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未来のコンビニプロジェクト 第3回 ~多様なフィールドワーク先から見えてきた未来とは?いよいよ2040年のコンビニをカタチに!

フィールドワークから見えてきた未来

墨田区にある喫茶ランドリーやファーマーズマーケットなど、コンビニ以外のコミュニティを見学したり、コンビニDJなど新しい活動をしている個人へのインタビューや中国や香港の無人コンビニを視察したり。チームごとに選んだ場所や人は様々でした。

しかしながら全てのチームに共通しているのは、本プロジェクトに対する溢れ出るエネルギーとやる気。フィールドワークを経て、自分たちが設定したテーマに対する問いをさらに深めてきた様子でした。

報告会では、各チーム発表後に、未来のコンビニプロジェクト運営からパナソニック株式会社コネクテッドソリューションズ社鈴木さんと100BANCHの則武さんが講評者になり、フィードバックを行いました。

報告会では、各チーム5分で以下の内容を含めた発表をお願いしました。

  • フィールドワークを経てチームで設定したテーマ(問い)
  • 今後の具体的なスケジュール(どう進めていくか?)

発表は以下の順で行いました。

  • 地球の健康チーム
  • インフラと便利チーム
  • コミュニティとTechチーム
  • コンビニ無店舗化チーム
  • かかりつけのコンビニチーム
  • 働きやすいコンビニチーム
  • ヘルスx未来の食チーム
  • コンビニライフスタイルLab.チーム

 

各チームの発表 ~前半~

<地球の健康チーム>

地球の健康チームは、私たちが生きる地球が健康であり続けるためには、コンビニがどのような存在になるべきか、をテーマに話し合いを行いました。

結果として、大量生産、大量消費、大量廃棄を繰り返す現在の暮らしは持続的ではなく、特にプラスチックはその課題を助長し、環境に悪影響を与えているという考えから、今の時代を「プラスチック時代」なのではと捉えたそうです。このことからリサーチを進めていくうちに現在欧米で普及しつつあるサーキュラーエコノミーという概念に出会い、この経済モデルが一般に広まれば、美しい世界観のもと経済を循環させながら人類が暮らしていくことができるのでは?とグループでの議論を深めています。

そこで、地球の健康チームは、ちょうど日本に帰国していたオランダ在住のサーキュラーエコノミー研究家、安居昭博さんからサーキュラーエコノミーを行政が力を入れて支援しているアムステルダムの事例をヒアリングしてきました。アムステルダムでは、例えば月額でレンタル料を払い、壊れた場合は無料で修復を行ってくれるオーガニックコットン100%のデニムブランドや、使えなくなった部品を修理しながら使い続けることができるスマートフォンを提供するなど、シェアやリサイクルの概念で行政や企業を巻き込み、環境に配慮した活動を経済に落とし込み循環させていくビジネス形態のスタートアップが急成長しているというお話を伺ったそうです。

2040年に向けて環境問題が悪化していくことが想定されているなかで、2040年のコンビニでは、完全食自動販売がされ、コンビニの店舗としては自然エネルギーの発電所&ゴミ処理場が兼ね備わっている空間デザインが行われていればいいのではと提案しました。

 

<インフラと便利チーム>

今回の発表までに中国や台湾、香港への出張が重なったメンバーが何人かいたため、出張や旅行先で訪問したコンビニや参考になりそうな店舗についての発表でした。

まずは代官山蔦屋書店内にあるファミリーマート。このファミリーマートは、同じ建物内に蔦屋書店やスタバが併設されていて、店舗自体もおしゃれな雰囲気があるが、併設店舗のゆっくりとした雰囲気と回転の早いコンビニに違和感があったとのこと。また介護拠点が併設されているローソン千駄木不忍通は、コンビニと介護のスペースがきっちりと区切られ、空間として一体化できていないという印象があったものの、共用スペースでは併設されている栄養相談窓口が主催している脳トレなど、地域のなかに入り込んでいる様子だったそうです。またセブンイレブン本社が入居するビルにあるセブンイレブン千代田二番町店は、鍵の受け渡しサービスができる民間宿泊施設のチェックイン機など、最新のサービスが導入されていて、セブンイレブンの未来が垣間見えたと語りました。

