• イベントレポート

好きなものを好きだと言おう。そこから未来はつくられる:実験報告会 〜学校では教えてくれない未来のこと〜

GARAGE Program※採択メンバーが毎月クロストークを行う「実験報告会」。今回は教育に関わる活動をする4名がオンラインで話を聞かせてくれました。

全国各地から120名もの参加者が集まったことからも、教育への関心の高さが感じられた今回。クロストーク後の個別質問タイムでも、さまざまな意見が交わされました。当日の内容をダイジェストでご紹介します。

※これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム

<登壇プロジェクト>

「エンジニアリングの魅力を女子小学生に発信する!」

STEMee https://100banch.com/projects/15401

五十嵐 美樹

環境や性別に関係なく科学に触れるきっかけを創るために、STEMキットを開発。触れる機会を増やすためにサイエンスショーを開催したり、YouTubeなどを通した広報活動を展開している。今年のナナナナ祭ではオンラインで自由研究を企画中。

 

「ロボットを一家に一台普及させる」

“HACO” robot https://100banch.com/projects/haco-robot

東出 風馬

100BANCH1期生として、木製のロボット”HACO”を教育用の教材として開発。現在は多くの学びや体験を提供し、社会をより良い方向に変える原動力を生み出す」をミッションに「いつでも、どこからでも学べる」モノづくりとプログラミングの教室LOGYや、英語教室LOGY for Englishを運営。

 

「小学生×起業家教育で『夢と社会課題に挑戦し続けるグローバルリーダーを輩出する』」

kodomo-creators-inc  https://100banch.com/projects/14358

白井 智子

お互いの違いを尊重し合える社会を子どもたちとつくるため、認可外の保育所と小学生のためのサードプレイスを運営。100BANCHでは子どもたちが大人120人の前で自分の夢を話すプレゼン大会を開催した。キーワードは#ゆめ×SDGs #自己肯定感 #多様性

 

「日本語が理解できない『言語難民』に新しい日本語教育を提供」

NIHONGO https://100banch.com/projects/nihongo

永野 将司

日本語の先生として、今までの常識を覆す短期間での言語習得が可能となるオリジナル教授法を開発。。日本語が話せない小中学生が通える民間の塾「トレボルNIHONGO教室」を開校。100BANCHで始まったプロジェクト「未来言語」のメンバー。

 

教育につながる転機は足元にあった

左上から、STEMee五十嵐、NIHONGO永野、kodomo-creators-inc. 白井、LOGY(”HACO” robot)東出、100BANCHオーガナイザー則武

モデレーターは、それぞれの活動を温かく見守ってきた100BANCHのオーガナイザー、則武が担当します。久しぶりに話すメンバーたちと、和気あいあいとした雰囲気でクロストークがスタートしました。

則武:教育に携わるみなさんが、どういう学生だったのか興味があります。学校は好きでしたか?

白井:好きでした。学校に行くというより、友だちと遊ぶために通っていましたね。

永野:僕、嫌いでした。行く意味がよくわからなかったんです。これが先生の発言とは思えないですね。 

則武:まさかですね。東出さんは今も学生ではあるけれど、どんな学生生活を送ってきたんですか。

東出:僕はシュタイナー教育の学校に12年間通っていて。1クラスしかないのでほとんど同じ友だちと過ごしていました。

則武:どうやったら東出さんみたいに育つんだろうって、興味があります。五十嵐さんはどんな子どもでした? 

五十嵐:真面目に見られるけれど、内心はいろいろ考えることが多かったですね。小学校のときは校庭でラジカセ担いでダンスをして怒られたり、みんなと合わせるのが最初はすごく難しい子でした。 

則武:そうだったんですね。そんな子どもたちが、今の道に進む転機を聞かせて欲しいです。

五十嵐さんが行う子どもたち向けのサイエンスショーの様子

五十嵐:私は虹をつくる実験を見て、難しそうなことが一気に身近になった経験をしました。自分が好きな「表現すること」と「科学」が両方できる仕事を探しにハローワークに行ったものの見つからなくて。結局、サイエンス・エンタテイナーっていう職業を名乗ることにしました。

則武:そこに解を持っていったのがすごいですね。東出さんはなにがきっかけだったんですか? 

東出:航空力学にハマってグライダーの設計に熱中した時期があったんです。グライダーをキットにして文化祭で売ってみたら、みんなすごく喜んでくれました。自分がつくったもので誰かが喜ぶことが自信になった。そういう経験を届けてみたいと思うようになりました。

白井:私はいわゆるゆとり世代なんですが、小中高と先生に恵まれて、道徳や総合的な学習に力を入れてくださったんです。今の活動でも、当時のディベートの内容を取り入れたりしています。

永野:僕は大前提として、人生のなかで先生になる予定がなかったんです。実は文化人類学が専門で、海外に長く住むためにどうしたらいいかなと考えたときに、日本語の先生の資格をとったのが始まりです。だんだん面白くなって、辞められなくなったんですね。

則武:そんな経緯があったとは知りませんでした。きっかけって、意外と足元に転がっていたりするものですよね。

 

夢を見つけ、学ぶ力の育て方

則武:今日のテーマは「学校では教えてくれない未来のこと」です。みなさんがやっていることは、学校では教えてくれないことを提供する活動でもあると思うんです。このテーマを聞いて、どんなことを思い浮かべますか。

