• イベントレポート

そして我々の「議論」は、物語の結末への納得を生み出せたか?───「Novel Colony 編集会議完結回」

「立場の違いを超え、誰もが楽しめる」物語の共創を目指して始動した「Novel Colony」プロジェクト。11月より複数回実施していた、物語の続きを決めるワークショップ「Novel Colony 編集会議」の完結回を、2026年4月11日に100BANCHにて開催しました。
三島由紀夫賞の受賞で知られる作家・舞城王太郎氏が本プロジェクトのために冒頭を書き下ろした3つの物語。彼が始めたストーリーをどのように終わらせるか。総勢30人の参加者による活発な議論が行われました。

そしてこの議論と並行して、Novel Colonyにはもう1つ、検証したいことがありました。議論を行うことで、結論への納得を生み出し、意見を収束させることができるのか?という問いです。結論としては、人は議論を行うことで意見の終息と納得の両方を成し遂げることができる。議論に時間をかけることに可能性がある、というところが見えてきました。

このレポートではNovel Colonyの佐々木が、物語の結末と、問いの(今時点での) 結論を共有します。

イベントの流れ

イベント当日は、舞城王太郎先生に寄稿いただいた 『プレデタードミノ(仮題)』『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』『鯉の嫁(仮題)』3作品の続編パートそれぞれ時間を分けて、続きを議論しました。約20本の続編候補をもとに、総勢30名の「書き手」と「読み手」が100BANCHに集合し、4つのテーブルに分かれて議論を行いました。

議論の進め方については、第3回 編集会議から導入した「軸を用いたやり方」を活用しました。まず、1回目の議論で、候補作を読んだ感想を読んだうえで、参加者それぞれが作品の続きを書く・選ぶうえで重視している軸を共有します。次に2回目の議論で、選んだ軸をもとに、作品の評価を行います。先に軸を選ぶことで、どの視点で議論を行えばよいか明確になり、議論が行いやすくなることを過去の編集会議を通じて発見しており、この第4回ではその知見を活用した形になります。

 

 

『プレデタードミノ(仮題)』

まず最初に議論をした作品は『プレデタードミノ(仮題)』。

集まった作品総数は5作品。終盤の議論ということもあり、「どの程度伏線を回収するか」など、作品の締めくくりだからこそ生まれる意見が多く見受けられました。

選択の際の軸としては、前回の物語で、清涼院流水先生のキャラクター「九十九十九」とスーパープレデターの直接対決となったため、物語全体としてのカタルシスが特に重視された印象でした。一方で、あえて要素を拡散させたまま終える表現の可能性についても議論され、多様な観点・軸から活発で白熱した意見交換が行われました。

元々、これまでの話の回収と意外性の両方を実現させていた「No.1」が議論によって更に票を集め「続き」として選定されました。

▼『プレデタードミノ(仮題)』の冒頭部分(舞城王太郎著)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works001

▼『プレデタードミノ(仮題)』の正統続編(エントリー番号:No.1)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works001-1-5-1-1

 

『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』

続く2作品目は『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』。

集まった作品総数は7本。議論の中では、締めの一言やタイトル回収、意外性と普遍性を兼ね備えた内容、簡潔さなど、特に結末部分の表現に関わる観点を中心に多くの意見が交わされました。社会性を起点とした作品であることから、終わり方に直結する議論がより活発に行われました。わかりやすい解決を提示するのか、それとも問いを提示したまま残すのか。マイノリティの当事者の声を最後に出すべきでは、という意見もありました。最終的に選ばれた作品は、本を出版する、という行為の背中を押す作品、No.5。「この物語を通じて、登場人物が精神的に成長することが重要ではないか」というのがその理由として出ました。

▼『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』の冒頭部分(舞城王太郎著)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works002

▼『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』の正統続編(エントリー番号:No.5)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works002-12-4-2-5

 

『鯉の嫁(仮題)』

最後の3作品目は『鯉の嫁(仮題)』。

集まった続編は7本。議論も非常に活発で、大きな盛り上がりを見せました。特にNo.3とNo.6が最後の最後まで激戦を繰り広げ、2回の投票で同数になり、これまでなかった3回目の決選投票が行われる流れとなりました。ファンタジー設定であるからこそ、その設定を活かした結末のあり方や、ジャンルとしての一貫性、意外性、カタルシスといった、他作品と違った観点が重要視されました。

