• イベントレポート

100BANCHの6年間から見えた未来の兆し「こんにちは未来──Future Jungleへようこそ!」─ナナナナ祭2023アーカイブ

未来をつくる実験区100BANCHが年に一度開催する夏のお祭り「ナナナナ祭」。ナナナナ祭2023初日である7月7日のオープニングイベントでは、「こんにちは未来──Future Jungleへようこそ!」をテーマに6年間の100BANCHを振り返り、様々なプロジェクトから見えた未来社会のすがた「Future Explorations」やナナナナ祭2023のコンセプト「Future Jungle」についてトークを繰り広げました。イベント終盤には、ナナナナ祭2023に出展する全プロジェクトも登壇し、これまでの活動報告とナナナナ祭で行う実験についてプレゼンテーション。
本レポートでは、これまでの100BANCHを振り返って見えてきた未来と、今年のナナナナ祭のコンセプトについてのトークをお届けします。

登壇者

則武 里恵|100BANCH発起人/オーガナイザー

澤田美奈子|100BANCH/Future Explorations担当

庭野 里咲|100BANCH/ナナナナ祭2023 プロジェクトマネージャー

雨宮 優|ナナナナ祭2023 コンセプトデザイン/Jungle Raveプロデューサー/GARAGE Program18期生

ほか、100BANCHナナナナ祭2023 出展プロジェクトメンバー

 

100BANCH、6年間の軌跡・奇跡

イベントのはじまりでは、100BANCHの発起人/オーガナイザーの則武が100BANCHの6年間の運営について振り返ります。

則武:今日は2023年7月7日ということで七夕の夜、そして100BANCH、6回目の誕生日です。6年間いろんな実験を行ってきましたが、いろんな人たちの協力があって成り立っています。ナナナナ祭自体も今年が6回目ですが、何ひとつ欠けてもこんな風にできなかったのではないかという、いろんなことがあった6年間でした。 

GARAGE Programも6月で72回目の審査会となり、応募総数は929件、採択プロジェクトは308件となり、5月に300プロジェクトを達成いたしました。コロナ禍などもありましたが、たくさんの人が集まってくれたのはすごくありがたいことです。100BANCHという名前は、100周年の100でもあり、 次の100年の100でもあります。百科事典やお百姓さんの「あらゆる種類の」という意味も込められています。色々なエネルギーや思いが束になり、未来をつくっていく——そんな場所になってほしいとつけた名前でしたので、まさに近づいていると思います。集まってくれたメンバーやお客様、様々なサポートをしてくださったみなさんにあらためて感謝申し上げます。

入居後に起業したプロジェクト数も累計で55件あります。起業がゴールと思っているわけでも、数を増やしたいと思っているわけでもありませんが、100年先を目指す活動の中で 、会社にして事業として取り組んでいくのが形として良いと判断したメンバーがこれぐらいいた、と捉えています。

プロジェクトメンバーがトライアンドエラーをできるだけ多く回して未来の解像度を高めるために支援をしていくのが100BANCHです。私たちはしつこいくらい「どんな仮説を確かめたくてやるイベントなのか」など入居したプロジェクトメンバーに聞いています。未来を少しでも明らかにしていくことや、どんな未来にしたいかという解像度を上げるために必要な質問だと思って問いかけています。そんな形で行った実験は6年間で804件になりました。たくさんのプロジェクトがクラウドファンディングにも挑んで成功させ、共感の輪もたくさん生まれる場所にもなってきました。

最初はこの場所も屋根だけが印象的な3階建ての古いビルでしたが、構想と空間しかなかったところに人が集まるようになっていく、それがすごい奇跡のようだと思っています。庭野さんに6年前に初めて会ったとき、私はここの掃除をしていましたね。

庭野:実は、はじめて則武さんと出会ったのが、この会場です。はじめて紹介されたとき、溢れ返る備品の後ろからガタガタと則武さんが出てきて、挨拶しましたね。

則武:あのときはまだ誰も(GARAGE Program の)メンバーがいなかったから、誰かが来てくれるだけでめちゃくちゃ嬉しかったですね。

庭野:100BANCHがオープンしてすぐのタイミングで、見学者の方も多かったのですが、メンバーがほとんどいなかったので、100BANCHの説明をするのにちょっと困ってしまうこともありました。

則武:懐かしいですね。そこから今やもう人が入りきらないようになったり、名前を覚えきれるか心配なくらいになってきたのは、コミュニティが本当に大きくなってきたということですね。

 

300プロジェクトの集大成として見えてきたもの

則武:ここからは、そんな100BANCHが6年間やってきた取り組みを紹介していきたいと思います。澤田さんに登壇してもらいましょう。

澤田:私は2020年の4月から100BANCHの事務局にジョインいたしました。 前職は未来社会を研究するシンクタンクで、いろいろなところに散らばる未来の兆しを探しに、国内外に出かけていました。そのうちの一つが実は100BANCHで、ちょうど則武さんがうちの研究所でやっていた未来研究の話を聞きに来てくださったときに、私の方が逆に100BANCHに面白さを感じ、前職を辞め100BANCHに来ました。