白井:小学生でも「ダンスが好きだけど、ダンスじゃ食べていけないから」って言う子がいたり、自分のやりたいことがわからなくなる子がたくさんいます。夢について教えてくれるところがないんですよね。これからの時代を生きるには、夢ややりたいことを自分で見つける力が必要になってくるんじゃないかと感じています。

東出:僕らはその分野において熱狂、熱中している人と直接繋ぐところに力を入れています。

則武:直接繋がることで、なにが起きるんでしょう。

東出:例えばYouTuberのなり方を、YouTuberでもない学校の先生が教えても説得力がないんです。今までは情報を伝えることに価値があったけど、今やインターネットを経由してプロの人と話せたり、自分で調べればスキルが身についたりする。現場にいる人と直接繋がれることが、自分のやりたいことに熱中するきっかけになると思っています。

2018年入居当時はまだ高校生だった東出さん(左)

永野:いわゆる学校教育は、平均的な人をつくることを目的にしているんですよね。そのなかで得意なことを伸ばすのは難しい。日本ではIQが飛び抜けた子や好きなことが尖っていく子が出てきづらいんです。

 東出:短期的なことを目標にして時間を浪費しているような気がします。高校では大学に合格すること、大学に入ると就活を目指す。Schoolってもともと暇を楽しむっていうことが語源なはずなのに。

則武:学ぶって実用的かどうか、役に立つかがフォーカスされがちだけれど、そういうことではないんですね。やりたいことをやる、というのがどのプロジェクトにも共通することだと思いますが、そういう状況ってどうしたらできるんでしょう。

五十嵐:イベントで親御さんによく「理系に育てたい」と聞かれるんですが、失敗してもいいからやってみることをオススメします。家にある身近なもので仮説を立てて、実際にやってみる。私も10回に8回くらいは失敗するんです。失敗しまくって、どうやったらよくできるだろうって試せる環境があるのはすごくいいなと思います。

則武:自由な環境って、案外ないものなんですよね。100BANCHのメンバーもここに来て、自分が好きなものを好きだと言ってもいいんだ、と感じる人にたくさん出会うくらいですから。

白井:私たちも「どうしたら自己肯定感が高まりますか」って親御さんに聞かれることがあります。そもそもお母さんたちの自己肯定感が低いんですよね。世間体とかいいお母さんになるべきっていうなかで子育てをするので、子どもも「こうあるべき」と思ってしまう。

昨年ナナナナ祭2019に行われたイベント「コドモpolca食堂」の様子

則武:なるほど。 

白井:その“べき”に縛られて、子どもが「これをやりたい」って言っても否定されてしまう状況があります。自分が好きなことを否定されるってダメージが大きくて。自分はなんでもできるんだ、やってみようっていうマインドにはなりにくいと思うんですよね。ダメなところもあるけれど、いいところもあるって自分にOKを出すことができると、他の人のいいところも見つけられるんです。

則武:100BANCHで掲げる7原理のなかにも、私たち運営側はダメっていうのを禁止しています。ここに集まるみんなのチャレンジを否定せず、思う存分やってほしい。そういうところで、未来ってつくられていくんじゃないかなと思っています。

 

未来は自分の“本音”のなかにある

則武:最後に、みんなのように未来を切り開く力ってどうやったら身につくものなんだろう。

永野:常識を疑うことを常に考えています。例えば、特別支援学級なんてなくしてしまえと思っているんです。僕自身の経験として、クラスにスウェーデン人の全盲の女の子がいたことがあって。カルチャーショックだったんですけど、同時にすごい可能性を感じた。普通ってなんだろう、非常識バンザイ社会をつくりたいと思っています。

昨年のナナナナ祭2019で、吉本興業とコラボした未来言語ワークショップ。実際に聴覚・視覚・知的・外国籍の方など言語の異なる者が一堂に会した。

 東出:僕は大切にしていることが3つあります。永野さんと近いんですが、前提を疑うこと。なにをすればレバレッジ(てこの原理)が効くのか。あとはインプットするからこそアウトプットがあると思っています。

五十嵐:私は自分のことをよく知らなかったんです。なにが好きで、なにが食べたいとかって、建前が出てくることが多かったんですよね。自分の本音を極めていったら、いつの間にかそれがオリジナリティになった感覚があります。

則武:自分のことを知ろうとする努力をしたんですか?

 五十嵐:はい。例えば昔の写真を見て、科学実験をしているときは笑ってるけど、このときは笑ってないとか。知れば知るほど、思っていた自分と違うことに気づきました。そのなかで科学が好き、表現することが好きだということはブレなかった。もうそこで行くしか無いって、諦めたような感覚があります。

則武:すごいプロセスを踏んだんですね。白井さんはどうでしょう。 

白井:私が大切にしているのは、失敗して当たり前という考え方を持つこと。人との考え方は違って当たり前なんだということ。とにかく自分と向き合うことです。自分がどういう思考を持っていたいのか、人とどういう接し方をしたいのかを知ることが大事だと思います。

 則武:子どもって大人の期待に応えたいっていう気持ちもある。だけどそれが癖になったまま大人になることもあるかもしれませんね。未来をつくっていくのは1人ひとりのwill、未来のことは自分のなかにあるということを感じます。

「これからもみんなの活動を応援していきたいと思います。」と締めくくった則武。 今回のクロストークでは、質問に対してはっきりと自分の意見を答えてくれる4名が印象的でした。

自分を知り、しっかり意思を持っているからこそ、教育のフィールドで人と関わり続けることができるのかもしれません。  

配信の様子は下記でもご覧いただけます。

https://www.facebook.com/100banch/videos/274749960604742/

 

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