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100BANCHというカルチャーとエコシステム「プロローグ:こんにちは未来 ~100BANCHの今、これから~」──ナナナナ祭2026アーカイブ

2026年7月7日、9周年を迎えた100BANCHで、年に一度の祭典「ナナナナ祭2026」が開幕しました。初日に開催したカンファレンスデー「こんにちは未来 ― 人間だけの会議2026 ―」では、初の試みとなる全編ダイアローグ形式を採用。参加者一人ひとりが対話を通して未来を考える場となりました。

本レポートでは、100BANCHのカルチャーやこれからの展望を語ったプロローグのトークと、対話を通して会場に生まれた様々な景色をお届けします。

登壇者

則武 里恵|100BANCH発起人/オーガナイザー

庭野 里咲|100BANCHアイドル /ナナナナ祭2026 プロジェクトマネージャー

「ナせばナる、ナさねばナらぬ」9年目のナナナナ祭

則武:今日7月7日は、100BANCH9周年の記念日です。9周年って本当に信じられないですね。

庭野:信じられない!オープンしてから、9年の付き合いですね。

則武:100BANCHは、仮説→実験→検証をぐるぐる回していく場所で、「未来をつくる実験区」というコンセプトで活動しています。そんな100BANCHが、年に1度開催しているナナナナ祭は「ナせばナる、ナさねばナらぬ」の頭文字をとって名付けられました。普段だったら難しいと思ってしまうことでも、ナナナナ祭という機会を利用してやってみよう、とみんなで大実験をしていく。そんな場になればと思って毎年実施しています。

本日7月7日がカンファレンスデーで、7月10日、11日、12日の3日間がデモデーです。デモデーには30のプロジェクトが参画し、「こんな風になったらいいと思うんだけど、どうでしょう?」「これをちょっと体験してみてください」と、自分たちが考える未来をかたちにしたプログラムを用意しています。庭野ちゃん、今年のナナナナ祭の見どころはなんでしょう?

庭野:そうですね、デモデーは100BANCHの建物内を中心に体験展示ブースがずらりと並ぶのですが、100BANCHの前にはヤグラステージが出現して、出展者のトークなどを楽しんでいただけます。100BANCHの2階、3階、この場もガラッと変わってブースが立ち並ぶ文化祭のような雰囲気になります。今日だけでなく、ぜひこの週末も遊びに来ていただけると、また違ったナナナナ祭をお楽しみいただけると思います!

則武: 今日のカンファレンスデーは「こんにちは未来 ー人間だけの会議2026ー」というテーマで、とにかくみなさんとお話をする場として設計をしてきました。この取り組み自体もまさに、実験的で100BANCHでも初めて行うスタイルのイベントです。今日はきっとゆったりとした時間の流れる1日になると思いますが、デモデーの3日間は、これでもかというぐらいの圧倒的な活動量を感じていただける、エネルギッシュな場になると思うので、その違いもぜひ楽しんでいただきたいです。

 

9年間で育まれた100BANCHのエコシステム

──9年間で1,262件のエントリーがあり、108回の審査会を経て、現在415のプロジェクトが100BANCHで活動しています。事務局としてオープン当初から運営に携わる則武と庭野が、これまでの9年間を振り返ります。

則武:100BANCHという名前は、100年という意味もありますが、お百姓さんの「百」に由来する「多様」という意味も込めています。「BANCH」は、住所を示す番地という意味だけなくもう一つ、綴りは異なりますが英語の「bunch」という単語の持つ束、束ねる、という意味を込めています。多様な才能が束になって未来をつくっていけるような、そんな場所になるといいな、と思って付けられた名前です。実際に本当にたくさんのプロジェクトがここに集まるようになり、様々な未来の兆しが見えるようになってきています。

それは、数だけの話ではありません。先輩プロジェクトの輝かしい活躍も、現役で活動しているメンバーやこのエコシステム全体を勇気づけてくれていると思います。

最近、本当に活躍が目覚ましく、みなさんも報道等でご覧になったことがあるのではないでしょうか。 ヘラルボニー は、実は100BANCHを創業期の東京拠点として活動していたチームです。当時から今のような活躍を想像できたわけではありません。今100BANCHで活動しているリーダー、メンバーたちと同じように悩んだり、壁にぶつかったりしていました。でも、そこから諦めずにいろんな人の助言を得たり、素直にそれを試して高速回転していって、いろんな実験をして今に至っているんだと思います。

彼らの最初のBtoB案件は、パナソニックラボラトリー東京というオフィスの空間の中に使うファブリックでした。初めの頃はその実績を営業資料でアピールしながら販路を広げ、今では世界へ羽ばたき、フランスに法人を設立したり、アメリカの大きな賞を受賞したりと、本当に目覚ましい活躍をしています。