則武:100BANCHが100プロジェクトを達成したくらいの頃、みなさんからシグナルをもらいました。「こんな未来をこの人もあの人も考えてる」という、みんなの気持ちが寄ってるところがあるように思ったんです。そんな中、澤田さんの前職の取り組みに出会いました。

則武:100BANCHにはジャンルもフェーズも問わず、色々なプロジェクトがあります。しかし、それがただお祭りをしているだけに見えるときがあるなと思っていました。すごく面白い場所なのに、何をやってるか分からないと思われたらもったいない。こんなに未来のことを考えて、実践して、思いを持って動いているメンバーたちがいるのに、なぜもっと伝えられないんだろうと感じました。すごくもどかしくて、いろんなところにヒアリングに行っていたんです。そこで澤田さんに出会い、しばらくしたら、澤田さんが前職をやめて100BANCHに突然やってきたんです。私がみんなのシグナルを可視化したいと思っていたタイミングで、それを実現できそうな人が急に履歴書を持ってやって来るなんて、ミラクルだと思いませんか。100BANCHの6年間の奇跡の一つは澤田さんが来てくれたことです。そこからあるサイトが立ち上がったんですが、そこに繋がっていくまでのプロセスを紹介していきます。

澤田:GARAGE Program のプロジェクトページには、そのプロジェクトメンバーがやりたい未来、つくりたい未来、100年先の話、どういう風に取り組むかという仮説が書いてあります。それを一枚ずつのカードにして、全部頭に入れることからはじめました。私がジョインしたときには170ぐらいのプロジェクトがありましたが、うどんやふんどし、バスで家を作っている人など、結構カオスでした。でも、200ぐらいの数があったら、何かまとめられるんじゃないかという感覚がありました。200に近づくタイミングでみなさんのプロジェクトを一方的に読み込ませてもらいました。すると「俺はこういう未来をつくりたい」の言外にはこれぐらいのことを言ってるのではないか?みたいなところで、まとまりのようなものが見えてきました。それを、実家の和室にわーっと並べたんです。

則武:それをまとめていったものが、これから紹介するウェブサイト「Future Explorations」 です。

澤田:後ろに並んでいる一つ一つが100BANCHのプロジェクトです。毎月、新しいプロジェクトが入居するたびに加えていきます。手前にあるのが、私が畳の上で書いていた、「人×〜〜の未来」です。100BANCHでは、食、ファッション、働き方、といったテーマ軸はあったんですが、それとは別にもう少しプロジェクトの本質の意味のまとまりみたいなものがあるような気がしたのです。同じ伝統芸能でも、それを未来に継承したいというプロジェクトもあれば、そこから教育的な知恵を学ぶきっかけにしたいといったものもありします。そういう本質的な意味の違いを大切にしたいと思い、13の意味のまとまりをつくりました。

則武:やっぱり、実態がそのベースにあることを言いたいです。この「未来の当たり前」を導き出した元はここなんですよ、ということが紐づいて見えますね。

澤田:私なりに色々と読み込んだり、事務局と話し合ったりして、こういう感じの未来を考えている人たちなのではないかと、一つ一つのプロジェクトにタグ付けをしていきました。100banch.com の実践活動側と、どちらかといえばこういったコンセプチュアルなものが、ちゃんと繋がっていることを強調したくてつくりました。

則武:「Future Explorations」という名前は、この13の塊が見えてきたからこそ、その先に何が見えるかを起点に、もう一回考えることができるのではないか。お互いの持ってるWillを通して、さらにその先の実験を一緒にやっていけるようなコミュニティに繋がっていくといいな、という想いでつくったものです。100BANCHのメンバーもメンバーではない方もこのサイトを見て「自分もこんな未来をつくりたいと思っているな」とか、「こういうのあったよね」というような発見をしていただけると思います。ご覧いただき、一緒に何かしたい実験があれば、ぜひ一緒にやっていけると嬉しいです。

 

ナナナナ祭2023コンセプト「Future Jungle」とは何なのか?

続いてナナナナ祭2023のプロジェクトマネージャー庭野とコンセプトデザインなどを担当した雨宮が登壇。これまでのナナナナ祭の歴史や、今回のナナナナ祭のコンセプトについて話しました。

庭野:100BANCHが毎年1回、周年を記念して行っているのがナナナナ祭です。GARAGE Program のメンバーの有志を募り、ブースや体験展示を考えてもらうお祭りです。7月7日に100BANCHがオープンしていることと「ナせばナるナさねばナらぬ」の「ナ」をとってナナナナ祭っていう名前でやっています。2018年から毎年行い、これまでに5回開催しました。2019年は100BANCHのこの会場を中心に開催しました。2020年はコロナ禍のため形を変え、チケット購入者にキットをお送りして自宅で体験をしてもらい、それをオンライン配信で繋いでお祭りを開催しました。2021年は車で全国6か所に100BANCH側から出向いて小規模分散型で開催し、去年は3年ぶりに渋谷100BANCHのみで開催しました。今年の6回目のナナナナ祭は、久しぶりにマスクなどの制限もない賑わいモードでお届けできるお祭りになりそうです。

