• イベントレポート

「借金100万円」から始まる金融教育「ミライのために」──ナナナナ祭2025を終えて

-iPadを振って学ぶ、新時代のお金の授業-

中高生向けに「最高に楽しいIT教育」プログラムを開発し提供している、Classroom Adventures MOGURA。謎解きゲームのように情報リテラシーを学べる「レイのブログ」、闇バイトを擬似体験で学べる「レイの失踪」などをこれまで開発してきました。
今回のナナナナ祭2025では、金融リテラシーに着目。体験ゲームで金融について学べるプログラムを来場者に体験してもらいました。当日の様子をClassroom Adventures MOGURAの堀口がレポートします。

情報リテラシーから金融リテラシーへ

こんにちは、Classroom Adventure MOGURAの堀口です。私たちClassroom Adventureは、「学校の授業を楽しくしたい」という想いから始まったプロジェクトです。

これまで謎解きゲーム形式の情報リテラシー教材「レイのブログ」を世界10カ国で展開し、50,000人以上の学生がフェイクニュースを見抜く力を学んできました。そして昨年12月には、社会問題となっている闇バイトを疑似体験で学ぶ「レイの失踪」をリリースし、全国50校以上の学校で導入され、東京都や兵庫県とも連携した取り組みが各メディアで注目を集めています。

そんな私たちが今回のナナナナ祭で挑戦したのは、これまでの情報リテラシーとは全く異なる「金融リテラシー」という分野でした。それが小学生向け体験ゲーム「Furi Pay」です。

 

「増やす」ではなく「返す」から始まる

従来の金融リテラシー教育の多くは「お金を増やそう」「貯金をしよう」という“プラス”から始まります。しかし現実には、奨学金や住宅ローンなど、多くの人が人生のどこかで経済的な困難と向き合うことになります。そこで私たちは逆転の発想で、「100万円の借金をどう返すか」から金融リテラシーを学ぶゲームを開発しました。

 

iPadを振って働く——体感できる「労働」の価値

「Furi Pay」の最大の特徴は、iPadを物理的に振ることで収入を得るという操作システムです。「振る」という行為が労働を表現し、小学生にとって分かりやすい「働く=お金がもらえる」の体験を作り出しました。

しかし、ただ振り続けるだけでは金利1分10%と設定された借金は返済できません。そこで登場するのが「投資」という概念。架空の株式を安い時に買って高い時に売ることで、労働以外のお金の増やし方を学べる設計にしました。

プレイヤーは100万円完済までの速度を競います。うまく投資のタイミングを見極め、効率的に資産を増やした人ほど早くゴールにたどり着けるのです。

 

10分の1の時間で何を伝えられるか——イベント最適化への挑戦

今回最大のチャレンジは、従来1時間半かけていたワークショップを10分以内に短縮することでした。普段であれば、ゲーム後に30分のレッスンタイムを設け、しっかりと学習ポイントを解説します。しかし今回は、ゲームプレイのみで学習効果を生み出す必要がありました。

ナナナナ祭では、3日間で258人がブースを訪れ、約60人がゲームを実際に体験しました。そのうち55人が見事に完済を達成しました。ターゲットとしていた小学生の反応は想像以上に良く、大人が「疲れた」と言う中、子どもたちは夢中になってiPadを振り続けていました。

 

見えてきた課題と可能性——楽しさと学びのバランス

教育効果の面では課題が残りました。ゲームの楽しさに夢中になるあまり、「なぜ投資が重要なのか」「金利の恐ろしさ」といった本質的な学びが薄れてしまった感があります。

しかし一方で、5分程度という体験時間はイベント展示に適しており、端末を振るという物理的な動作により多くの人の注目を集めることができました。また、従来のターゲット層(中高生・大学生・社会人)とは全く異なる小学生層への挑戦により、新たな教育プログラムの可能性を見出すことができました。

 

新領域への挑戦

これまでClassroom Adventureは、「レイのブログ」や「レイの失踪」など、情報リテラシーを軸としたプログラムを開発してきました。しかし今回「Furi Pay」では、全く新しい領域である金融教育に挑戦しました。

情報リテラシー教育で培った「体験型学習」「ゲーミフィケーション」「リアルな疑似体験」といった私たちの強みを、どう金融教育に応用できるか。それが今回最大の実験テーマでもありました。

今後、この「Furi Pay」はイベント出展専用のプログラムとして進化させていく予定です。ゲーム内にガイダンス機能を追加してより多くの人が同時体験できるようにしたり、株式以外の投資オプション(債券、不動産など)を加えたりして、学習効果とエンターテイメント性を両立させたいと考えています。

最終的には、金融教育に関心のある銀行や証券会社、教育系イベントを開催する団体との連携を目指しています。情報リテラシーで培った官民連携のノウハウを活かし、「借金返済」という少しネガティブに見える入口から、実は前向きで実用的な金融知識を楽しく学べる。そんな新しい金融教育の形を社会に広げていければと思います。

子どもたちがフェイクニュースに騙されず、かつお金にも振り回されずに人生を歩んでいけるように。「Furi Pay」は、Classroom Adventureの新たな挑戦として、これからも進化し続けます。

 

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