LEAFPRINT PROJECT
葉っぱをひとつのモジュールとして まちをリデザインする。
自然の力とデジタルな造形手法を駆使して生命的プロダクトを創造し、脈の持つ美しさを表現するデザインチーム「紋葉(もんよう)」。
今回DESIGNART TOKYO 2023に出展したのは、葉っぱのタイムカプセル「葉が記」。「葉が記」は3DプリンタとDIYバイオプラスチックの技術によって、葉っぱの形と種を保存してつくられており、その姿はまるで本物の葉っぱのよう。展示の様子を紋葉の坂田が振り返ります。
紋葉プロデューサーの坂田拓人です。
わたしたち紋葉は、「脈」の持つ繊細で生命的な美しさに強い好奇心を持ち、その美しさを自然の力とデジタルな造形手法で拡張して表現する取り組みを行うデザインチームです。
今回、DESIGNART TOKYO 2023で、ミラノデザインウィークにも出展した、葉の形と種を保存する葉っぱのタイムカプセル「葉が記」の展示を行いました。
展示した作品の内容と、実際の展示の様子をお伝えできればと思います。
葉が記は、3DプリンタとDIYバイオプラスチックの技術によってつくられた、葉の脈と種を保存する葉っぱのタイムカプセルです。
この人工葉は、自生する葉っぱのような姿の中に本物の種が埋め込まれていて、土の中に入れることで、芽を出す作品になっています。
3Dプリンタで出力された葉脈の部分も含め、すべて土に還る素材でできているため、ゆっくりと時間をかけて葉が溶け、種だけが土の中に残り、育てることができるのです。
元となった植物がどこに生えていたのかを妄想しながら鑑賞するのもよし、
繊細な葉脈の形を手で触って楽しむのもよし、
土に還して、未来に向けて次の葉を贈るのもよし。
葉が記を通じて、脈の美しさを人に伝えたり、未来に植物を贈ることをテーマとした作品です。
この「葉が記」を通じて、未来や過去に思いを馳せたり、自然と技術の融合に興味を持ってもらいたいと思い、今回の展示を行いました。
葉が記の特徴は、作品として一生があり、生まれてから土に還るまで、物語があることです。
わたしたちは、そんな葉が記の一生を来場者のみなさまに愉しんでいただくために、展示空間を、つくる/みせる/つかうの3つの空間に分けてディスプレイしました。
葉が記は、本物の葉っぱの葉脈をデータ化し、生分解性の樹脂で3Dプリントしたものに、DIYバイオプラスチックと呼ばれる自分達で調合した素材を組み合わせてつくられています。
このブースでは、データの元となった「葉脈標本」と呼ばれる葉脈のみの葉や、3Dプリントされた葉脈の構造体、そして、構造体にコーティングするのに使用するDIYバイオプラスチックの材料を、製作風景の映像と共に展示しました。
そこには、出力に使用する3Dプリンタの本体もあり、工業的な機械から複雑で有機的な造形が生まれる、というその奇妙さを実感できるブースとなっています。
続いて、葉が記の本体を目で味わっていただけるブースになります。
葉が記は、制作過程にDIYバイオプラスチックの自然乾燥があるため、収縮が発生し、枯葉のように立体的な形をしています。
本物の葉からつくられた脈の形と、物理現象で生まれた有機的な曲線が、ナチュラルな印象をつくり出します。
人工物でありながら、限りなくリアルな見た目をしている、という違和感を愉しんでいただくために、本物の落ち葉を散りばめて展示を行いました。
最後に、葉が記がプロダクトとして使われる様子を観察できる展示になります。
葉が記を土に入れると、葉は時間をかけて土に還り、中に含まれていた種から芽が出始めます。このブースでは実際に土の中に葉が記を入れ、数週間経過した時点での様子を展示しました。
来場者の方々も、実際に発芽し、樹脂が分解され始めているのを興味津々に見てくださり、自然と技術の融合から生まれるものづくりの魅力を伝えられた気がします。
多くの方が立ち止まってじっくりと葉が記を眺めてくださったり、「どうしてこの素材をつかうことになったのか」「なぜこの活動を始めたのか」など、活動自体に興味を持ってくださる方も多くいました。
中には、
「葉脈をモチーフにしたランチョンマットがほしい」
「ランプシェードを販売してほしい」
といった、既製品への転用を期待される声や、
「脈の形を活かして、空気中の水分を回収する仕組みがつくれそう」
「脈の形は微生物と相性が良いかもしれない」
などといった脈の機構を実用的なものへと活かす取り組みの提案をしてくださる方々もいらっしゃいました。
私たちの脈に感じる美しさに共感してくださったり、紋葉の活動を応援していただけて、とても嬉しく感じています。
今後は、今回の展示でいただいた感想や意見を参考に、見たことのないような生命的プロダクトの制作や、葉脈構造を活用する方法の模索に励んでいきます。
ご来場いただいた方々、ありがとうございました!