
見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲームカフェ 〜チャイもあるヨ〜
視覚の状態に関わらずみんなが楽しめるボードゲームの開発をするBlined Project。晴眼者(見える人)と視覚障害者(見えない人・見えにくい人)の間にある「分断」に対する問題意識から、「楽しさ」をテーマに社会の障害理解を進めるコンテンツ開発に取り組んでいます。
ナナナナ祭2025では、100BANCHのGARAGE Program期間中に開発を進めてきた「ボードゲーム“グラマ”」と、プログラム終了後にオープンした「見えない、見えにくい人と働くカフェ“Moonloop Cafe”」を融合させたボードゲームカフェを出展しました。全盲のスタッフが開発した“まりりんパフェ”とともに、視覚障害に関わりのない来場者にも「食べたくなる・撮りたくなる・話したくなる」体験を届けられるかを問いに、挑戦した3日間。このレポートでは、その試みの裏側と気づき、そして未来への一歩についてBlined Projectの浅見がお伝えします。
私たちBlined Projectは「“見ても見なくても見えなくても楽しめる”を増やして、一緒にワクワクする世界へ」という理念を掲げて、視覚障害のある人とない人が一緒に楽しめる瞬間を生み出していく活動をしてきました。主に2つのアプローチをしてきました:
4年前にプロトタイプが完成し、その後、2年前より商品化して販売を開始。 これまでに3,000人以上の方々に体験していただきました。 視覚障害者と非障害者を、ゲームという「現実を跡影にする体験」で繋ぐことを目的に開発しました。
グラマのイベントを通じて視覚障害者の就労に関する課題を相談されることも多くありました。「バイトをしたいのに10箇所以上面接しても落ちてしまった」「フリーアドレスの会社なのに頼れる人がおらず、自由に移動するのが難しい」「上司も自分も、自分の仕事に期待を持てなくなって辛かった」といった様々な声をいただいてきました。
その結果、「もっとワクワクする職の選択肢を」という目的のもと、今年の2月より毎週月曜日に当事者が展開するカフェをオープン。 これまでに300名以上の方々にご来店いただいています。 視覚障害のあるスタッフが3名、ないスタッフが4名で運営しており、視覚の有無を超えてワクワクを実装する職場をめざしています。
今回のナナナナ祭では、それら二つを融合させた、新しい体験の追求と、視覚障害に対して関わったことのなかった方々への新たな価値の創造をテーマに「見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲームカフェ」を出展しました!
Moonloop Cafeやグラマは、視覚障害者との関わりを持った人たちを中心に、これまで施設を作ってきました。しかし、視覚障害に関わったことがなく、最初はチャイの香りだけで足を止めるような人たちにとって、どのように「おいしさ」や「わくわく」を届けられるのか。
この問いに向き合い、視覚障害を語るのではなく、視覚障害のある人の視点だからこそ生まれる、手際で作られた「まりりんパフェ」や、重さを通じて意思を伝えるゲーム「グラマ」などを通じて、自然と興味を持ってもらう、そんな体験を作ろうとしました。
今回のメインとなったのは、全盲のスタッフ「まりりん」が開発した「まりりんパフェ」。
一見して「おしゃれ」なデザートだけれど、実は器の深さやアイスの配置などが見えない人にとっては食べづらいメニュー。そのモデルを、まりりんがプロジェクトの主体となって食べやすさと美味しさ、そして可愛さを追求したパフェを数多く試作しました。
特に難しかったポイントは、「見えなくても食べやすい」と「写真を撮りたくなる可愛さ」を両立させることです。世の中のパフェのほとんどが、カップから飛び出しているか、カップ自体に高さがあって可愛いものです。しかし、それらの要素は両方、視覚障害のある方からすると食べづらさに直結しているそうです。なのでカップは高さがなく取手がついているもので試作し続けてきましたが、中々かわいさと両立するのが難しかったです。
私たちの中での70点までは辿り着いたものの、まだまだ満足しておらず、現在はまだ試作段階で、本当に絶品と言えるメニューを生み出すための挑戦は続いています。今回のナナナナ祭では、試作段階であることをご了承いただいたお客様1名に召し上がっていただき、フィードバックをいただきました。今回の実験をアイデアソースとして、まりりんパフェを精密にブランドデザインしながら育てていきます。7月末の営業ではもう一度テストで販売をする予定です!
Moonloop Cafeはこれまで、視覚障害のある当事者の方々や、視覚障害に関連したお仕事や研究をされている方々にご来店いただくことがほとんどでした。しかし、それでは私たちのミッションは実現されない。その課題感をベースに今回のナナナナ祭では、「おしゃれさ」を追求して、実際にこれまでご来店いただいた方々を中心にご意見をいただきながら、ロゴのデザインの見直しや、ミッションステートメントの再検討、ライトやマグカップ、エデュケーションカードの作成などの世界観づくりを徹底して見直しました。
ロゴは盲導犬が月の上でコーヒーを飲んでいるものに。
その結果、視覚障害に関心のなかった人たちも、「チャイが美味しそうだから」という直感からブースに足を止めてくれました。
そして、チャイやコーヒーを飲み、エデュケーションカードを読み、視覚障害のあるスタッフからの接客を経験するなかで、自然と視覚障害への興味と理解が生まれていました。
ナナナナ祭を通して、私たちが目指したいのは「見えない人が働くBlue Bottle Coffee」のような存在なのではないか、そう考えるようになりました。
それは、「見えない人がだから」でなく、「見えない人でも」でもなく、「見えない人だからこそ」のプロフェッショナリズムや美学を実装したカフェ。
そしてこの方向性は、食やドリンクの機能的価値のみならず、情緒的価値をも一緒に起点にした、「福祉×食」の最前線を戦う方法だと考えています。
プロフェッショナリズム、美学、ミッション性。
これらをまたぐ、Moonloop Cafeの旅は、まだまだ始まったばかりです。
是非お店にもお越しください!!!
HPはこちら:https://blinedproject.org/moonloopcafe