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よしもと芸人とアソブ「見えない」「聞こえない」「話せない」ハンデを強みに変えよう! 7/9(火)開催『未来言語』ゲーム企画者にインタビュー

さまざまなハンデをゲームに取り入れ、コミュニケーションを考える「未来言語」ワークショップが渋谷100BANCHで行われます。開催に先駆け、プロジェクト・リーダーの菊永ふみにインタビューを行いました。
パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが運営する100年先を豊かにするための実験区「100BANCH(ヒャクバンチ)」が、7月6日から9日間にわたり、『100BANCHナナナナ祭2019』を開催します。

いま注目のシェアリングエコノミーやモビリティ、昆虫食など、様々なテーマで未来を創造している次世代リーダー達の活動成果を観覧、体験いただくことのできる複合型イベントです。

今回は、ナナナナ祭で体験できる40以上のプロジェクトから、『よしもと芸人とアソブ 未来言語でNEWゲーム』をピックアップ。

100BANCH発起人、パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部 未来戦略室の則武里恵にも同席いただき、『未来言語』プロジェクト・リーダーとして本企画を積極的に進めてきた、菊永ふみにインタビューを行いました。

『未来言語』菊永ふみインタビュー

菊永は、新しいコミュニケーションのカタチを提案する一般社団法人 異言語Lab.代表でもあります。視覚言語を使う人と音声言語を使う人がチームになり、ろう者・難聴者と聴者がお互いに伝え合うことを意識したプログラム「異言語脱出ゲーム」を企画・開催しています。

昨年『ナナナナ祭2018』では、よしもと芸人の方々をゲストに迎え、『未来の言語』というゲームイベントを開催。チーム内でカードを配り、カードに書かれた「見えない」「聞こえない」「話せない」役割を各人が担います。その状態で、「花」や「ラーメンを食べる」といった言葉を伝え合うゲームです。

ろう者である菊永への本インタビューは、100BANCHの1室に集まり、オンラインファイルに双方が書き込む形で行われました。

 記者:『異言語脱出ゲーム』のプロモーション動画「コトバの壁か? ココロの壁か?」のメッセージを観て、普段の生活でもコミュニケーションがうまくいかない場合は、【ココロの壁】の方が問題かもしれないと思いました。

[異言語脱出ゲーム PR動画 by異言語Lab. – YouTube]

また、昨年の『未来言語』ワークショップで、コミュニケーションをとるために、初対面の人の手を握ったり、手のひらに文字を書いたりと、スキンシップが多用されていて、衝撃を受けました。

私自身、知らない人とのスキンシップに忌避感があって、【ココロの壁】を高くしていたことを実感しています。

同時に、言葉を使ったコミュニケーションを、粗雑にしてしまっていることに気が付きました。たとえば、なにか一言つぶやくだけで、簡単にひとを傷つけることができてしまう。他の人の身体に触れることと同じくらい、言葉も慎重に使わなければならないと感じました。

菊永:ありがとうございます。【ココロの壁】の方が問題ということ、私自身もそれを意識しながら人とコミュニケーションを取っています。私自身、思い込みで色々考え込んでしまったり、遠慮してしまったりということがよくあります。

 

はじめてリーダーとして迎える『未来言語』イベント

則武:いつも『未来言語』は、ワークショップの回によって、中心になるリーダーが異なります。『ナナナナ祭』では菊永さんがリーダー。多分、いろいろ心配しながら進めてきてくれていたけど、どんな準備期間だったかを、今日は聞いていきたいと思います。

菊永:今回、リーダーをやるのは初めてなんですね。多分。

多分と言うのは、自分がリーダーなんだという意識を持てたのが、今回初めてなんです。私自身が忙しかったというのもあるけれど、他の人に任せていた面が否めなかったです。聞こえない中で、どうみんなに関わっていくのか、私自身がすごく悩みながらの『未来言語』だったと思います。

でもそれが1年を経て、私が私らしくいられるようになったのは、『未来言語』のメンバーが、私とのコミュニケーションに慣れてきた、私自身もみんなとのコミュニケーションに慣れてきたということが大きいと思います。

記者:『未来言語』のゲームと同じですね! 慣れることで、コミュニケーションへの恐怖が薄れて、どうすれば通じ合うことができるかわかってくる。ゲームと実体験が連動しているというのは、とても面白いです。

去年ナナナナ祭で行った『未来言語』では、どういった手応えを感じましたか?