また、東京のさまざまな駅に設置されている「アイカサ」も、100BANCHの先輩プロジェクトです。当時は、東京での導入実績はほとんどありませんでしたが、「シェア傘をもっと知ってもらいたい」と、100BANCHメンバーの助けも借りて、渋谷のスクランブル交差点を歩いているのは「アイカサを差している人ばかり」という光景をゲリラ的につくったこともありました。そこからJR、私鉄各社など、多くの企業との連携へと広がり、2030年に使い捨て傘ゼロを目指して活動をグングン進めています。

TeaRoom というチームのリーダーの岩本くんは、大学生の頃に100BANCHで活動していました。お茶の文化を通じて和むことを世界に広げていきたい、と掲げているチームです。100BANCHの中に置いてあるパーティションを組み合わせて、お茶室のような空間をつくってお茶会をやったり、それを100BANCHの外でもやってみたりと、本当にたくさんの実験をしていました。

天井から吊るした小さな箱の中だけがお茶室のような空間になり、リラックスできる「Chaspo」も、当時はまだプロトタイプでした。それが現在では、企業向けに手軽にお茶室空間をつくれるサービスへと発展しました。今ではカルチャープレナーとして『Forbes』の表紙を飾るまでになり、文化を通じて社会課題の解決に挑み、世界へ打って出ることを実践しています。当時大学生だった頃とはまったく違う顔を見せてくれていて、本当に頼もしいです。

もう1つ紹介したいのが、SEKISAI というチームです。100BANCHでは Color Fab という名前で活動していました。角度によって見える色が変わる3Dプリント技術を持つデザインスタジオで、その技術を磨き続けながら、100BANCHやパナソニックとの共創プロジェクトも4年ほど続けています。パナソニックのサステナブル素材「kinari」を使った実験にも取り組んでいて、この会場の後ろに浮遊してるリーフ状のオブジェは、昨年の大阪・関西万博でパナソニックグループパビリオン: ノモの国で空間演出として利用されたリーフのプロトタイプです。大阪に新しくできたR&D拠点のカフェの空間演出にも使われています。

100BANCHでは、これからもっとこういった「共創」を拡大していきたいと思っています。今までは、主催企業であるパナソニックグループとの共創プロジェクトがほとんどだったのですが、設立から9年が経過し、活動チームも力をつけてきている中で、共創パートナーとして一緒に社会実装を目指していただける会社にぜひエコシステムの仲間に加わっていただきたいと思っています。その第一歩として「100BANCH Ecosystem Partnership Program」をスタートしました。10周年に向けて、「社会のコモンズとしての100BANCH」に進化させ、次の未来をつくる取り組みを進めていきます。

 

100BANCHらしさは、対話の中にある

──今回のカンファレンスデー「こんにちは未来 ― 人間だけの会議2026 ―」は、ゲストを招いて話を伺う従来のトークイベントから、全編ダイアローグ形式へと大きく変えることになりました。

則武: これまでのナナナナ祭のカンファレンスデーで実施していたものと分かりやすく違うのは、有識者ゲストがいないことですね。そのようなトークイベントももちろんすごく勉強になるし、新しい視点をいただけます。

庭野:そうですね。去年のカンファレンスデーでは4セッション、とてもいいお話が聞けました。メンバーも一緒に登壇してもらったので、普段なかなか聞けない話もゲストの方に引き出していただけたと感じています。

則武: ただ、ナナナナ祭は「100BANCHを全力で社会に開いていく場だ」と考えたときに、さらに「100BANCHらしい」イベントのかたちはないだろうか、と考えたんです。

──会場に来ている100BANCHのメンバーにも自分が思う100BANCHらしさについて聞いてみたところ、以下のような声が寄せられました。

「好奇心旺盛なメンバーや、保守的ではなく積極的な人たちが多い。怖いから触らないとか、石橋叩いて、というよりは、なんでも面白がれる人が多い。」

「会社と違って必ずしもビジネス視点を求められないという点は特徴的。また、アプリをつくっている人もいれば、宇宙のローバー(火星探査機)をつくってる人もいたり、いろんなことをやってる人がいて楽しい。いろんな分野に興味を持った人たちが同居している状態は、会社に入ってしまうとなくなってしまう。」

「いろんなところで何かやっていて、それにみんなが関心を持って話しかけに行き、いつの間にか輪ができあがっている。それをきっかけにプロジェクト同士がつながって新しい取り組みをはじめるなど、心が広くオープンマインドな人が多い。」

則武: 私が100BANCHらしさを考えたときに思い浮かんだのが、「好奇心の塊」と「剥き出しでハートフル」という言葉でした。思ったことをいつも本音で思うがままに話すメンバーが多いんです。でも同時に、すごく情に厚い。困っている人がいたら自然と助ける、そんなことが当たり前のように起きているのは、なぜなんだろうと思います。