庭野:今年のメインビジュアルは私がつくりました。ナナナナ祭のコンセプトができあがり、こんなイメージになったらいいねと雨宮さんから叩きをつくってもらったんですが、デザイナーさんにお願いする前にもっとブラッシュアップしたいと思ってつくっていたら、どんどん楽しくなってしまい、結局、最後まで私がつくりあげました。様々な素材のコラージュになっていますが、実は今回のナナナナ祭に参加するプログラムのモチーフも隠れております。 

庭野:毎年、ナナナナ祭はコンセプトを決めています。今年は「Future Jungle -百民族と未来を踊る-」になりました。コンセプトデザインは雨宮さんにやっていただきましたが、どんな想いがありますか?

雨宮:普段コンセプトをつくるときはインスピレーションから直感的につくりますが、今回は自分で方向性を定めるよりは、すでにこの場から現れている気みたいものを言語化する感じだろうなと思いました。アイディエーションというナナナナ祭の準備イベントに行ったんですが、そこで参加者のみなさんに今年のナナナナ祭をどんな感じにしたいか問いかけをして、色々と書いていただきました。みなさんから出てくるワードには、身体性や色彩性、混沌、とにかく狂いたい、といった要素が溢れていました。則武さんと庭野さんのお話を聞いた中でも同様のワードが出ていたので「じゃあ、今年はそうなんだな」と思い、そこから象徴的に現れて出たのが「ジャングル」というキーワードでした。ジャングルはいろんな植物、動物、虫や菌類等が密集していて、すごく混沌で危ないイメージがあると思います。

雨宮:個人的に植物の研究をしていますが、木々はすべて根っこで繋がりあっているらしいです。菌糸が全部ネットワーキングして、ここは日光が当たるという情報や、植物ホルモンを与え合います。死んだ切り株までも栄養を送り合ったりしているのです。それぞれ自立して生きているようにも見えるけれども根っこの方では繋がり合っている。一であり全である的なところが垣間見える現象が森です。100BANCHも同じように思えました。それぞれ個性的で際立ったスタンドアローンのプロジェクトがこの場に集まり、100年後の未来を目指している場で通奏低音的に流れる。そんな根っこの繋がりをあらわすモチーフとしてのジャングルにナナナナ祭のコンセプトを合わせて「Future Jungle」をつくりました。

雨宮:でも実は「Future」と「Jungle」って矛盾しているんですよ。自然っていう予見不可能性に未来を当てはめているため、語義的にはすごく矛盾しています。つまりこのコンセプトには方向性がないわけです。ある意味、ただの問いですね。100BANCHのみなさんに「Future Jungleって何?」と問いかけたわけです。それぞれの解釈の中に未来の芽があって、それぞれの解釈の中に自然状態があって、それぞれの観察点の中に混沌がある。そこから自然と浮かび上がるものが、ナナナナ祭の中で現象している。みなさんが身体の中で感じ、芽生えてくるものがなんとなく言語で浮かんできたら、それが今年のコンセプトになっていく。そんな感じにしたいと思い、今回は「Future Jungle」というコンセプトをつくらせてもらいました。

庭野:私は「Future Jungle」って、すごくいいコンセプトだと思いました。響き的にも面白そうです。かなり個性豊かな ブースやイベントになっているので、良い「Future Jungle」ができつつあると思っています。

雨宮:今回コンセプトと空間のアートディレクションに加え、「Jungle Rave」というナイトイベントをプロデュースさせてもらいました。7月15日の21時からオールナイトでこの会場である100BANCH3階でやります。「Rave」は80年代のイギリスで生まれたもので、変革するための祭りという意味合いがあるカウンターカルチャーです。「Future Jungle」という世界観はまだ誰も表していないですが、みんながそれぞれ持っているイメージを身体的に表現し、分かち合う。長い時間、狂った状態で味わう感じの時間をつくりたいと思いました。だいたいの宗教儀式って、まず狂わせること、つまり身体を追い詰めることが条件としてあります。だから、オールナイトで暗いのも非常にいいし、爆音であまり聞こえないこともとてもいいです。ここの3面にプロジェクターで映像を映して、どんどん狂わせていく。なんかよくわからない、意識もよくわからない感じの中で「Future Jungle」とはなんだっけと思うような経験をする。でも、その中で何か身体に感じるものがあるはずです。出展なども色々と回る中で、最終的に音楽に身を委ねて、できるだけ意識を捨て、無意識な感じで、9時間踊り続ける体験をしてほしいです。 ぜひ来てください。ライブ、DJ、落語、篠原くんのコオロギラーメンもありますよ。

オープニングイベントの後半では、ナナナナ祭2023に参加するプロジェクトのメンバーが登壇し、各自1分間で実験報告とナナナナ祭での実験内容をプレゼンテーションしました。

ナナナナ祭で開催されるキーノートイベントについて則武が紹介し、ラストは会場の全員で記念撮影を行ってイベントを締めくくりました。

 

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