菊永:去年のワークショップは、ある意味、一般の方(いわゆる、音声言語で話して、見えていて、聞こえる方)が「みえない」「きこえない」「はなせない」なかで、伝え合う体験ができたこと、それ自体を面白いと感じてくださったことが、一つの手ごたえ。

制限のある極限の状況下で伝え合おうと試みて、伝わったときの喜びが大きかったんですね。
でも、当事者にとっては日常がその連続なんです。伝わって喜ぶとか、伝わらなくて残念に思う、という以前の問題なんです。

一般の方にとっては、ゲームとして楽しむことができても、当事者はどうなのか? いつもそんなふうに喜んだり、残念に思ったり、というわけにはいかない。そういう日常の連続を、どう『未来言語』が扱っていくかは、プロジェクトのメンバーが意識しなければいけないところです。

一般の人がゲームで体験する「みえない」「きこえない」「はなせない」状態が、当事者にとっての《日常》であることを意識してもらうためには、やはり当事者に来ていただきたいと強く思ったのです。だから、今回の『ナナナナ祭』は、視覚障がい者枠、ろう者・難聴者枠、在日外国人枠を新たに設けました。

 

イベントに参加することにもハードルがある障がい者

記者:参加申込み4枠のうち、すでに一般枠とろう者・難聴者枠 が定員に達していて、期待度の高さがうかがえます。

菊永:ろう者・難聴者はいつも集まっているんです。異言語Lab.が、ろう・難聴者の集まりのなかで活動しているチームなので、難聴者が参加しやすいためです。

記者:渋谷では246号線付近で白杖を持った方をよく見かけるのですが、視覚障がいのある方が集まる場所に、アプローチをするのはどうでしょうか? インターネットを介した情報にも、断絶があるかな、と思います。

菊永:一昨日(6月22日)申込み状況を見て、盲者と外国人が集まっていない状況でした。「ネット上で、日本語で募集されているので、そりゃ来ないわよ。盲者はどうやってネットを見るのかな?」という問題があるわけですね。

永野さん(『未来言語』プロジェクト・リーダーのひとり、永野将司氏、NIHONGO代表)と話したのですが、「英語とか中国語で募集すればいいのでは?」と伝えたら、永野さんは永野さんで実は苦悩があって。「外国人はみんな英語ができるわけではない。中国語ができるわけではない。日本語分からない、英語分からない、と言う風に二重の壁に苦しんでいる」という問題があるとおっしゃっていて。

ろう者・難聴者にも同じ聞こえない状況でも、私は話せるから、コミュニケーションがとりやすいけど、話せないろう者もいる。同じ障がいでも問題が複雑です。

記者:『未来言語』ゲームを楽しむこと、参加すること自体が難しい状態の方もいるわけですね。それぞれ、言語能力や障がいの度合いにもグラデーションがあって、ひとりひとり悩みが違う。それも今後の課題になりそうですね。

菊永:盲の方も見えにくい、見えないというグラデーション。知的の方も軽度だったり重度だったり色々あるわけです。

でもそれらを含めて、当事者に来ていただくのはすごく意義があると言う風に思っています。ひとりひとりの違いを見る。障がいとか言語のカテゴリーではなく、ひとりの人間として見つめていく、接していくということが未来の社会に求められていくように思います。

記者:社会においても同様に、一般の人も障がいのある人も同じように《日常の連続》を心地よくしていくために、ひとりひとりの意見を漏らさずに受け止めていくことが大切だということを感じました。でも、すごく難しい挑戦になりますね。

 

『未来言語』プロジェクトが挑む難題

菊永:『未来言語』は「すべての人が通じ合えるコミュニケーションとは?」という、永遠の難題を課してしまったものですから(笑)。はじめにそれを聞いたときは「どう考えてもムリだろ」と思ってしまいました。

記者:バベルの塔ですものね! 紀元前からある大問題ですよ。しかし、今回は菊永さんが、精力的に、合宿をしたりして取り組んでいらっしゃる。

100BANCHのWebサイトを見ていたら、以前は「引っ込み思案なのかしら?」と思うことがあったんですが、人類に課せられた大問題を前にして、何が菊永さんの積極性を引き出したのでしょうか?