庭野:何なんでしょうね。何が先にあってこういう文化になったのか、私にもよく分からないんですけど。

則武:そうですね。100BANCHをやってきて大きなトラブルって実はあまりないんですよね。

庭野:はい、9年間で2回だけですね。

則武:これってすごく少ないと思うんです。人ってコントロールできないものなのに、このエラー率の低さ。1つの仮説としては、無駄に人の足を引っ張る人がいないことかなと思っています。みんな自分がやりたいことに全力なので、人を妬んだり足を引っ張ったりするくらいなら、自分のやるべきことをやろう、という人が多いんじゃないでしょうか。

庭野:「そんな暇ない」って感じですね。むしろ、「何か手伝えることある?」という気持ちで動いている人の方が多いと思います。

則武:それぞれがめちゃくちゃ忙しいんですよ。それでも困ってる人がいたら、アドバイスしたり手伝ったりする。それは、自分も全力で目標に向かうことの大変さがわかっているからこそ、「自分にも何かできることがあれば」と思えるんだと思います。ギバーというか、そういう文化がここにあることは、本当に尊いなと思います。

庭野:そう思いますね。

則武: そんな100BANCHの日常のコミュニケーションを、ナナナナ祭のカンファレンスデーでもつくり出せないかな、と思ったのが今回の企画の出発点でした。100BANCHでは、「こうしたら面白いんじゃない?」「今こんなことを考えているんだよね」といった会話が、いつも自然に生まれています。それはプロジェクトの話のこともあれば、まったく関係ない雑談のこともあります。でも、そういう何気ない対話こそが、100BANCHの創造性につながっているんじゃないかと思うんです。

だからこそ、参加者のみなさんにもテーマを持ち寄ってもらい、興味のあるテーマに自由に参加できるスタイルのイベントにしました。雑談のような対話の中から、それぞれが自分の未来に持ち帰れる何かを見つけてもらえたらと思っています。

 

──プロローグの後は、早速グループごとに分かれてダイアローグがスタート。まずはチェックインとして「今の気持ち」を共有し合い、午後のセッションに向けて場を温めました。

午後は、オープンスペーステクノロジー(OST)の手法を取り入れたダイアローグセッションを全4回実施。来場者から事前に募った「話したいこと」「考えたいこと」をもとに構成した時間割は「プロジェクトを継続する価値と方法論」「仕事ができる人、頭のいい人ってどんな人?」「センスとは何か?」「社会にとって必要なことをワクワクするものとしてアウトプットするには?」など多彩なテーマがずらり。参加者は興味のあるテーマを自由に行き来しながらそれぞれの問いについて語り合い、新たな視点や思いがけない出会いを楽しんでいました。

各回とも8つほどのテーマグループに分かれて行われたセッションは、時間を忘れるほどの盛り上がりに。長時間にわたるダイアローグセッションを終えた後はクロージングへ移り、参加者はワークシートに1日の振り返りを記入。「私は〇〇を大事に未来に向かっていきたい」という言葉で、それぞれの未来への思いを共有しました。

セッションは「人間だけの会議」でしたが振り返りにはAIも活用。グループごとのダイアローグで交わされた内容はAIのグラフィックレコーディングによって可視化され、会場に並びました。参加者はボードを眺めながらそれぞれの対話を振り返り、一日の中で心が動いた瞬間を改めてたどっていました。

▼各画像をクリックすると、AIグラフィックレコーディングの一部をご覧いただけます。

 

懇親会では100BANCHの先輩プロジェクト「MUSUNDE HIRAITE」(GARAGE Program2期)が用意した、バラエティ豊かなおむすびが参加者同士をつなぎ、会話の輪を広げていました。白熱した昼間のトークの続きに花を咲かせる参加者の姿も。

七夕の短冊のようにボードに並んだのは、クロージングで各々が書き記した「私は〇〇を大事に未来に向かっていきたい」という言葉たち。そして最後は、会場に設置された電話機へ一日の感想を吹き込む「チェックアウト」で一日を締めくくり。電話越しに寄せられた声からは、対話を通じて得た気づきや、充実した一日への手応えが感じられました。

一日を通して雑談のように語り合うイベントは100BANCHにとっても実験的な初の試みでしたが、この日見られたのは人と人が語り合い、互いの好奇心に触発されることで新しい未来の芽が生まれていく、まさに100BANCHらしい風景でした。対話の中で交わされた言葉は、その日限りで終わるものではありません。それぞれが持ち帰った小さな気づきがまた新たな対話を呼び、未来へとつながっていく。そう強く思えた1日となりました。

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