その他中国・深センに出張されたメンバーは現地の無人コンビニを視察。QRコードで入店、決済エリアは商品についたRFIDが読み取られそのまま決済、完了すると出口が解錠されるコンテナ型のコンビニや、陳列棚が全て自動販売機になっていて、オンライン決済サービスのQRが付与されていて、コードをスキャンして扉を開け、商品を取り出すと商品についたRFIDが冷蔵庫の中のストックが減ったことを感知、自動で決済が完了するコンビニなど、RFIDによる自動決済サービスが広く普及されていることをお話されているほか、外食文化が根付いている香港や台湾ではイートインスペースがあったりホットスナックが充実していたりと、地域の文化に根ざしたコンビニの展開がみられたというお話など、国内外のコンビニの事例を紹介していました。

 

<コミュニティとTechチーム>

コミュニティとTechチームは、コミュニティにフォーカスしフィールドワークを行いました。まず最初に墨田区にある『喫茶ランドリー』を見学。喫茶店が併設されているコインランドリーでは、その用途の他にも様々なイベントが開催されているなど、そこに来る人々のコミュニケーションが増えるような工夫があり、どんな人も自由にくつろげる場の作り込みがされていたそう。

その後『喫茶ランドリー』の方に紹介いただき、近くにある『リズムアンドベタープレス』という夜はバーになる活版印刷屋を訪問。風通しの良い活版印刷屋さんをコンセプトにしている『リズムアンドベタープレス』は、音楽スペース&立ち飲み屋でもあり、様々な人が集まるコミュニティの場になっていると感想を述べていました。

そして週末に人が集まるコミュニティの場として『青山ファーマーズマーケット』にも訪問。『喫茶ランドリー』や『リズムアンドベタープレス』といった店舗優先のコミュニティ空間と『青山ファーマーズマーケット』を比べて、コミュニティの違いを定義していました。前者2つはお店にいくことでお店の人と仲良くなり、お店に通うことでお客さん同士が仲良くなる。『青山ファーマーズマーケット』は売る側と買う側のコミュニケーションは生まれるが買う側同士のコミュニケーションは生まれにくいと比較。これらを踏まえてチームが目指すコミュニティは自然と人が集まるものがいいと定義し、引き続き様々なコミュニティを調査し、コミュニティに対してテクノロジーができることを考え、最終成果発表に繋げていくと語っていました。

 

<コンビニ無店舗化チーム>

コンビニ無店舗化チームは、将来コンビニの実際の店舗がなくなるということを仮定した上で、今回はコンビニの受け取りにフォーカスしてフィールドワークを実施。OKIPPAという宅配ボックスサービスを開発するYperの内山社長にインタビューを行いました。OKIPPAは再配達問題を解決する置配サービスで、社会問題である配送会社の宅配クライシスを解決するために開発したそう。現状の宅配サービスでもコンビニでの配送&受取が行えるが、重い荷物を運ぶのが大変だったり、時間指定の受取が困難だったり、女性であればノーメークで外に出たくないなどの課題があると内山社長から説明があったそうです。また、このサービスを広めていく中で当初想定外だった障害者や買い物弱者にもニーズがあることに気づいたとのこと。

今回のフィールドワークを踏まえて、コンビニ無店舗化チームは既存のテーマにプラスして買い物弱者にフォーカスし、コンセプトを詰めて提言に繋げていきたいとチームリーダーの小林さんからお話いただきました。

 

フィードバック ~前半~

前半セッションのチーム発表を経た鈴木さんと則武さんの講評は以下。

まず全体に対して、この短期間にすごくたくさんのフィールドワーク先に訪問、今回の発表を行ったことにとても驚いていますと則武さん。地球の健康チームには、完全食、エネルギー装置などのハイテクノロジーを使った店舗設計の提案があったが、今後の課題はそれをどうやってお客さんの利用に繋がるのかをもっと知りたいとコメントしていました。

インフラと便利チームについては、便利という定義が日々変わりゆくなかで2040年の便利ってどんなものなのかという問いはこのプロジェクトを通して追求していきたいテーマの一つなので深堀りしてほしいと則武さん。鈴木さんからはチーム全体として海外のフィールドワークをしていることが特徴で、テクノロジーに貪欲で導入が早い中国と日本のコンビニの違いをフォーカスしてみても面白いのではというコメントがありました。

コミュニティとTechチームは『喫茶ランドリー』や『リズムアンドベタープレス』など、特徴的なコミュニティ拠点へのフィールドワークにいったことがとてもユニークなので、ここにどのようにテクノロジーを入れ込んでいくのか興味深いとお話されていました。