菊永:1年前の100BANCHにいる自分は、まだどこかで遠慮している面が強かったかもしれないです。

自分が異言語Lab.の活動を通して、少しずつ聴者の社会に主体的に関わることが増えてきてから、『未来言語』において「やってみたいけど、どうやったら関われるのか」を考えることができるステージに上がったのだと思います。以前なら「みんながやってくれるから大丈夫、私はわからないから仕方ないな」と思ってました。

則武:合宿に行く前から、菊永さんはすごく心配していたのに、お昼ご飯のとき、疎外感を感じさせてしまう出来事があって…。

菊永:泣いちゃったんです。

則武:こちらはそんなつもりじゃなくても、隣の席が空いているとか、同じテーブルの人が反対を向いてはなしているとか、そういうことが疎外感を感じさせてしまったんです。聞こえる人同士でも、周りが自分の悪口を言っているように思ってしまうことがあるけれど、そんな状態にしてしまっていたのだな、ということをメンバー一同反省しました。

菊永:いえいえ。単純に、自分がこれまで『未来言語』以外のメンバーと関わる機会がなく、みんなもどう関わっていいか分からない状態で迎えた合宿だったと思います。

だから、悪口を言っていると言う風には思わなかったけど、みんなも私も、どう関わり合えばいいのか、わからない空気が漂っていて、それがしんどかったんだと思います。「わからない」ということ、関わる方法を知らないということが、社会が分断される理由の一つだと思うのです。

 

「わからない」「知らない」が社会の分断を生む。だからこそ、当事者の参加を熱望

記者:社会のなかで人とうまく関わることができないと、性格のせいにされることもあります。もしかしたら一般の人にも、そういう「わからなさ」とか、方法を知らないという理由で、うまく社会と関わることができない場合もあるかもしれません。

菊永:性格のせいとか、言語が違うせいにするのは簡単だけど、実はそうじゃないのだと思います。障がい者は、社会でおとなしく生きなければいけない、ひと様に迷惑をかけてはいけない、という風潮があるように思います。

だから社会から無意識に隔離されるというか、障がい者当事者も、『ナナナナ祭』のような場に行きづらい面があります。

『未来言語』以外にも、100BANCHにはとても魅力的なコンテンツがたくさんあります。たとえば、昆虫食。ろう者のなかにも「自然のなかで昆虫を採集して、火であぶって食べてみたらおいしかった!」と言っていた人がいて、その人だったら、昆虫食のワークショップに行けたらいいですよね。

だけど、そこに手話通訳などの情報保障がなければ、「参加できないな」となるわけです。そうした障がい者、外国人の参加しにくい状況がまさに《日常の連続》なんです。
それをどう変えるか、みんながもっともっと参加しやすい場にしていくか、それは『未来言語』が発信していくべきだと思うのです。

則武:結構、難しい問題ではあると思っています。イベントをつくる側も、参加者の前提を考えています。ユニバーサルにつくろうと思ったら、もともといろんな人が参加することを前提にしないと、参加しやすいイベントにはならないと思うんですよね。通訳をつけてギャップを埋めるという方法がベストではなく、「もともとそういう形」にしていく必要があるように思います。

今日の取材でも、音声言語で行う場合とは違うペースだと思うけど、これはこれで成立するし、終わったときに議事録ができているところがすばらしい! こういう良いところがある。だから、そういう良さに気づいていく過程も面白いと思っています。

菊永:そうなんです。一つは当事者が積極的に前に出るというか、その場に参加して、初めて「あ、聞こえない人が参加した、どうしたらいいのかな」と考えるきっかけになる。
100BANCHの昆虫食プロジェクトのメンバーも、ろう者が参加することで、どう関わるかを考え、実際に行動に移してくれるはずです。たとえば、紙に書いて伝えるとか。

私が合宿に参加してみたいという話をしたときに、永野さんが押してくださったのです。「菊永が行かないと100BANCHのみんなは、わからないままだよ。当事者がいて、いろいろ気づくから。菊永が行け!」と押してくださいました。

私自身が100BANCHの合宿に参加したことで、伝える方法はいろいろあるということを、みんなが知ってくれたと、そのときに気づきました。参加する、それ自体に意義があるんです。

 

ハンディキャップを逆手に取る、新たなアソビを創る

記者:『未来言語』を通じて、もっと気軽に、障がいのある方が社会に関われる状況ができると素敵ですね。

『未来言語』は、現在カードゲームの形ですが、今後、どう発展させていくのか、といったアイデアはありますか?

菊永:今回の『ナナナナ祭』で当事者の方に来ていただき、一緒に楽しみながら、「みえない」「きこえない」「はなせない」状況での新しいアソビを創ろうという話をしています。

これまでのアソビというと、マジョリティがメインのアソビが多かった。逆に「みえない」からこそ面白い、「きこえない」からこそ面白い、と言うふうに、障がいを逆手に取ったエンターテイメントとして楽しめるコンテンツが生まれるといいな、と思っています。

今回の『ナナナナ祭』でアイデアを出し合って、面白いアソビを吉本興業さんと一緒にイベント化、あるいはテレビで放映していくのも面白いね、という話をしています。

記者:芸人さんは言葉を使って笑いを作り出すことが多いように感じるのですが、吉本興業さんと組むというのは、そういう面(イベント化、テレビ放映)でも、『未来言語』を広めるキッカケになるんですね。

