制限されることなく、生々しい自然物をそのままインテリアに組み込むことで、これまでにないデザイン表現を試みました。

 

芝生、井草、竹からのインスピレーション

芝生・井草・竹と3種類の椅子を象徴するオブジェを設置し、来場者が手元で素材感を体験できる仕掛けを施しました。

【芝生椅子】

室内外問わず芝生を活用している事例は多く存在します。芝生椅子は、普段は平面として活用されている芝生を立体的に用いることができないかというところから生まれた椅子です。座る人の体を優しく包む感覚が、ハンモックと椅子を足して割ったような独特な座り心地として高評価で、来場者からは長時間座っていたくなる新しい感覚の椅子との感想をいただきました。

椅子を設置することで、芝生を一面に敷かずとも、オフィス空間や室内に簡易的な休憩スポットを作ることができるかもしれないとの声を頂いたことから、休憩スペースで活用してもらえる協力先を探して行こうと考えています。

【井草椅子】

井草椅子はデザイン性、座り心地、その特徴的な香りなどから、三つの制作物の中で最も感想やフィードバックを得ることができた作品となりました。

ござや畳と接する機会はあっても、井草の切れ端は見たことないという方が大多数で、枯山水のようなテクスチャと適度に反発する座り心地が特に高く評価されました。

井草の切れ端は畳の製造過程で廃棄されてしまうもので、1年程前から畳職人さんと共同研究を重ねてきた素材でした。その切れ端をインテリアに組み込むための実験的プロトタイプとして、井草椅子が誕生しました。

本来は横向きで使用される井草をロール状に束ねて縦に組み、井草が焼けて裏表で異なる色に変色するのを利用して新しいテクスチャを表現していることを伝えると、来場者から揃って驚きの声をいただくとともに、デザインチームとして素材の可能性を拡張することができたという手応えを感じることができました。

【竹椅子】

竹椅子は使い方次第で素材の可能性を拡張できるというチームのコンセプトをそのまま反映させており、同じ素材でも左右で座り心地が異なるベンチを制作しました。

デザインという行為にハードルを感じてほしくないというメンバーの想いから、ちょっとした工夫でも大きな変化を起こすことができ、その少しの工夫がデザインそのものであるというメッセージをこめています。

来場者に2種類を座り比べてもらい、どちらの方が好みかアンケートをとっていました。その結果、当初の予想とは裏腹に、来場者の好みが綺麗に半々で割れました。縦に配置している座面はしっかり座れる安心感がいいとのフィードバックが多く、横に配置しているものは座り心地が優しくて落ち着くとの声が多く寄せられました。

また、10日間の展示期間の中で徐々に竹が変色していることに気づき、この短い時間の中でも目に見える形で竹に変化が起きているところもメンバー同士で面白いと盛り上がっておりました。

 

来場者と共に模索した素材の可能性

多くの来場者と意見を交わし、素材の可能性について語り合うことができました。

来場者からの感想も様々で、純粋に素材感や座り心地を楽しむ方、インテリアとしてのデザイン性を評価してくださる方、街中で椅子が使用されているのを見てみたいとおっしゃる方もいました。

中には、椅子に座る際の音に注目し、その音が座る時の心地よさに繋がっているのではないかとの感想もいただきました。来場者の声を聞くまでは想像し得なかった作品の魅力が多く発見でき、DESIGNART2024は今後につながる収穫の多い展示となりました。

 

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