LEADER INTERVIEW

2019.07.26 Fri

都市の隙間をハッキング 「空き地」は可能性に溢れた空間だ!【ナナナナ祭2019展示 trucking wow】

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今年2回目を迎えた、100BANCHによる年に一度の大イベント「ナナナナ祭」。普段とはうって変わりお祭りモードに満たされた100BANCHの眼の前で、ひときわ来場者の目を引いたのがフードトラックの周りに単管パイプ(鉄パイプ)を組み合わせた「trucking wow」の展示でした。

 

フローズンカクテルやコーヒーを提供するこのフードトラックは松本光貴(まつもと・こうき)さんと山中真太朗(やまなか・しんたろう)さんによる「Angya+」、そして単管パイプで作られた空間設計は、大学で建築を専攻する江尻悠介(えじり・ゆうすけ)さん、鈴木新(すずき・あらた)さんらによる「Tokyo Re-cycle Projects 2021」(アキチテクチャ)によるもの。

フードトラックと建築設計集団という異色の組み合わせは、大都会・渋谷の片隅にほっと一息つける「隙間」を生み出し、多くの人々がつかの間の癒しを楽しんでいました。

また、「trucking wow」は基本土日の営業だったため、平日は100BANCHのメンバーが「たこ焼き屋」を行ったり、ナナナナ祭期間最後の週末には「流しそうめん」をするなど、フードトラックが生み出すユニークな空間をシェア。ひとつのコラボがさらなるコラボを生んでいくという展開に発展していきます。

 

では、いったいなぜ「trucking wow」というプロジェクトが誕生したのでしょうか? 松本さん、江尻さん、そして両プロジェクトのメンターを務め、自身も新宿ゴールデン街にレモンサワー専門店「the OPEN BOOK」を構える田中開(たなか・かい)さんにお話を伺いました。

(執筆:萩原雄太 写真:鈴木 渉)

ー右から、メンター田中開さん、TRC2021江尻悠介さん、Angya+松本光貴さん

 

──Angya+とTokyo Re-cycle Projects 2021(以下、TRC2021)は、今回のナナナナ祭で100BANCH入口にフードトラックを設置し、食の提供とカルチャーの展示を行う「trucking wow」というコラボレーションプロジェクトを展開しました。これは、どちらから呼びかけられたプロジェクトなのでしょうか?

松本:話をしたのはAngya+の側からですね。僕らのプロジェクトはフードトラックに最大9人収容できる設計にして、偶発的なコミュニティが生まれる場を実験的に作ったものですが、それを使って「何をしたいか」という部分については実はまだ曖昧なんです。そんな僕らの未完成な活動にも共感してくれる人を、と考え、同級生でもある江尻さんらが行っているTRC2021とのコラボを思いつきました。

 

江尻:僕たちとしてもドンピシャな組み合わせだったと思います。僕らは、今年10月に予定されている消費税率の変更に合わせ、屋外で食事をするための場所を設計するプロジェクトに取り組んでいます。コンビニ内で食べると10%だけどテイクアウトすると8%になるという軽減税率の適応範囲の違いによって、今後、外で食べられる空間を設計することは重要になってくるはず。ただ、それはハード面の貢献でしかなく、ソフトとしては僕らは何も持っていません。そこで、フードトラックと一緒にプロジェクトを展開することによって、ソフト面も実装できると考えたんです。

 

──実際にプロジェクトを始めるにあたって、どのようなやりとりをしたのでしょうか?

江尻:アイデア出しの段階ではかなり自由に発想していたよね。

 

ーTRC2021江尻悠介さん

 

松本:「渋谷川にハンモックを引っ掛けて、その上で食べられないか?」とか(笑)。

 

江尻:そんなこと言ってた(笑)。

 

松本:おもろいと思う部分に共通点が多かったので、コラボレーションの作業はスムーズに進行していきました。

 

ーAngya+松本光貴さん

 

江尻:そんな中で驚かされたのが、Angya+の2人が持つ行動力。彼らは、思いついたらすぐに実行してしまうんです。僕らは、つい、「これ大丈夫かな?」と立ち止まって考えてしまいがちなので、その行動力はとても参考になりました。

 

──そもそも、おふたりは、なぜ「フードトラック」や「食べる場所を設計する」という活動を始めたのでしょうか?

松本:僕の場合は『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画を見たのが、フードトラックをやりたいと思うきっかけでした(笑)。そこでアメリカに留学して、勉強をしながらフードトラックをつくる手伝いをしていたんです。日本に帰ってから、自分でもやってみたいと思い、活動を開始しました。この夏には、フードトラックで全国のお寺を回れないかと画策しています。

 

──お寺でフードトラック!?

松本:お寺の中には広い敷地があり、雰囲気も抜群。きっと、フードトラックとの相性はいいはずです。

 

──一方、TRC2021はどうしてこのような活動を始めたのでしょうか?