また、各評価軸をもとに議論を進めたことで、「舞城先生の設定自体が、荒唐無稽な設定だからこそ、最後も荒唐無稽なまま終わらせる方が、舞城先生の意図に対するアンサーになるのでは」など当初は見えていなかった作品の新たな側面も発見され、最終的に選ばれたのは、最初は票数が多くなかったものの議論のたびに得票数を増やした No.6 でした。

▼『鯉の嫁(仮題)』の冒頭部分(舞城王太郎著)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works003

▼『鯉の嫁(仮題)』の正統続編(エントリー番号:No.6)はこちら

https://novelcolony.com/works/Works003-6-4-1-6

 

議論のデータ分析①:「軸」を使って議論を行ったことで、議論の満足度は高まったのか?

Novel Colony プロジェクトは集団で物語を生み出すだけでなく、その過程で計測したデータを分析し、「現実にある対立を乗り越えるための方法」や「人々の違いを超えて楽しまれる作品の特徴」についての示唆を生み出すことまでを目的としています。今回の編集会議でも、投票結果や議論の満足度、会議の音声データに至るまで計測を行っていました。

3月の実験報告会では第3回の結果と1回目の結果の比較を報告していましたが、第3回目はかなり人数を絞って行った回のため、第1回と同程度の規模で議論をした今回で、改めて検証を行いました。

まず満足度の比較ですが、軸を用いた第3回と同様、第4回についても満足度が第1回よりも高くなっていました。特にどの作品の議論でも、それぞれの軸を共有する1回目から、軸をもとに議論を行う2回目でスコアが上昇しており、軸を設定したことで議論がやりやすくなったことが示唆される結果となりました。

 

議論のデータ分析②:議論によって参加者は一つになれたのか?

続いて2つ目の検証点は、「議論をするにつれ、票が特定の作品に集まっていったのか?」について。

第1回目の時の評価と同様に、作品の投票傾向について、シャノンのエントロピー(数値が大きいほうがばらつきが大きい)の時系列推移をみていくと、第1回目の時と同様、『プレデタードミノ(仮題)』と『作家も踏むを畏れるところ(仮題)』は議論によって投稿される作品がまとまりつつある傾向が見られた一方で、『鯉の嫁(仮題)』は途中で作品がまとまりづらくなっていました。すでに上で書いているように、『鯉の嫁(仮題)』は議論をする中で評価を高めた作品があり、それによってむしろ候補が広がったことがこのスコアに反映されていると言えます。それによる盛り上がりを考えると、議論による収束だけが必ずしも善とは言えないと思いました。

 

議論のデータ分析③:議論によってどのような物語が選ばれたのか?

3つめの検証点である「議論によってどのような物語が選ばれたのか?」についても、第1回目の時と同様の分析で検証しました。

やはり今回も、最終的な投票で選ばれた作品は、最も議論を通してスコアの上がった割合が高い(縦軸のスコアが高い) 作品でした。「プレデタードミノ」や「作家も踏むを畏れるところ」では最も議論を通してスコアが上がった作品が、最初から得票率1位でしたが、鯉の嫁(仮) では、選ばれた作品はもともと得票率が高くありませんでした。

議論によって作品をより深く理解し、元々の認識を改め、その認識を多くの人と共有できたこと。議論の満足度にはこうした体験がかかわっているのかもしれません。(実際、鯉の嫁(仮) の議論が最も満足度の高い議論となっていました)

ひとまず、分析は以上となります。今後更に詳しい分析が待たれますが、今の結果から言えるのは、議論によって物語が収束し、更にその結果が参加者に納得され、受け入れられる可能性があること。

この結果や議論に用いた軸を使った議論の方法は、エンタメづくりのみならず、ワークショップなど、合意に至る際に活用できると考えています。物語はひとまず終わりを迎えましたが、この物語を届ける方法の探索や、今回のノウハウを課題解決に生かす取り組みは始まったばかり。これからもNovel Colony としての活動を続けていきます。

 

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