コンビニ無店舗化hチームは、則武さんがフィールドワーク先であるOKIPPAについてローテクでも発想の転換で人の課題を解決できる好事例だとコメント、ヒアリングの学びから買い物弱者にフォーカスすることに決めたという着目点が面白いとお話されていました。

 

各チームの発表 ~後半~

後半は、引き続き残り4チームがフィールドワークの発表を行いました。

<かかりつけのコンビニチーム>

かかりつけのコンビニチームは、フィールドワークをするにあたりチーム名である「かかりつけのコンビニ」がもつ言葉の意味について考えたそう。かかりつけとは、パーソナルな健康データを深く理解している状態のことと定義しつつも、そもそも体調が優れなかったり病気になったときに人はコンビニではなく病院にいくだろうと読み解き、かかりつけのコンビニでは、コンビニが担うべき役割を深掘ることが重要だと考えたそうです。その後2040年の社会やその時代に住む人の暮らしはどのようなものになっているかを調べてみたらポジティブな面とネガティブな面があったとコメント。ポジティブな面としては、インプラントでウェアラブル端末を人体に埋め込むことができるようになれば、その人の健康状態が常にわかる状態になったり、テクノロジーで将来なりうる病気を予測できる予測医療が発達すること。2040年に暮らす人はある程度、日常生活のなかで健康を保つことができるようになると推測。一方で、ネガティブな面として、人と人のつながりが薄くなることでコミュニティが重要視されるのではと考え、今回のフィールドワークではコミュニティテーマに3箇所を訪問されました。

まず最初に『喫茶ランドリー』。コミュニティとTechチームも訪問したこの店は、その場所に来た人たちが何をできるか、洗濯をしている時間にどう楽しむかなどといったように店舗の余白が大きく、お客さんと一緒に店を作り上げているように感じたそうです。

地方と東京でのコミュニティやコンビニの価値観の違いについてのヒントを得るためにヒアリングをした福井県大野市と東京の2拠点居住者が集まる『越前おおの みずコトアカデミー』では、その地域の課題を可視化することがコミュニティで重要だという気づきがあったとのこと。最後は地域に開いたイベントをコンビニで実施しているコンビニDJの岸野さんと店長進藤さんにインタビューを実施、コミュニティについて意識していることを伺いました。自身が活動してるコンビニやイベントについて、岸野さんはインターネットで検索したワードだけが情報ソースになってしまっている現在だからこそ、全く未知の情報を体験してもらう機会を意識して活動をされているそうです。このような学びからかかりつけのコンビニチームは、「レッツシャッフル」をテーマに人の集まる体験設計を行うことでサードプレイスとして機能するような店舗を作るのではなく、既存のコンビニの土地の属性や求められているものに柔軟に対応した暮らしに溶け込むインフラを作りたいと語っていました。

 

<働きやすいコンビニチーム>

コンビニに関わる全ての人が「働きやすいコンビニ」を実現することを目標にしている働きやすいコンビニチームは、チームリーダーである倉持さんが元大手コンビニエンスストアの社員だったこともあり、当事者意識のもとコンビニの労働にフォーカス。今回は、コンビニアルバイトに対してヒアリングを行いました。その結果、コンビニの労働者が直面している様々な課題はテクノロジーによって効率化できるんじゃないかという仮説ができたそうです。しかしながら、スマートフォンでの電子決済ができるローソンスマホレジを体験したところ、一見便利に見えたこのサービスは、入店から会計まで常にスマホに片手を奪われてしまうので買い物がしづらく、このままではめんどくさいという理由から使われないのではとお話をしていました。このことから今後、働きやすいコンビニチームとしては、AIなどのテクノロジーが行う業務と人間が行う業務とを分けて考えて、未来のコンビニの働きやすいモデルを考えるそうです。

具体的には前者においては、会計業務や納品、シフト削減管理などは、RFIDの普及や納品&雑務のオートメーション化、シフト概念を変更させることによって人間の業務を削減、人間労働者は、人間にしかできない顧客との他愛もない会話や、データにはない売場作りなど、労働者の業務の最適化を考えることで働きやすいコンビニ像をつくるそうです。

 