菊永:笑いを産むときって、おっしゃる通りで「言葉=音声言語」が占める部分って大きいですよね。『異言語脱出ゲーム』では、吉本興業さんとコラボでやらせていただいて、芸人さんがろう者と関わるんです。そのときに、自分の武器が使えない! 笑いが取れない! この極限の状況下で、どう芸人として笑いを取るかを試される場だと思うんです。芸人さんにとっては、ひとつのトレーニングの場ですね。

いま、多様性とかSDGs(持続可能な開発目標)が凄く流行っている時代、障がい者や外国人達に対する関心が高まっている。そのなかで、吉本興業さんからは、新しいムーブメントを作っていこうという気概を感じています。だからこそ、『未来言語』や異言語Lab.に関わってくださっているように思います。

もう一つ、障がい者がこれまで「できない」ことを「できる」ようになることで感動を生み出すコンテンツがありますが、それは個人的に違うかな、と思っています。

河本(次長課長)さんが言っていたのは、「障がい者と共に楽しむ、障がいがあることで逆に持った強み−−“聞こえないからこそモノを見る力がある”とか、”見えないからこそ音を聞き分ける力がある”とか、“話せないからこそ空間で視覚的に伝えられる力がある”とか、そういう強みを活かしたイベントやゲームができるといいね、ただただ一緒に楽しめたら、最高だね」と仰ってくれたんです。それもきっかけの一つになっていますね。

これまで便利な物が作られてきてはいるけれど、そのヒントになるのって、実は障がいから来ていると思うのです。たとえば、バスの降車ボタンは、聴覚障がい者が、バスを降りるときに運転手に伝えることができないため、降車ボタンが創られたという説があります。

いまや、それが全ての人にとって、便利なものとして浸透している。という風に、「障がい」は新しい可能性、価値観を生み出す存在になり得るかもしれない。『未来言語』はそれを追求していく場でありたいなと思っています。

 

《よしもと芸人とアソブ 未来言語でNEWゲーム イベント詳細》

日時:7月9日(火)19:00-22:00

場所:100BANCH

参加費:2000円

定員:70名 ※チケットは申込ページより、ご自身に当てはまる枠からお申込みください

申込み: よしもと芸人とアソブ 未来言語でNEW GAME in 100BANCH ナナナナ祭

| Peatix https://peatix.com/event/697364/

『ナナナナ祭』では、さまざまなワークショップやシンポジウムなどが行われますが、申込み不要でふらっと立ち寄ることができる、エキシビションもご用意しています。今回ご紹介した未来言語カードも展示しております。ぜひお立ち寄りください。

 

~未来をつくる実験区「100BANCH」とは~

「100年先の世界を豊かにするための実験区」というコンセプトのもとに、これからの時代を担う若い世代とともに新しい価値の創造に取り組む活動です。パナソニック株式会社が創業100周年を迎えることを機に、「常識にとらわれない若いエネルギーの集まりが、100年先の未来を豊かにしていく」という思いから、株式会社ロフトワーク、カフェ・カンパニー株式会社と共同で2017年7月7日に設立。そして、この2年間、「100BANCH」は、野心的な若者が未来を創造していく一歩を、24時間365日実験可能な場所とともに、年間約200のイベントをはじめ、SXSWやSlush、CESなどの大型展示会での発信の機会を提供して支援。活動場所などのハード面と、各分野の第一人者であるメンターによる知見というソフト面の両面から、累計125のプロジェクト(2019年5月末現在)の加速支援を行ってきました。

そんな「100BANCH」では常識にとらわれない野心的な若者達が、昼夜を問わずさまざまな活動を繰り広げています。100BANCHのミッションは、彼らとともに「つくりたい未来」「100年先を豊かにする未来」を創造すること。そして「100BANCH ナナナナ祭」は、何かに「発症」したように、ひたすら自らのつくりたい未来を追求している次世代リーダー達の熱気とその活動内容を体験いただける複合型イベントとなっています。

ナナナナ祭りの会場でもある「100BANCH」は、再開発の進む渋谷川沿いの倉庫を1棟リノベーションして作られた空間です。1階は未来に向け新たな食の体験を探求するカフェスペース「KITCHEN」、2階は35歳未満の若者リーダーがプロジェクトを推進するワークスペース「GARAGE」、ワークショップやイベントが行われるコラボレーションスペース「LOFT」-という3フロアから構成されています。また、2018年9月に整備された渋谷川沿いの遊歩道「渋谷リバーストリート」にも染み出して、一部プログラムを実施します。

 

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