Physics As Art
「数式」をアートし、数式だけの美術館をつくる!
「数式」をアートとして捉えるプロジェクト「Physics As Art」が3月28日に、オンラインアート展「数式の美術館」を開催しました。
今回は2019年9月に開催した第1回のアート展「数式の美術館」から得られたフィードバックを元に、さらに活動を広げたプロジェクトの成果を発表。
イベントでは「数式」が古くて新しい普遍的な「media(媒体)」であると仮定し、数式を用いた新しい“media art”の作品を公開。また、人の幸せを数式で表現した「幸せの方程式」を体験してもらう、ワークショップを行いました。
新型コロナウイルスの影響を鑑み、オンラインイベントに急遽変更して実施。当日の様子を「Physics As Art」のプロジェクトリーダー・加藤雅貴が紹介します。
「Physics As Art」プロジェクトリーダー・加藤雅貴
リモートで行われた今回のイベント。前半は、“media art”として、100BANCHの半年間の活動を通して生まれた「豚の角煮方程式」や「幸せの方程式」の作品を公開しました。
■豚の角煮方程式(4人分)
「豚の角煮方程式」は、豚の角煮の作り方を数式で表現した作品です。この作品では、料理を極限までシンプルに表現することを試みました。
料理をシンプルにしていくと「切る」「焼く」「煮る」「揚げる」などという行程そのもの自体は重要ではなくなり、それぞれの食材そのもの、つまり、食材のエネルギー(カロリー)が重要になると考えました。そして、それぞれの食材のエネルギーを、「全ての反応において、エネルギーが保存しなければいけない」という物理学の大前提のエネルギー保存則を用いて結び付けています。
それぞれの料理の総カロリーはエネルギー保存則に基づいて、料理に使われている各食材のカロリーを単純に足し引きすることによって計算しています。普段、料理のレシピ本などで目にする総カロリーの表記を数式的に表現した作品です。
■幸せの方程式
「幸せの方程式」は、人の幸せの変化を心理学に基づいて、モデル化し、数式として表現した作品です。この作品は私自身が「しいたけ占い」にハマって、科学的な占いを作りたいと考えたことがきっかけ。天気予報の仕組みをアイデアに生まれた作品です。
天気予報は、「ナビエ・ストークス方程式(空気の流れ(流体)を記述する)方程式)」と「過去の気象データ」から、未来の天気を予測しています。
この作品では、占う対象者の「幸福度のデータ」と「幸せの方程式」を使って、未来の幸せについて予測します。幸福度のデータは、1、2週間ほど「データ記入シート」にその日の状態を記録してもらうことで収集しました。
展示では他にも、「数式」と「身体表現(ダンス)」、2つの“media”が融合する、これまでにない試みで数式をインスタレーション(パフォーマンス)で表現。ダンサーの心臓の音を数式を用いて分解し、再構築、その過程を身体的に表現しました。これを通じて、個性(心臓音)を分解し、その個性が交わることで生まれる新しい個性への可能性を表現しています。
【TRANSFORM】
ダンサーの心臓の音を数式を用いて分解し再構築し、その過程を身体的に表現したインスタレーション。
この作品を通じて、個性(心臓音)を分解し、その個性が交わることで生まれる新しい個性への可能性を表現している。
オンラインでの参加者からは「すごい興味深い作品ですね!」「このような活動を始めたきっかけは?」などたくさんのコメントや質問をいただき、とても盛り上がりました。
イベント後半は、数式を使ったワークショップを実施。実際に数式で物事を表現することを体験してもらうために、オリジナルの数式作成を行いました。
参加者は、自分を構成する要素や自分の身の回りのことを、足し算や微分方程式で表現しながら、オリジナルの数式を作る過程を紹介していきます。
これは参加者が作ったオリジナルの方程式。参加者は好きな映画『スター・ウォーズ』のストーリー展開を足し算として表現しました。
最後に、参加者が「幸せの方程式」を実際に作ることに。
まずは、この方程式を作るために必要な日々のデータの取り方や、それをどうやって数式化するのかなどを解説。その後、参加者の実際のデータを使って、1カ月後の幸福度の変化を予測しました。
参加者が記入した実際のデータ記入シート
予測のグラフでは青色の線がこれから起こるかもしれない出来事を示しています。赤色の線がその出来事が起こった時に、どのように幸福度が変化するかを示しています。
データ記入シートから実際に予測した幸福度の予測
初のオンライン開催となった「数式の美術館」には、多くの人たちに興味を持っていただくことができ、あらためて数式には人を惹きつける多くの魅力があると実感しました。
こらからも数式の可能性を広げ、さらに多くの人たちにその魅力を伝えていきたいと思います。