<ヘルス&未来の食チーム>

ヘルス&未来の食チームではなんらかの理由で生きづらさを感じていたり、孤独を抱えている人をターゲットにコンビニの未来像を深堀るとお話されていました。フィールドワーク先として、店頭でマルシェを行っているセブンイレブンを訪問。八百屋のように前掛けをして野菜販売の声かけをするオーナーにインタビューを行いました。このマルシェは近隣の高齢者の方達のライフラインとしてとして普及していて、このマルシェを見て初めてコンビニに来た高齢者のお客さんもいると聞き、コンビニを違った角度でみることができたそうです。このフィールドワークを経て得た今後のキーワードにもなりえる学びは、フィールドワーク先のオーナーさんがお話されていた「店舗の効率化も大事だけど、いかに利用者に寄り添えるか」という視点。今後の流れとしては、路上生活者や家出人など、いわゆる社会という輪の中の外れにいるような人たちにヒアリングをして、彼らの生活に寄り添える新しいコンビニの概念を作り出せたらとお話されていました。

 

<コンビニライフスタイルlab.チーム>

コンビニライフスタイルlab.チームはコンビニが暮らしをどのようにアップデートをするかを主軸に今回の発表を行いました。日々めざましく成長し続けているテクノロジーは、2040年には今あるものからは想像つかないほど変化を遂げていると考え、ライフスタイルが2040年に向けてどのように変化しているかを意識したフィールドワークを行いました。今回は、ミュージシャンや、シェアに関して知見をもっている人など、様々な業種の人が住んでいる多拠点居住者が暮らす長屋的なシェアハウス&コミュニティ『Cift』を訪問しました。ここの住人でもあるチームメンバーの山倉さんによると、『Cift』の面白さはリビングにいるだけでいろんな人が集まるので、次々と新しいプロジェクトが展開していくこと。今回は、コンビニライフスタイルlab.チームの打ち合わせを次々にリビングに集まる『Cift』のメンバーにも入ってもらいながら行うことで、新しいコンビニの価値観を模索。結果として、モバイルハウスなど可動産が暮らしスタンダードになってきたときに、多様な暮らしが混在するなかで必要なコンビニはコロニーのような存在なのではと考えたそうです。

コンビニライフスタイルlab.チームが設定した最終提言に向けての問いは、未来の「便利」と「共有」を定義することで、「共有」が「便利」に繋がるのでは?ということ。それを踏まえて今後のワークでは2040年に暮らす人にとって、時短=便利なのではなく、便利だから時間を使うようなコンビニが何かを考えていくそうです。コンビニという拠点が暮らしのターミナルになり、様々なものが共有され便利になるのではという仮説を立て、未来のライフスタイルにコンビニがどう影響していくかを模索していくとお話していました。

 

フィードバック ~後半~

則武さんと鈴木さんが後半の講評を行いました。

かかりつけのコンビニチームについて、則武さんから「フィールドワーク先で訪問した店で感じた余白についてのお話があったが、足を運んでもらうことをどうやって作るかはコンビニに限らず大事なことなので、最終提言に向けてどのように作り込みをしていくかがとても楽しみだ」とフィードバックがありました。

働きやすいコンビニチームは、次世代のコンビニ決済方法について、鈴木さんは「スマホで買い回る仕組みはスマホに片手を奪われてしまため買い物がしづらいという気づきがとても良い」とコメント。キャッスレス決済が普及され始めた昨今において、その利用開始登録に手間がかかるなどテクノロジーが人にとって優しくないということはよく聞く話だと例をあげていました。また他のチームでも話題になったRFIDについて、現状RFIDタグはタグ自体の単価が高かったり、商品に貼るオペレーションの負荷があるため、使い回しができない商品への使用には課題があるので、画像認識での会計など他の方法で働きにくいコンビニに対する解決の糸口を探すのがいいのではとお話されていました。

ヘルス&未来の食チームについては、八百屋さん一体化のコンビニへのアプローチが良いと則武さん。コンビニは型が確立されたもののようなイメージがあったが、その地域ならではの商品を取り揃えてある店があると面白いのではとフィードバックされていました。

コンビニライフスタイルlab.チームは、人々のライフスタイルの変化にどうコンビニが寄り添っていくかという仮説が面白いと則武さん。人が1人でいる時間とコミュニティにいる時間を選択する上でコロニーがどういうものになっていくかの仮説を聞くのが楽しみだとお話されていました。

未来のコンビニプロジェクト、まだ第3回目にも関わらずプロジェクトに対する参加者の熱量も発表のクオリティも高く、運営チーム一同圧倒されっぱなしでした。残すところあと2回、各チームの提言がどのように変化していくのか楽しみです。

 

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