江尻:僕らが専門としている建築の世界では、「この場所にこういうものを設計してください」という依頼がなければ何もできません。しかし、空き地を見つけて勝手に設計を行えば、そこを「自分たちの場所」にできるのではないかと考えたのがきっかけ。そこで、コンビニの前や工事現場の周りの隙間といったような「空き地」に、食事をするための場所をつくる活動が構想されていったんです。

そんな僕らの活動を通じて、みんなに都市の空き地を見つけて活用する楽しさを知ってもらいたいと思っています。法律などによって、「ここは使ってはいけない」とがんじがらめにされてばかりでは窮屈ですよね。そんな窮屈さを脱するため、僕らは以前から「アキチテクチャ」を名乗り、空き地を活用するような活動を展開してきたんです。

 

ーメンター田中開さん(中央)

 

──開さんは両プロジェクトのメンターとして携わっています。おふたりにとって、開さんのアドバイスで印象的なものはありますか?

松本:開さんに言われて印象深かったのは「Angya+はアイデアは面白いかもしれないけどデザインがクソだ」っていうことですね。

 

開:うん、クソだよね。

 

──バッサリ(笑)。

開:せっかく美味しいご飯出しているのにデザインがクソっていうのは飲食系の人にありがちなんです。また、彼らのようにアイデアとしては新しいことに取り組もうとしているのに、パッケージするデザイン力を持っていないことも少なくありません。

 

 

──「デザインがクソ」という指摘は、せっかくのアイデアが活かされないというもったいなさから来ているんですね。

開:そうですね。デザインが先行して志がないよりよっぽどいいと思うのですが。特に、若い人が手がけているお店でありがちなのが、お金がないことが見え透いてしまうこと。お金がないのをアイデアで補わなければならないのに、それを諦めてしまうことが多いんです。

例えば、飲み物を提供する際に、明らかに安いストローを使っていたらどんなに他のアイデアが魅力的であっても「お金がないんだ……」という印象しか残らない。それだったら、コンビニのストローをパクって出すという可能性も考えられますよね。

 

──ダメですよ!!

開:僕はお店で某大手コーヒーチェーンのナプキン出したことがありますよ(笑)。お金がなくてペラペラのナプキンを出すよりも、知ってるロゴがついたナプキンが出てきたほうがおもしろくないですか? あ、あくまで余っていたものを出したんですよ(笑)

 

江尻:「あえてやってるのかな?」って思っちゃいますよね。

 

開:そう。「お金がなくて仕方なく……」ではなく、「おもしろいからそういうスタイルでやってます」っていう見せ方ができるのがベストなんです。

THE FOUR-EYED」っていう歌舞伎町のセレクトショップは、そういう部分がとても上手なんですよ。店内で使用している姿見も、配送された時の梱包をギリギリ残しながらレイアウトしていたり、椅子としてもパイプ椅子が使われていたり。お金がないのか、センスでやっているのかわからないんです。お店の人に聞いたところ、「金がないようなデザインに見せていて、でも本当に金がない」って言ってましたが……(笑)。

 

 

──では、TRC2021にとって、開さんから言われて印象深かったことは?

江尻:僕らは、以前から渋谷の街中とかに椅子やテーブルを持っていき、そこでごはんを食べるという実験を繰り返していたのですが、それを聞いた開さんから「もっとやっちゃえよ」っていうアドバイスをもらいましたね。

 

開:「一回捕まった方がいいよ」って言いました。100BANCHなら身元引き受け人になってくれそうな人もいっぱいいますしね。

 

江尻:捕まるっていうのは極端ですが……(笑)。周囲への迷惑やリスクを考えて動けなくなってしまうのではなく、その場にいる人がおもしろがってくれるなら臆せずにやってしまった方がいい。そんな思い切りを持つことを教えられました。

 

──ただ、公共空間で展開されるTRC2021の活動は、使用許可や専有許可といった手続きが必要になることもありますよね。

開:でも、そんなルールの隙間をつくことも不可能ではありません。「2M26」というフランスの木工家具作家ユニットは、2015年に、家具を少しずつ移動させながら浅草から渋谷まで30日間かけて歩いていくというパフォーマンスを行っていました。椅子やテーブル、ベッドなどの家具によってつくられた長い列があって、彼らはそれらをひとつずつ移動させていきます。そうすれば「移動中」とみなされ、道路専有許可を取っていなくても怒られないんです。そして、この移動をしている間、観客は家具を自由に使っていい。とてもクールなパフォーマンスでしたね。

 

──ギリギリ合法を狙ったプロジェクトですね(笑)。

開:また、深夜に出現しアルコールを提供する「屋台バーTWILLO」も、都内を移動しながら営業をしているお店です。おそらく、道路使用許可の問題で移動しなければならないのでしょう。ギリギリをついた戦略によって、公共空間をハックして活動している人もいるんです。

 

 

──ところで、お二人はなぜ開さんにメンターをお願いしたのでしょうか?

松本:もともと大ファンだったので、100BANCHに応募する際には、ぜひメンターをお願いしようと決めていました。僕らも小さな飲食を手がけるようなプロジェクトを想定していたし、開さんが持っているカルチャーとビジネスのバランスが理想的だったんです。開さんの持っているゴールデン街のバー「the OPEN BOOK」に遊びに行き「100BANCHに興味あるんです!」って直談判しましたね。

 

江尻:僕も、100BANCHに応募する前にthe OPEN BOOKに足を運びました。すると、一見どこから入るのかわからないような不思議な魅力があったし、看板の作りのユニークさとかにも魅了された。何よりも、お店の雰囲気から、都市の中に空き地を見つけてそこに場所を勝手につくっちゃうという僕らのノリに通じるものを感じたんです。

 

 

──開さんも含め、ここにいる三者はそれぞれ都市の中に小さな場所を見つけて遊んでいるという共通点があります。開さんの「the OPEN BOOK」もとても小さなお店ですが、そのような小さな場所からどんな可能性が生まれると思いますか?

開:お店として考えると、今は、小さいほうが可能性があると感じています。デジタルで情報をやり取りする現代において、店が大きかろうが小さかろうが影響力は関係ないですよね。それに、最近では、お客さんを楽しませるだけでなく社会性を持った存在としての役割がお店にも求められるようになっており、小さくてもちゃんと芯を持った店が影響力・発信力を持つようになっています。

戦い方が無限にある時代だからこそ、経済的にもリスクが少なく、戦いやすい小さな店舗には可能性が秘められているんです。

 

──開さんの店舗は、ゴールデン街という都市の「隙間」「空き地」と呼べるような場所に出店していますが、そのような場所の魅力はどこにあるのでしょうか?

開:空き地が魅力というわけではないんです。ただ、都市の中で魅力的な場所は空き地くらいしかなくなってしまっています。

 

都心には建物ばかりが充実しており、挑戦しがいのある場所が少ないですよね。飲食店をやるにしても、再開発エリアにテナントで入るのか、雑居ビルみたいな場所に入るかといった選択肢しか見えてこない。ゼロからの挑戦ができるのは「空き地」のような場所だけなんです。

 

 

江尻:再開発されたエリアなどは、「このボックスの中はこういう用途で利用してください」と、あらかじめ用途が規定された空間ばかりになってしまっています。その一方、空き地はどう利用してもいい場所であり、例えばテーブルを置くなどして空間に介入することによって場所の用途は無限大に広がっていく。空き地には、遊んでいくための可能性が秘められているんです。

 

──東京のような大都市では、空き地が「挑戦」や「遊び」を受け入れられる場所になっている、と。ところで、開さんは今年28歳と、今年23歳を迎える2組よりもやや年長ですが、開さんから見て少し下の世代にあたる彼らの活動についてはどのように感じていますか?

開:これは、100BANCH全体の特徴といえるかもしれませんが、ベースが共感にあり、社会の共感をどう得るかという事業が多いですよね。「お金を稼ぎたい」といった種類のエゴではなくて、社会に共感や気づきが広まってほしいという、優しく、柔らかい気持ちがベースにあるように見ます。ただし、もう少しエゴを持たないと広まらないものもあるし、一人一人との共感を軸にすると、広がるのに時間がかかるのも事実ですよね。

 

江尻:確かに、100BANCHの中でもそういう話はよくしていますね。

 

開:その意味では、もっと世の中に広めるためのアクションが何かあったらいいなと思います。ただ、その「何か」は、僕自身もわからない。それぞれで見つけていくべき課題でしょうね。

 

 

──では、メンターとして2組に期待することは?

開:自分たちの可能性を広げるために、もうひとつ、全く違うプロジェクトを展開してみるのもおもしろいと思います。そうすれば、現在のアウトプットを比較して、自分たちが本当にやりたいことが共通項として浮かび上がってくるはず。

 

──「フードトラックを使って何がしたいか」「空き地を使ってどんな遊びがしたいか」など、現在よりも、さらに本質的な思考が必要になりそうですね。

開:そう。だから、「フードトラックを使わないでやるプロジェクトを考える」「空き地を使わないプロジェクトを考える」といった方向性で動き出したら、ふたりとも、よりおもしろい展開が見えてくるんじゃないかな。

 

松本:いや〜! 開さんはやっぱりすごいなぁ!発想がギャラクシー(銀河系)でした!

 

一同:(笑)

 

 

■trucking wow展示情報
・早稲田祭2019
 日時:2019年11月2日(土)、3日(日)、10:00〜17:00
 場所:早稲田大学 早稲田キャンパス・戸山キャンパス・周辺地域
 詳細リンク:https://wasedasai.net/

 

<空き地募集中!>
彼らの作品を展示させていただける「空き地」を募集しています。(「空き地」に応じた新しい作品の制作も承ります。)
問い合わせ: https://akichitecture.myportfolio.com/about

 

WRITER

萩原雄太

演出家、フリーライター

フリーライター、演出家、かもめマシーン主宰。愛知県文化振興事業団「第13回AAF戯曲賞」、「利賀演劇人コンクール2016」、浅草キッド『本業』読書感想文コンクール受賞。2018年、ベルリンで開催された「Theatertreffen International Forum」に参加。

#ナナナナ祭2019